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Mission153
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すべてが順調に見えたファルーダン王国の勢力拡大。
だが、それを思わしくない国があった。
それは、ファルーダンの南東に位置するソリエア王国。国土の四分の一は荒野というソリエア王国は、同じように土地の荒れやすいファルーダン王国とは仲間意識のようなものを持っていた。
表向きは仲良くしているものの、ここしばらくのファルーダン王国の発展を見て、一国だけ置いていかれているような状況である。二国間に広がる格差にますます苛立ちを募らせていた。
「くそっ、ファルーダン王国め。いつの間にあんなに豊かになったのだ」
ソリエア王国の大臣は、部屋の中の椅子を蹴り飛ばしている。
大きな音を立てて倒れる椅子を、大臣は息を荒げながら見つめている。
ソリエア王国の大臣がここまで荒れているのも理由があった。それは去年のうちにファルーダン王国から使いが来た事が発端となっていた。
その内容は、ファルーダン鉄道の延伸の打診だった。
そこではマスカード帝国と鉄路を結んだことに加えて、ソルティエ公国にも同じように鉄路を結ぶ打診を持ちかけていることが話されたのだ。
マスカード帝国は大国ゆえに仕方ないとはいえ、ソルティエ公国と同等もしくは格下に見られた事が、ソリエア王国のプライドを傷つけたようなのである。ファルーダン王国と仲がいいと思い込んでいたがための、勝手な思い込みである。
「我が国を放っておいて、ソルティエ公国に先に打診するとは……。まったく、どうしてくれようか」
大臣はいらいらとした様子で部屋の中をうろついている。
だが、ソルティエ公国との間で鉄道が既に開通していることは知らないようだった。なにせ、ファルーダン王国に使いを送っていないので、情報が滞っているどころか伝わっていないのである。
そこへバーンと扉が開いて誰かが入ってきた。
「大臣、ご報告です!」
「なんだ。慌てていようがちゃんと手順を踏め」
「はっ、申し訳ありませんでした!」
飛び込んできた兵士は、敬礼をして大臣に謝罪をしている。
叱責をした大臣だったが、兵士がちゃんと謝罪したことで強く咎めることなく報告を聞くことにした。
「それで、報告というのはなにかな」
「はっ、実はでございまして……」
兵士は一般人のふりをしてファルーダン王国に潜入してきた時に得た情報を、大臣へと報告している。その報告を聞いていた大臣はみるみる表情を青くしていった。
「それは本当なのか?」
「はっ、間違いありません。王都に滞在していた時にこの目ではっきりと目撃しました」
「ぐぬぬぬぬ……」
兵士から聞いた話に、大臣は体を震わせながら唸っている。
そして、先程蹴り倒した椅子を起こしながら、兵士に話し掛ける。
「陛下に報告する。お前もついて来い」
「はっ!」
大臣は兵士を連れて、国王の元へと向かったのだった。
「ご機嫌麗しゅうございます、陛下」
「うむ」
あっという間に国王の執務室までやって来た大臣と兵士である。
いくら報告のためとはいえ、一介の兵士であるがために、国王を前に足がすくんでしまう兵士。
だが、大臣はそんな事をお構いなしに国王へと報告を始める。
「陛下、執務中に失礼を致したことをお許し下さい。どうしても陛下の耳に入れておきたい事があるのでございます」
「ほう、申してみよ」
大臣の言葉に耳と眉をぴくりと反応させる国王。執務の手を止めて、大臣たちの方へと視線を向ける。
ソリエア国王の表情はとても穏やかだ。だが、その表情の奥にある威圧感というものはすさまじく、報告に来た兵士が完全に震え上がっている。
「これ、何をしている。陛下の御前だ、さっさと報告しろ」
「は、はっ!」
大臣に怒鳴られて、兵士はその場で小さく跳び上がっていた。ただの兵士に国王への直接の報告は荷が重すぎるのである。
しかし、大臣に尻を引っ叩かれては、兵士は自分で報告を行わざるを得なくなってしまった。
おどおどとする兵士ではあるものの、これ以上国王を待たせるわけにはいかないので報告を始めることにした。
兵士はファルーダン王国の中で見てきた事を長々と国王に説明している。
長々となるのは仕方がない。結構長い期間、ファルーダン王国の中に潜伏していたのだから。
その報告に、国王は驚愕の表情を浮かべていた。
「なんと……。ソルティエ公国が公子たちをファルーダンに滞在させているだと?!」
「はい。王都の駅で確認しましたが、列車に乗ってちょうど降りてくるところを見ております。その後も監視しておりましたところ、どうやらファルーダン王国の学園に通っているようなのです」
外部との情報を遮断していたとはいえ、思いもよらぬ報告に国王は震えが止まらなかった。
「ぐぬぅ、他国にこれ以上の後れを取ってなるものか。大臣、すぐさまファルーダンに鉄道の打診をしろ」
「はっ!」
「それと、ひっそりと攻め込む準備もしておけ。我が国に見向きもしなかったことを後悔させてやるのだ」
「承知致しました、陛下」
国王の命令に返事をすると、大臣と兵士は執務室を出ていく。
