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Mission147
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ファルーダン鉄道は眠らない。
王都と各地を結ぶ列車は絶えず運行されている。車両の数が多くないので6時間くらいに1本というペースではあるものの、そこそこの利用者が居るようである。
オートマタはひと駅に2体、1編成に2体という体制で配備されている。
鉄道に従事するオートマタはすべてアリスの配下についており、それぞれ魔法石を通じて連絡を取り合う事ができる。
マスターたるアリスとは当然だが、意識をすれば配下のオートマタ同士でも連絡が可能なので、何かあった時の対処は素早くできるようになっている。
そんなファルーダン鉄道の設備に、アリスが作った人工ダイヤモンドによる照明が取り付けられた。
現状では王都から鉱山都市ツェンまでの10駅だけではあるが、これでいちいちろうそくなどで明かりを取らなくてもいいというわけだ。
もちろん、オートマタたちは魔法が使えるので、本来であればそのような道具も必要ない。だが、今回は実験ということで駅員として働くオートマタたちはアリスの依頼を引き受けていた。
「これがマスターの送られてきた新しい照明器具ですか」
「火も魔力も使わなくていいというのはいいですね。駅舎は木造家屋ですから、火を使った照明というのは危険でしたからね」
こう話すのは、王都からほど近いツヴァイ駅で働くオートマタたちである。
王都から近いために、今回の試作品を王都駅に続いて2番目に送られたため、いち早く試作品を使用しているのである。
オートマタ二人からの評判はいいようであるが、基本的に真面目なオートマタたちはアリスに頼まれた用件も忘れていない。
「ずっと点けっぱなしにどのくらいもつのかという話でしたね」
「点けたり消したりを繰り返すとそれだけ魔力を消耗しますからね。何もしない状態でどれだけ使えるかということを確認されたいのだと思います」
「そっか、魔法石とは違いますものね。人工的に作った宝石を使っているから、分からない事だらけですものね」
さすがはアリスとマリカで生み出したオートマタたちである。あっという間にアリスの意図を汲み取っていた。
「それと、もし無くなった時に魔力を再注入できるか。その場合はちゃんと再度使えるのかということもチェックポイントでしたね」
「これはなかなかに大変ですね」
「ええ。ですが、マスターの指示ですからちゃんと遂行しませんと」
駅員であるオートマタたちのやる気は十分である。
「おっと、そろそろ王都行きの列車が入線する頃ですね。ここは任せましたよ、ツヴァイツ」
「ええ。乗客対応、よろしくお願いしますね、アンツヴァイ」
お互いの仕事に戻るオートマタたちである。
駅の名前に「1」「2」をくっつけただけの安直な名前だが、どこの駅にのオートマタか非常に分かりやすい。
今日も元気に働くオートマタたちなのであった。
ファルーダン鉄道は眠らない。
夜行列車も運転されているので、駅は24時間営業である。
駅の従業員も地元で雇ってあるが、真夜中はオートマタだけで対応している。人間は寝なければならないが、オートマタであればその必要はないからだ。
真夜中に到着した客のために、駅には宿も併設してある。ある時間以降になると、駅の中はオートマタの魔法によって閉鎖空間となるようになっている。そうなると駅の外には出られないので、宿を併設してあるのだ。
オートマタには人間たちを守る役割もあるので、街の治安を守るための仕方ない措置なのである。
「さすがに夜中は誰も来ませんね」
「この時間は人間は寝ていますからね。こんな時間に来て列車に乗りに来るような人はほとんどいませんよ」
ただ、駅にやって来る人間は稀にいる。なので、彼らが来た時には入れるように一時的に魔法に穴を開けるのである。
「それにしても、この魔道具かなり明るいですね」
ツヴァイツが天井に設置された照明器具を見ながら感想を漏らしている。
アリスによって実験的に届けられた照明器具は、各駅に箇所に設置されている。
一つはオートマタが詰める駅員室。もう一つは駅のホームである。ホームは段差があるので、明るくしていないとホームから転落する事故がどうしても起きてしまうからだ。
「ええ、そうですね。おかげで魔法を使わなくてもホームのチェックもできます。実に素晴らしいものを与えて下さいましたよ、マスターは」
アンツヴァイも満足しているようである。
「それにしても、この魔法石の代替石、結構きれいですね」
「マスターの話では宝石のダイヤモンドと呼ばれるものを、魔法で作り出したそうですよ」
「はえー……。そんな宝石を魔法で作り出してしまうなんて、マスターってばすごいですね」
「まったくです。そんな素晴らしいマスターのためにも、この照明器具を使った実験をしっかりと報告しませんとね」
アンツヴァイは天井へと目を向ける。そこでは間接照明の明かりが眩しいくらいに光り輝いていた。
