145 / 189
Mission144
しおりを挟む
ようやくギルソンたちが帰ってきたので、人工ダイヤモンドを使った魔法の実験を行うことにする。
とはいっても、この世界で魔法が使えるのはオートマタたちだけだ。ギルソンたちと行う相談は、もちろんどのようなものが必要かという、実験の方向性を問うものなのである。
なんでも魔法で解決が図れるオートマタと違って、人間たちは自分たちの能力だけで事を成さねばならない。それゆえにどんな悩みがあるかというのは、実験を行う上で重要なのである。
「ただいま戻りました。なんでしょうか話というのは」
ギルソンはにこやかな表情を浮かべながら、アリスへと質問を投げかける。それに対して、アリスは正直に答える。
「なるほど……。ボクが与えられた課題への答えとして、次の段階に進みたいというわけですね」
さすがは頭の観点の良いギルソンだ。少し話をしただけで完璧に理解してくれる。これが元の小説では中ボス設定だったのだから、恐ろしい話だ。
ギルソンは部屋の中に置かれたダイヤモンドの入った木箱を見る。その中身を見て、思わず顔をしかめてしまうギルソンだ。
「ちょっと、これは多すぎませんかね……。アリス、頑張り過ぎなのでは?」
「マイマスターのためでしたら、このくらい惜しくありません」
ギルソンの言葉に淡々と返すアリスである。
アリスの言葉に苦笑いを浮かべたギルソンは、再び大量のダイヤモンドへと目を移す。これらを使ってどうするのか、ギルソンは必死に考え始めたのだ。
これらのダイヤモンドを使うのはいいが、その目的は魔法石の代替。魔法石を使うということは、魔法が必要である。つまりは、オートマタが存在しているというのが前提となる。
ダイヤモンドを魔法石の代替としても、オートマタがいない環境では役に立たないというのが、最大の問題点なのだ。
「魔法石代わりといっても、やはりオートマタが居ないといけないですからね。となると、オートマタが常に存在している場所で使うのが一番でしょうね」
ダイヤモンドを手に取りながら、ギルソンはそのように話している。するするとアイディアが出てくるあたり、やはりギルソンはただ者ではないのである。
「となると、どのような場所での利用となりましょうか」
「一つはそうだね。仕える主の個室でしょうかね。寝るまではそばにいることが多いのですから、照明の管理はオートマタの仕事になっていますから」
アリスが問い掛けると、すぐに答えが返ってくる。これにはアワードとフェールも驚いていた。
「それと、オートマタが常駐している場所といえば、駅でしょうかね」
「なるほど、それは思いつきませんでしたね」
ギルソンから次々アイディアが出てくるものだから、アリスは正直驚いていた。本当に頭の回転がいいのである。
こんな人物を殺される展開にした担当に、今さらながらにふつふつとした感情が湧いてくるアリスである。
「……アリス?」
その感情を読み取られたのか、ギルソンに顔を覗き込まれるアリス。それに気が付いて、はっと我に返っていた。
「失礼致しました、マイマスター。あまりにマイマスターが聡明ゆえに、感服してしまいました」
正直に話すアリスに、ついおかしくて笑ってしまうギルソンだった。
「まったく、アリスは面白いことを言いますね」
「いえ、私は正直に申し上げた次第でございます」
まるで漫才のようなやり取りである。これがお互いの信頼が厚い者同士の会話なのだろう。
「ひとまず、ダイヤモンドによる魔法の実験は、部屋の明かり取りで行うという話でいいのかな」
「今の流れだとそういう感じございますね」
アワードとフェールが顔を見合わせている。
「ええ、それで間違いありませんよ」
ギルソンはにこりと微笑んでいる。そして、アリスへと再び視線を向ける。
「ダイヤモンドを各駅に分配して下さい。一度魔法を込めればどのくらいの時間使えるのか。そして、魔力が尽きても再利用できるのか。その2点をチェックするように伝えて下さい」
「承知致しました。では、早速行ってまいりましょうか?」
「ええ、こういう事は少しでも早い方がいいですからね」
「畏まりました」
アリスは返事をすると、ダイヤモンドの木箱を抱えて出ていこうとする。だが、ギルソンが思い出したかのようにアリスを止める。
「ああ、そうだ。僕とアワード兄様の照明用に10個ほど置いていって下さいませんか」
ギルソンが呼び止めると、アリスは言われた通りの数のダイヤモンドを手渡していく。
「それでは行ってまいります」
それが終わると、改めて駅にダイヤモンドを配置するために出かけていったのだった。
ギルソンは笑顔でアリスを見送ると、アワードたちへと視線を向ける。
「さて、ここからが本番ですね。これで魔法石の消費が抑えられれば、一歩前進といったところですよ」
この時の笑顔に、アワードとフェールはちょっとした恐怖を感じてしまった。
はてさて、いよいよダイヤモンドを使った実用化実験が始まったのだが、思うような結果が得られるのだろうか。緊張の日々が始まったのである。
とはいっても、この世界で魔法が使えるのはオートマタたちだけだ。ギルソンたちと行う相談は、もちろんどのようなものが必要かという、実験の方向性を問うものなのである。
