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Mission151
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翌日、学園にやって来たマリカ。
すると、昨日お茶会に誘ってきた令嬢たちが目の前に現れて、ずかずかと近付いてくる。ちょうどイスヴァンとギルソンもいたので、二人はマリカを守るように前に立ちふさがる。
ところが、その令嬢たちはマリカに向かって頭を下げてきた。
「本当に申し訳ありませんでしたわ」
急な謝罪に目が点になるマリカたちである。
「本来でしたらお茶会の時に謝罪しておくべきでしたでしょうが、あえて恥を忍んで学園でさせて頂くことにしましたの」
頭を下げたまま言い訳をしている令嬢である。周りの学生たちは何事かと騒いでいる。
それにしても、この令嬢はなかなか覚悟を決めたようだ。このように大勢の目の前で謝罪をする事など、普通ならば恥として忌み嫌う行動だからだ。それをあえてしているということは、令嬢の反省が本物であり、本気だということなのだ。
「頭を上げて下さい。さすがに廊下の真ん中では邪魔になってしまいます」
ギルソンが令嬢に声を掛けるが、令嬢はまったく動かなかった。
「いえ、殿下のお言葉であっても私は頭を上げません。これは私の覚悟ですわ」
ギルソンとイスヴァンが思わず顔を見合わせてしまう。そして、マリカへと視線を向けた。
「本当に申し訳ございませんでしたわ。身分にばかり目が行って、あなたの功績にまったく見向きできなかった私が恥ずかしいですわ」
令嬢はマリカに対して謝罪を続けている。さすがに、そろそろ騒ぎが大きくなってきてしまって、マリカはどうしたものかとおろおろし始めた。
「まあ、分かってくれたならいい。事が起こる前だったから、ボクたちとしては不問にしておこうとは思う。マリカはどうする?」
騒ぎが大きくなってきたので、ギルソンは事態の収拾を図ろうとしている。なので、自分の見解を述べたところでマリカに話を振った。
ギルソンから話を振られて、体を一瞬跳ねさせるマリカ。しかし、ギルソンが話をしやすくしてくれたおかげか、少し落ち着いたようだった。
「しゃ、謝罪頂けたのであれば、私は問題にするつもりはありません。どうか頭をお上げ下さい」
頭を下げ続ける令嬢に対して、マリカは許す判断をしたようだった。
それを聞いて、ようやく令嬢たちは頭を上げた。
「ありがとう存じますわ。何かお困りのことがございましたら、私たちも相談に乗りましてよ」
顔を上げた令嬢は胸に手を当てながらドヤ顔を決めて話している。本当に反省したのかよく分からない態度である。あまりの態度に、ギルソンもイスヴァンも呆れる始末である。
しかし、マリカは別の印象を持ったようで、嬉しそうに笑っていた。
騎士爵の娘ということで、近所の子どもたちや孤児院の事たちくらいしか友だちがいなかったのだ。貴族の友だちができたと喜んでいるわけである。
その姿に、ギルソンとイスヴァンは思わずため息をついてしまう。
「まぁ、何かあったら俺たちに相談しろよ」
「うん、そうだね。マリカはちょっと人を疑わないところがあるからね。外ではできる限りジャスミンと一緒に行動をするんだよ」
「承知致しました、ギルソン殿下、イスヴァン殿下」
マリカは頭を下げて返事をする。
「あんな事をした手前、信じて頂けないのは承知の上ですわ。ですので、せめてものお近づきに自己紹介を致しますわね」
令嬢が一歩マリカに近付く。
「私、メリハナ・カステーンと申しますわ。父は伯爵ですのよ」
自己紹介をするメリハナ。さすが伯爵令嬢というだけあって、所作はかなりきれいだった。
「私の家の領地はトライ駅から近いですので、よく利用させて頂いておりますわ。まさかあなたがあの鉄道事業の功労者だなんて思いませんでしたわ」
「いえ、私はオートマタを作っただけですから、それほどでも」
メリハナの発言につい照れてしまうマリカである。
「まあ、オートマタを作れますの?」
「すごいですわ。どうやって作ってらっしゃるのかしら」
オートマタを作っているという発言を聞いて、メリハナの取り巻きの令嬢だけではなく、周りからも人が殺到してくる。どうやら、マリカが考えていた以上にとんでもないことのようである。
それというのも、冷静に考えれば当然だと思われる。なにせ、ファルーダン王国に置いてオートマタは生活に密着しているし、かけがえのないパートナーなのだ。
つまり、オートマタ職人というのは、国家における重要な立ち位置にいるのである。だというのに、工房の様子を見る限りは労働環境はよろしくなさそうだ。大体は魔法石が取り扱い注意なせいである。
それはそれとして、マリカの周りに人が殺到する状況となってしまい、ギルソンとイスヴァンが慌てて間に入る事態となった。
「すまないが、あまり彼女に負担をかけないでくれ」
「まったくだな。お前たちはレディの扱い方というものを学んでもらいたいものだな」
さすがに王子二人に間に入られてしまっては、学生たちはこれ以上騒ぐわけにはいかなかった。マリカもかなり怯えてしまっている。
