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Mission166
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「あの、これでいいんですか?」
オートマタを仕上げたマリカがアリスに確認をしている。
マリカはほぼ7日間で10体ほどのオートマタを作り上げていた。どういうわけか全員女性型で、魔法石を取りつける位置は胸部に設定されているようだった。
オートマタを見たアリスは満足の表情を見せている。ちなみにオートマタの服装は、アリスの前世でよく見た看護師の服装をモチーフに作ってもらった。
そう、アリスがマリカに作ってもらったオートマタとは、医療行為を専門とするオートマタたちだったのだ。
なぜそんなオートマタを作ってもらったのかというと、ソリエア王国の環境が劣悪だったためだ。
医療行為自体は人間でも行えるものの、人間では感染というリスクがずっと付きまとう。だが、オートマタであれば病気をもらう危険性はないし、魔法が使えるので病原菌を撃退することも可能なのだ。ただ、そのためにはその病原菌のイメージを持っていなければならない。これは前世持ちであるアリスだからこそ行えたのだ。
さて、完成したオートマタたちに魔法石を装着する。
オートマタたちの瞳に光がともり、マリカの作り出したオートマタたちは無事に動き始めた。
「マスター、お初にお目にかかります」
アリスを前に、10体のオートマタたちが跪く。アリス自身もそうだが、オートマタたちにとって主というのは絶対的な存在なのだ。だからこそ、このオートマタたちもアリスに対してこのような態度を見せているのである。
「それで、マスター。私たちは一体何をすればよろしいのでしょうか」
揃いも揃ってアリスに役割を問い掛けるオートマタたちである。意思を持つ人形であるがために、その存在意義を求めてしまうのだ。
「あなたたちの役目は、ケガや病気の治療です。そのために、無理を言ってマリカ様に作って頂いたのですから」
「あの、アリスさん。目的は分かったのですが、理由は一体……」
どうにもすっきりしないマリカが、アリスに確認するように問い掛けている。
アリスはマリカに向き合って、その理由をぽつぽつと話し始める。
「実は、隣国のソリエア王国へ行ってきたのですが、その実情にある懸念が浮かび上がったのですよ」
「懸念……ですか?」
アリスの説明に、ごくりと息を飲むマリカ。その態度にこくりと頷くアリス。
「詳しくはさすがに隣国の機密になりますので申せませんが、状況を鑑みるに病の発生が懸念されます。そこで、その病に対処できるオートマタを、マリカ様に作って頂いたとそういうわけでございます」
「なるほど……」
アリスの説明を聞いて、なんとなく納得のいくマリカである。
「二名ほどはこちらの王都に残してまいります。残りの八名は私と一緒にソリエア王国へと向かいましょう」
「承知致しました、マスター」
マリカと一緒にまずは王城へ出向き、オートマタを二体ほど王城へと預けるアリス。ギルソンたちに事情を説明した後、早速ソリエア王国へと向けて出発をする。
国境までは列車で出向き、まずはそこで兵士たちの検診を行う。
「マスター、問題ございません」
国境の警備にあたる兵士たちにまったく問題はなかった。これにはひと安心ということで、アリスたちは王都ソルドに向けて出発をする。
今回はオートマタだけなので、昼夜問わずに休むことなく歩いていくことができる。まったく、何度体験してもチートな能力だと思うアリスである。
(まったくこういう無茶というのは、戦中戦後の事を思い出しますね。あの頃も生きるのに必死でできることはあれこれやってみたものですよ)
ついつい懐かしくて笑みを浮かべてしまうアリスであった。
アリスたちは強行軍の末に、通常の半分以下の日数で国境からソルドまで移動してしまった。そして、国王たちに謁見したのち、早速活動を開始する。
王城内の人物たちには異常はなかったが、王都の中の人たちの検査をしていると、オートマタの一人がアリスに対して報告を入れてくる。
報告を受けたアリスが駆けつけると、オートマタが抱える人物は非常につらそうにぐったりとしていた。
「これは……」
症状を見ただけで、アリスはなんとなく察してしまう。
「辺り一帯を魔法で隔離して下さい。すぐさま治療を開始します」
「どうしたのですか」
アリスについてきた兵士が問い掛けると、アリスは険しい表情でこう告げた。
「伝染病が始まろうとしています。まだ症状が初期ですので、私たちオートマタの魔法でどうにかできます。あなたもここに残って一緒に魔法を受けて下さい」
「わ、分かりました」
わけもわからず、兵士はアリスに言われた通りにその場にとどまった。
すぐさまオートマタの魔法で辺り一帯が光に包まれる。
アリスは患者を前に思い当たる症状を探る。前世知識と魔法石に蓄積された知識の双方から原因の特定を行うのだ。
魔法とて万能とは言えない。それゆえにアリスは慎重に対処を行う。
「魔法よ、私にこの者の病の元を見せなさい」
目の前の苦しむ人物の状況が事細かにアリスの目の前に浮かぶ。
