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Mission156
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アインダードたちが進むソリエア王国の景色は、なんとも殺風景なものだった。
以前の飢饉に陥った時のファルーダン王国の国内の情景よりはマシだが、それでもかなりの範囲で荒野が広がる不毛な大地といった感じである。
「これは酷いな。以前にも来た事はあるが、その時はここまで酷くはなかったと思うんだが……」
アインダードですら言葉を失うような酷い有様だった。
「本当に酷いですね。それでも町や村がところどころにあるあたり、国として成り立ってはいるようですが」
スーリガンもどう評価していいか困っているようだ。
「近くに水脈のようなものはあるのですけれどね。人間では見つけるはまあこんなんでしょうな」
ドルは地面から何かを感じ取っているようだ。さすがはオートマタである。
いろいろ気になる点はあるものの、アインダードたちはソリエア王国の王都を目指して進んでいく。
途中で野生生物のみならず魔物にも襲われるアインダードたちだが、さすがにオートマタが二体もいればさして問題にもならなかった。アインダードの剣技はとんでもないし、オートマタの魔法による援護があれば大抵の魔物ですら赤子の手を捻るようなものである。
「まったく、街道でこの状態か。ソリエア王国の状態は相当に悪いようだな」
「よくこの状態で偵察隊を送り込めますね。治安維持はどうなっているのでしょうか」
あまりの状況に、アインダードもスーリガンも首を捻るばかりである。ドルとアエスも同じような考えのようだ。
「これは、少し急いだ方がいいかもしれないな。このまま何かあったとしてもソリエアの自業自得だが、我が国が何かしら巻き込まれてしまっては困るからな」
「そうですね。国境付近の状況を考えると、こちらに影響が出てもおかしくありませんからね」
道中の状況を重く見たアインダードとスーリガンは、ソリエア王国の王都へ向けて足早に進むのだった。
国境を越えてから5日が経過した。ようやくアインダードたちの目の前にはソリエア王国の王都が見えてきた。
途中で魔物や野生生物を倒してきた事もあって、特に問題も発生することなく到着できたのだ。
「ようやく見えてきたな。王都ソルドが」
目の前には立派な石壁と城を持つ城塞都市が見えてきた。これがソリエア王国の王都ソルドである。
位置的にはファルーダン王国のツェンの南側にあたり、かなり山がちな場所になる。
荒れ地の多いソリエア王国の中において、まるで砂漠のオアシスのように潤っているのが、このソルドという街の特徴なのだ。おかげで国家がもっているといっても過言ではないくらいである。
「他の国土の様子を見ていますと、ここだけ異質ですよね」
「まったくだ。少なくともファルーダン側の状況は悪すぎる。一気に持ち直した俺らへ同情でも誘うつもりだろうかな」
アインダードは脳筋ではあるものの、企みなどに対しては直感が働く。
「でしたら、他の場所も見てから向かわれた方がよろしいでしょうかね」
「かも知れないな。食料とかは大丈夫か?」
「問題ございません。アリスから教えてもらった乾燥食材の作り方のおかげで、保存食もばっちりでございます」
提言してきたドルに確認を取るアインダード。ドルは淡々と質問に答えていた。
「スーリガン、お前も大丈夫か?」
「このくらいは大丈夫です。私とてファルーダンの王子ですからね」
捻じ曲がったシュヴァリエの無茶振りに振り回されてきたスーリガンだ。アインダードの性格も理解しているのか、もうどうにでもなれの精神である。
そんなわけで、王都ソルドにはすぐには寄らず、他の場所も見て回ることになったのだった。
そんな事をするものだから、結局10日間以上の回り道をしてしまったアインダードたち。改めて王都ソルドの前に姿を見せた。
「うむ、やっぱり見て回って正解だったな。これで堂々とやつらと対面できるというものだ」
「そうですね。まったく、意外と頭の回る連中で困ったものです」
王都を眺めながら、アインダードとスーリガンは愚痴を漏らしている。
それというのも、回ったのは王都の北側から東側にかけてだけではあったものの、ファルーダンとの間の街道沿いとはまったく違った景色が広がっていたからだ。
打って変わっての肥沃な大地が広がり、国民たちの生活はそこそこ潤っていたのである。
「街道までだけを見ていれば、ころっと騙されるところでしたね」
「そうでございますね。主要目的は鉄道でしょうが、街道だけの状況では必要以上に援助を送り込むことになりかねませんでしたね」
スーリガンとアエスが淡々と話している。
「まったくだな。ギルソンは人がいいから、頭が回るとはいえ心配だ」
腕組みをしながら、数回頷くアインダード。
「とはいえ、今回は俺たちが交渉部隊だ。しっかりとあいつの役に立ってやろうではないか」
「分かりました、兄上」
アインダードが意気込むと、スーリガンたちも気合いを入れていた。
