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Mission176
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意外と簡単にシュヴァリエの説得が成功してしまった。彼も相当悩んでいたのだろうと、アリスはつくづく思う。
次のやることを求めて、アリスは他の兄弟にも声を掛けてみる。
そんなわけで、ギルソンが学園から帰ってくると、スーリガンとアワードにも集まってもらうことにした。
「で、何でしょうか、アリス」
帰ってくるなり集められたために、ギルソンですら戸惑っているようだった。
「シュヴァリエ殿下に何かできることはないかと思いましてね。それで、マイマスターたちにお集まりいただいたのですよ」
アリスの言葉に、三人の王子とそのオートマタたち、合わせて五人がお互いの顔を見合わせて戸惑っている。
「アリスさん、シュヴァリエ殿下と話をされたのですか?」
アエスが手を挙げて尋ねると、アリスはこくりと無言で頷いた。
「私は今までマイマスターのオートマタとして奔走して参ったつもりです。ですが、そのことによる周りへの影響を見落としていたのです。結果、シュヴァリエ殿下が謹慎処分を受ける事態を引き起こしてしまいました」
アリスは反省の弁を述べている。
「むむむ……。もう少し周りにも目を向けていれば違う結果が得られたと思います。非常に悔しく思います」
アリスは左の拳を強く握りしめて、悔しさをにじませていた。
それもそのはずだ。アリスはそもそもギルソン以外の不幸も願っていない。だからこそ、シュヴァリエにも手を差し伸べたのだ。
「それでしたら、私から提案がございます」
ここで手を挙げたのがアワードのオートマタであるフェールだった。
ギルソンがフェールの発言を認める。
「国内の魔法石や鉱石の鉱脈に関して、以前調査を行いました。場所の特定もできておりますし、開発を始めるにあたって、その指揮にあたって頂くというのはいかがでしょうか」
「なるほど、それはいい考えですね」
フェールからの発言に、ギルソンは強く頷いている。
「となると、まずはその新しい鉱山の位置を確認しないといけませんね」
スーリガンが考え込む仕草をしながら話題を切り替える。
「はい、左様でございます。どなたか地図をご用意いただいてもよろしいでしょうか」
「それでしたら僕が出しましょう」
動き出したのはアワードだった。
集合した部屋はギルソンの部屋だったので、地図ならば周辺国の者も含めておいてある。アワードはギルソンの部屋にはよく遊びに来ているので、地図のある場所は把握済みなのだ。
地図を持ってきたアワードは、テーブルの上に地図を広げる。もちろん、ファルーダン王国の地図だ。
「ここが、私たちのいる王都ですね」
地図を見ながら、フェールが話を始める。
「そして、ここからこう延びるのが、ツェン鉱山へと向かう鉄道路線です」
地図を指でなぞっていく。
「ここで山脈に当たってしまいますので、ここから東へ行くには、南のソリエア王国か北のマスカード帝国に一度出るしかありません」
「地形的にはそうですね」
フェールの説明を聞きながら、ギルソンは頷いている。
「それで、私の調査の結果、この山脈の別の地点で鉱脈らしき反応を見ることができました。それがこの位置でございます」
フェールはツェンの街から北のマスカード帝国側へと指を移動させていく。国境と近いあたりまで移動すると、ようやくそこで指が止まった。
「そこは、国境を形成する川の源流ですかね」
ギルソンの質問に、フェールはこくりと肯定する。
フェールが言うには、その川の源流付近に鉱脈が眠っているとのことだった。ただ、川の源流ということもあり、地質的にはかなりもろいとのことだった。
「なるほど、地下水脈を傷つける危険性ですね」
「地下水脈?」
「はい。基本的に降った雨は一度地面へとしみこみます。その水が通っている場所のことを地下水脈と言います」
「なるほど」
アリスの説明で理解してしまうギルソンである。
「ここは他にも問題がございます。見ても分かる通りファルーダン王国とマスカード帝国の国境に位置しています。もしかすると、地中で国境を越える危険性があるのですよ」
「国境侵犯である上に、他国の資源の横取りとなるわけですね。国際問題に発展してしまう危険性が高いですね」
「はい、その通りでございます」
相変わらず理解が早いギルソンである。
「その上、この辺りは少数民族もいます。下手に向かえば、彼らを刺激しかねません。私は一人で向かいましたが、オートマタと分かって手を出さなかったようです」
「問題は山積というわけだな」
スーリガンが腕を組んで唸っている。
「だったら、帝国の説得は俺に任せてくれ」
「イスヴァン殿下?!」
「俺だけのけ者とはひどいな。マスカード帝国にも影響があるのなら、俺も呼ぶべきだっただろう」
「た、確かにそうでございますね。失念していました」
イスヴァンの登場に、フェールが謝罪している。
「いやいや、怒っちゃいないさ。たまたま聞こえてきたんで、つい割って入っちまっただけだからな」
大口を開けて笑うイスヴァン。本当にまったく気にしていないようだ。
「てなわけだ。親父の説得は俺に任せてくれ。その代わり、条件を出させてもらおう」
「なんなりと」
オートマタ三人が揃ってイスヴァンの言葉に返事をする。
ここからはイスヴァンも混ざって話が進められていく。はたして、どのような合意をもって新しい鉱脈の開発に取り掛かるのだろうか。
