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Mission081
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学園での授業も終わってお城に戻ってきたアワードとイスヴァンは、この日もギルソンの部屋へとやって来ていた。やはり年が近いとあってか、集まりやすいようである。
「今戻ったぞ。ギルソンは居るか?」
ところが、ギルソンの部屋には誰も居なかった。誰も居ない事にアワードとイスヴァンは顔を見合わせて、そのまま二人で首を捻っていた。
「これはマスター。ギルソン殿下でしたら、今は騎士たちと訓練をしておりますよ」
イスヴァンのオートマタであるフラムが駆け寄ってきてギルソンの居場所を教えてくれた。
「そうか、騎士たちと訓練か」
それを聞いたイスヴァンは何かを思いついたのか、にやりと笑っている。
「おい、アワード。俺たちも参加しようぜ」
「えっ、これからですか?」
アワードは驚いているが、イスヴァンに荷物を取り上げられると、フラムへと押し付けていた。
「フラム、俺たちは今から訓練場に行ってくる。その荷物を俺たちの部屋に置いてから見に来てくれ」
「畏まりました」
返事をしたフラムは、走り去っていくイスヴァンたちを見送ると、それとは反対方向へと歩き出した。
訓練場へとやって来たイスヴァンとアワード。そこでは汗をかきながらギルソンが騎士たちと稽古に励んでいた。
「まったく、精が出るな、ギルソン」
イスヴァンが声を掛けると、一斉に全員の動きが止まる。
「これはアワード殿下、イスヴァン殿下。お帰りなさいませ」
騎士たちが一斉に敬礼をする。こんな急な事だというのに冷静に対応できるとは、ファルーダンの騎士たちはかなり鍛えられているようである。
「アワード兄さん、イスヴァン殿下。学園は終わったのですか?」
「うむ、終わったからこうやって戻ってきたんだ。ところでギルソン」
「なんでしょうか」
イスヴァンが話し掛けてくるので、ギルソンはそれに反応する。
「俺たちも混ぜてもらってもいいか? 王子として剣術を嗜んでおかないといけないからな。いざという時に自分も他人も守れないようでは、情けなさすぎるというものだろう?」
どうやらイスヴァンも稽古に参加したいようである。その語った理由というのがまた素晴らしい限りだった。これが小説では残虐非道な皇帝となった男のセリフとは思えなかった。
イスヴァンのこの言い分に共感したギルソンは、騎士に命じて木剣を持ってこさせた。
「悪いな。これでも親父が治める帝国の跡を継ぐ身なんだ。もしもって時には自ら剣を持って敵と戦う頼れる皇帝になるつもりだからな。日々の鍛錬っていうのがものをいうものなんだぜ」
木剣を受け取ったイスヴァンは、剣をギルソンに向けながらはっきりと言い切った。まったく、この年で既に将来の事を決めてしまっているというのは素晴らしいものだ。
それを聞いたギルソンは嬉しそうに微笑んでいる。
「まったく、素晴らしいですね、イスヴァン殿下。ボクは王位を継ぐかは分かりませんが、その覚悟はぜひとも見習いたいですね」
負けじと強い眼差しをイスヴァンへと送るギルソン。はっきりとは分からないものの、間違いなくギルソンとイスヴァンとの間には火花が飛び散っているものと思われる。しかし、二人の様子を見ているアワードはものすごく戸惑っていた。
ところが、そんな状況の中で、気が付いたらギルソンとイスヴァンが剣を交える雰囲気になってしまっていた。その空気を察したのか、ギルソンたちの周りからは場所を空けるように騎士が一人、また一人と離れていく。イスヴァンはその様子に気が付いたようである。
「ふっ、ファルーダンの騎士はなかなかに空気が読めるようだな。ギルソン、どうだろうか。俺と一戦交えてみないか?」
勝ち気な表情のまま、イスヴァンはギルソンに木剣を向けて話し掛ける。その様子にギルソンは一瞬戸惑ったものの、
「分かりました。イスヴァン殿下がそうお望みならば、受けて立ちましょう」
ギルソンはその挑発に乗った。
「おやおや、これは面白い事になっていますね」
「まったく、なんでこんな事になっているのでしょうかね」
その場へ、ちょうどアリスとフラムがやって来た。二人とも訓練場の状況を見て驚いているようだった。なにせ自分たちのマスターたちが剣を交えるような状況になっているのだから。
それでも、二人とも止めるような気配はない。というのも、二人とも自分たちのマスターには経験を積んでもらいたいと思っているからだ。
オートマタは主を支えるのが仕事である。その中で、成長のためにあえて危険な事をしていてもそのまま見過ごす事だってあるのだ。アリスもフラムも、今まさにそういう状態となっているのである。
その状況の中で、一人おろおろとしているアワードの姿が目立つ。彼のオートマタの姿が見えない事に気が付いたアリスは、アワードを落ち着かせるために近付いていく。
「アワード殿下、落ち着いて下さい」
「あ、アリス!」
アリスが話し掛けると、アワードは名前を叫んでいた。
「ど、どうしよう。ギルソンたちが戦いそうになってるんだ……」
アワードはものすごく慌てふためいている。そこへ、アリスはアワードに優しく話し掛ける。
「アワード殿下。落ち着いて下さい、これは訓練です」
だが、それでもアワードはまったく落ち着きそうになかった。
「私たちも居るのです。大事には至りませんから、安心して見守りましょう」
