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Mission154
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ファルーダンの城では、ちょっとした話が持ち上がっていた。
「えっ、怪しい人物を見たって?」
ギルソンとアワードの二人が驚いた様子でアリスを見ている。
「はい。駅配属のオートマタたちからの連絡なのですが、明らかにファルーダンの者ではない人物がトライ駅あたりから乗降しているようです」
「それはどうやったら分かるんだ?」
同席しているイスヴァンから質問が飛んでくる。
確かにそういえばそうだ。ファルーダンだろうがマスカードだろうが、見た感じはまったく同じ人間である。他国の人間だからとして、すぐに見分けがつくわけがないだろう。
イスヴァンからの質問はそういうことである。
「オートマタを甘く見ないで頂きたいです、イスヴァン殿下」
アリスはおろか、アワードのオートマタであるフェール、それとフラムまでもが揃って口を突っ込んできた。
「お、お前ら、こういう時は息がぴったりだな……」
予想外のできごとにイスヴァンはびっくり仰天である。まさかフラムにまで言われるとは思っていなかった。
オートマタとして誕生からの期間が一番短いフラムも、本質としてその辺りはしっかり理解しているようである。
「オートマタというのはファルーダン産の魔法石を使用して動く自律人形である事はよろしいですか、マスター」
「あ、ああ。それは大丈夫だ」
フラムから確認をされて、イスヴァンは頷いている。
「まぁ俺はマスカード帝国の皇子であるマスターと主従関係を結んでいますけれど、本来魔法石というのはファルーダンの人間と相性がいいようになってるんですよ」
「……それがどうかしたのか?」
イスヴァンは分からないという反応を示している。
だが、ギルソンとアワードはその言葉で何かピンと来たようだった。
「そうか。魔法石を待つオートマタは、ファルーダン以外の人間に対して違和感を感じるようになっている。そういうわけですね、フラム」
「そういうことで間違いないですよ、ギルソン殿下」
偉そうな態度のまま、ギルソンの言葉を肯定するフラムである。
「つまり、アリスにされた報告ってのは、トライ駅からこっちに向かってくる連中に相性の良さを感じないファルーダン王国外のやつらがいて、そいつらが妙な動きを見せているってことだろう」
「ええ、そういうことでございます」
フラムの説明を肯定するアリスである。
ここまでの話を聞いて、ギルソンは実に渋い表情をしている。実は、このトライ駅というのが引っ掛かっているのである。
「どうなさったのですか、マイマスター」
「いえ、トライ駅は王都から馬車で三日の場所です。そこだと、ソリエア王国の国境の西端辺りだなと思いましてね」
「そういえばそうですね」
ギルソンの発言に、アワードも反応している。ギルソンの影響もあってか、アワードもしっかり勉強しているのがよく分かる。
ここまで思い当ってしまえば、そこからの推理は実にスムーズだった。
「なるほど、ソリエア王国はこっそり我が国に探りを入れていたというわけですね」
その事に気が付いたギルソンが、なんともいえない悪い顔をしている。それはそうだろう。探りを入れられるということは、信用されていないというわけである。その行動の最終的に行きつく先は、敵対なのである。
「となれば、先手を打って潰すのがよいのでは?」
フラムが提案している。すると、ギルソンは笑っている。
「昔のマスカードみたいに力をちらつかせていうのは、今のソリエア王国にとっては逆効果でしょう。懐柔するための餌でもちらつかせた方がいいですね」
にっこりと笑うギルソンである。酷い言われようだが、事実なのでイスヴァンは黙っている。ギルソンの影響か、すっかり落ち着いて構えられるようになっているようだ。
「ボクがいけば一番楽なのでしょうけれど、学園に通う身ではそうもいきません。国内に示すをつけるためにも、ボクは学業でも結果を出さなければなりませんからね」
ギルソンは本気で悩み始めた。外交関連はギルソンが担っている部分が大きくなっているためである。
だが、そこへ思わぬ人物が姿を見せた。
「おーっす、元気にしているか、ギルソン」
「アインダード兄様?!」
王家の長兄であるアインダードが突然乗り込んできたのだ。
「アインダード兄さん、なんでこんなところに」
アワードもびっくりした様子のようだ。
「なに、弟たちが困っている波動をひしひしと感じたのでな。ここは兄として頼りがいのあるところを発揮したいというわけだ。なあ、ドル」
「はい。マスター様は常に弟君方を心配なさっております。言葉に偽りはございません」
アインダードの言葉を肯定する男性型オートマタ。アインダードのオートマタであるドルである。
「てなわけだ。俺が暇だから、ソリエア王国へは俺が出向こう。心配ならお前の信頼する人物をつけてくれればいいぞ。がっはっはっはっ」
相変わらず豪快なアインダードである。
だが、そのさっぱりとした性格は、ちょっと混沌とし始めた空気の場にはちょうどよかった。