そして、シュヴァリエの名誉回復は果たされるのか。
アリスは新しい局面に立たされたのだった。
次のやることを求めて、アリスは他の兄弟にも声を掛けてみる。
そんなわけで、ギルソンが学園から帰ってくると、スーリガンとアワードにも集まってもらうことにした。
「で、何でしょうか、アリス」
帰ってくるなり集められたために、ギルソンですら戸惑っているようだった。
「シュヴァリエ殿下に何かできることはないかと思いましてね。それで、マイマスターたちにお集まりいただいたのですよ」
アリスの言葉に、三人の王子とそのオートマタたち、合わせて五人がお互いの顔を見合わせて戸惑っている。
「アリスさん、シュヴァリエ殿下と話をされたのですか?」
アエスが手を挙げて尋ねると、アリスはこくりと無言で頷いた。
「私は今までマイマスターのオートマタとして奔走して参ったつもりです。ですが、そのことによる周りへの影響を見落としていたのです。結果、シュヴァリエ殿下が謹慎処分を受ける事態を引き起こしてしまいました」
アリスは反省の弁を述べている。
「むむむ……。もう少し周りにも目を向けていれば違う結果が得られたと思います。非常に悔しく思います」
アリスは左の拳を強く握りしめて、悔しさをにじませていた。
それもそのはずだ。アリスはそもそもギルソン以外の不幸も願っていない。だからこそ、シュヴァリエにも手を差し伸べたのだ。
「それでしたら、私から提案がございます」
ここで手を挙げたのがアワードのオートマタであるフェールだった。
ギルソンがフェールの発言を認める。
「国内の魔法石や鉱石の鉱脈に関して、以前調査を行いました。場所の特定もできておりますし、開発を始めるにあたって、その指揮にあたって頂くというのはいかがでしょうか」
「なるほど、それはいい考えですね」
フェールからの発言に、ギルソンは強く頷いている。
「となると、まずはその新しい鉱山の位置を確認しないといけませんね」
スーリガンが考え込む仕草をしながら話題を切り替える。
「はい、左様でございます。どなたか地図をご用意いただいてもよろしいでしょうか」
「それでしたら僕が出しましょう」
動き出したのはアワードだった。
集合した部屋はギルソンの部屋だったので、地図ならば周辺国の者も含めておいてある。アワードはギルソンの部屋にはよく遊びに来ているので、地図のある場所は把握済みなのだ。
地図を持ってきたアワードは、テーブルの上に地図を広げる。もちろん、ファルーダン王国の地図だ。
「ここが、私たちのいる王都ですね」
地図を見ながら、フェールが話を始める。
「そして、ここからこう延びるのが、ツェン鉱山へと向かう鉄道路線です」
地図を指でなぞっていく。
「ここで山脈に当たってしまいますので、ここから東へ行くには、南のソリエア王国か北のマスカード帝国に一度出るしかありません」
「地形的にはそうですね」
フェールの説明を聞きながら、ギルソンは頷いている。
「それで、私の調査の結果、この山脈の別の地点で鉱脈らしき反応を見ることができました。それがこの位置でございます」
フェールはツェンの街から北のマスカード帝国側へと指を移動させていく。国境と近いあたりまで移動すると、ようやくそこで指が止まった。
「そこは、国境を形成する川の源流ですかね」
ギルソンの質問に、フェールはこくりと肯定する。
フェールが言うには、その川の源流付近に鉱脈が眠っているとのことだった。ただ、川の源流ということもあり、地質的にはかなりもろいとのことだった。
「なるほど、地下水脈を傷つける危険性ですね」
「地下水脈?」
「はい。基本的に降った雨は一度地面へとしみこみます。その水が通っている場所のことを地下水脈と言います」
「なるほど」
アリスの説明で理解してしまうギルソンである。
「ここは他にも問題がございます。見ても分かる通りファルーダン王国とマスカード帝国の国境に位置しています。もしかすると、地中で国境を越える危険性があるのですよ」
「国境侵犯である上に、他国の資源の横取りとなるわけですね。国際問題に発展してしまう危険性が高いですね」
「はい、その通りでございます」
相変わらず理解が早いギルソンである。
「その上、この辺りは少数民族もいます。下手に向かえば、彼らを刺激しかねません。私は一人で向かいましたが、オートマタと分かって手を出さなかったようです」
「問題は山積というわけだな」
スーリガンが腕を組んで唸っている。
「だったら、帝国の説得は俺に任せてくれ」
「イスヴァン殿下?!」
「俺だけのけ者とはひどいな。マスカード帝国にも影響があるのなら、俺も呼ぶべきだっただろう」
「た、確かにそうでございますね。失念していました」
イスヴァンの登場に、フェールが謝罪している。
「いやいや、怒っちゃいないさ。たまたま聞こえてきたんで、つい割って入っちまっただけだからな」
大口を開けて笑うイスヴァン。本当にまったく気にしていないようだ。
「てなわけだ。親父の説得は俺に任せてくれ。その代わり、条件を出させてもらおう」
「なんなりと」
オートマタ三人が揃ってイスヴァンの言葉に返事をする。
ここからはイスヴァンも混ざって話が進められていく。はたして、どのような合意をもって新しい鉱脈の開発に取り掛かるのだろうか。
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アリスは新しい局面に立たされたのだった。
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