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Mission135
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アリスは炭の山を目の前に仁王立ちをしている。後ろではマリカとジャスミンが立って見守っている。
「お姉様、本当にその方法を試されるおつもりですか?」
ジャスミンはものすごく心配というか呆れたというか、よく分からない表情をしている。
「ええ。既存の宝石を使うというのは気が引けますからね。使い道が無くなったこれならば、何も問題はないでしょう?」
「大ありですってば……」
ジャスミンは頭が痛そうだ。
「ねえ、ジャスミン。アリスさんは何をしようとしているの?」
状況が分からないマリカがジャスミンに問い掛けている。しかし、ジャスミンはどう答えたらいいか分からない。なにせ、今からアリスがやろうとしている事は、この世界では知られていない方法だからだ。
アリスの前世の世界でも知る人ぞ知る知識だ。あまりにもとんでもない方法だけに、ジャスミンはその様子をじっと見つめている。
「いきますよ……」
いよいよやるつもりらしい。その姿を見たジャスミンは、周りに被害がいかないように防護の魔法を展開する。もちろん、マリカにも防護魔法がかけられる。
何が起こるのか分からないマリカは、縮こまって視線をアリスとジャスミンの間で行き来させている。
「マスター、そこから動かないで下さいね。お姉様ったら、今からとんでもない事をしてくれますので」
「えっ、えっ?」
ジャスミンが注意をするものの、マリカの困惑は収まらなかった。
次の瞬間、アリスが魔法を炭の山に使う。炭をよく分からない球体が包み込んだかと思うと、その球体が少しずつ小さくなっていく。
やがてその球体が拳くらいまでの大きさに縮んでいき、そこで慎重に魔法を解除させると、中から何やら光り輝く物体が出てきたのだ。
「あれは……?」
「あれは、ダイヤモンドでございます」
「だ、ダイヤモンド?!」
そう、炭もダイヤモンドも同じ炭素の塊である。なので、アリスは魔法で強い圧力をかけて、炭をダイヤモンドに変化させてしまったのだ。
しかし、そんな圧力をかけるとなると、魔力の消費や集中力も相当なもの。
「いけません……。お姉様!」
防護魔法を解いてアリスに駆け寄るジャスミン。すると、ジャスミンが近付く中でアリスがふらついたのだった。
「無茶苦茶ですよ、お姉様。炭をダイヤモンドに変えるだけの圧力をかけるだなんて……」
よろけるアリスをしっかりと受け止めて苦言を呈するジャスミン。
「……やはり、予想以上の魔力を消耗しますね」
「当たり前ですよ。下手に魔力を使い切れば、私たちオートマタがどうなってしまうか分からないお姉様ではないでしょう?」
声を張り上げるジャスミンに、アリスは安心させるようにふっと笑いかけていた。
「あの……アリスさんは大丈夫なのかしら」
マリカがおそるおそる近付いてくる。
「ええ、魔力を消耗し過ぎただけですから、本日はもう無理せず休ませれば大丈夫ですよ」
「そ、そうなのですね。それなら安心しました」
ジャスミンの言葉に、胸に手を当てながらほっとしてるマリカだった。
「しかし、どうしましょうかね、このダイヤモンドは……」
アリスを抱きかかえながら、ジャスミンが地面に転がるダイヤモンドをじっと見ていた。さすがにあの炭の山から作っただけあって、思った以上に大きいのである。
「マスター、布はお持ちでしょうか」
「は、ハンカチ程度でしたらありますよ」
スカートのポケットからハンカチを取り出すものの、大きさが思ったより心もとなかった、それでもないよりはマシかなというものだった。
ジャスミンはアリスをマリカに任せると、ハンカチを持ってダイヤモンドを拾い上げる。
魔法による人工ダイヤモンドとはいえど、この程度の大きさがあれば欲しがる人物は多いはずだからだ。
ジャスミンは分かりにくいところにしまい込むと、マリカに声を掛ける。
「それではお城に参りましょうか。お姉様を送り届けなければなりませんし、どうしてこんなことになったのか事情を詳しくお聞きしませんとね」
にこりと笑うジャスミンではあるものの、恐怖に顔を引きつらせるマリカである。その笑顔の奥にある感情を感じ取ったようだった。
「それと、お姉様はギルソン殿下に一度叱って頂きませんとね。オートマタって基本的には疲れませんから、こういう無茶をよくされるみたいですもの。鉄道の事でも、私ははっきりいって怒りたかったくらいですよ」
ジャスミンは頬に手を当てながら、うんざりといった感じで喋っている。
そして、マリカに預けていたアリスを肩に担ぐと、ジャスミンはマリカと一緒に城へと向かったのだった。
どうにかギルソンに出会う事ができたジャスミンは、開口一番ギルソンに迫っていく。
「殿下、頼みますからもう少しお姉様を自重させて下さいませ。今回だって、何を思ったかこんな事をしでかしてくれたんですよ」
わけが分からないギルソンに対して、ジャスミンは先程アリスが作り出したダイヤモンドを取り出して見せた。
「これは……宝石ですか」
「ダイヤモンドと呼ばれる宝石です。お姉様ってば、これを炭から作り出していたんですよ」
「なんだって?」
驚くしかないギルソンである。