「分かりました。ソリエア王国の件はアインダード兄様にお任せしましょう」
ギルソンはアインダードの言葉を受け入れたのだった。
「えっ、怪しい人物を見たって?」
ギルソンとアワードの二人が驚いた様子でアリスを見ている。
「はい。駅配属のオートマタたちからの連絡なのですが、明らかにファルーダンの者ではない人物がトライ駅あたりから乗降しているようです」
「それはどうやったら分かるんだ?」
同席しているイスヴァンから質問が飛んでくる。
確かにそういえばそうだ。ファルーダンだろうがマスカードだろうが、見た感じはまったく同じ人間である。他国の人間だからとして、すぐに見分けがつくわけがないだろう。
イスヴァンからの質問はそういうことである。
「オートマタを甘く見ないで頂きたいです、イスヴァン殿下」
アリスはおろか、アワードのオートマタであるフェール、それとフラムまでもが揃って口を突っ込んできた。
「お、お前ら、こういう時は息がぴったりだな……」
予想外のできごとにイスヴァンはびっくり仰天である。まさかフラムにまで言われるとは思っていなかった。
オートマタとして誕生からの期間が一番短いフラムも、本質としてその辺りはしっかり理解しているようである。
「オートマタというのはファルーダン産の魔法石を使用して動く自律人形である事はよろしいですか、マスター」
「あ、ああ。それは大丈夫だ」
フラムから確認をされて、イスヴァンは頷いている。
「まぁ俺はマスカード帝国の皇子であるマスターと主従関係を結んでいますけれど、本来魔法石というのはファルーダンの人間と相性がいいようになってるんですよ」
「……それがどうかしたのか?」
イスヴァンは分からないという反応を示している。
だが、ギルソンとアワードはその言葉で何かピンと来たようだった。
「そうか。魔法石を待つオートマタは、ファルーダン以外の人間に対して違和感を感じるようになっている。そういうわけですね、フラム」
「そういうことで間違いないですよ、ギルソン殿下」
偉そうな態度のまま、ギルソンの言葉を肯定するフラムである。
「つまり、アリスにされた報告ってのは、トライ駅からこっちに向かってくる連中に相性の良さを感じないファルーダン王国外のやつらがいて、そいつらが妙な動きを見せているってことだろう」
「ええ、そういうことでございます」
フラムの説明を肯定するアリスである。
ここまでの話を聞いて、ギルソンは実に渋い表情をしている。実は、このトライ駅というのが引っ掛かっているのである。
「どうなさったのですか、マイマスター」
「いえ、トライ駅は王都から馬車で三日の場所です。そこだと、ソリエア王国の国境の西端辺りだなと思いましてね」
「そういえばそうですね」
ギルソンの発言に、アワードも反応している。ギルソンの影響もあってか、アワードもしっかり勉強しているのがよく分かる。
ここまで思い当ってしまえば、そこからの推理は実にスムーズだった。
「なるほど、ソリエア王国はこっそり我が国に探りを入れていたというわけですね」
その事に気が付いたギルソンが、なんともいえない悪い顔をしている。それはそうだろう。探りを入れられるということは、信用されていないというわけである。その行動の最終的に行きつく先は、敵対なのである。
「となれば、先手を打って潰すのがよいのでは?」
フラムが提案している。すると、ギルソンは笑っている。
「昔のマスカードみたいに力をちらつかせていうのは、今のソリエア王国にとっては逆効果でしょう。懐柔するための餌でもちらつかせた方がいいですね」
にっこりと笑うギルソンである。酷い言われようだが、事実なのでイスヴァンは黙っている。ギルソンの影響か、すっかり落ち着いて構えられるようになっているようだ。
「ボクがいけば一番楽なのでしょうけれど、学園に通う身ではそうもいきません。国内に示すをつけるためにも、ボクは学業でも結果を出さなければなりませんからね」
ギルソンは本気で悩み始めた。外交関連はギルソンが担っている部分が大きくなっているためである。
だが、そこへ思わぬ人物が姿を見せた。
「おーっす、元気にしているか、ギルソン」
「アインダード兄様?!」
王家の長兄であるアインダードが突然乗り込んできたのだ。
「アインダード兄さん、なんでこんなところに」
アワードもびっくりした様子のようだ。
「なに、弟たちが困っている波動をひしひしと感じたのでな。ここは兄として頼りがいのあるところを発揮したいというわけだ。なあ、ドル」
「はい。マスター様は常に弟君方を心配なさっております。言葉に偽りはございません」
アインダードの言葉を肯定する男性型オートマタ。アインダードのオートマタであるドルである。
「てなわけだ。俺が暇だから、ソリエア王国へは俺が出向こう。心配ならお前の信頼する人物をつけてくれればいいぞ。がっはっはっはっ」
相変わらず豪快なアインダードである。
だが、そのさっぱりとした性格は、ちょっと混沌とし始めた空気の場にはちょうどよかった。
「分かりました。ソリエア王国の件はアインダード兄様にお任せしましょう」
ギルソンはアインダードの言葉を受け入れたのだった。
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