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Mission159
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目の前にはソリエア国王が鎮座している。
アインダードとスーリガン、そして二人のオートマタは素直に跪いて挨拶をする。
「ファルーダン王国第一王子アインダード・オーロル・ファルーダンでございます」
「ファルーダン王国第三王子スーリガン・ブロリエ・ファルーダンでございます。お久しぶりでございます、ソリエア国王陛下」
ソリエア国王と対面して、跪いたまま名乗る二人である。
「王子自らがやって来るとは予想外だったな。遠路はるばるご苦労である。面を上げよ」
ソリエア国王から労いの言葉を受ける二人である。それと同時に顔を上げてもいいと言われたので、二人の王子とそのオートマタたちは顔を上げる。
見上げたソリエア国王の表情は、表向きはちゃんとした笑顔のようだ。しかし、スーリガン以外ははっきりとその笑顔の裏の本心をひしひしと感じ取っており、表情がいささか硬いようだった。
「して、なぜファルーダンの王子が自らソリエア後に赴いたのだ。申してみよ」
ソリエア国王はあごを触りながらアインダードたちに問い掛けている。
こう思うのも仕方のないことだろう。国王が無理にしても、まさか王子たちが自分のところに正面から乗り込んできたわけだから。
アインダードが話をしようとするが、それを押さえてドルが前に出てくる。
「ソリエア国王よ、私はアインダード第一王子付きのオートマタ、ドルと申します。事情に関しまして、私からお話しましょう」
国王が相手とあって、普段『俺』の一人称を使うドルも『私』と一人称を変えている。こういう柔軟さがあるのがオートマタの特徴なのである。常に最適解を求めようとするのだ。
ドルの丁寧な発言に、ソリエア国王は発言の許可を出す。すると、ドルはアインダードとスーリガンに顔を向けて小さく頷いている。
「発言の許可、感謝致します。では、ソリエア王国へとやって参った事情について説明致します」
姿勢を正し、ドルはソリエア国王への説明を始める。
「ほう、それでわざわざこっちまで来たというわけか。本当にご苦労な事だな」
割と普通の反応をしてくるソリエア国王である。だが、アエスはその言葉の節々から何かを感じ取っているようだった。
「そういうことでございます。本来なら交渉事は末弟ギルソンの領分ではございますが、なにぶん今は学生の身。ですので、兄ある我々がこうやって交渉に伺ったというわけでございます」
戦い好きの脳筋の長兄とは思えない、実に知的な姿勢を貫くアインダードである。
その普段とはまったく違う姿を見せるアインダードに、第三王子であるスーリガンは驚きを隠せなかった。しかし、今は交渉ごとの真っ最中。隙を見せないようにとすぐに姿勢を正していた。
「お見受けしたところ、どうやらソリエア王国内はかなり食糧事情がよろしくないようですね」
すっぱりと本題に切り込んでいくアインダード。これにはソリエア国王も思わず眉がぴくりと動いてしまう。
「我が国土を見てきたというのか?」
咳払いをしながらアインダードに問い掛けるソリエア国王。
「いえ、この王都ソルドの状況だけでの判断でございます。王都の中もかなり良いようには見えませぬ」
この指摘にはソリエア国王も反応が悪かった。
「前年からいつもよりも凶作になっておってな。このままでは国の存続すらも危ういのは確かだ」
言葉が見つからなかったのか、正直に国の実情を話し始めるソリエア国王。これには事前に見ておいた場所の状況とも合致する。
アインダードとスーリガンはこくりと頷いている。
「その割には、我が国に偵察を送り込む余裕はあるのでございますね」
「ななな、何の事だ?」
明らかな動揺を見せるソリエア国王。これにはさすがのアインダードもため息が出る。
「我が国のオートマタを甘く見てもらっては困りますな。そちらが送り込んできた偵察の存在は既に把握済みでございます」
「な、なんだと?!」
驚きを隠せないソリエア国王。相当にファルーダン王国を甘く見ていたことがよく分かる。
「本当は脅しをかけようかとは思いましたが、貴国の状況を見て気が変わりました。隣国とはいえ、民が飢えて死にゆく様など見たくはありませんからな」
アインダードはソリエア国王にそう告げる。
「ドル、お前の能力で多少はどうにかできるか?」
「アリスに比べれば大したことはできないぜ。ただ、俺よりはアエスの方が向いているだろうよ」
アインダードから尋ねられたドルから話を振られて、アエスは表情を歪めている。
「わ、私ですか?」
戸惑うアエスに、ドルはこくりと頷いてアエスの肩に手を置く。
「アリスさんと名前が似ているからといって、私にそんな能力はありませんよ。……まあ、やれるだけはやってみますが」
「というわけです。本気で支援をお求めなら、ギルソンあてに使者を送った方がいいと思いますよ、ソリエア国王陛下」