少し悩んだギルソンはアリスを横にさせると、マリカとジャスミンにおそらく原因となった事柄を話す事にしたのだった。
「お姉様、本当にその方法を試されるおつもりですか?」
ジャスミンはものすごく心配というか呆れたというか、よく分からない表情をしている。
「ええ。既存の宝石を使うというのは気が引けますからね。使い道が無くなったこれならば、何も問題はないでしょう?」
「大ありですってば……」
ジャスミンは頭が痛そうだ。
「ねえ、ジャスミン。アリスさんは何をしようとしているの?」
状況が分からないマリカがジャスミンに問い掛けている。しかし、ジャスミンはどう答えたらいいか分からない。なにせ、今からアリスがやろうとしている事は、この世界では知られていない方法だからだ。
アリスの前世の世界でも知る人ぞ知る知識だ。あまりにもとんでもない方法だけに、ジャスミンはその様子をじっと見つめている。
「いきますよ……」
いよいよやるつもりらしい。その姿を見たジャスミンは、周りに被害がいかないように防護の魔法を展開する。もちろん、マリカにも防護魔法がかけられる。
何が起こるのか分からないマリカは、縮こまって視線をアリスとジャスミンの間で行き来させている。
「マスター、そこから動かないで下さいね。お姉様ったら、今からとんでもない事をしてくれますので」
「えっ、えっ?」
ジャスミンが注意をするものの、マリカの困惑は収まらなかった。
次の瞬間、アリスが魔法を炭の山に使う。炭をよく分からない球体が包み込んだかと思うと、その球体が少しずつ小さくなっていく。
やがてその球体が拳くらいまでの大きさに縮んでいき、そこで慎重に魔法を解除させると、中から何やら光り輝く物体が出てきたのだ。
「あれは……?」
「あれは、ダイヤモンドでございます」
「だ、ダイヤモンド?!」
そう、炭もダイヤモンドも同じ炭素の塊である。なので、アリスは魔法で強い圧力をかけて、炭をダイヤモンドに変化させてしまったのだ。
しかし、そんな圧力をかけるとなると、魔力の消費や集中力も相当なもの。
「いけません……。お姉様!」
防護魔法を解いてアリスに駆け寄るジャスミン。すると、ジャスミンが近付く中でアリスがふらついたのだった。
「無茶苦茶ですよ、お姉様。炭をダイヤモンドに変えるだけの圧力をかけるだなんて……」
よろけるアリスをしっかりと受け止めて苦言を呈するジャスミン。
「……やはり、予想以上の魔力を消耗しますね」
「当たり前ですよ。下手に魔力を使い切れば、私たちオートマタがどうなってしまうか分からないお姉様ではないでしょう?」
声を張り上げるジャスミンに、アリスは安心させるようにふっと笑いかけていた。
「あの……アリスさんは大丈夫なのかしら」
マリカがおそるおそる近付いてくる。
「ええ、魔力を消耗し過ぎただけですから、本日はもう無理せず休ませれば大丈夫ですよ」
「そ、そうなのですね。それなら安心しました」
ジャスミンの言葉に、胸に手を当てながらほっとしてるマリカだった。
「しかし、どうしましょうかね、このダイヤモンドは……」
アリスを抱きかかえながら、ジャスミンが地面に転がるダイヤモンドをじっと見ていた。さすがにあの炭の山から作っただけあって、思った以上に大きいのである。
「マスター、布はお持ちでしょうか」
「は、ハンカチ程度でしたらありますよ」
スカートのポケットからハンカチを取り出すものの、大きさが思ったより心もとなかった、それでもないよりはマシかなというものだった。
ジャスミンはアリスをマリカに任せると、ハンカチを持ってダイヤモンドを拾い上げる。
魔法による人工ダイヤモンドとはいえど、この程度の大きさがあれば欲しがる人物は多いはずだからだ。
ジャスミンは分かりにくいところにしまい込むと、マリカに声を掛ける。
「それではお城に参りましょうか。お姉様を送り届けなければなりませんし、どうしてこんなことになったのか事情を詳しくお聞きしませんとね」
にこりと笑うジャスミンではあるものの、恐怖に顔を引きつらせるマリカである。その笑顔の奥にある感情を感じ取ったようだった。
「それと、お姉様はギルソン殿下に一度叱って頂きませんとね。オートマタって基本的には疲れませんから、こういう無茶をよくされるみたいですもの。鉄道の事でも、私ははっきりいって怒りたかったくらいですよ」
ジャスミンは頬に手を当てながら、うんざりといった感じで喋っている。
そして、マリカに預けていたアリスを肩に担ぐと、ジャスミンはマリカと一緒に城へと向かったのだった。
どうにかギルソンに出会う事ができたジャスミンは、開口一番ギルソンに迫っていく。
「殿下、頼みますからもう少しお姉様を自重させて下さいませ。今回だって、何を思ったかこんな事をしでかしてくれたんですよ」
わけが分からないギルソンに対して、ジャスミンは先程アリスが作り出したダイヤモンドを取り出して見せた。
「これは……宝石ですか」
「ダイヤモンドと呼ばれる宝石です。お姉様ってば、これを炭から作り出していたんですよ」
「なんだって?」
驚くしかないギルソンである。
少し悩んだギルソンはアリスを横にさせると、マリカとジャスミンにおそらく原因となった事柄を話す事にしたのだった。
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