145 / 170
Mission144
しおりを挟む
ようやくギルソンたちが帰ってきたので、人工ダイヤモンドを使った魔法の実験を行うことにする。
とはいっても、この世界で魔法が使えるのはオートマタたちだけだ。ギルソンたちと行う相談は、もちろんどのようなものが必要かという、実験の方向性を問うものなのである。
なんでも魔法で解決が図れるオートマタと違って、人間たちは自分たちの能力だけで事を成さねばならない。それゆえにどんな悩みがあるかというのは、実験を行う上で重要なのである。
「ただいま戻りました。なんでしょうか話というのは」
ギルソンはにこやかな表情を浮かべながら、アリスへと質問を投げかける。それに対して、アリスは正直に答える。
「なるほど……。ボクが与えられた課題への答えとして、次の段階に進みたいというわけですね」
さすがは頭の観点の良いギルソンだ。少し話をしただけで完璧に理解してくれる。これが元の小説では中ボス設定だったのだから、恐ろしい話だ。
ギルソンは部屋の中に置かれたダイヤモンドの入った木箱を見る。その中身を見て、思わず顔をしかめてしまうギルソンだ。
「ちょっと、これは多すぎませんかね……。アリス、頑張り過ぎなのでは?」
「マイマスターのためでしたら、このくらい惜しくありません」
ギルソンの言葉に淡々と返すアリスである。
アリスの言葉に苦笑いを浮かべたギルソンは、再び大量のダイヤモンドへと目を移す。これらを使ってどうするのか、ギルソンは必死に考え始めたのだ。
これらのダイヤモンドを使うのはいいが、その目的は魔法石の代替。魔法石を使うということは、魔法が必要である。つまりは、オートマタが存在しているというのが前提となる。
ダイヤモンドを魔法石の代替としても、オートマタがいない環境では役に立たないというのが、最大の問題点なのだ。
「魔法石代わりといっても、やはりオートマタが居ないといけないですからね。となると、オートマタが常に存在している場所で使うのが一番でしょうね」
ダイヤモンドを手に取りながら、ギルソンはそのように話している。するするとアイディアが出てくるあたり、やはりギルソンはただ者ではないのである。
「となると、どのような場所での利用となりましょうか」
「一つはそうだね。仕える主の個室でしょうかね。寝るまではそばにいることが多いのですから、照明の管理はオートマタの仕事になっていますから」
アリスが問い掛けると、すぐに答えが返ってくる。これにはアワードとフェールも驚いていた。
「それと、オートマタが常駐している場所といえば、駅でしょうかね」
「なるほど、それは思いつきませんでしたね」
ギルソンから次々アイディアが出てくるものだから、アリスは正直驚いていた。本当に頭の回転がいいのである。
こんな人物を殺される展開にした担当に、今さらながらにふつふつとした感情が湧いてくるアリスである。
「……アリス?」
その感情を読み取られたのか、ギルソンに顔を覗き込まれるアリス。それに気が付いて、はっと我に返っていた。
「失礼致しました、マイマスター。あまりにマイマスターが聡明ゆえに、感服してしまいました」
正直に話すアリスに、ついおかしくて笑ってしまうギルソンだった。
「まったく、アリスは面白いことを言いますね」
「いえ、私は正直に申し上げた次第でございます」
まるで漫才のようなやり取りである。これがお互いの信頼が厚い者同士の会話なのだろう。
「ひとまず、ダイヤモンドによる魔法の実験は、部屋の明かり取りで行うという話でいいのかな」
「今の流れだとそういう感じございますね」
アワードとフェールが顔を見合わせている。
「ええ、それで間違いありませんよ」
ギルソンはにこりと微笑んでいる。そして、アリスへと再び視線を向ける。
「ダイヤモンドを各駅に分配して下さい。一度魔法を込めればどのくらいの時間使えるのか。そして、魔力が尽きても再利用できるのか。その2点をチェックするように伝えて下さい」
「承知致しました。では、早速行ってまいりましょうか?」
「ええ、こういう事は少しでも早い方がいいですからね」
「畏まりました」
アリスは返事をすると、ダイヤモンドの木箱を抱えて出ていこうとする。だが、ギルソンが思い出したかのようにアリスを止める。
「ああ、そうだ。僕とアワード兄様の照明用に10個ほど置いていって下さいませんか」
ギルソンが呼び止めると、アリスは言われた通りの数のダイヤモンドを手渡していく。
「それでは行ってまいります」
それが終わると、改めて駅にダイヤモンドを配置するために出かけていったのだった。
ギルソンは笑顔でアリスを見送ると、アワードたちへと視線を向ける。
「さて、ここからが本番ですね。これで魔法石の消費が抑えられれば、一歩前進といったところですよ」
この時の笑顔に、アワードとフェールはちょっとした恐怖を感じてしまった。
はてさて、いよいよダイヤモンドを使った実用化実験が始まったのだが、思うような結果が得られるのだろうか。緊張の日々が始まったのである。
