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Mission162
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列車に乗り込むと、ファルーダン王国の王都へ向けて列車はゆっくりと走り出す。なにせ建設したての部分ゆえにまだまだ安全確認が足りていないからだ。
オートマタが五人も乗り込んでいるので、一応何かがあったとしても運転士以外が魔法ですぐに対処できる体制にはなっている。
「な、なんて速さなんだ……」
ソリエア王国からの使者が座席に座ったまま震えている。
全力の馬くらいの速度で巨大な物体が移動しているのだ。慣れない人物たちからしたら怖いのは当然である。初めて乗った時のイスヴァンはかなりはしゃいでいたが、普通ならばソリエア王国の使者のような反応を見せるものだろう。馬車だって速度は知れているのだ。
しばらくすると仮の終点となっていた村の駅に到着する。ここから国境までは造ったばかりの区間だったので、この村の駅の駅員と情報を共有するために停車したのだ。
それが終わると列車は再び動き出す。途中のひと駅を通過すると、フィア駅にてツェンとを結ぶ初期の路線と合流する。
「いつの間にこんなものを造ったんだよ……」
アインダードがものすごく驚いている。
「アインダード様たちがソリエア王国に向かっている間にでございます」
「最近じゃないか。相変わらず仕事が早いな……」
「ありがとう存じます」
アインダードが呆れた様子で反応していると、アリスは淡々と頭を下げていた。褒めたわけではないのだが、こう返しておくのが最適だろうと94年生きてきた人生経験が告げているのである。
結局、夕暮れ前には出発した列車は、明朝早くにファルーダンの王都に到着してしまったのだった。
寝ている間にファルーダンの王都に着いてしまったことで、ソリエア王国の使者たちは目を丸くした上に大口を開けて周りを眺めていた。
「ここが、ファルーダン王国の王都……」
「嘘だろ、昨日は国境にいたよな、俺たち……」
呆然とする使者たちを見て、アインダードは得意げに笑っている。
「ところでアリス」
「なんでしょうか、アインダード殿下」
「馬車は用意してあるのか?」
「こんな早朝に着いているのに、あると思われますか?」
アインダードの質問にアリスが無表情で返すと、アインダードは目を見開いて黙り込んだ。
「まったく、アインダード兄様はどこか抜けているんですから……」
スーリガンはアインダードの行動を見て呆れている。まったく、やっぱりアインダードはアインダードなのである。
しかし、早朝の駅構内でたたずんでいたアインダードたちに、駅員のオートマタが近付いてくる。
「マスター、ちょっとよろしいでしょうか」
「どうかしましたか」
慌てたように声を掛けてくるので、アリスは反応する。
「城より使いの馬車が到着しております。馬も預かってくださるようですので、お伝えしておきます」
オートマタたちのその報告を聞いて、アリスはすぐにピンときた。
「……マイマスターですね」
「はい、ギルソン殿下のご命令でございます」
「まったく、どこまで規格外な方でいらっしゃるのですか……」
自分の仕える主とはいえ、その並外れた能力に頭を抱えるアリスである。
駅員のオートマタたちに、もう少し待つようにと伝言を頼むアリス。そして、すぐさまアインダードたちのところへと向かう。
「アインダード殿下、スーリガン殿下」
「どうしたアリス」
話し込んでいたアインダードがアリスの呼び掛けに反応する。
「城から迎えの馬車が到着されたようなので、すぐに移動をお願いします」
「そうか。思ったよりも早かったな」
「はい、どうやらマイマスターの指示のようでございます」
「ギルソンか……。まったく、よく分からんやつに育ったな、あいつは」
アリスから聞かされて、楽しそうに笑うアインダードだ。末弟の成長を本気で喜んでいるようだった。
「お迎えはありがたいのですが、馬はどうするおつもりですか」
そう問い掛けるのはソリエア王国の使者たちだ。国境まで移動してきた際の馬たちも、今回一緒に列車に乗せて連れてきた。だというのに馬車で移動となると、離れ離れの状態が続いてしまう。使者たちはその状態が長く続くのを嫌ったのだ。
「ご安心下さい。一緒にお城に連れて参りますので、お会いして頂くことは可能でございます」
「そ、そうですか」
使者たちの心配を聞いたアリスが説明をすると、安心した姿を見せていた。使者たちにとって乗ってきた馬は相棒みたいなものなのだろう。
これにはアインダードたちもなんとなく分かるようだった。自分たちとオートマタといった関係性と近いからだろう。
「ドル、お前たちに馬たちを任せて大丈夫か?」
「はい、まったくもって問題ございません。アエス、君もだろう?」
「もちろんでございますとも」
スーリガンのオートマタであるアエスもこくりと強く頷いていた。
話がついたことで、全員分の馬はアリス、ドル、アエスのオートマタ三人に預けられる。ソリエア王国の使者たちは心配そうに見てはいるものの、相手はなんといってもオートマタだ。アリスが代表して任せてほしいと自信たっぷりに使者たちに言い聞かせていた。
