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Mission158
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ソリエア王国の王都ソルドに着いたアインダードたち。入口で正体を明かすと、兵士たちが慌てたように城へと駆けていった。
「ふん、意外と反応が早いな」
「兄様が怖かったのではないでしょうかね」
「それはそれでショックというものだな」
スーリガンに言われて、アインダードは困った表情を見せている。
「まったく、交渉事はギルソンがやればいいんだろうが、さすがに学生だし可愛い弟を危険な場所に送り込みたくはない。ここは長兄としての威厳を見せてやらねばな。頼りにしているぞ、スーリガン」
「結局他人頼りじゃないですか」
「はははっ、俺は戦い以外のことはからっきしだからな。はははははっ」
スーリガンに呆れられて、大声で笑うアインダードである。これだから脳筋というものは困ったものである。何も考えていないのだから、付き合わされる方はたまったものではなかった。
しばらく待つと城からの使いが馬車とともにやって来る。その馬車に乗り込んで、アインダードとスーリガンはオートマタとともにソリエア王城へと向かったのだった。
街の中をしっかりと見ながら移動していくアインダードとスーリガン。その表情はとても冴えないものだった。
「これが本当に王都なのか?」
馬車に乗る使者に鋭い視線を送るアインダード。あまりにも鋭かっただけに、使者は思わず体を跳ね上げるほどに震えていた。アインダードが相当に怖いようだった。
「ソリエア王国の食糧事情はよくないといううわさは聞いていましたが、王都までがこの状態では困ったものですね」
スーリガンも思わず顔をしかめてしまうくらいである。
ただ、アリスの暴走がなければ、ファルーダン王国内もこのようになっていた可能性があるので、実に他人ごとではない光景である。
街を見終わり、馬車はようやくソリエア王城の中へと入っていく。城の中はまだ比較的まともな状態のようだが、それでも国の財政状況がよく分かる状態だった。
「これは酷いな。少し前まで別の場所を見て回っていたが、そこと並ぶくらい悲惨な状態だな」
脳筋なアインダードですら、まともに見るに堪えない状況らしい。
そうなれば、国から出た事のないスーリガンが目を背けたくなるのも当然といえる状況だった。
「アエス、これはどうにかできそうかな?」
「アリス様のやり方の再現はできますでしょうけれど、私の魔力量では厳しいかと存じます」
スーリガンの問い掛けに、アエスは淡々と答えていた。
アエスがこういうのも仕方がないと思われる。
オートマタの魔法の根本は同じであるので、魔法のやり方さえ分かれば、他の個体でも結構すんなりと行えてしまったりするのだ。もちろん、得意不得意というものはあるが。
ただ、ここでもう一つの問題が出てきてしまう。
それは何かといわれたら、オートマタの機能を決める魔法石の魔力容量というものだ。魔法石なら何でもいいというわけではない。そもそも魔法石それぞれで魔力の含有量と許容量が違っている。
そして、素体となるオートマタの性能でも、その魔法石の力は左右される。相性の良くない素体と魔法石では、ちゃんと動くことはできても魔法が使えないといった弊害が出ることもあるのだ。
もちろん、アリスとアエスの違いはそれだけではない。アリスには転生者の魂が宿っている。それがために、より強い魔法を行使することを可能にしているのである。なので、アエスがアリスの魔法を完全再現することは不可能なのである。
「まぁ、助けたいという気持ちは分からんでもないが、国王たちに会ってからだな。すべては返答次第ってところだ」
馬車を降りて城の中を歩きながら、アインダードはスーリガンにそう伝えている。
つまり、アインダードはこう言っているのだ。敵対するなら差し伸べずに滅ぼす、と。厳しいようだが、王族であるならばこのような厳しい判断を時に下さねばならないのである。
使者に案内されて、アインダードとスーリガンは謁見の間にやって来た。この扉の向こうには、ソリエア国王がいるというわけだ。
アインダードは堂々としているものの、スーリガンは緊張した面持ちのようである。こういったところに経験と器量の差が出るというものだ。
「ふん、緊張し過ぎだ、スーリガン。俺とドルがいるんだ。もっと気楽に胸を張っていけ。そんな態度では足元を見られるぞ」
「は、はい。アインダード兄様」
アインダードに背中を思い切り叩かれて、少し咳き込むスーリガン。あまりにも咳き込むものだから、アエスが心配してスーリガンを支えていた。
「アインダード様、さすがに強く叩きすぎでございます」
「おっ、そうか。スーリガン、ちょっと鍛え方が足りないぞ。がはははは」
アエスに咎められながらも、平然と笑っているアインダードである。もうなんていうか、いろいろなものが吹き飛んでいるようである。
