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Mission164
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交渉はあっという間に終わってしまう。
ファルーダン王国とソリエア王国の間における力の差は歴然で、ほぼ一方的ともいえる状態で決着してしまった。
だが、その決まった内容はソリエア王国にとって決して悪いものではなかった。
「では、マイマスター。早速行ってまいります」
「うん、頼んだよ、アリス」
ソリエア王国の環境を改善するために、アリスが一人でソリエア王国へと向かうこととなった。大体は彼女一人いればあっという間に環境なんて作り変えてしまえるからだ。
実際問題、アリス一人の力だけでどれだけ環境が塗り替えられてきたか。
ギルソンの幼少期にはファルーダンの食糧事情を徹底的に激変させ、鉄道を建設して人やモノの流れを大激変させてしまった。並のオートマタであれば絶対に不可能なことをしれっとやり終えていたのである。
ファルーダン王国の民からしてみても、たった一体のオートマタだけでここまで変わってしまったなど信じられたものではないのだ。おそらくは目の前で見てみても信じられたものではないだろう。
アインダードとスーリガンが信じられないような視線を送る中、アリスはソリエア王国の使者とともに王都を旅立っていった。
「さて、これで後はアリスに任せておけば問題ないでしょう。ボクは学園へと向かいますので、アインダード兄様とスーリガン兄様はゆっくり休んで下さい」
「ああ、そうさせてもらおうか」
呆然と立ち尽くすアインダードとスーリガンを尻目に、ギルソンはイスヴァンと一緒に学園へと向かっていったのだった。
「まったく、あれでまだ13歳とは信じられんな」
「ですね。私たちはどんなでしたかね……」
しばらく立ち呆けていた二人ではあるものの、気持ちを切り替えて国王への報告へと向かったのだった。
さて、ソリエア王国へと向かったアリスはどうなったか。
国境までは建設済みの鉄道であっさり到着してしまったので、国境で一休みする使者たちに話し掛ける。
「お二人がお休みになられている間に、ソリエア国内に向けて鉄道を建設してしまっても構いませんでしょうか」
突拍子もない話に、使者たちは顔を見合わせる。
「建設してもらえるのであれば嬉しいのですが、私どもではどうとも答えられません」
「その代わり、少々古い時期のものとなりますが、ソリエア王国の地図をお渡しいたします。陛下からは簡単に許可が下りますでしょうから、ルートの選定にお役立て下さい」
「ありがとうございます」
使者二人から手渡された地図を手にすると、早速アリスはソリエア王国の王都までのルート選定に入った。
ソリエア王国の使者の二人は驚きのあまり疲れ切っているのか、あっという間に眠りに就いてしまっている。その姿を見守りながら、アリスは一晩中考え込んだのだった。
(ふーむ、現在地はソリエア王国のこの辺りで、王都がここですか。街道のルートを考えると、できればそれに沿って建設をした方がいいでしょうね。あっ、できれば正確な地理が分かるとなおよいですね)
スムーズな建設のために、地図を眺めながらあれこれシミュレートを繰り返すアリス。こうして、夜が明ける頃にはすっかり構想が固まりつつあったのだった。
朝を迎えて国境を越える。
地図では分からないし、話にはある程度聞いていたソリエア王国。
実際に国の様子を見たアリスは、なんともいたたまれない気持ちになった。
(まるで、転生してきた頃のファルーダンを思い出しますね。土地が痩せこけて荒れ地ばかり。思った以上に国内状況は深刻のようですね)
本来、オートマタであればそこまで感情は豊かではない。しかし、前世は94歳まで生きた人間だったアリスは、本気で心を痛めている。そして、この状況をどうにかしたいと、心の底から思うようになっていた。
馬に乗ってソリエア王国の王都ソルドに到着したアリス。使者たちの後ろについて王城まで案内される間も、王都の様子をちらちらと確認していた。
王都というだけあって他の場所よりは多少マシなものの、お世辞にも褒められた状況ではなかった。よくこの状況で国家の体を成せているものだと思えるほどの有様だった。
(王都に限定すれば、私が転生してきた頃と比べてかなりひどいですね。早く手を打たないと、もっと深刻になりかねません)
前世知識があるだけに、アリスはその状況に懸念を抱かざるを得なかった。
(こうなると、鉄道を敷くよりも先に、この住環境をどうにかすべきですね。もし、伝染病が発生していれば鉄道を介して広がってしまいますもの)
そう、貧困による衛生環境の悪化から起きる病気である。満足な食事を取れなければ体力と抵抗力が落ちてしまい、簡単に病にかかってしまう。そのことが心配になったのだ。
幸い、目の前の使者も視察に向かった二人の王子もその気配はなかった。