こうして、王都に戻ってきたアリスたちは、ソリエア王国との間の関係改善に向けた交渉へと臨むのだった。
オートマタが五人も乗り込んでいるので、一応何かがあったとしても運転士以外が魔法ですぐに対処できる体制にはなっている。
「な、なんて速さなんだ……」
ソリエア王国からの使者が座席に座ったまま震えている。
全力の馬くらいの速度で巨大な物体が移動しているのだ。慣れない人物たちからしたら怖いのは当然である。初めて乗った時のイスヴァンはかなりはしゃいでいたが、普通ならばソリエア王国の使者のような反応を見せるものだろう。馬車だって速度は知れているのだ。
しばらくすると仮の終点となっていた村の駅に到着する。ここから国境までは造ったばかりの区間だったので、この村の駅の駅員と情報を共有するために停車したのだ。
それが終わると列車は再び動き出す。途中のひと駅を通過すると、フィア駅にてツェンとを結ぶ初期の路線と合流する。
「いつの間にこんなものを造ったんだよ……」
アインダードがものすごく驚いている。
「アインダード様たちがソリエア王国に向かっている間にでございます」
「最近じゃないか。相変わらず仕事が早いな……」
「ありがとう存じます」
アインダードが呆れた様子で反応していると、アリスは淡々と頭を下げていた。褒めたわけではないのだが、こう返しておくのが最適だろうと94年生きてきた人生経験が告げているのである。
結局、夕暮れ前には出発した列車は、明朝早くにファルーダンの王都に到着してしまったのだった。
寝ている間にファルーダンの王都に着いてしまったことで、ソリエア王国の使者たちは目を丸くした上に大口を開けて周りを眺めていた。
「ここが、ファルーダン王国の王都……」
「嘘だろ、昨日は国境にいたよな、俺たち……」
呆然とする使者たちを見て、アインダードは得意げに笑っている。
「ところでアリス」
「なんでしょうか、アインダード殿下」
「馬車は用意してあるのか?」
「こんな早朝に着いているのに、あると思われますか?」
アインダードの質問にアリスが無表情で返すと、アインダードは目を見開いて黙り込んだ。
「まったく、アインダード兄様はどこか抜けているんですから……」
スーリガンはアインダードの行動を見て呆れている。まったく、やっぱりアインダードはアインダードなのである。
しかし、早朝の駅構内でたたずんでいたアインダードたちに、駅員のオートマタが近付いてくる。
「マスター、ちょっとよろしいでしょうか」
「どうかしましたか」
慌てたように声を掛けてくるので、アリスは反応する。
「城より使いの馬車が到着しております。馬も預かってくださるようですので、お伝えしておきます」
オートマタたちのその報告を聞いて、アリスはすぐにピンときた。
「……マイマスターですね」
「はい、ギルソン殿下のご命令でございます」
「まったく、どこまで規格外な方でいらっしゃるのですか……」
自分の仕える主とはいえ、その並外れた能力に頭を抱えるアリスである。
駅員のオートマタたちに、もう少し待つようにと伝言を頼むアリス。そして、すぐさまアインダードたちのところへと向かう。
「アインダード殿下、スーリガン殿下」
「どうしたアリス」
話し込んでいたアインダードがアリスの呼び掛けに反応する。
「城から迎えの馬車が到着されたようなので、すぐに移動をお願いします」
「そうか。思ったよりも早かったな」
「はい、どうやらマイマスターの指示のようでございます」
「ギルソンか……。まったく、よく分からんやつに育ったな、あいつは」
アリスから聞かされて、楽しそうに笑うアインダードだ。末弟の成長を本気で喜んでいるようだった。
「お迎えはありがたいのですが、馬はどうするおつもりですか」
そう問い掛けるのはソリエア王国の使者たちだ。国境まで移動してきた際の馬たちも、今回一緒に列車に乗せて連れてきた。だというのに馬車で移動となると、離れ離れの状態が続いてしまう。使者たちはその状態が長く続くのを嫌ったのだ。
「ご安心下さい。一緒にお城に連れて参りますので、お会いして頂くことは可能でございます」
「そ、そうですか」
使者たちの心配を聞いたアリスが説明をすると、安心した姿を見せていた。使者たちにとって乗ってきた馬は相棒みたいなものなのだろう。
これにはアインダードたちもなんとなく分かるようだった。自分たちとオートマタといった関係性と近いからだろう。
「ドル、お前たちに馬たちを任せて大丈夫か?」
「はい、まったくもって問題ございません。アエス、君もだろう?」
「もちろんでございますとも」
スーリガンのオートマタであるアエスもこくりと強く頷いていた。
話がついたことで、全員分の馬はアリス、ドル、アエスのオートマタ三人に預けられる。ソリエア王国の使者たちは心配そうに見てはいるものの、相手はなんといってもオートマタだ。アリスが代表して任せてほしいと自信たっぷりに使者たちに言い聞かせていた。
こうして、王都に戻ってきたアリスたちは、ソリエア王国との間の関係改善に向けた交渉へと臨むのだった。
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