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Mission102
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ファルーダン王国の中が出迎えの準備に奔走する中、ソルティ公国のポルト公子とマリン公女はファルーダン王国へと向けて移動をしていた。
「さすがにここまでは問題なく来れていますね」
「はっ! 魔物と賊の排除は徹底的に行っております。交易が無事に行えてこそのソルティエです。そのための努力は惜しみません!」
「さすがですね。日々の努力、実にご苦労様です」
休憩のタイミングで、ポルトとマリンは兵士と話をしながら労いの言葉を掛けていた。労われた兵士は嬉しそうにしながら持ち場へと戻っていく。
「セイル、あとどのくらいでファルーダンに入るんだい?」
「今夜にでも国境に到達できるかと」
「そうか。そこから王都まではどのくらいだい?」
「4日間と思われます。ファルーダンの東側は山がちゆえに、王都は西寄りに設けられていますので」
セイルと呼ばれたポルトの従者は、質問に対して淡々と答えていた。さすがに従者を務めるだけあって知識は豊富のようである。
「マリン、お前は耐えられるかい?」
「ここまで来たのですから、もうファルーダンへ向かうだけです。後戻りなど、できるわけないじゃないですか」
ポルトの質問に、半ば怒りながら答えるマリンである。
「マリン様、ポルト様にそう仰られてしまうのも無理はないと思います」
「なによ、アクア」
アクアにツッコミを入れられてふて腐れるマリンである。これを見て、ポルトとセイルは苦笑いをしていた。
実はこれが、ポルトがマリンに質問した理由なのだ。どちらかといえばわがままな性格をしているという事である。だから、旅という過酷な環境に耐えられるのか疑問に思ったわけである。
だが、これだけはっきりした答えが返ってきたので、ポルトも安心したようだった。
そして、小休止を終えた公子公女一行は、再びファルーダンへ向けて出発したのだった。
そして、セイルの見立て通り、その日のうちに国境へと到着する。
国境の街の真ん中には大きな壁がそびえ立っていて、かなり遠くの方まで続いていた。その大きさには圧倒されるばかりである。
「よく思えば、国境へやって来たのは初めてだな。これほど立派な壁が立っているとは……」
国境の壁を見たポルトは、その衝撃の強さに思わず言葉を失ってしまった。マリンも同じようで、こっちにいたっては一言も発する事ができていない。
「国境を超えるための手続きは私どもで済ませておきます。アクア、公子様たちを連れて宿へ向かってくれ」
「畏まりました。それでは、ポルト様、マリン様。宿へとご案内致します」
ポルトとマリンは、アクアの案内に従って宿へと向かう。
休む前に国境を越えない理由はただ一つ。壁向こうがファルーダン王国という別の国だからだ。安全が保障されていないというわけである。
なので、国境を越える前は自国の中で休んで、翌朝一番で国境を越えるのである。
そして、それを実現させるために、セイルたち部下が国境警備隊に掛け合って越境の手続きを行っているというわけだ。
すべては、公子と公女の安全に最大限の配慮をするためなのである。
宿へとやって来たポルトとマリンは、それぞれ別々の部屋に泊まっている。兄妹とはいえ、年頃の男女なのである。別々の部屋になってしまうのは仕方のない事だった。とはいえ、安全のために同性の従者と護衛が部屋に配備される事になっている。
「いよいよ、明日からはファルーダン王国ですね」
「そうですね、マリン様」
部屋で休むマリンは、従者であるアクアと話をしている。
「ねえ、アクア」
「なんでございましょうか、マリン様」
「改めて聞くけれど、ファルーダンってどんな所なのかしら」
話はなんとなく聞いてはいるものの、そこまでは詳しくないとあって、マリンは従者であるアクアにファルーダン王国の情報を確認している。
マリンからの質問にアクアは淀みなく答えていく。さすが従者らしく、しっかりと勉強をしているようだった。
ただ、オートマタだとか鉄道だとか、ソルティエ公国に無いものに関しては、マリンは少々怯えた様子を見せていた。よく分からないがゆえに、恐怖を感じたのだろう。アクアもそれを察してか、なるべくマリンにくっ付くようにして話を続けていた。
「アクア」
「なんでございましょうか、マリン様」
その話の最中に、マリンは遮るようにしてアクアに声を掛ける。
「……もういいわ。明日は早いし、私は休むわ」
「畏まりました。では、すぐに準備を致します」
マリンの発言を受けて、アクアはぱたぱたと寝るための準備を始めた。
(何にしても、明日からはファルーダンに入ってしまうわ。……覚悟を決めなきゃ)
寝間着に着替えたマリンは、シーツにくるまりながら強く決意をしていた。
こうして、ソルティエ公国の公子公女は、いよいよ祖国を離れてファルーダン王国の国土へと足を踏み入れる。
ファルーダンの地において、ポルトとマリンには一体どんな運命が待ち受けているのだろうか。
そして、ソルティエ公国とファルーダン王国の今後の関係に、どんな影響を及ぼすのだろうか。それは誰にも分からないのであった。
「さすがにここまでは問題なく来れていますね」
「はっ! 魔物と賊の排除は徹底的に行っております。交易が無事に行えてこそのソルティエです。そのための努力は惜しみません!」
「さすがですね。日々の努力、実にご苦労様です」
休憩のタイミングで、ポルトとマリンは兵士と話をしながら労いの言葉を掛けていた。労われた兵士は嬉しそうにしながら持ち場へと戻っていく。
「セイル、あとどのくらいでファルーダンに入るんだい?」
「今夜にでも国境に到達できるかと」
「そうか。そこから王都まではどのくらいだい?」
「4日間と思われます。ファルーダンの東側は山がちゆえに、王都は西寄りに設けられていますので」
セイルと呼ばれたポルトの従者は、質問に対して淡々と答えていた。さすがに従者を務めるだけあって知識は豊富のようである。
「マリン、お前は耐えられるかい?」
「ここまで来たのですから、もうファルーダンへ向かうだけです。後戻りなど、できるわけないじゃないですか」
ポルトの質問に、半ば怒りながら答えるマリンである。
「マリン様、ポルト様にそう仰られてしまうのも無理はないと思います」
「なによ、アクア」
アクアにツッコミを入れられてふて腐れるマリンである。これを見て、ポルトとセイルは苦笑いをしていた。
実はこれが、ポルトがマリンに質問した理由なのだ。どちらかといえばわがままな性格をしているという事である。だから、旅という過酷な環境に耐えられるのか疑問に思ったわけである。
だが、これだけはっきりした答えが返ってきたので、ポルトも安心したようだった。
そして、小休止を終えた公子公女一行は、再びファルーダンへ向けて出発したのだった。
そして、セイルの見立て通り、その日のうちに国境へと到着する。
国境の街の真ん中には大きな壁がそびえ立っていて、かなり遠くの方まで続いていた。その大きさには圧倒されるばかりである。
「よく思えば、国境へやって来たのは初めてだな。これほど立派な壁が立っているとは……」
国境の壁を見たポルトは、その衝撃の強さに思わず言葉を失ってしまった。マリンも同じようで、こっちにいたっては一言も発する事ができていない。
「国境を超えるための手続きは私どもで済ませておきます。アクア、公子様たちを連れて宿へ向かってくれ」
「畏まりました。それでは、ポルト様、マリン様。宿へとご案内致します」
ポルトとマリンは、アクアの案内に従って宿へと向かう。
休む前に国境を越えない理由はただ一つ。壁向こうがファルーダン王国という別の国だからだ。安全が保障されていないというわけである。
なので、国境を越える前は自国の中で休んで、翌朝一番で国境を越えるのである。
そして、それを実現させるために、セイルたち部下が国境警備隊に掛け合って越境の手続きを行っているというわけだ。
すべては、公子と公女の安全に最大限の配慮をするためなのである。
宿へとやって来たポルトとマリンは、それぞれ別々の部屋に泊まっている。兄妹とはいえ、年頃の男女なのである。別々の部屋になってしまうのは仕方のない事だった。とはいえ、安全のために同性の従者と護衛が部屋に配備される事になっている。
「いよいよ、明日からはファルーダン王国ですね」
「そうですね、マリン様」
部屋で休むマリンは、従者であるアクアと話をしている。
「ねえ、アクア」
「なんでございましょうか、マリン様」
「改めて聞くけれど、ファルーダンってどんな所なのかしら」
話はなんとなく聞いてはいるものの、そこまでは詳しくないとあって、マリンは従者であるアクアにファルーダン王国の情報を確認している。
マリンからの質問にアクアは淀みなく答えていく。さすが従者らしく、しっかりと勉強をしているようだった。
ただ、オートマタだとか鉄道だとか、ソルティエ公国に無いものに関しては、マリンは少々怯えた様子を見せていた。よく分からないがゆえに、恐怖を感じたのだろう。アクアもそれを察してか、なるべくマリンにくっ付くようにして話を続けていた。
「アクア」
「なんでございましょうか、マリン様」
その話の最中に、マリンは遮るようにしてアクアに声を掛ける。
「……もういいわ。明日は早いし、私は休むわ」
「畏まりました。では、すぐに準備を致します」
マリンの発言を受けて、アクアはぱたぱたと寝るための準備を始めた。
(何にしても、明日からはファルーダンに入ってしまうわ。……覚悟を決めなきゃ)
寝間着に着替えたマリンは、シーツにくるまりながら強く決意をしていた。
こうして、ソルティエ公国の公子公女は、いよいよ祖国を離れてファルーダン王国の国土へと足を踏み入れる。
ファルーダンの地において、ポルトとマリンには一体どんな運命が待ち受けているのだろうか。
そして、ソルティエ公国とファルーダン王国の今後の関係に、どんな影響を及ぼすのだろうか。それは誰にも分からないのであった。
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