アリスがそう言うのだが、アワードの顔から不安の色は消えなかった。
そういった周囲の状況の中、ギルソンは黙ってイスヴァンと向かい合ったのだった。
「今戻ったぞ。ギルソンは居るか?」
ところが、ギルソンの部屋には誰も居なかった。誰も居ない事にアワードとイスヴァンは顔を見合わせて、そのまま二人で首を捻っていた。
「これはマスター。ギルソン殿下でしたら、今は騎士たちと訓練をしておりますよ」
イスヴァンのオートマタであるフラムが駆け寄ってきてギルソンの居場所を教えてくれた。
「そうか、騎士たちと訓練か」
それを聞いたイスヴァンは何かを思いついたのか、にやりと笑っている。
「おい、アワード。俺たちも参加しようぜ」
「えっ、これからですか?」
アワードは驚いているが、イスヴァンに荷物を取り上げられると、フラムへと押し付けていた。
「フラム、俺たちは今から訓練場に行ってくる。その荷物を俺たちの部屋に置いてから見に来てくれ」
「畏まりました」
返事をしたフラムは、走り去っていくイスヴァンたちを見送ると、それとは反対方向へと歩き出した。
訓練場へとやって来たイスヴァンとアワード。そこでは汗をかきながらギルソンが騎士たちと稽古に励んでいた。
「まったく、精が出るな、ギルソン」
イスヴァンが声を掛けると、一斉に全員の動きが止まる。
「これはアワード殿下、イスヴァン殿下。お帰りなさいませ」
騎士たちが一斉に敬礼をする。こんな急な事だというのに冷静に対応できるとは、ファルーダンの騎士たちはかなり鍛えられているようである。
「アワード兄さん、イスヴァン殿下。学園は終わったのですか?」
「うむ、終わったからこうやって戻ってきたんだ。ところでギルソン」
「なんでしょうか」
イスヴァンが話し掛けてくるので、ギルソンはそれに反応する。
「俺たちも混ぜてもらってもいいか? 王子として剣術を嗜んでおかないといけないからな。いざという時に自分も他人も守れないようでは、情けなさすぎるというものだろう?」
どうやらイスヴァンも稽古に参加したいようである。その語った理由というのがまた素晴らしい限りだった。これが小説では残虐非道な皇帝となった男のセリフとは思えなかった。
イスヴァンのこの言い分に共感したギルソンは、騎士に命じて木剣を持ってこさせた。
「悪いな。これでも親父が治める帝国の跡を継ぐ身なんだ。もしもって時には自ら剣を持って敵と戦う頼れる皇帝になるつもりだからな。日々の鍛錬っていうのがものをいうものなんだぜ」
木剣を受け取ったイスヴァンは、剣をギルソンに向けながらはっきりと言い切った。まったく、この年で既に将来の事を決めてしまっているというのは素晴らしいものだ。
それを聞いたギルソンは嬉しそうに微笑んでいる。
「まったく、素晴らしいですね、イスヴァン殿下。ボクは王位を継ぐかは分かりませんが、その覚悟はぜひとも見習いたいですね」
負けじと強い眼差しをイスヴァンへと送るギルソン。はっきりとは分からないものの、間違いなくギルソンとイスヴァンとの間には火花が飛び散っているものと思われる。しかし、二人の様子を見ているアワードはものすごく戸惑っていた。
ところが、そんな状況の中で、気が付いたらギルソンとイスヴァンが剣を交える雰囲気になってしまっていた。その空気を察したのか、ギルソンたちの周りからは場所を空けるように騎士が一人、また一人と離れていく。イスヴァンはその様子に気が付いたようである。
「ふっ、ファルーダンの騎士はなかなかに空気が読めるようだな。ギルソン、どうだろうか。俺と一戦交えてみないか?」
勝ち気な表情のまま、イスヴァンはギルソンに木剣を向けて話し掛ける。その様子にギルソンは一瞬戸惑ったものの、
「分かりました。イスヴァン殿下がそうお望みならば、受けて立ちましょう」
ギルソンはその挑発に乗った。
「おやおや、これは面白い事になっていますね」
「まったく、なんでこんな事になっているのでしょうかね」
その場へ、ちょうどアリスとフラムがやって来た。二人とも訓練場の状況を見て驚いているようだった。なにせ自分たちのマスターたちが剣を交えるような状況になっているのだから。
それでも、二人とも止めるような気配はない。というのも、二人とも自分たちのマスターには経験を積んでもらいたいと思っているからだ。
オートマタは主を支えるのが仕事である。その中で、成長のためにあえて危険な事をしていてもそのまま見過ごす事だってあるのだ。アリスもフラムも、今まさにそういう状態となっているのである。
その状況の中で、一人おろおろとしているアワードの姿が目立つ。彼のオートマタの姿が見えない事に気が付いたアリスは、アワードを落ち着かせるために近付いていく。
「アワード殿下、落ち着いて下さい」
「あ、アリス!」
アリスが話し掛けると、アワードは名前を叫んでいた。
「ど、どうしよう。ギルソンたちが戦いそうになってるんだ……」
アワードはものすごく慌てふためいている。そこへ、アリスはアワードに優しく話し掛ける。
「アワード殿下。落ち着いて下さい、これは訓練です」
だが、それでもアワードはまったく落ち着きそうになかった。
「私たちも居るのです。大事には至りませんから、安心して見守りましょう」
アリスがそう言うのだが、アワードの顔から不安の色は消えなかった。
そういった周囲の状況の中、ギルソンは黙ってイスヴァンと向かい合ったのだった。
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