いずれはこういった景色が普通になるのかもしれない。アンツヴァイは自分のマスターの素晴らしさに感動すると同時に、底知れなさに恐ろしさを感じたのであった。
王都と各地を結ぶ列車は絶えず運行されている。車両の数が多くないので6時間くらいに1本というペースではあるものの、そこそこの利用者が居るようである。
オートマタはひと駅に2体、1編成に2体という体制で配備されている。
鉄道に従事するオートマタはすべてアリスの配下についており、それぞれ魔法石を通じて連絡を取り合う事ができる。
マスターたるアリスとは当然だが、意識をすれば配下のオートマタ同士でも連絡が可能なので、何かあった時の対処は素早くできるようになっている。
そんなファルーダン鉄道の設備に、アリスが作った人工ダイヤモンドによる照明が取り付けられた。
現状では王都から鉱山都市ツェンまでの10駅だけではあるが、これでいちいちろうそくなどで明かりを取らなくてもいいというわけだ。
もちろん、オートマタたちは魔法が使えるので、本来であればそのような道具も必要ない。だが、今回は実験ということで駅員として働くオートマタたちはアリスの依頼を引き受けていた。
「これがマスターの送られてきた新しい照明器具ですか」
「火も魔力も使わなくていいというのはいいですね。駅舎は木造家屋ですから、火を使った照明というのは危険でしたからね」
こう話すのは、王都からほど近いツヴァイ駅で働くオートマタたちである。
王都から近いために、今回の試作品を王都駅に続いて2番目に送られたため、いち早く試作品を使用しているのである。
オートマタ二人からの評判はいいようであるが、基本的に真面目なオートマタたちはアリスに頼まれた用件も忘れていない。
「ずっと点けっぱなしにどのくらいもつのかという話でしたね」
「点けたり消したりを繰り返すとそれだけ魔力を消耗しますからね。何もしない状態でどれだけ使えるかということを確認されたいのだと思います」
「そっか、魔法石とは違いますものね。人工的に作った宝石を使っているから、分からない事だらけですものね」
さすがはアリスとマリカで生み出したオートマタたちである。あっという間にアリスの意図を汲み取っていた。
「それと、もし無くなった時に魔力を再注入できるか。その場合はちゃんと再度使えるのかということもチェックポイントでしたね」
「これはなかなかに大変ですね」
「ええ。ですが、マスターの指示ですからちゃんと遂行しませんと」
駅員であるオートマタたちのやる気は十分である。
「おっと、そろそろ王都行きの列車が入線する頃ですね。ここは任せましたよ、ツヴァイツ」
「ええ。乗客対応、よろしくお願いしますね、アンツヴァイ」
お互いの仕事に戻るオートマタたちである。
駅の名前に「1」「2」をくっつけただけの安直な名前だが、どこの駅にのオートマタか非常に分かりやすい。
今日も元気に働くオートマタたちなのであった。
ファルーダン鉄道は眠らない。
夜行列車も運転されているので、駅は24時間営業である。
駅の従業員も地元で雇ってあるが、真夜中はオートマタだけで対応している。人間は寝なければならないが、オートマタであればその必要はないからだ。
真夜中に到着した客のために、駅には宿も併設してある。ある時間以降になると、駅の中はオートマタの魔法によって閉鎖空間となるようになっている。そうなると駅の外には出られないので、宿を併設してあるのだ。
オートマタには人間たちを守る役割もあるので、街の治安を守るための仕方ない措置なのである。
「さすがに夜中は誰も来ませんね」
「この時間は人間は寝ていますからね。こんな時間に来て列車に乗りに来るような人はほとんどいませんよ」
ただ、駅にやって来る人間は稀にいる。なので、彼らが来た時には入れるように一時的に魔法に穴を開けるのである。
「それにしても、この魔道具かなり明るいですね」
ツヴァイツが天井に設置された照明器具を見ながら感想を漏らしている。
アリスによって実験的に届けられた照明器具は、各駅に箇所に設置されている。
一つはオートマタが詰める駅員室。もう一つは駅のホームである。ホームは段差があるので、明るくしていないとホームから転落する事故がどうしても起きてしまうからだ。
「ええ、そうですね。おかげで魔法を使わなくてもホームのチェックもできます。実に素晴らしいものを与えて下さいましたよ、マスターは」
アンツヴァイも満足しているようである。
「それにしても、この魔法石の代替石、結構きれいですね」
「マスターの話では宝石のダイヤモンドと呼ばれるものを、魔法で作り出したそうですよ」
「はえー……。そんな宝石を魔法で作り出してしまうなんて、マスターってばすごいですね」
「まったくです。そんな素晴らしいマスターのためにも、この照明器具を使った実験をしっかりと報告しませんとね」
アンツヴァイは天井へと目を向ける。そこでは間接照明の明かりが眩しいくらいに光り輝いていた。
いずれはこういった景色が普通になるのかもしれない。アンツヴァイは自分のマスターの素晴らしさに感動すると同時に、底知れなさに恐ろしさを感じたのであった。
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