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Mission089
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悶々とした気持ちの中、ただただ時間だけが流れていく。
アエスの態度から、シュヴァリエとスーリガンの二人に怪しい動きがある事は察せたのだが、それがどういう事なのかはまったく掴めなかったのである。
そんな状態がしばらく続いたのだが、ある時にちょっとした違和感に気が付いたのだ。
「フェール、気が付いたか?」
「何をでしょうか、フラム」
二人で仕事をしながら話をしているオートマタたち。フラムは何か異常に気が付いたようだが、フェールの方は何も感じていなかったようである。
「あの気の弱い王子のオートマタなだけあるな。そこまで鈍いとはな」
「何を言っているのですか。マスターを貶めるのはやめて頂けますか?」
「ふん、自分の事に関して言い訳をしない事は褒めてやろう」
怒るフェールに対して鼻で笑うフラム。オートマタとはいっても結構人間くさいところがあるのである。
「まあ、仕事だから一応ちゃんと説明してやろう」
ため息を吐くとか、本当に魔法で動く自立人形なのか疑わしいところがある。それはそれとして、フラムはフェールに対して自分が気が付いた事を話す。
「シュヴァリエのオートマタが見当たらないんだ。奴の名前はアルヴィンといったか、ここ最近はシュヴァリエとは完全に別行動をしている。怪しいと思わないか?」
イスヴァンもかなり鋭いところがあるせいか、そのオートマタであるフラムもかなり鋭い観察力と洞察力の持ち主になっていた。どちらかというと能力としては平凡なフェールがついて行けるわけがなかったのである。
「そうですね。基本的にオートマタは主であるマスターと共に行動をするものです。さすがに常にというわけではありませんが、逆に常にそばに居ないというのは違和感がありますね……」
さすがのフェールもその違和感はしっかりと感じるようである。
「だろう? ならば、その怪しいオートマタの動きをはっきりさせてやろうと思わないか?」
「思いませんね。……と言いたいところですが、マスターたちの身の安全を考えれば、調べてみる必要がありそうですね」
フラムの提案に、最初こそ断ろうとしたフェールも、ギルソンたちが感じている危険性をはっきりさせておく必要があると考えたようだった。
「そうと決まれば早速行動だな。お前はどのくらい魔法を使いこなせる?」
行動を起こそうとするフラムは、まずはフェールの能力を確認する事にしたようだ。
「魔法は攻撃系はほぼないですが、防御系をいくつか使用できます。あと、護身用に少々の暗器が使用できますね」
「そうか、頼りない感じだが、ないよりはマシと言ったところか」
フェールの答えに、フラムはさすがに考え込んだ。大して魔法を使えないという事は、オートマタとしてはそれほど戦力にはなりにくいのである。暗器が扱えるとはいっても、人間を極力傷付けないような制御があるオートマタでは飾りのようなものだった。
「そうだな。フェールには使用人たちに聞き込みをしてもらおうか。もし、マスターたちの懸念が現実になりそうだったら、すぐに相談するといいだろう」
「分かりました。あなたこそ無茶はしないで下さいね。いくら強いオートマタとはいっても、魔法石を壊されてしまえば一巻の終わりなんですから」
「ふん、分かっている。俺はそんな失態は犯したりはしない」
イスヴァンに似てか、どこまでも勝ち気な性格のフラムである。
ともかく、二人の大体の行動の方針が決まったので、早速調査開始となった。
この調査の最中も、アエスの捕獲を継続していた。アエスもフェールと同じような気の弱い側面を持つオートマタなので、うまくすれば味方に引き込める可能性があるのである。ただ、それはシュヴァリエ陣営にもこちらの情報を渡してしまう危険性があるので、はっきり言って諸刃の剣のようなものだった。懸念はたくさんあるので、最初のうちは慎重さを求められた。
そんなある日、フェールが使用人たちの間で聞き込みをしていると、近くでアエスを見かけたのだった。
「アエス、ちょうどよかったわ。ちょっといいかしら」
アエスに駆け寄るフェール。すると、アエスはフェールの姿を見て震え上がったのだった。
「ひっ!」
「どうしたのよ、アエス。そんなに青ざめた表情をして」
大げさに驚くアエスに対して、フェールは心配そうに話し掛ける。オートマタはただの人形ではないのだ。感情だってあるし、気遣いだってできる。人間との違いは食事も休憩も要らない事と魔法が使える事くらいである。
「ふぇ、フェールかぁ……。驚かさないで下さいよ」
「驚いたのはこっちよ。オートマタなのになんでそんなに血色の悪い顔をしているわけなのかしら」
「そ、それは……」
文句を言ったアエスだったが、フェールから質問をぶつけてみると、ものすごく戸惑った態度を見せていた。
……これはさすがに怪しい。そう睨んだフェールは、
「アエス、悩み事があるなら聞くわよ。同じ王族に仕えるオートマタ同士なんですから、ね?」
ウィンクしながらアエスに話し掛けていた。それでもアエスのおどおどとした態度は変わらなかった