ひとまずこの場はギルソンとイスヴァンの手によって収拾はつけられたものの、これからのマリカの周りは騒がしくなりそうだった。
すると、昨日お茶会に誘ってきた令嬢たちが目の前に現れて、ずかずかと近付いてくる。ちょうどイスヴァンとギルソンもいたので、二人はマリカを守るように前に立ちふさがる。
ところが、その令嬢たちはマリカに向かって頭を下げてきた。
「本当に申し訳ありませんでしたわ」
急な謝罪に目が点になるマリカたちである。
「本来でしたらお茶会の時に謝罪しておくべきでしたでしょうが、あえて恥を忍んで学園でさせて頂くことにしましたの」
頭を下げたまま言い訳をしている令嬢である。周りの学生たちは何事かと騒いでいる。
それにしても、この令嬢はなかなか覚悟を決めたようだ。このように大勢の目の前で謝罪をする事など、普通ならば恥として忌み嫌う行動だからだ。それをあえてしているということは、令嬢の反省が本物であり、本気だということなのだ。
「頭を上げて下さい。さすがに廊下の真ん中では邪魔になってしまいます」
ギルソンが令嬢に声を掛けるが、令嬢はまったく動かなかった。
「いえ、殿下のお言葉であっても私は頭を上げません。これは私の覚悟ですわ」
ギルソンとイスヴァンが思わず顔を見合わせてしまう。そして、マリカへと視線を向けた。
「本当に申し訳ございませんでしたわ。身分にばかり目が行って、あなたの功績にまったく見向きできなかった私が恥ずかしいですわ」
令嬢はマリカに対して謝罪を続けている。さすがに、そろそろ騒ぎが大きくなってきてしまって、マリカはどうしたものかとおろおろし始めた。
「まあ、分かってくれたならいい。事が起こる前だったから、ボクたちとしては不問にしておこうとは思う。マリカはどうする?」
騒ぎが大きくなってきたので、ギルソンは事態の収拾を図ろうとしている。なので、自分の見解を述べたところでマリカに話を振った。
ギルソンから話を振られて、体を一瞬跳ねさせるマリカ。しかし、ギルソンが話をしやすくしてくれたおかげか、少し落ち着いたようだった。
「しゃ、謝罪頂けたのであれば、私は問題にするつもりはありません。どうか頭をお上げ下さい」
頭を下げ続ける令嬢に対して、マリカは許す判断をしたようだった。
それを聞いて、ようやく令嬢たちは頭を上げた。
「ありがとう存じますわ。何かお困りのことがございましたら、私たちも相談に乗りましてよ」
顔を上げた令嬢は胸に手を当てながらドヤ顔を決めて話している。本当に反省したのかよく分からない態度である。あまりの態度に、ギルソンもイスヴァンも呆れる始末である。
しかし、マリカは別の印象を持ったようで、嬉しそうに笑っていた。
騎士爵の娘ということで、近所の子どもたちや孤児院の事たちくらいしか友だちがいなかったのだ。貴族の友だちができたと喜んでいるわけである。
その姿に、ギルソンとイスヴァンは思わずため息をついてしまう。
「まぁ、何かあったら俺たちに相談しろよ」
「うん、そうだね。マリカはちょっと人を疑わないところがあるからね。外ではできる限りジャスミンと一緒に行動をするんだよ」
「承知致しました、ギルソン殿下、イスヴァン殿下」
マリカは頭を下げて返事をする。
「あんな事をした手前、信じて頂けないのは承知の上ですわ。ですので、せめてものお近づきに自己紹介を致しますわね」
令嬢が一歩マリカに近付く。
「私、メリハナ・カステーンと申しますわ。父は伯爵ですのよ」
自己紹介をするメリハナ。さすが伯爵令嬢というだけあって、所作はかなりきれいだった。
「私の家の領地はトライ駅から近いですので、よく利用させて頂いておりますわ。まさかあなたがあの鉄道事業の功労者だなんて思いませんでしたわ」
「いえ、私はオートマタを作っただけですから、それほどでも」
メリハナの発言につい照れてしまうマリカである。
「まあ、オートマタを作れますの?」
「すごいですわ。どうやって作ってらっしゃるのかしら」
オートマタを作っているという発言を聞いて、メリハナの取り巻きの令嬢だけではなく、周りからも人が殺到してくる。どうやら、マリカが考えていた以上にとんでもないことのようである。
それというのも、冷静に考えれば当然だと思われる。なにせ、ファルーダン王国に置いてオートマタは生活に密着しているし、かけがえのないパートナーなのだ。
つまり、オートマタ職人というのは、国家における重要な立ち位置にいるのである。だというのに、工房の様子を見る限りは労働環境はよろしくなさそうだ。大体は魔法石が取り扱い注意なせいである。
それはそれとして、マリカの周りに人が殺到する状況となってしまい、ギルソンとイスヴァンが慌てて間に入る事態となった。
「すまないが、あまり彼女に負担をかけないでくれ」
「まったくだな。お前たちはレディの扱い方というものを学んでもらいたいものだな」
さすがに王子二人に間に入られてしまっては、学生たちはこれ以上騒ぐわけにはいかなかった。マリカもかなり怯えてしまっている。
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