とはいっても、この世界で魔法が使えるのはオートマタたちだけだ。ギルソンたちと行う相談は、もちろんどのようなものが必要かという、実験の方向性を問うものなのである。
なんでも魔法で解決が図れるオートマタと違って、人間たちは自分たちの能力だけで事を成さねばならない。それゆえにどんな悩みがあるかというのは、実験を行う上で重要なのである。
「ただいま戻りました。なんでしょうか話というのは」
ギルソンはにこやかな表情を浮かべながら、アリスへと質問を投げかける。それに対して、アリスは正直に答える。
「なるほど……。ボクが与えられた課題への答えとして、次の段階に進みたいというわけですね」
さすがは頭の観点の良いギルソンだ。少し話をしただけで完璧に理解してくれる。これが元の小説では中ボス設定だったのだから、恐ろしい話だ。
ギルソンは部屋の中に置かれたダイヤモンドの入った木箱を見る。その中身を見て、思わず顔をしかめてしまうギルソンだ。
「ちょっと、これは多すぎませんかね……。アリス、頑張り過ぎなのでは?」
「マイマスターのためでしたら、このくらい惜しくありません」
ギルソンの言葉に淡々と返すアリスである。
アリスの言葉に苦笑いを浮かべたギルソンは、再び大量のダイヤモンドへと目を移す。これらを使ってどうするのか、ギルソンは必死に考え始めたのだ。
これらのダイヤモンドを使うのはいいが、その目的は魔法石の代替。魔法石を使うということは、魔法が必要である。つまりは、オートマタが存在しているというのが前提となる。
ダイヤモンドを魔法石の代替としても、オートマタがいない環境では役に立たないというのが、最大の問題点なのだ。
「魔法石代わりといっても、やはりオートマタが居ないといけないですからね。となると、オートマタが常に存在している場所で使うのが一番でしょうね」
ダイヤモンドを手に取りながら、ギルソンはそのように話している。するするとアイディアが出てくるあたり、やはりギルソンはただ者ではないのである。
「となると、どのような場所での利用となりましょうか」
「一つはそうだね。仕える主の個室でしょうかね。寝るまではそばにいることが多いのですから、照明の管理はオートマタの仕事になっていますから」
アリスが問い掛けると、すぐに答えが返ってくる。これにはアワードとフェールも驚いていた。
「それと、オートマタが常駐している場所といえば、駅でしょうかね」
「なるほど、それは思いつきませんでしたね」
ギルソンから次々アイディアが出てくるものだから、アリスは正直驚いていた。本当に頭の回転がいいのである。
こんな人物を殺される展開にした担当に、今さらながらにふつふつとした感情が湧いてくるアリスである。
「……アリス?」
その感情を読み取られたのか、ギルソンに顔を覗き込まれるアリス。それに気が付いて、はっと我に返っていた。
「失礼致しました、マイマスター。あまりにマイマスターが聡明ゆえに、感服してしまいました」
正直に話すアリスに、ついおかしくて笑ってしまうギルソンだった。
「まったく、アリスは面白いことを言いますね」
「いえ、私は正直に申し上げた次第でございます」
まるで漫才のようなやり取りである。これがお互いの信頼が厚い者同士の会話なのだろう。
「ひとまず、ダイヤモンドによる魔法の実験は、部屋の明かり取りで行うという話でいいのかな」
「今の流れだとそういう感じございますね」
アワードとフェールが顔を見合わせている。
「ええ、それで間違いありませんよ」
ギルソンはにこりと微笑んでいる。そして、アリスへと再び視線を向ける。
「ダイヤモンドを各駅に分配して下さい。一度魔法を込めればどのくらいの時間使えるのか。そして、魔力が尽きても再利用できるのか。その2点をチェックするように伝えて下さい」
「承知致しました。では、早速行ってまいりましょうか?」
「ええ、こういう事は少しでも早い方がいいですからね」
「畏まりました」
アリスは返事をすると、ダイヤモンドの木箱を抱えて出ていこうとする。だが、ギルソンが思い出したかのようにアリスを止める。
「ああ、そうだ。僕とアワード兄様の照明用に10個ほど置いていって下さいませんか」
ギルソンが呼び止めると、アリスは言われた通りの数のダイヤモンドを手渡していく。
「それでは行ってまいります」
それが終わると、改めて駅にダイヤモンドを配置するために出かけていったのだった。
ギルソンは笑顔でアリスを見送ると、アワードたちへと視線を向ける。
「さて、ここからが本番ですね。これで魔法石の消費が抑えられれば、一歩前進といったところですよ」
この時の笑顔に、アワードとフェールはちょっとした恐怖を感じてしまった。
はてさて、いよいよダイヤモンドを使った実用化実験が始まったのだが、思うような結果が得られるのだろうか。緊張の日々が始まったのである。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる