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Mission167
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アリスが見たのは、よく知る名前の病気だった。
「辺り一帯にネズミか何かがいるはずです。すべてを駆除してやらないといずれはまた広がるでしょう」
「ネズミ、でございますか?」
そう、アリスが見たのは黒死病とも呼ばれたあの病気である。保菌者たる動物からノミを介して広まる病気なので、まずはその保菌者を駆除するしかないというわけだ。可哀想かもしれないが、それが一番手っ取り早いのである。
だが、アリスはすぐには駆除には向かわない。連れてきたオートマタたちに病気のことを覚えさせることが最優先だからだ。
オートマタは優秀なので、一度覚えればそれを次からは自分で実行できるようになる。だからこそ、アリスはまずはこの病気の特徴を教えて、それを治す方法を実行してみせるのだ。
今回連れてきたオートマタはアリスとは主従関係にあるので、さらに覚えさせることは簡単だ。鉄道の時と同じで、アリスが実演してみせればデータの共有で簡単にラーニングしてしまうのである。
何にしても、目の前で実演するというのが重要なのだ。
というわけで、早速目の前の患者を治療するアリス。体内に巣食う病原菌をきれいさっぱりに消滅させるイメージで魔法を使うと、目の前の患者の容体は次第に安定していった。
「……あ、れ? く、苦しくない……」
患者は何が起きたのか分からないといった感じだった。体を起こして左右をきょろきょろと見回している。
「私が魔法で治療しました。ただ、しばらくは経過観察が必要ですので、ゆっくりしていて下さい」
「わ、分かりました……」
アリスに言われて、男性はおとなしく再び横になっていた。
男性を安静にさせた後、アリスは自分の連れてきた八体のオートマタに向けて視線を向ける。
「五名はここに残って患者たちの対応を。残り三体は私と一緒に、駆除へと回ります」
「了解しました、マスター」
アリスの呼び掛けに、オートマタたちが返事をする。それを確認すると、早速行動を起こす。
アリスは前世で培った知識云々を活用して、魔法で動物たちを探し回る。
一種の熱センサーを魔法で再現してみせているために、今のアリスたちには該当のネズミたちはその体が赤く光って見えている。ついでに病原菌持ちであるならば輪郭を黒く表示するオプション付きだ。
(まったく、魔法というのは便利な限りですね)
自分で開発して使っていながらに、アリスは正直驚いていた。
しばらく走っているだけで、王都の中で見つかりに見つかる黒輪郭のネズミたち。アリスたちは見つけるたびに火の魔法を放ってネズミたちを駆除していく。
普段は料理などで火起こしをする程度の魔法だが、ちょっと込める魔力を増やしてやればこの通りである。
「鉄道網を整備するのであれば、懸念はできる限り潰してしまいましょう。もうみなさんもできますよね。火事には気をつけながら、ネズミ退治をお願いします」
「承知致しました、マスター」
アリスから離れ、オートマタたちは王都の中を捜索していく。結果として相当数のネズミの駆除を行うこととなった。
すべてを終えて戻ってくるオートマタたち。極力人のいない地点で集合し、アリスの浄化の魔法できれいにすれば駆除完了である。
「あなた方、大丈夫ですか?」
戻ってきたアリスは、他のオートマタたちの状態を心配する。
アリスはそもそも魔法力の桁が違うのでぴんぴんしているが、なんとも呼吸を荒げてつらそうにしているのだ。通常のオートマタであれば、すでに稼働可能領域の限界に達していたのである。オートマタであっても、息が上がってしまうとは新しい発見だった。
そのオートマタたちを見て、アリスは看病を続けるオートマタたちを手伝うように言い、念のために王都中の浄化へと向かっていく。
「これで、ひとまず王都は大丈夫でしょう。後は王都に入ってくる人たちに対して、同様の処置をするだけですね」
王都を取り巻く壁の上に立って、アリスは手をパンパンと叩いていた。すべてをやり切ったという顔で、充実感に浸っているのだ。
なにせ、これでソリエア王国との間での鉄道建設の話が進められるからだ。ところが、その前にアリスにはもうひとつやっておかなければならないことを忘れてはいけない。
それが何かといえば、ソリエア王国の食糧事情である。
アインダードの報告では、ひとつの村しか見てこなかったがかなりひどい状況だったらしい。悲惨な状況を見過ごしておけないアリスからすれば、心配しかないのである。
このソリエア王国はそもそも乾燥地帯で植物が育ちにくい。とはいえ、そこまで心配するほどでもなかった。この状況はここ近年で急速に進んだようで、いよいよ耐え切れないといった感じなのである。
とはいえ、ここで病気の発生はアリスにとっても予想外だった。早めに気が付けたことにほっと胸を撫で下ろしたアリスは、一度オートマタたちのところへと戻る。
