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Mission123
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城に戻ったギルソンとアリスたち。ひとまずは国王たちに今回の件を報告する。
話を聞いていた国王は、最終的に頭を抱えていた。なにせ自分の知らないところでソルティエ公国との間で交渉が行われていたのだから。
しかも、その交渉はある程度まとまっていたのだから余計驚くというものである。その鮮やかな交渉に、ギルソンの父親である国王は落ち込んでいた。
「息子に負けるとは……」
がくっと項垂れる国王。
「父上。外交はボクに任せて国内をお願いします」
「う、うむ。そうだな……」
ギルソンはフォローするどころか止めを刺しにかかっていた。
ギルソンからすると自分を頼って欲しいという感じで言ったのだろうが、落ち込んでいる国王からすれば自分の方が上だと言われた気分になってしまったからだ。ギルソンには悪気がないだけに、アリスやアワードたちは複雑な表情で国王の姿を見つめていた。
「では、報告は異常でございますので、僕は休む事にします」
「うむ、ご苦労だったな」
用事を終えたギルソンたちは、ぞろぞろと国王の部屋から出て行く。その時の国王の落ち込みようといったら、正直何と言っていいか分からない感じだった。アリスたちは声の一つでも掛けたかったのだが、その言葉が見つからずおとなしく出て行くしかなかったのだった。
ようやく一人になった国王は、椅子にもたれ掛かって天井を見上げている。
「やれやれ、ギルソンには才能があるとは思ったが、ここまでとはな。マスカード帝国とのやり取りでもしやとは思っていたが、想像以上の逸材だな」
姿勢を正した国王は、すっとペンを持って紙に向かう。
「今回のギルソンの功績を、しっかりと記録してやらねばな」
国王は呟くと、一心不乱に紙にその功績を認め始めたのだった。
部屋に戻ったギルソンは椅子に座ってくつろいでいた。乗り慣れているとはいっても、さすがに外交帰りでは疲れてしまっていたようだ。
「お疲れ様でございます、マイマスター」
「ありがとう、アリス」
アリスが差し出した水をぐいっと一気に飲み干すギルソン。目の前の机にコップを置くと、大きくため息を吐いた。
「いや、今回の交渉は思ったよりも疲れましたね」
「お疲れ様でございます、マイマスター」
どう大変か見ていなかったアリスは、労いの言葉を掛けるだけで精一杯だった。
「ええ。でも、アリスのおかげでかなり優位に進められましたけれどね。本当にありがとうございます」
アリスの顔を見ながらにこりと微笑むギルソンである。
「とりあえずは、マスカード帝国と同じように鉱石を輸出しながら、ソルティエ公国の海産物や塩を輸入するという形です。ですが、それもいつまで続けられるとは限りません」
「と申されますと?」
表情を曇らせたギルソンに、アリスは理由を尋ねる。
「ツェンの街からの報告では、鉱石の産出量が悪くなってきているようなのです。もしかしたら、枯渇する可能性があるのかも知れません」
ギルソンの口から出た問題は、思ってもみなかった事だ。
しかし、アリスの前世の世界であれば、何度となく耳にした言葉である。炭鉱の採掘量が落ち、廃れていった町というのは数多く存在していたのだ。
それを、まさか自分の小説の世界で聞く事になるとは思ってもみなかった。
確かに細かい設定はまったく考えていなかったとはいえ、現実問題として降りかかってくるとは誰が考えただろうか。
「万一枯渇しては、ファルーダン王国の根本に大きな影響が出てしまいますね」
「そうなんだ。報告を受けて、ツェンの街には調査を行うように指示は出しているけれど、おそらく芳しくはないでしょううね」
そう、ソルティエ公国との交渉において、ギルソンが難色を示したのはこういった背景があったからなのだ。
ファルーダン王国における主力産業を支える鉱山に問題が発生していたのだ。交渉をスムーズに進めるためにやむなく飲んだとはいえ、ギルソンは相当に悩んだ事だろう。
つらそうなギルソンの表情に、アリスが声を掛けようとした時だった。
「ギルソン、そういう事なら私のオートマタに任せるといいよ」
バーンと扉が開いて入ってきたのは、ギルソンのすぐ上の兄弟、第四王子アワードだった。隣にはそのオートマタであるフェールが立っている。
「アワード兄さん」
「弟が困っているというのに、何もできない兄では情けないでしょう? なあ、フェール」
「はい、その通りでございます、マスター」
自信たっぷりなアワードの態度に、ギルソンは驚いていた。
「金属の事でしたら、私にお任せ願えませんでしょうか、ギルソン様」
しっかりと頭を下げてギルソンに申し出るフェール。どういうことなのか分からずに、ギルソンもアリスも混乱しているようだった。
「私もファルーダン王家のためにお役に立ちたいのです。どうか、ご命令を下さい」
フェールからの圧が強い。隣では兄であるアワードも頭を下げている。ここまでされてしまうと、さすがに断る事は不可能だった。
「分かりました。では、調査をフェールにお任せしましょう」
「はい。必ずや吉報を持って帰ります」