悩んだソリエア国王ではあるが、国の状況を考えれば背に腹は代えられない。アインダードの提案をやむなく飲むことにしたのだった。
アインダードとスーリガン、そして二人のオートマタは素直に跪いて挨拶をする。
「ファルーダン王国第一王子アインダード・オーロル・ファルーダンでございます」
「ファルーダン王国第三王子スーリガン・ブロリエ・ファルーダンでございます。お久しぶりでございます、ソリエア国王陛下」
ソリエア国王と対面して、跪いたまま名乗る二人である。
「王子自らがやって来るとは予想外だったな。遠路はるばるご苦労である。面を上げよ」
ソリエア国王から労いの言葉を受ける二人である。それと同時に顔を上げてもいいと言われたので、二人の王子とそのオートマタたちは顔を上げる。
見上げたソリエア国王の表情は、表向きはちゃんとした笑顔のようだ。しかし、スーリガン以外ははっきりとその笑顔の裏の本心をひしひしと感じ取っており、表情がいささか硬いようだった。
「して、なぜファルーダンの王子が自らソリエア後に赴いたのだ。申してみよ」
ソリエア国王はあごを触りながらアインダードたちに問い掛けている。
こう思うのも仕方のないことだろう。国王が無理にしても、まさか王子たちが自分のところに正面から乗り込んできたわけだから。
アインダードが話をしようとするが、それを押さえてドルが前に出てくる。
「ソリエア国王よ、私はアインダード第一王子付きのオートマタ、ドルと申します。事情に関しまして、私からお話しましょう」
国王が相手とあって、普段『俺』の一人称を使うドルも『私』と一人称を変えている。こういう柔軟さがあるのがオートマタの特徴なのである。常に最適解を求めようとするのだ。
ドルの丁寧な発言に、ソリエア国王は発言の許可を出す。すると、ドルはアインダードとスーリガンに顔を向けて小さく頷いている。
「発言の許可、感謝致します。では、ソリエア王国へとやって参った事情について説明致します」
姿勢を正し、ドルはソリエア国王への説明を始める。
「ほう、それでわざわざこっちまで来たというわけか。本当にご苦労な事だな」
割と普通の反応をしてくるソリエア国王である。だが、アエスはその言葉の節々から何かを感じ取っているようだった。
「そういうことでございます。本来なら交渉事は末弟ギルソンの領分ではございますが、なにぶん今は学生の身。ですので、兄ある我々がこうやって交渉に伺ったというわけでございます」
戦い好きの脳筋の長兄とは思えない、実に知的な姿勢を貫くアインダードである。
その普段とはまったく違う姿を見せるアインダードに、第三王子であるスーリガンは驚きを隠せなかった。しかし、今は交渉ごとの真っ最中。隙を見せないようにとすぐに姿勢を正していた。
「お見受けしたところ、どうやらソリエア王国内はかなり食糧事情がよろしくないようですね」
すっぱりと本題に切り込んでいくアインダード。これにはソリエア国王も思わず眉がぴくりと動いてしまう。
「我が国土を見てきたというのか?」
咳払いをしながらアインダードに問い掛けるソリエア国王。
「いえ、この王都ソルドの状況だけでの判断でございます。王都の中もかなり良いようには見えませぬ」
この指摘にはソリエア国王も反応が悪かった。
「前年からいつもよりも凶作になっておってな。このままでは国の存続すらも危ういのは確かだ」
言葉が見つからなかったのか、正直に国の実情を話し始めるソリエア国王。これには事前に見ておいた場所の状況とも合致する。
アインダードとスーリガンはこくりと頷いている。
「その割には、我が国に偵察を送り込む余裕はあるのでございますね」
「ななな、何の事だ?」
明らかな動揺を見せるソリエア国王。これにはさすがのアインダードもため息が出る。
「我が国のオートマタを甘く見てもらっては困りますな。そちらが送り込んできた偵察の存在は既に把握済みでございます」
「な、なんだと?!」
驚きを隠せないソリエア国王。相当にファルーダン王国を甘く見ていたことがよく分かる。
「本当は脅しをかけようかとは思いましたが、貴国の状況を見て気が変わりました。隣国とはいえ、民が飢えて死にゆく様など見たくはありませんからな」
アインダードはソリエア国王にそう告げる。
「ドル、お前の能力で多少はどうにかできるか?」
「アリスに比べれば大したことはできないぜ。ただ、俺よりはアエスの方が向いているだろうよ」
アインダードから尋ねられたドルから話を振られて、アエスは表情を歪めている。
「わ、私ですか?」
戸惑うアエスに、ドルはこくりと頷いてアエスの肩に手を置く。
「アリスさんと名前が似ているからといって、私にそんな能力はありませんよ。……まあ、やれるだけはやってみますが」
「というわけです。本気で支援をお求めなら、ギルソンあてに使者を送った方がいいと思いますよ、ソリエア国王陛下」
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