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Mission100
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それからまた10日後の事、ファルーダン王国にソルティエ公国からの返事が届けられた。
その返事は、すぐさまファルーダン国王に伝えられる。
「おお、返事が来たか。どれどれ?」
国王は使いの者から届けられた手紙を兵士を通して受け取ると、すぐさまその中身を確認していた。そのくらいにはソルティエ公国に期待を寄せていたのだ。
中身を確認した国王は、体をふるふると震わせていた。一体何が書かれていたというのだろうか。
「そうかそうか。ソルティエ公国が公子と公女を我が国に留学させるそうだ。これは嬉しい事ではないか!」
国王は本当に嬉しそうに叫んでいる。まあ、国の跡取りを他国に勉強に出させるという時点で、勝ちといえば勝ちなのだろう。だからこそ、国王はここまで大喜びをしているわけである。
あまりの喜びように、宰相も使いの兵士も驚きで固まりながらその様子を見ていた。
その夜、王族が揃って行う食事の席での事だった。
最初こそ全員が黙々と食べていたのだが、国王が突然話を切り出し始めた。
「お前たち、ちょっと聞いてくれ」
国王のこの言葉に、全員が手を止めて注目する。一体何の話があるというのだろうか。食事を淡々と食べていたいアインダードは、露骨に嫌な顔をしていた。
だが、国王はそんな事を気にする事もなく、話を続けていく。
「実はな、昼間の事だが、以前手紙を出したソルティエ公国からの返事が来たのだ」
この言葉に、全員が騒めいている。ソルティエ公国から反応があった事は驚きだが、国王が勝手に打診していた事にはもっと驚いた。どうやら宰相とは話をしたようだが、家族にはまったく話をしていなかったようだ。だからこそ、この反応なのである。
壁際で立って待機するアリスも、さすがにこの国王の発言には驚いていた。同時に、ソルティエ公国の公子と公女という存在に興味を示していた。
それはなぜか。南隣の国は自分の小説には出てこなかった国だからだ。アリスが書いた小説で出てきたのは、メインとなるファルーダン王国と北隣のマスカード帝国の2国だけだったのだ。だからこそ、アリスは興味を抱いているというわけである。
アリスが聞き耳を立てている事に、隣に立つイスヴァンのオートマタであるフラムとアワードのオートマタであるフェールは気が付いていた。だが、食事中はよほどの事がなければ動いてはいけないので、二人とも気にはなるものの直立不動で耐えていた。
(ソルティエ公国の公子と公女が、我が国の学園に留学を……ですか。あとでマイマスターから情報を聞き出さねばなりませんね。私の魔法石ではその辺りの情報が欠落しているようですし、前の世界で書いていた小説でも出てこなかった国ですからね)
アリスは気になって仕方ないのだが、オートマタである以上、勝手にしゃしゃり出るわけにはいかない。食事が終わるまでぐっと堪えているのだった。
食事が終わり、ギルソンと共に部屋へと移動するアリス。
そこでアリスは、ギルソンへと早速質問をぶつけていた。
「マイマスター、ちょっとよろしいでしょうか」
「うん、なんだいアリス」
アリスの問い掛けに、普段通りの笑顔で対応している。
「今日の夕食で話題に出てきましたソルティエ公国についてお教え頂きたいのです」
アリスの問い掛けに、ギルソンは意外だなという顔をしていた。だが、ギルソンはアリスの事をバカにするような事はなく、丁寧に説明を始めた。
「そうだね、アリスには今までかなりお世話になったからね、ボクが知る限りを教えようじゃないか。存在する事は知っていても、内情までは詳しくないなんて事はよくあるからね」
「恐れ入ります、マイマスター」
ギルソンはアリスに対してソルティエ公国の事を知る限り語り始めた。
ギルソンの話では、ファルーダン王国の南西に位置するソルティエ公国は、公爵をトップとして据えた海に面した国だという。ここまではアリスも知っている情報だ。
そのトップたる公爵は大公と呼ばれていて、その大公には息子と娘が居るという事らしい。ちなみにどちらもギルソンよりは年上で、公子はアワードと、公女はイスヴァンと同い年なのだという。
公子の名前はポルト、公女の名前はマリンというそうだ。それを聞いた瞬間、ものすごく安直な名前だと思ったアリスである。
それはさておき、ソルティエ公国は海運が盛んではあるものの、じわじわと内陸の方にも睨みを利かせ始めているらしい。特にこのファルーダンは突如として国政を立て直したとあって、より一層注目をしているとの事で、公子と公女の留学という話もこれに関連しているのではないかとギルソンは睨んでいるのだ。
「なるほど、よく分かりました。さすがはマイマスターでございます」
アリスは頭を下げる。
「まあ、外交を頑張るというのなら、これくらいはしないとね」
ギルソンはそう言って笑っていた。
本当に大したものである。結構忙しそうにしていた割には、これだけ調べ上げていたとは恐れ入る。アリスは改めてギルソンの能力の高さを思い知ったのだった。
だが、そこまで聞いたアリスの心の中には、なんとなく胸騒ぎが起こった。理由は分からないが、そんな気がしたのである。
さてさて、マスカード帝国はおろか、ソルティエ公国からも留学生を迎える事になったファルーダン王国。これからどうなっていってしまうのだろうか。
その返事は、すぐさまファルーダン国王に伝えられる。
「おお、返事が来たか。どれどれ?」
国王は使いの者から届けられた手紙を兵士を通して受け取ると、すぐさまその中身を確認していた。そのくらいにはソルティエ公国に期待を寄せていたのだ。
中身を確認した国王は、体をふるふると震わせていた。一体何が書かれていたというのだろうか。
「そうかそうか。ソルティエ公国が公子と公女を我が国に留学させるそうだ。これは嬉しい事ではないか!」
国王は本当に嬉しそうに叫んでいる。まあ、国の跡取りを他国に勉強に出させるという時点で、勝ちといえば勝ちなのだろう。だからこそ、国王はここまで大喜びをしているわけである。
あまりの喜びように、宰相も使いの兵士も驚きで固まりながらその様子を見ていた。
その夜、王族が揃って行う食事の席での事だった。
最初こそ全員が黙々と食べていたのだが、国王が突然話を切り出し始めた。
「お前たち、ちょっと聞いてくれ」
国王のこの言葉に、全員が手を止めて注目する。一体何の話があるというのだろうか。食事を淡々と食べていたいアインダードは、露骨に嫌な顔をしていた。
だが、国王はそんな事を気にする事もなく、話を続けていく。
「実はな、昼間の事だが、以前手紙を出したソルティエ公国からの返事が来たのだ」
この言葉に、全員が騒めいている。ソルティエ公国から反応があった事は驚きだが、国王が勝手に打診していた事にはもっと驚いた。どうやら宰相とは話をしたようだが、家族にはまったく話をしていなかったようだ。だからこそ、この反応なのである。
壁際で立って待機するアリスも、さすがにこの国王の発言には驚いていた。同時に、ソルティエ公国の公子と公女という存在に興味を示していた。
それはなぜか。南隣の国は自分の小説には出てこなかった国だからだ。アリスが書いた小説で出てきたのは、メインとなるファルーダン王国と北隣のマスカード帝国の2国だけだったのだ。だからこそ、アリスは興味を抱いているというわけである。
アリスが聞き耳を立てている事に、隣に立つイスヴァンのオートマタであるフラムとアワードのオートマタであるフェールは気が付いていた。だが、食事中はよほどの事がなければ動いてはいけないので、二人とも気にはなるものの直立不動で耐えていた。
(ソルティエ公国の公子と公女が、我が国の学園に留学を……ですか。あとでマイマスターから情報を聞き出さねばなりませんね。私の魔法石ではその辺りの情報が欠落しているようですし、前の世界で書いていた小説でも出てこなかった国ですからね)
アリスは気になって仕方ないのだが、オートマタである以上、勝手にしゃしゃり出るわけにはいかない。食事が終わるまでぐっと堪えているのだった。
食事が終わり、ギルソンと共に部屋へと移動するアリス。
そこでアリスは、ギルソンへと早速質問をぶつけていた。
「マイマスター、ちょっとよろしいでしょうか」
「うん、なんだいアリス」
アリスの問い掛けに、普段通りの笑顔で対応している。
「今日の夕食で話題に出てきましたソルティエ公国についてお教え頂きたいのです」
アリスの問い掛けに、ギルソンは意外だなという顔をしていた。だが、ギルソンはアリスの事をバカにするような事はなく、丁寧に説明を始めた。
「そうだね、アリスには今までかなりお世話になったからね、ボクが知る限りを教えようじゃないか。存在する事は知っていても、内情までは詳しくないなんて事はよくあるからね」
「恐れ入ります、マイマスター」
ギルソンはアリスに対してソルティエ公国の事を知る限り語り始めた。
ギルソンの話では、ファルーダン王国の南西に位置するソルティエ公国は、公爵をトップとして据えた海に面した国だという。ここまではアリスも知っている情報だ。
そのトップたる公爵は大公と呼ばれていて、その大公には息子と娘が居るという事らしい。ちなみにどちらもギルソンよりは年上で、公子はアワードと、公女はイスヴァンと同い年なのだという。
公子の名前はポルト、公女の名前はマリンというそうだ。それを聞いた瞬間、ものすごく安直な名前だと思ったアリスである。
それはさておき、ソルティエ公国は海運が盛んではあるものの、じわじわと内陸の方にも睨みを利かせ始めているらしい。特にこのファルーダンは突如として国政を立て直したとあって、より一層注目をしているとの事で、公子と公女の留学という話もこれに関連しているのではないかとギルソンは睨んでいるのだ。
「なるほど、よく分かりました。さすがはマイマスターでございます」
アリスは頭を下げる。
「まあ、外交を頑張るというのなら、これくらいはしないとね」
ギルソンはそう言って笑っていた。
本当に大したものである。結構忙しそうにしていた割には、これだけ調べ上げていたとは恐れ入る。アリスは改めてギルソンの能力の高さを思い知ったのだった。
だが、そこまで聞いたアリスの心の中には、なんとなく胸騒ぎが起こった。理由は分からないが、そんな気がしたのである。
さてさて、マスカード帝国はおろか、ソルティエ公国からも留学生を迎える事になったファルーダン王国。これからどうなっていってしまうのだろうか。
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