そして、しばらく王都のことを任せた後、アリスはいよいよ本来の交渉のために城へと向かったのだった。
「辺り一帯にネズミか何かがいるはずです。すべてを駆除してやらないといずれはまた広がるでしょう」
「ネズミ、でございますか?」
そう、アリスが見たのは黒死病とも呼ばれたあの病気である。保菌者たる動物からノミを介して広まる病気なので、まずはその保菌者を駆除するしかないというわけだ。可哀想かもしれないが、それが一番手っ取り早いのである。
だが、アリスはすぐには駆除には向かわない。連れてきたオートマタたちに病気のことを覚えさせることが最優先だからだ。
オートマタは優秀なので、一度覚えればそれを次からは自分で実行できるようになる。だからこそ、アリスはまずはこの病気の特徴を教えて、それを治す方法を実行してみせるのだ。
今回連れてきたオートマタはアリスとは主従関係にあるので、さらに覚えさせることは簡単だ。鉄道の時と同じで、アリスが実演してみせればデータの共有で簡単にラーニングしてしまうのである。
何にしても、目の前で実演するというのが重要なのだ。
というわけで、早速目の前の患者を治療するアリス。体内に巣食う病原菌をきれいさっぱりに消滅させるイメージで魔法を使うと、目の前の患者の容体は次第に安定していった。
「……あ、れ? く、苦しくない……」
患者は何が起きたのか分からないといった感じだった。体を起こして左右をきょろきょろと見回している。
「私が魔法で治療しました。ただ、しばらくは経過観察が必要ですので、ゆっくりしていて下さい」
「わ、分かりました……」
アリスに言われて、男性はおとなしく再び横になっていた。
男性を安静にさせた後、アリスは自分の連れてきた八体のオートマタに向けて視線を向ける。
「五名はここに残って患者たちの対応を。残り三体は私と一緒に、駆除へと回ります」
「了解しました、マスター」
アリスの呼び掛けに、オートマタたちが返事をする。それを確認すると、早速行動を起こす。
アリスは前世で培った知識云々を活用して、魔法で動物たちを探し回る。
一種の熱センサーを魔法で再現してみせているために、今のアリスたちには該当のネズミたちはその体が赤く光って見えている。ついでに病原菌持ちであるならば輪郭を黒く表示するオプション付きだ。
(まったく、魔法というのは便利な限りですね)
自分で開発して使っていながらに、アリスは正直驚いていた。
しばらく走っているだけで、王都の中で見つかりに見つかる黒輪郭のネズミたち。アリスたちは見つけるたびに火の魔法を放ってネズミたちを駆除していく。
普段は料理などで火起こしをする程度の魔法だが、ちょっと込める魔力を増やしてやればこの通りである。
「鉄道網を整備するのであれば、懸念はできる限り潰してしまいましょう。もうみなさんもできますよね。火事には気をつけながら、ネズミ退治をお願いします」
「承知致しました、マスター」
アリスから離れ、オートマタたちは王都の中を捜索していく。結果として相当数のネズミの駆除を行うこととなった。
すべてを終えて戻ってくるオートマタたち。極力人のいない地点で集合し、アリスの浄化の魔法できれいにすれば駆除完了である。
「あなた方、大丈夫ですか?」
戻ってきたアリスは、他のオートマタたちの状態を心配する。
アリスはそもそも魔法力の桁が違うのでぴんぴんしているが、なんとも呼吸を荒げてつらそうにしているのだ。通常のオートマタであれば、すでに稼働可能領域の限界に達していたのである。オートマタであっても、息が上がってしまうとは新しい発見だった。
そのオートマタたちを見て、アリスは看病を続けるオートマタたちを手伝うように言い、念のために王都中の浄化へと向かっていく。
「これで、ひとまず王都は大丈夫でしょう。後は王都に入ってくる人たちに対して、同様の処置をするだけですね」
王都を取り巻く壁の上に立って、アリスは手をパンパンと叩いていた。すべてをやり切ったという顔で、充実感に浸っているのだ。
なにせ、これでソリエア王国との間での鉄道建設の話が進められるからだ。ところが、その前にアリスにはもうひとつやっておかなければならないことを忘れてはいけない。
それが何かといえば、ソリエア王国の食糧事情である。
アインダードの報告では、ひとつの村しか見てこなかったがかなりひどい状況だったらしい。悲惨な状況を見過ごしておけないアリスからすれば、心配しかないのである。
このソリエア王国はそもそも乾燥地帯で植物が育ちにくい。とはいえ、そこまで心配するほどでもなかった。この状況はここ近年で急速に進んだようで、いよいよ耐え切れないといった感じなのである。
とはいえ、ここで病気の発生はアリスにとっても予想外だった。早めに気が付けたことにほっと胸を撫で下ろしたアリスは、一度オートマタたちのところへと戻る。
そして、しばらく王都のことを任せた後、アリスはいよいよ本来の交渉のために城へと向かったのだった。
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