「……やはりそうでしたか」
結果、アリスが懸念していた事態がやはり発生していたようだった。
オートマタを仕上げたマリカがアリスに確認をしている。
マリカはほぼ7日間で10体ほどのオートマタを作り上げていた。どういうわけか全員女性型で、魔法石を取りつける位置は胸部に設定されているようだった。
オートマタを見たアリスは満足の表情を見せている。ちなみにオートマタの服装は、アリスの前世でよく見た看護師の服装をモチーフに作ってもらった。
そう、アリスがマリカに作ってもらったオートマタとは、医療行為を専門とするオートマタたちだったのだ。
なぜそんなオートマタを作ってもらったのかというと、ソリエア王国の環境が劣悪だったためだ。
医療行為自体は人間でも行えるものの、人間では感染というリスクがずっと付きまとう。だが、オートマタであれば病気をもらう危険性はないし、魔法が使えるので病原菌を撃退することも可能なのだ。ただ、そのためにはその病原菌のイメージを持っていなければならない。これは前世持ちであるアリスだからこそ行えたのだ。
さて、完成したオートマタたちに魔法石を装着する。
オートマタたちの瞳に光がともり、マリカの作り出したオートマタたちは無事に動き始めた。
「マスター、お初にお目にかかります」
アリスを前に、10体のオートマタたちが跪く。アリス自身もそうだが、オートマタたちにとって主というのは絶対的な存在なのだ。だからこそ、このオートマタたちもアリスに対してこのような態度を見せているのである。
「それで、マスター。私たちは一体何をすればよろしいのでしょうか」
揃いも揃ってアリスに役割を問い掛けるオートマタたちである。意思を持つ人形であるがために、その存在意義を求めてしまうのだ。
「あなたたちの役目は、ケガや病気の治療です。そのために、無理を言ってマリカ様に作って頂いたのですから」
「あの、アリスさん。目的は分かったのですが、理由は一体……」
どうにもすっきりしないマリカが、アリスに確認するように問い掛けている。
アリスはマリカに向き合って、その理由をぽつぽつと話し始める。
「実は、隣国のソリエア王国へ行ってきたのですが、その実情にある懸念が浮かび上がったのですよ」
「懸念……ですか?」
アリスの説明に、ごくりと息を飲むマリカ。その態度にこくりと頷くアリス。
「詳しくはさすがに隣国の機密になりますので申せませんが、状況を鑑みるに病の発生が懸念されます。そこで、その病に対処できるオートマタを、マリカ様に作って頂いたとそういうわけでございます」
「なるほど……」
アリスの説明を聞いて、なんとなく納得のいくマリカである。
「二名ほどはこちらの王都に残してまいります。残りの八名は私と一緒にソリエア王国へと向かいましょう」
「承知致しました、マスター」
マリカと一緒にまずは王城へ出向き、オートマタを二体ほど王城へと預けるアリス。ギルソンたちに事情を説明した後、早速ソリエア王国へと向けて出発をする。
国境までは列車で出向き、まずはそこで兵士たちの検診を行う。
「マスター、問題ございません」
国境の警備にあたる兵士たちにまったく問題はなかった。これにはひと安心ということで、アリスたちは王都ソルドに向けて出発をする。
今回はオートマタだけなので、昼夜問わずに休むことなく歩いていくことができる。まったく、何度体験してもチートな能力だと思うアリスである。
(まったくこういう無茶というのは、戦中戦後の事を思い出しますね。あの頃も生きるのに必死でできることはあれこれやってみたものですよ)
ついつい懐かしくて笑みを浮かべてしまうアリスであった。
アリスたちは強行軍の末に、通常の半分以下の日数で国境からソルドまで移動してしまった。そして、国王たちに謁見したのち、早速活動を開始する。
王城内の人物たちには異常はなかったが、王都の中の人たちの検査をしていると、オートマタの一人がアリスに対して報告を入れてくる。
報告を受けたアリスが駆けつけると、オートマタが抱える人物は非常につらそうにぐったりとしていた。
「これは……」
症状を見ただけで、アリスはなんとなく察してしまう。
「辺り一帯を魔法で隔離して下さい。すぐさま治療を開始します」
「どうしたのですか」
アリスについてきた兵士が問い掛けると、アリスは険しい表情でこう告げた。
「伝染病が始まろうとしています。まだ症状が初期ですので、私たちオートマタの魔法でどうにかできます。あなたもここに残って一緒に魔法を受けて下さい」
「わ、分かりました」
わけもわからず、兵士はアリスに言われた通りにその場にとどまった。
すぐさまオートマタの魔法で辺り一帯が光に包まれる。
アリスは患者を前に思い当たる症状を探る。前世知識と魔法石に蓄積された知識の双方から原因の特定を行うのだ。
魔法とて万能とは言えない。それゆえにアリスは慎重に対処を行う。
「魔法よ、私にこの者の病の元を見せなさい」
目の前の苦しむ人物の状況が事細かにアリスの目の前に浮かぶ。
「……やはりそうでしたか」
結果、アリスが懸念していた事態がやはり発生していたようだった。
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