はたしてアインダードたちにまともな交渉ができるというのか心配ではあるものの、こうしてファルーダンとソリエアとの間の駆け引きが幕を開けることとなったのだった。
以前の飢饉に陥った時のファルーダン王国の国内の情景よりはマシだが、それでもかなりの範囲で荒野が広がる不毛な大地といった感じである。
「これは酷いな。以前にも来た事はあるが、その時はここまで酷くはなかったと思うんだが……」
アインダードですら言葉を失うような酷い有様だった。
「本当に酷いですね。それでも町や村がところどころにあるあたり、国として成り立ってはいるようですが」
スーリガンもどう評価していいか困っているようだ。
「近くに水脈のようなものはあるのですけれどね。人間では見つけるはまあこんなんでしょうな」
ドルは地面から何かを感じ取っているようだ。さすがはオートマタである。
いろいろ気になる点はあるものの、アインダードたちはソリエア王国の王都を目指して進んでいく。
途中で野生生物のみならず魔物にも襲われるアインダードたちだが、さすがにオートマタが二体もいればさして問題にもならなかった。アインダードの剣技はとんでもないし、オートマタの魔法による援護があれば大抵の魔物ですら赤子の手を捻るようなものである。
「まったく、街道でこの状態か。ソリエア王国の状態は相当に悪いようだな」
「よくこの状態で偵察隊を送り込めますね。治安維持はどうなっているのでしょうか」
あまりの状況に、アインダードもスーリガンも首を捻るばかりである。ドルとアエスも同じような考えのようだ。
「これは、少し急いだ方がいいかもしれないな。このまま何かあったとしてもソリエアの自業自得だが、我が国が何かしら巻き込まれてしまっては困るからな」
「そうですね。国境付近の状況を考えると、こちらに影響が出てもおかしくありませんからね」
道中の状況を重く見たアインダードとスーリガンは、ソリエア王国の王都へ向けて足早に進むのだった。
国境を越えてから5日が経過した。ようやくアインダードたちの目の前にはソリエア王国の王都が見えてきた。
途中で魔物や野生生物を倒してきた事もあって、特に問題も発生することなく到着できたのだ。
「ようやく見えてきたな。王都ソルドが」
目の前には立派な石壁と城を持つ城塞都市が見えてきた。これがソリエア王国の王都ソルドである。
位置的にはファルーダン王国のツェンの南側にあたり、かなり山がちな場所になる。
荒れ地の多いソリエア王国の中において、まるで砂漠のオアシスのように潤っているのが、このソルドという街の特徴なのだ。おかげで国家がもっているといっても過言ではないくらいである。
「他の国土の様子を見ていますと、ここだけ異質ですよね」
「まったくだ。少なくともファルーダン側の状況は悪すぎる。一気に持ち直した俺らへ同情でも誘うつもりだろうかな」
アインダードは脳筋ではあるものの、企みなどに対しては直感が働く。
「でしたら、他の場所も見てから向かわれた方がよろしいでしょうかね」
「かも知れないな。食料とかは大丈夫か?」
「問題ございません。アリスから教えてもらった乾燥食材の作り方のおかげで、保存食もばっちりでございます」
提言してきたドルに確認を取るアインダード。ドルは淡々と質問に答えていた。
「スーリガン、お前も大丈夫か?」
「このくらいは大丈夫です。私とてファルーダンの王子ですからね」
捻じ曲がったシュヴァリエの無茶振りに振り回されてきたスーリガンだ。アインダードの性格も理解しているのか、もうどうにでもなれの精神である。
そんなわけで、王都ソルドにはすぐには寄らず、他の場所も見て回ることになったのだった。
そんな事をするものだから、結局10日間以上の回り道をしてしまったアインダードたち。改めて王都ソルドの前に姿を見せた。
「うむ、やっぱり見て回って正解だったな。これで堂々とやつらと対面できるというものだ」
「そうですね。まったく、意外と頭の回る連中で困ったものです」
王都を眺めながら、アインダードとスーリガンは愚痴を漏らしている。
それというのも、回ったのは王都の北側から東側にかけてだけではあったものの、ファルーダンとの間の街道沿いとはまったく違った景色が広がっていたからだ。
打って変わっての肥沃な大地が広がり、国民たちの生活はそこそこ潤っていたのである。
「街道までだけを見ていれば、ころっと騙されるところでしたね」
「そうでございますね。主要目的は鉄道でしょうが、街道だけの状況では必要以上に援助を送り込むことになりかねませんでしたね」
スーリガンとアエスが淡々と話している。
「まったくだな。ギルソンは人がいいから、頭が回るとはいえ心配だ」
腕組みをしながら、数回頷くアインダード。
「とはいえ、今回は俺たちが交渉部隊だ。しっかりとあいつの役に立ってやろうではないか」
「分かりました、兄上」
アインダードが意気込むと、スーリガンたちも気合いを入れていた。
はたしてアインダードたちにまともな交渉ができるというのか心配ではあるものの、こうしてファルーダンとソリエアとの間の駆け引きが幕を開けることとなったのだった。
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