気持ちを整えて、ようやくソリエア国王との謁見が始まる。目の前の扉が開き、中へと進んでいくアインダードとスーリガン。
こうしてまたひとつ、世界の運命が動き出そうとしていた。
「ふん、意外と反応が早いな」
「兄様が怖かったのではないでしょうかね」
「それはそれでショックというものだな」
スーリガンに言われて、アインダードは困った表情を見せている。
「まったく、交渉事はギルソンがやればいいんだろうが、さすがに学生だし可愛い弟を危険な場所に送り込みたくはない。ここは長兄としての威厳を見せてやらねばな。頼りにしているぞ、スーリガン」
「結局他人頼りじゃないですか」
「はははっ、俺は戦い以外のことはからっきしだからな。はははははっ」
スーリガンに呆れられて、大声で笑うアインダードである。これだから脳筋というものは困ったものである。何も考えていないのだから、付き合わされる方はたまったものではなかった。
しばらく待つと城からの使いが馬車とともにやって来る。その馬車に乗り込んで、アインダードとスーリガンはオートマタとともにソリエア王城へと向かったのだった。
街の中をしっかりと見ながら移動していくアインダードとスーリガン。その表情はとても冴えないものだった。
「これが本当に王都なのか?」
馬車に乗る使者に鋭い視線を送るアインダード。あまりにも鋭かっただけに、使者は思わず体を跳ね上げるほどに震えていた。アインダードが相当に怖いようだった。
「ソリエア王国の食糧事情はよくないといううわさは聞いていましたが、王都までがこの状態では困ったものですね」
スーリガンも思わず顔をしかめてしまうくらいである。
ただ、アリスの暴走がなければ、ファルーダン王国内もこのようになっていた可能性があるので、実に他人ごとではない光景である。
街を見終わり、馬車はようやくソリエア王城の中へと入っていく。城の中はまだ比較的まともな状態のようだが、それでも国の財政状況がよく分かる状態だった。
「これは酷いな。少し前まで別の場所を見て回っていたが、そこと並ぶくらい悲惨な状態だな」
脳筋なアインダードですら、まともに見るに堪えない状況らしい。
そうなれば、国から出た事のないスーリガンが目を背けたくなるのも当然といえる状況だった。
「アエス、これはどうにかできそうかな?」
「アリス様のやり方の再現はできますでしょうけれど、私の魔力量では厳しいかと存じます」
スーリガンの問い掛けに、アエスは淡々と答えていた。
アエスがこういうのも仕方がないと思われる。
オートマタの魔法の根本は同じであるので、魔法のやり方さえ分かれば、他の個体でも結構すんなりと行えてしまったりするのだ。もちろん、得意不得意というものはあるが。
ただ、ここでもう一つの問題が出てきてしまう。
それは何かといわれたら、オートマタの機能を決める魔法石の魔力容量というものだ。魔法石なら何でもいいというわけではない。そもそも魔法石それぞれで魔力の含有量と許容量が違っている。
そして、素体となるオートマタの性能でも、その魔法石の力は左右される。相性の良くない素体と魔法石では、ちゃんと動くことはできても魔法が使えないといった弊害が出ることもあるのだ。
もちろん、アリスとアエスの違いはそれだけではない。アリスには転生者の魂が宿っている。それがために、より強い魔法を行使することを可能にしているのである。なので、アエスがアリスの魔法を完全再現することは不可能なのである。
「まぁ、助けたいという気持ちは分からんでもないが、国王たちに会ってからだな。すべては返答次第ってところだ」
馬車を降りて城の中を歩きながら、アインダードはスーリガンにそう伝えている。
つまり、アインダードはこう言っているのだ。敵対するなら差し伸べずに滅ぼす、と。厳しいようだが、王族であるならばこのような厳しい判断を時に下さねばならないのである。
使者に案内されて、アインダードとスーリガンは謁見の間にやって来た。この扉の向こうには、ソリエア国王がいるというわけだ。
アインダードは堂々としているものの、スーリガンは緊張した面持ちのようである。こういったところに経験と器量の差が出るというものだ。
「ふん、緊張し過ぎだ、スーリガン。俺とドルがいるんだ。もっと気楽に胸を張っていけ。そんな態度では足元を見られるぞ」
「は、はい。アインダード兄様」
アインダードに背中を思い切り叩かれて、少し咳き込むスーリガン。あまりにも咳き込むものだから、アエスが心配してスーリガンを支えていた。
「アインダード様、さすがに強く叩きすぎでございます」
「おっ、そうか。スーリガン、ちょっと鍛え方が足りないぞ。がはははは」
アエスに咎められながらも、平然と笑っているアインダードである。もうなんていうか、いろいろなものが吹き飛んでいるようである。
気持ちを整えて、ようやくソリエア国王との謁見が始まる。目の前の扉が開き、中へと進んでいくアインダードとスーリガン。
こうしてまたひとつ、世界の運命が動き出そうとしていた。
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