このままでは埒が明かないと、フェールは仕方なくアエスの手を引いて近くの空き部屋へと誘い込んだのだった。
アエスの態度から、シュヴァリエとスーリガンの二人に怪しい動きがある事は察せたのだが、それがどういう事なのかはまったく掴めなかったのである。
そんな状態がしばらく続いたのだが、ある時にちょっとした違和感に気が付いたのだ。
「フェール、気が付いたか?」
「何をでしょうか、フラム」
二人で仕事をしながら話をしているオートマタたち。フラムは何か異常に気が付いたようだが、フェールの方は何も感じていなかったようである。
「あの気の弱い王子のオートマタなだけあるな。そこまで鈍いとはな」
「何を言っているのですか。マスターを貶めるのはやめて頂けますか?」
「ふん、自分の事に関して言い訳をしない事は褒めてやろう」
怒るフェールに対して鼻で笑うフラム。オートマタとはいっても結構人間くさいところがあるのである。
「まあ、仕事だから一応ちゃんと説明してやろう」
ため息を吐くとか、本当に魔法で動く自立人形なのか疑わしいところがある。それはそれとして、フラムはフェールに対して自分が気が付いた事を話す。
「シュヴァリエのオートマタが見当たらないんだ。奴の名前はアルヴィンといったか、ここ最近はシュヴァリエとは完全に別行動をしている。怪しいと思わないか?」
イスヴァンもかなり鋭いところがあるせいか、そのオートマタであるフラムもかなり鋭い観察力と洞察力の持ち主になっていた。どちらかというと能力としては平凡なフェールがついて行けるわけがなかったのである。
「そうですね。基本的にオートマタは主であるマスターと共に行動をするものです。さすがに常にというわけではありませんが、逆に常にそばに居ないというのは違和感がありますね……」
さすがのフェールもその違和感はしっかりと感じるようである。
「だろう? ならば、その怪しいオートマタの動きをはっきりさせてやろうと思わないか?」
「思いませんね。……と言いたいところですが、マスターたちの身の安全を考えれば、調べてみる必要がありそうですね」
フラムの提案に、最初こそ断ろうとしたフェールも、ギルソンたちが感じている危険性をはっきりさせておく必要があると考えたようだった。
「そうと決まれば早速行動だな。お前はどのくらい魔法を使いこなせる?」
行動を起こそうとするフラムは、まずはフェールの能力を確認する事にしたようだ。
「魔法は攻撃系はほぼないですが、防御系をいくつか使用できます。あと、護身用に少々の暗器が使用できますね」
「そうか、頼りない感じだが、ないよりはマシと言ったところか」
フェールの答えに、フラムはさすがに考え込んだ。大して魔法を使えないという事は、オートマタとしてはそれほど戦力にはなりにくいのである。暗器が扱えるとはいっても、人間を極力傷付けないような制御があるオートマタでは飾りのようなものだった。
「そうだな。フェールには使用人たちに聞き込みをしてもらおうか。もし、マスターたちの懸念が現実になりそうだったら、すぐに相談するといいだろう」
「分かりました。あなたこそ無茶はしないで下さいね。いくら強いオートマタとはいっても、魔法石を壊されてしまえば一巻の終わりなんですから」
「ふん、分かっている。俺はそんな失態は犯したりはしない」
イスヴァンに似てか、どこまでも勝ち気な性格のフラムである。
ともかく、二人の大体の行動の方針が決まったので、早速調査開始となった。
この調査の最中も、アエスの捕獲を継続していた。アエスもフェールと同じような気の弱い側面を持つオートマタなので、うまくすれば味方に引き込める可能性があるのである。ただ、それはシュヴァリエ陣営にもこちらの情報を渡してしまう危険性があるので、はっきり言って諸刃の剣のようなものだった。懸念はたくさんあるので、最初のうちは慎重さを求められた。
そんなある日、フェールが使用人たちの間で聞き込みをしていると、近くでアエスを見かけたのだった。
「アエス、ちょうどよかったわ。ちょっといいかしら」
アエスに駆け寄るフェール。すると、アエスはフェールの姿を見て震え上がったのだった。
「ひっ!」
「どうしたのよ、アエス。そんなに青ざめた表情をして」
大げさに驚くアエスに対して、フェールは心配そうに話し掛ける。オートマタはただの人形ではないのだ。感情だってあるし、気遣いだってできる。人間との違いは食事も休憩も要らない事と魔法が使える事くらいである。
「ふぇ、フェールかぁ……。驚かさないで下さいよ」
「驚いたのはこっちよ。オートマタなのになんでそんなに血色の悪い顔をしているわけなのかしら」
「そ、それは……」
文句を言ったアエスだったが、フェールから質問をぶつけてみると、ものすごく戸惑った態度を見せていた。
……これはさすがに怪しい。そう睨んだフェールは、
「アエス、悩み事があるなら聞くわよ。同じ王族に仕えるオートマタ同士なんですから、ね?」
ウィンクしながらアエスに話し掛けていた。それでもアエスのおどおどとした態度は変わらなかった
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