なんでも魔法で解決が図れるオートマタと違って、人間たちは自分たちの能力だけで事を成さねばならない。それゆえにどんな悩みがあるかというのは、実験を行う上で重要なのである。
「ただいま戻りました。なんでしょうか話というのは」
ギルソンはにこやかな表情を浮かべながら、アリスへと質問を投げかける。それに対して、アリスは正直に答える。
「なるほど……。ボクが与えられた課題への答えとして、次の段階に進みたいというわけですね」
さすがは頭の観点の良いギルソンだ。少し話をしただけで完璧に理解してくれる。これが元の小説では中ボス設定だったのだから、恐ろしい話だ。
ギルソンは部屋の中に置かれたダイヤモンドの入った木箱を見る。その中身を見て、思わず顔をしかめてしまうギルソンだ。
「ちょっと、これは多すぎませんかね……。アリス、頑張り過ぎなのでは?」
「マイマスターのためでしたら、このくらい惜しくありません」
ギルソンの言葉に淡々と返すアリスである。
アリスの言葉に苦笑いを浮かべたギルソンは、再び大量のダイヤモンドへと目を移す。これらを使ってどうするのか、ギルソンは必死に考え始めたのだ。
これらのダイヤモンドを使うのはいいが、その目的は魔法石の代替。魔法石を使うということは、魔法が必要である。つまりは、オートマタが存在しているというのが前提となる。
ダイヤモンドを魔法石の代替としても、オートマタがいない環境では役に立たないというのが、最大の問題点なのだ。
「魔法石代わりといっても、やはりオートマタが居ないといけないですからね。となると、オートマタが常に存在している場所で使うのが一番でしょうね」
ダイヤモンドを手に取りながら、ギルソンはそのように話している。するするとアイディアが出てくるあたり、やはりギルソンはただ者ではないのである。
「となると、どのような場所での利用となりましょうか」
「一つはそうだね。仕える主の個室でしょうかね。寝るまではそばにいることが多いのですから、照明の管理はオートマタの仕事になっていますから」
アリスが問い掛けると、すぐに答えが返ってくる。これにはアワードとフェールも驚いていた。
「それと、オートマタが常駐している場所といえば、駅でしょうかね」
「なるほど、それは思いつきませんでしたね」
ギルソンから次々アイディアが出てくるものだから、アリスは正直驚いていた。本当に頭の回転がいいのである。
こんな人物を殺される展開にした担当に、今さらながらにふつふつとした感情が湧いてくるアリスである。
「……アリス?」
その感情を読み取られたのか、ギルソンに顔を覗き込まれるアリス。それに気が付いて、はっと我に返っていた。
「失礼致しました、マイマスター。あまりにマイマスターが聡明ゆえに、感服してしまいました」
正直に話すアリスに、ついおかしくて笑ってしまうギルソンだった。
「まったく、アリスは面白いことを言いますね」
「いえ、私は正直に申し上げた次第でございます」
まるで漫才のようなやり取りである。これがお互いの信頼が厚い者同士の会話なのだろう。
「ひとまず、ダイヤモンドによる魔法の実験は、部屋の明かり取りで行うという話でいいのかな」
「今の流れだとそういう感じございますね」
アワードとフェールが顔を見合わせている。
「ええ、それで間違いありませんよ」
ギルソンはにこりと微笑んでいる。そして、アリスへと再び視線を向ける。
「ダイヤモンドを各駅に分配して下さい。一度魔法を込めればどのくらいの時間使えるのか。そして、魔力が尽きても再利用できるのか。その2点をチェックするように伝えて下さい」
「承知致しました。では、早速行ってまいりましょうか?」
「ええ、こういう事は少しでも早い方がいいですからね」
「畏まりました」
アリスは返事をすると、ダイヤモンドの木箱を抱えて出ていこうとする。だが、ギルソンが思い出したかのようにアリスを止める。
「ああ、そうだ。僕とアワード兄様の照明用に10個ほど置いていって下さいませんか」
ギルソンが呼び止めると、アリスは言われた通りの数のダイヤモンドを手渡していく。
「それでは行ってまいります」
それが終わると、改めて駅にダイヤモンドを配置するために出かけていったのだった。
ギルソンは笑顔でアリスを見送ると、アワードたちへと視線を向ける。
「さて、ここからが本番ですね。これで魔法石の消費が抑えられれば、一歩前進といったところですよ」
この時の笑顔に、アワードとフェールはちょっとした恐怖を感じてしまった。
はてさて、いよいよダイヤモンドを使った実用化実験が始まったのだが、思うような結果が得られるのだろうか。緊張の日々が始まったのである。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~
玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。
その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは?
ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる