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Mission093
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アルヴィンは城の中をアリスを探しながら歩いている。アルヴィンにとって正直どうでもいい相手ではあるものの、マスターであるシュヴァリエの命令が出た以上、それに従わなければならなかった。
ところが、どうでもいいとは思いながらも、アルヴィンも少し気になる相手ではあった。なにせ、腕の落ちるオートマタ職人によって作られたはずのギルソンのオートマタが、他の誰よりも優秀な結果を残しているのだから。それでもやはり、アルヴィンにとってはどうでもいい相手なのである。
(やれやれ、我がマスターもずいぶんとご執心な事だ)
そんなアルヴィンの前に、見た事のあるオートマタが立っていた。第四王子アワードのオートマタであるフェールだった。
「あら、アルヴィン。シュヴァリエ殿下から離れて、こんなところで何をしているのですか?」
「それはお前もだろう、フェール。アワードを見ていなくていいのか?」
フェールの問い掛けに取って返すアルヴィンである。さすがに優秀なオートマタなだけはある。
「マスターはイスヴァン殿下とご一緒しておりますよ。学園の勉強の面倒を見てらっしゃるようですから」
アルヴィンが返してきた質問に、フェールは淡々と答えていた。イスヴァンと一緒に居るのなら、フラムかフェールのどちらかが付く事になる。だから、一人はこうやって自由に行動しているというわけだった。
「ふっ、そうか」
アルヴィンはこうとだけ呟くと、そのまま立ち去ろうとする。だが、フェールはそれを逃さなかった。
「待ちなさい、アルヴィン。私の質問に答えていませんよ」
アルヴィンの手をがっちりと掴むフェール。思ってもみなかった行動に、アルヴィンは少しだけ眉を動かしていた。
「……何の真似だ、フェール」
「質問に答えないアルヴィンが悪いのです。ここで何をしていたのですか」
「ふん、ただ城の中の警戒をしているだけだ。何か問題でもあるのか?」
引き下がらないフェールに対して、鋭い目つきをしながら吐き捨てるアルヴィン。
「いえ、問題はないでしょうが、安易にシュヴァリエ殿下の側を離れるというのは、いささか感心はできないかと」
「ふん、マスターはもう子どもではないのだ。俺が居なくても何も問題はない。お前たちとは違うのだよ」
フェールが咎めようとするが、アルヴィンは自信を持って論破してきた。こう言われてしまえば、フェールとて何も言い返せなかった。
「言いたい事はそれだけか? だったらお前はさっさと子守りに戻るんだな。俺は忙しいんだ」
アルヴィンはそう吐き捨ててすたすたと歩いて立ち去ってしまった。
残されたフェールは正直悔しかったが、あの殺気を放つアルヴィンに襲われなかったのは命拾いしたものだと思われる。
(……相変わらずすさまじい殺気ですね。マスターの上の兄弟たちはいいオートマタを贈ってもらったというのがよく分かります)
オートマタでありながら、冷や汗をかくフェールである。
(ですが、今の事は報告しておいた方がよさそうですね。マスターのところに戻りましょうか)
フェールはそう考えて、飲み物だけを準備すると急いでアワードのところへと戻ったのだった。
そのフェールと別れて歩くアルヴィンは、まだアリスを見つけられずにいた。思い当たる場所はすべて見て回ったはずなのだが、一体どこに居るというのだろうか。
「くそっ、あのオートマタめ……。一体どこに居るというんだ」
アルヴィンは手加減をして城の壁を叩く。本気で叩くと砕いてしまうので、こういう加減は自動的にできるようになっているのだ。
そんな時だった。
アルヴィンの目の前から、探していた人物が歩いてきたのだ。
「見つけたぞ、ポンコツオートマタ!」
その姿を認めるや否や、アルヴィンはいきなり襲い掛かった。
「やれやれ、マイマスターの周りを嗅ぎまわっていたかと思えば、いよいよ実力行使ですか」
そう、そこに居たのはアリスである。
なぜこんな変な場所に居るのかというと、久しぶりに家庭菜園を見てきたのだ。普段は庭師の人に任せていたのだが、たまには自分で見ないとと思って立ち寄ってきたのだった。
そんな事はさておき、城内に凄まじい金属音が響き渡る。
「くっ、これを防ぐとは……。これが劣悪なオートマタの性能だというのか?!」
ほぼ全力を乗せた攻撃だったはずだった。だが、そのアルヴィンの攻撃を、アリスは軽々と止めてみせたのだった。
「やはり、シュヴァリエ殿下はマイマスターの事を邪魔に思っていらっしゃるようですね。このような暴挙に出られるとは……」
冷静に対処し、鋭くアルヴィンを睨み付けるアリス。その表情に、思わずアルヴィンは距離を取る。
(な、なんだ今のは。この俺が、恐怖を感じたというのか?)
距離を取ったアルヴィンは、アリスと睨み合う。だが、安易に攻撃を仕掛けるべきではないと、アルヴィンは警戒を強めていた。
「アルヴィン、このまま立ち去りなさい。私たちは敵対するつもりはありませんし、おそらくマイマスターは王位継承権を放棄なさるはずです。何も争う必要などないのですよ」
「黙れ! そう言って俺たちを油断させるつもりだろう!」
アリスの言葉を全力で否定するアルヴィン。だが、アリスの表情はまったく崩れなかった。
あまりにもアリスが堂々としているために、アルヴィンは手も足も、言葉すらも出なかった。そして、
「くそっ、覚えていろ! 必ずやお前らを排除してやる!」
負け惜しみを言い放って去っていったのだった。
その去っていくアルヴィンの姿を、アリスは悲しそうな瞳で見送っていた。
ところが、どうでもいいとは思いながらも、アルヴィンも少し気になる相手ではあった。なにせ、腕の落ちるオートマタ職人によって作られたはずのギルソンのオートマタが、他の誰よりも優秀な結果を残しているのだから。それでもやはり、アルヴィンにとってはどうでもいい相手なのである。
(やれやれ、我がマスターもずいぶんとご執心な事だ)
そんなアルヴィンの前に、見た事のあるオートマタが立っていた。第四王子アワードのオートマタであるフェールだった。
「あら、アルヴィン。シュヴァリエ殿下から離れて、こんなところで何をしているのですか?」
「それはお前もだろう、フェール。アワードを見ていなくていいのか?」
フェールの問い掛けに取って返すアルヴィンである。さすがに優秀なオートマタなだけはある。
「マスターはイスヴァン殿下とご一緒しておりますよ。学園の勉強の面倒を見てらっしゃるようですから」
アルヴィンが返してきた質問に、フェールは淡々と答えていた。イスヴァンと一緒に居るのなら、フラムかフェールのどちらかが付く事になる。だから、一人はこうやって自由に行動しているというわけだった。
「ふっ、そうか」
アルヴィンはこうとだけ呟くと、そのまま立ち去ろうとする。だが、フェールはそれを逃さなかった。
「待ちなさい、アルヴィン。私の質問に答えていませんよ」
アルヴィンの手をがっちりと掴むフェール。思ってもみなかった行動に、アルヴィンは少しだけ眉を動かしていた。
「……何の真似だ、フェール」
「質問に答えないアルヴィンが悪いのです。ここで何をしていたのですか」
「ふん、ただ城の中の警戒をしているだけだ。何か問題でもあるのか?」
引き下がらないフェールに対して、鋭い目つきをしながら吐き捨てるアルヴィン。
「いえ、問題はないでしょうが、安易にシュヴァリエ殿下の側を離れるというのは、いささか感心はできないかと」
「ふん、マスターはもう子どもではないのだ。俺が居なくても何も問題はない。お前たちとは違うのだよ」
フェールが咎めようとするが、アルヴィンは自信を持って論破してきた。こう言われてしまえば、フェールとて何も言い返せなかった。
「言いたい事はそれだけか? だったらお前はさっさと子守りに戻るんだな。俺は忙しいんだ」
アルヴィンはそう吐き捨ててすたすたと歩いて立ち去ってしまった。
残されたフェールは正直悔しかったが、あの殺気を放つアルヴィンに襲われなかったのは命拾いしたものだと思われる。
(……相変わらずすさまじい殺気ですね。マスターの上の兄弟たちはいいオートマタを贈ってもらったというのがよく分かります)
オートマタでありながら、冷や汗をかくフェールである。
(ですが、今の事は報告しておいた方がよさそうですね。マスターのところに戻りましょうか)
フェールはそう考えて、飲み物だけを準備すると急いでアワードのところへと戻ったのだった。
そのフェールと別れて歩くアルヴィンは、まだアリスを見つけられずにいた。思い当たる場所はすべて見て回ったはずなのだが、一体どこに居るというのだろうか。
「くそっ、あのオートマタめ……。一体どこに居るというんだ」
アルヴィンは手加減をして城の壁を叩く。本気で叩くと砕いてしまうので、こういう加減は自動的にできるようになっているのだ。
そんな時だった。
アルヴィンの目の前から、探していた人物が歩いてきたのだ。
「見つけたぞ、ポンコツオートマタ!」
その姿を認めるや否や、アルヴィンはいきなり襲い掛かった。
「やれやれ、マイマスターの周りを嗅ぎまわっていたかと思えば、いよいよ実力行使ですか」
そう、そこに居たのはアリスである。
なぜこんな変な場所に居るのかというと、久しぶりに家庭菜園を見てきたのだ。普段は庭師の人に任せていたのだが、たまには自分で見ないとと思って立ち寄ってきたのだった。
そんな事はさておき、城内に凄まじい金属音が響き渡る。
「くっ、これを防ぐとは……。これが劣悪なオートマタの性能だというのか?!」
ほぼ全力を乗せた攻撃だったはずだった。だが、そのアルヴィンの攻撃を、アリスは軽々と止めてみせたのだった。
「やはり、シュヴァリエ殿下はマイマスターの事を邪魔に思っていらっしゃるようですね。このような暴挙に出られるとは……」
冷静に対処し、鋭くアルヴィンを睨み付けるアリス。その表情に、思わずアルヴィンは距離を取る。
(な、なんだ今のは。この俺が、恐怖を感じたというのか?)
距離を取ったアルヴィンは、アリスと睨み合う。だが、安易に攻撃を仕掛けるべきではないと、アルヴィンは警戒を強めていた。
「アルヴィン、このまま立ち去りなさい。私たちは敵対するつもりはありませんし、おそらくマイマスターは王位継承権を放棄なさるはずです。何も争う必要などないのですよ」
「黙れ! そう言って俺たちを油断させるつもりだろう!」
アリスの言葉を全力で否定するアルヴィン。だが、アリスの表情はまったく崩れなかった。
あまりにもアリスが堂々としているために、アルヴィンは手も足も、言葉すらも出なかった。そして、
「くそっ、覚えていろ! 必ずやお前らを排除してやる!」
負け惜しみを言い放って去っていったのだった。
その去っていくアルヴィンの姿を、アリスは悲しそうな瞳で見送っていた。
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