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Mission138
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夜を迎えた頃、ようやくアリスが目を覚ます。
「ふぅ、よく寝ましたね。オートマタになってからというもの、これだけ寝たのは久しぶりではないでしょうか」
あくびをしながらも、冷静にのんきな事を言っている。
「まさか、魔力切れを起こしかけるとは思ってもみませんでしたね。幸い魔力の回復が早いために事なきを得ましたが、一歩間違えれば死んでいましたね」
やらかしてしまったことに、ついついため息が出てしまうアリスである。
魔法石に宿る魔力はオートマタの生命力だ。魔力があるからこそ、オートマタは動いていられる。
それを一時的にでも空にしてしまうと、魔力を二度と補給できなくなってオートマタは死を迎えてしまうのだ。
魔法石を壊されると死んでしまうというのも同じ理屈であり、亀裂から魔力が漏れ出していずれ底をついてしまう。そのことによってオートマタは死を迎えるというわけなのだ。
(やれやれ、本当に気を付けないといけませんね。ダイヤモンドを生成するには、それほどの魔力を必要とするとは思いませんでしたよ)
実際に炭素からダイヤモンドを作り出す時には、相当な圧力を掛けなければならない。それが膨大ゆえに、魔力も相当消費してしまったというわけだ。
アリスは転生者ということで、少々特殊な魔法石を持っているからこそ、死を免れたというわけなのである。
おそらくアリスを転生させた神様も、その様子をひやひやしながら見守った事だろう。
「起きたのかい、アリス」
ふと声を掛けられて、アリスは激しく驚いている。
「ま、マイマスター……。起きていらっしゃっていたのですか」
声のした方へと顔を向けると、そこにはギルソンの姿があった。今は真夜中だというのに、起きていたらしい。
「君が心配で眠れなかったんだよ。ボクの大切なパートナーだからね」
「マイマスター……」
ギルソンのどこか悲しそうな表情に、アリスは言葉を詰まらせている。
オートマタとはいえど、感情は人間並みにしっかりと存在している。それに加えて、アリスには人間の魂が宿っている。こんな感情を向けられてしまっては、何も言う事ができないのである。
「アリス、頼むからこれ以上の無茶はしないでほしいな。どんなときにも、君にはボクの側にいてほしいからね」
アリスの頬に手を当てながら、ギルソンは瞳を潤ませながら語り掛けてくる。その時のギルソンの美しさに、アリスは反応する事ができなかった。
「……承知致しました。ですが、今回の海の向こう側との交渉を成功させるために、今少しの無茶をする事をどうかお許し下さいませ」
言葉に詰まりながらも、してしまった約束はしっかりと果しましょうと告げるアリス。この言葉に、ギルソンは無言で大きく頷いた。
アリスの側で片膝をついていたギルソンは、すっと立ち上がって背中を向ける。
「ふぅ、アリスの無事を確認したら、一気に眠くなってきてしまいましたね。それでは、ボクは休みますので、アリスももう少し休んでしっかり回復しておいて」
背中を向けたまま話すギルソン。
「承知……致しました。申し訳ございません、ご心配をお掛け致しました」
その背中を見つめながら、謝罪を述べるアリス。
アリスのその言葉聞いたギルソンは、無言のまま自分の寝室へと向かっていったのだった。
その背中を見送ったアリスも、服を着替えてベッドへともぐりこんだのだった。
翌日、国王から正式に依頼がやって来た。
「国王陛下と王妃殿下のお揃いのダイヤモンドアクセサリーですか……」
意外な依頼に、アリスは目を丸くしていた。
昨日にぶっ倒れた原因となるダイヤモンドの生成。それを国王から直々に依頼されたのである。
正直なところ、正気を疑うような依頼だ。だが、そんな事実すら欠落してしまうくらいに、アリスの作ったダイヤモンドが美しかったのである。
国王からの依頼ゆえに断れなかったアリスは、城の中庭へと案内される。そこには日々の厨房で使われた燃え尽きた薪が積み上げられていた。
「国王陛下から、こちらを使って欲しいとのお達しでございます。どうぞお使い下さい」
兵士はそうとだけ言い切ると、とっとと自分の持ち場へと戻っていった。
中庭に取り残されたギルソンとアリスは、きょとんとした表情で積み上がった薪を見つめている。
そして、お互いの顔を見合わせると、困ったような笑顔を浮かべていた。
「やるしかございませんね」
「父上の命令だから……ね。無理はしないでおくれよ、アリス」
「もちろんでございます、マイマスター。昨日の一回で、おおよそコツのようなものは掴みましたので」
そう言いながら、アリスは燃え尽きて炭となった薪を取り分けていく。
「アリス、ボクも手伝おうか?」
「ご心配なく、マイマスター。こちらは私だけで十分でございますので、マイマスターは自分のしなければならない事をなさっていて下さい。あとでおいしいものをお持ちしますので」
アリスにこう言われてしまえば、ギルソンは仕方なくアリスの手伝いを諦めた。実際、やらなきゃいけない事はたくさんあるのである。
「分かりました。では、約束ですからね。倒れないで下さいよ」
「承知致しました。おいしいお菓子と紅茶でもって、それに答えてみせます」
その言葉を聞いたギルソンは、心配になりながらもやむなくその場を離れたのだった。
「ふぅ、よく寝ましたね。オートマタになってからというもの、これだけ寝たのは久しぶりではないでしょうか」
あくびをしながらも、冷静にのんきな事を言っている。
「まさか、魔力切れを起こしかけるとは思ってもみませんでしたね。幸い魔力の回復が早いために事なきを得ましたが、一歩間違えれば死んでいましたね」
やらかしてしまったことに、ついついため息が出てしまうアリスである。
魔法石に宿る魔力はオートマタの生命力だ。魔力があるからこそ、オートマタは動いていられる。
それを一時的にでも空にしてしまうと、魔力を二度と補給できなくなってオートマタは死を迎えてしまうのだ。
魔法石を壊されると死んでしまうというのも同じ理屈であり、亀裂から魔力が漏れ出していずれ底をついてしまう。そのことによってオートマタは死を迎えるというわけなのだ。
(やれやれ、本当に気を付けないといけませんね。ダイヤモンドを生成するには、それほどの魔力を必要とするとは思いませんでしたよ)
実際に炭素からダイヤモンドを作り出す時には、相当な圧力を掛けなければならない。それが膨大ゆえに、魔力も相当消費してしまったというわけだ。
アリスは転生者ということで、少々特殊な魔法石を持っているからこそ、死を免れたというわけなのである。
おそらくアリスを転生させた神様も、その様子をひやひやしながら見守った事だろう。
「起きたのかい、アリス」
ふと声を掛けられて、アリスは激しく驚いている。
「ま、マイマスター……。起きていらっしゃっていたのですか」
声のした方へと顔を向けると、そこにはギルソンの姿があった。今は真夜中だというのに、起きていたらしい。
「君が心配で眠れなかったんだよ。ボクの大切なパートナーだからね」
「マイマスター……」
ギルソンのどこか悲しそうな表情に、アリスは言葉を詰まらせている。
オートマタとはいえど、感情は人間並みにしっかりと存在している。それに加えて、アリスには人間の魂が宿っている。こんな感情を向けられてしまっては、何も言う事ができないのである。
「アリス、頼むからこれ以上の無茶はしないでほしいな。どんなときにも、君にはボクの側にいてほしいからね」
アリスの頬に手を当てながら、ギルソンは瞳を潤ませながら語り掛けてくる。その時のギルソンの美しさに、アリスは反応する事ができなかった。
「……承知致しました。ですが、今回の海の向こう側との交渉を成功させるために、今少しの無茶をする事をどうかお許し下さいませ」
言葉に詰まりながらも、してしまった約束はしっかりと果しましょうと告げるアリス。この言葉に、ギルソンは無言で大きく頷いた。
アリスの側で片膝をついていたギルソンは、すっと立ち上がって背中を向ける。
「ふぅ、アリスの無事を確認したら、一気に眠くなってきてしまいましたね。それでは、ボクは休みますので、アリスももう少し休んでしっかり回復しておいて」
背中を向けたまま話すギルソン。
「承知……致しました。申し訳ございません、ご心配をお掛け致しました」
その背中を見つめながら、謝罪を述べるアリス。
アリスのその言葉聞いたギルソンは、無言のまま自分の寝室へと向かっていったのだった。
その背中を見送ったアリスも、服を着替えてベッドへともぐりこんだのだった。
翌日、国王から正式に依頼がやって来た。
「国王陛下と王妃殿下のお揃いのダイヤモンドアクセサリーですか……」
意外な依頼に、アリスは目を丸くしていた。
昨日にぶっ倒れた原因となるダイヤモンドの生成。それを国王から直々に依頼されたのである。
正直なところ、正気を疑うような依頼だ。だが、そんな事実すら欠落してしまうくらいに、アリスの作ったダイヤモンドが美しかったのである。
国王からの依頼ゆえに断れなかったアリスは、城の中庭へと案内される。そこには日々の厨房で使われた燃え尽きた薪が積み上げられていた。
「国王陛下から、こちらを使って欲しいとのお達しでございます。どうぞお使い下さい」
兵士はそうとだけ言い切ると、とっとと自分の持ち場へと戻っていった。
中庭に取り残されたギルソンとアリスは、きょとんとした表情で積み上がった薪を見つめている。
そして、お互いの顔を見合わせると、困ったような笑顔を浮かべていた。
「やるしかございませんね」
「父上の命令だから……ね。無理はしないでおくれよ、アリス」
「もちろんでございます、マイマスター。昨日の一回で、おおよそコツのようなものは掴みましたので」
そう言いながら、アリスは燃え尽きて炭となった薪を取り分けていく。
「アリス、ボクも手伝おうか?」
「ご心配なく、マイマスター。こちらは私だけで十分でございますので、マイマスターは自分のしなければならない事をなさっていて下さい。あとでおいしいものをお持ちしますので」
アリスにこう言われてしまえば、ギルソンは仕方なくアリスの手伝いを諦めた。実際、やらなきゃいけない事はたくさんあるのである。
「分かりました。では、約束ですからね。倒れないで下さいよ」
「承知致しました。おいしいお菓子と紅茶でもって、それに答えてみせます」
その言葉を聞いたギルソンは、心配になりながらもやむなくその場を離れたのだった。
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