だが、それは運がよかっただけのこと。
ソリエア王国の惨状を見たアリスは、鉄道よりも先にこの劣悪な環境の改善を行うことを強く決意したのだった。
ファルーダン王国とソリエア王国の間における力の差は歴然で、ほぼ一方的ともいえる状態で決着してしまった。
だが、その決まった内容はソリエア王国にとって決して悪いものではなかった。
「では、マイマスター。早速行ってまいります」
「うん、頼んだよ、アリス」
ソリエア王国の環境を改善するために、アリスが一人でソリエア王国へと向かうこととなった。大体は彼女一人いればあっという間に環境なんて作り変えてしまえるからだ。
実際問題、アリス一人の力だけでどれだけ環境が塗り替えられてきたか。
ギルソンの幼少期にはファルーダンの食糧事情を徹底的に激変させ、鉄道を建設して人やモノの流れを大激変させてしまった。並のオートマタであれば絶対に不可能なことをしれっとやり終えていたのである。
ファルーダン王国の民からしてみても、たった一体のオートマタだけでここまで変わってしまったなど信じられたものではないのだ。おそらくは目の前で見てみても信じられたものではないだろう。
アインダードとスーリガンが信じられないような視線を送る中、アリスはソリエア王国の使者とともに王都を旅立っていった。
「さて、これで後はアリスに任せておけば問題ないでしょう。ボクは学園へと向かいますので、アインダード兄様とスーリガン兄様はゆっくり休んで下さい」
「ああ、そうさせてもらおうか」
呆然と立ち尽くすアインダードとスーリガンを尻目に、ギルソンはイスヴァンと一緒に学園へと向かっていったのだった。
「まったく、あれでまだ13歳とは信じられんな」
「ですね。私たちはどんなでしたかね……」
しばらく立ち呆けていた二人ではあるものの、気持ちを切り替えて国王への報告へと向かったのだった。
さて、ソリエア王国へと向かったアリスはどうなったか。
国境までは建設済みの鉄道であっさり到着してしまったので、国境で一休みする使者たちに話し掛ける。
「お二人がお休みになられている間に、ソリエア国内に向けて鉄道を建設してしまっても構いませんでしょうか」
突拍子もない話に、使者たちは顔を見合わせる。
「建設してもらえるのであれば嬉しいのですが、私どもではどうとも答えられません」
「その代わり、少々古い時期のものとなりますが、ソリエア王国の地図をお渡しいたします。陛下からは簡単に許可が下りますでしょうから、ルートの選定にお役立て下さい」
「ありがとうございます」
使者二人から手渡された地図を手にすると、早速アリスはソリエア王国の王都までのルート選定に入った。
ソリエア王国の使者の二人は驚きのあまり疲れ切っているのか、あっという間に眠りに就いてしまっている。その姿を見守りながら、アリスは一晩中考え込んだのだった。
(ふーむ、現在地はソリエア王国のこの辺りで、王都がここですか。街道のルートを考えると、できればそれに沿って建設をした方がいいでしょうね。あっ、できれば正確な地理が分かるとなおよいですね)
スムーズな建設のために、地図を眺めながらあれこれシミュレートを繰り返すアリス。こうして、夜が明ける頃にはすっかり構想が固まりつつあったのだった。
朝を迎えて国境を越える。
地図では分からないし、話にはある程度聞いていたソリエア王国。
実際に国の様子を見たアリスは、なんともいたたまれない気持ちになった。
(まるで、転生してきた頃のファルーダンを思い出しますね。土地が痩せこけて荒れ地ばかり。思った以上に国内状況は深刻のようですね)
本来、オートマタであればそこまで感情は豊かではない。しかし、前世は94歳まで生きた人間だったアリスは、本気で心を痛めている。そして、この状況をどうにかしたいと、心の底から思うようになっていた。
馬に乗ってソリエア王国の王都ソルドに到着したアリス。使者たちの後ろについて王城まで案内される間も、王都の様子をちらちらと確認していた。
王都というだけあって他の場所よりは多少マシなものの、お世辞にも褒められた状況ではなかった。よくこの状況で国家の体を成せているものだと思えるほどの有様だった。
(王都に限定すれば、私が転生してきた頃と比べてかなりひどいですね。早く手を打たないと、もっと深刻になりかねません)
前世知識があるだけに、アリスはその状況に懸念を抱かざるを得なかった。
(こうなると、鉄道を敷くよりも先に、この住環境をどうにかすべきですね。もし、伝染病が発生していれば鉄道を介して広がってしまいますもの)
そう、貧困による衛生環境の悪化から起きる病気である。満足な食事を取れなければ体力と抵抗力が落ちてしまい、簡単に病にかかってしまう。そのことが心配になったのだ。
幸い、目の前の使者も視察に向かった二人の王子もその気配はなかった。
だが、それは運がよかっただけのこと。
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