突如として浮き上がった鉱山問題。それを解決するために、フェールは単身ツェンへと向かっていったのだった。
話を聞いていた国王は、最終的に頭を抱えていた。なにせ自分の知らないところでソルティエ公国との間で交渉が行われていたのだから。
しかも、その交渉はある程度まとまっていたのだから余計驚くというものである。その鮮やかな交渉に、ギルソンの父親である国王は落ち込んでいた。
「息子に負けるとは……」
がくっと項垂れる国王。
「父上。外交はボクに任せて国内をお願いします」
「う、うむ。そうだな……」
ギルソンはフォローするどころか止めを刺しにかかっていた。
ギルソンからすると自分を頼って欲しいという感じで言ったのだろうが、落ち込んでいる国王からすれば自分の方が上だと言われた気分になってしまったからだ。ギルソンには悪気がないだけに、アリスやアワードたちは複雑な表情で国王の姿を見つめていた。
「では、報告は異常でございますので、僕は休む事にします」
「うむ、ご苦労だったな」
用事を終えたギルソンたちは、ぞろぞろと国王の部屋から出て行く。その時の国王の落ち込みようといったら、正直何と言っていいか分からない感じだった。アリスたちは声の一つでも掛けたかったのだが、その言葉が見つからずおとなしく出て行くしかなかったのだった。
ようやく一人になった国王は、椅子にもたれ掛かって天井を見上げている。
「やれやれ、ギルソンには才能があるとは思ったが、ここまでとはな。マスカード帝国とのやり取りでもしやとは思っていたが、想像以上の逸材だな」
姿勢を正した国王は、すっとペンを持って紙に向かう。
「今回のギルソンの功績を、しっかりと記録してやらねばな」
国王は呟くと、一心不乱に紙にその功績を認め始めたのだった。
部屋に戻ったギルソンは椅子に座ってくつろいでいた。乗り慣れているとはいっても、さすがに外交帰りでは疲れてしまっていたようだ。
「お疲れ様でございます、マイマスター」
「ありがとう、アリス」
アリスが差し出した水をぐいっと一気に飲み干すギルソン。目の前の机にコップを置くと、大きくため息を吐いた。
「いや、今回の交渉は思ったよりも疲れましたね」
「お疲れ様でございます、マイマスター」
どう大変か見ていなかったアリスは、労いの言葉を掛けるだけで精一杯だった。
「ええ。でも、アリスのおかげでかなり優位に進められましたけれどね。本当にありがとうございます」
アリスの顔を見ながらにこりと微笑むギルソンである。
「とりあえずは、マスカード帝国と同じように鉱石を輸出しながら、ソルティエ公国の海産物や塩を輸入するという形です。ですが、それもいつまで続けられるとは限りません」
「と申されますと?」
表情を曇らせたギルソンに、アリスは理由を尋ねる。
「ツェンの街からの報告では、鉱石の産出量が悪くなってきているようなのです。もしかしたら、枯渇する可能性があるのかも知れません」
ギルソンの口から出た問題は、思ってもみなかった事だ。
しかし、アリスの前世の世界であれば、何度となく耳にした言葉である。炭鉱の採掘量が落ち、廃れていった町というのは数多く存在していたのだ。
それを、まさか自分の小説の世界で聞く事になるとは思ってもみなかった。
確かに細かい設定はまったく考えていなかったとはいえ、現実問題として降りかかってくるとは誰が考えただろうか。
「万一枯渇しては、ファルーダン王国の根本に大きな影響が出てしまいますね」
「そうなんだ。報告を受けて、ツェンの街には調査を行うように指示は出しているけれど、おそらく芳しくはないでしょううね」
そう、ソルティエ公国との交渉において、ギルソンが難色を示したのはこういった背景があったからなのだ。
ファルーダン王国における主力産業を支える鉱山に問題が発生していたのだ。交渉をスムーズに進めるためにやむなく飲んだとはいえ、ギルソンは相当に悩んだ事だろう。
つらそうなギルソンの表情に、アリスが声を掛けようとした時だった。
「ギルソン、そういう事なら私のオートマタに任せるといいよ」
バーンと扉が開いて入ってきたのは、ギルソンのすぐ上の兄弟、第四王子アワードだった。隣にはそのオートマタであるフェールが立っている。
「アワード兄さん」
「弟が困っているというのに、何もできない兄では情けないでしょう? なあ、フェール」
「はい、その通りでございます、マスター」
自信たっぷりなアワードの態度に、ギルソンは驚いていた。
「金属の事でしたら、私にお任せ願えませんでしょうか、ギルソン様」
しっかりと頭を下げてギルソンに申し出るフェール。どういうことなのか分からずに、ギルソンもアリスも混乱しているようだった。
「私もファルーダン王家のためにお役に立ちたいのです。どうか、ご命令を下さい」
フェールからの圧が強い。隣では兄であるアワードも頭を下げている。ここまでされてしまうと、さすがに断る事は不可能だった。
「分かりました。では、調査をフェールにお任せしましょう」
「はい。必ずや吉報を持って帰ります」
突如として浮き上がった鉱山問題。それを解決するために、フェールは単身ツェンへと向かっていったのだった。
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