こうして、ギルソンたちのあずかり知らぬところで、不穏な事態がまた動き出したのだった。
だが、それを思わしくない国があった。
それは、ファルーダンの南東に位置するソリエア王国。国土の四分の一は荒野というソリエア王国は、同じように土地の荒れやすいファルーダン王国とは仲間意識のようなものを持っていた。
表向きは仲良くしているものの、ここしばらくのファルーダン王国の発展を見て、一国だけ置いていかれているような状況である。二国間に広がる格差にますます苛立ちを募らせていた。
「くそっ、ファルーダン王国め。いつの間にあんなに豊かになったのだ」
ソリエア王国の大臣は、部屋の中の椅子を蹴り飛ばしている。
大きな音を立てて倒れる椅子を、大臣は息を荒げながら見つめている。
ソリエア王国の大臣がここまで荒れているのも理由があった。それは去年のうちにファルーダン王国から使いが来た事が発端となっていた。
その内容は、ファルーダン鉄道の延伸の打診だった。
そこではマスカード帝国と鉄路を結んだことに加えて、ソルティエ公国にも同じように鉄路を結ぶ打診を持ちかけていることが話されたのだ。
マスカード帝国は大国ゆえに仕方ないとはいえ、ソルティエ公国と同等もしくは格下に見られた事が、ソリエア王国のプライドを傷つけたようなのである。ファルーダン王国と仲がいいと思い込んでいたがための、勝手な思い込みである。
「我が国を放っておいて、ソルティエ公国に先に打診するとは……。まったく、どうしてくれようか」
大臣はいらいらとした様子で部屋の中をうろついている。
だが、ソルティエ公国との間で鉄道が既に開通していることは知らないようだった。なにせ、ファルーダン王国に使いを送っていないので、情報が滞っているどころか伝わっていないのである。
そこへバーンと扉が開いて誰かが入ってきた。
「大臣、ご報告です!」
「なんだ。慌てていようがちゃんと手順を踏め」
「はっ、申し訳ありませんでした!」
飛び込んできた兵士は、敬礼をして大臣に謝罪をしている。
叱責をした大臣だったが、兵士がちゃんと謝罪したことで強く咎めることなく報告を聞くことにした。
「それで、報告というのはなにかな」
「はっ、実はでございまして……」
兵士は一般人のふりをしてファルーダン王国に潜入してきた時に得た情報を、大臣へと報告している。その報告を聞いていた大臣はみるみる表情を青くしていった。
「それは本当なのか?」
「はっ、間違いありません。王都に滞在していた時にこの目ではっきりと目撃しました」
「ぐぬぬぬぬ……」
兵士から聞いた話に、大臣は体を震わせながら唸っている。
そして、先程蹴り倒した椅子を起こしながら、兵士に話し掛ける。
「陛下に報告する。お前もついて来い」
「はっ!」
大臣は兵士を連れて、国王の元へと向かったのだった。
「ご機嫌麗しゅうございます、陛下」
「うむ」
あっという間に国王の執務室までやって来た大臣と兵士である。
いくら報告のためとはいえ、一介の兵士であるがために、国王を前に足がすくんでしまう兵士。
だが、大臣はそんな事をお構いなしに国王へと報告を始める。
「陛下、執務中に失礼を致したことをお許し下さい。どうしても陛下の耳に入れておきたい事があるのでございます」
「ほう、申してみよ」
大臣の言葉に耳と眉をぴくりと反応させる国王。執務の手を止めて、大臣たちの方へと視線を向ける。
ソリエア国王の表情はとても穏やかだ。だが、その表情の奥にある威圧感というものはすさまじく、報告に来た兵士が完全に震え上がっている。
「これ、何をしている。陛下の御前だ、さっさと報告しろ」
「は、はっ!」
大臣に怒鳴られて、兵士はその場で小さく跳び上がっていた。ただの兵士に国王への直接の報告は荷が重すぎるのである。
しかし、大臣に尻を引っ叩かれては、兵士は自分で報告を行わざるを得なくなってしまった。
おどおどとする兵士ではあるものの、これ以上国王を待たせるわけにはいかないので報告を始めることにした。
兵士はファルーダン王国の中で見てきた事を長々と国王に説明している。
長々となるのは仕方がない。結構長い期間、ファルーダン王国の中に潜伏していたのだから。
その報告に、国王は驚愕の表情を浮かべていた。
「なんと……。ソルティエ公国が公子たちをファルーダンに滞在させているだと?!」
「はい。王都の駅で確認しましたが、列車に乗ってちょうど降りてくるところを見ております。その後も監視しておりましたところ、どうやらファルーダン王国の学園に通っているようなのです」
外部との情報を遮断していたとはいえ、思いもよらぬ報告に国王は震えが止まらなかった。
「ぐぬぅ、他国にこれ以上の後れを取ってなるものか。大臣、すぐさまファルーダンに鉄道の打診をしろ」
「はっ!」
「それと、ひっそりと攻め込む準備もしておけ。我が国に見向きもしなかったことを後悔させてやるのだ」
「承知致しました、陛下」
国王の命令に返事をすると、大臣と兵士は執務室を出ていく。
こうして、ギルソンたちのあずかり知らぬところで、不穏な事態がまた動き出したのだった。
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