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Mission078
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数日後、各駅にてファルーダン鉄道からの案内が貼り出された。
それは、庶民の鉄道利用料金を引き下げるというものだった。現行の大体4分の1程度の価格になるものの、その代わりに食堂の利用は別料金になるというものだった。申し出があれば、今まで利用した金額の半分を変換する旨も書き記しておいた。全員が全員食堂を使わなかった保証はないので、返金する金額は半額としておいた。ただし、それだと不満は起こるだろうから、おまけだって忘れていなかった。
すると当然のように、貼り出した翌日には各駅に利用経験のある人物たちが殺到していた。中にはお金を騙し取ろうとするような輩も紛れていたものの、相手がオートマタだという事を忘れてはいけない。あれからもマリカの頑張りでオートマタが増えたのだが、全員にこれまでの乗客の全情報が共有されていたのである。だから、オートマタたちが手をかざせば、その人物の乗車経験が全部丸分かりなのである。騙し取ろうとした人物たちは、拘束されて兵士たちに引き渡されていた。
初日からそんな光景を見せつけられては、駅に払い戻しを求めてやって来る人たちの態度は見事に落ち着いていった。乗車経験を全部さらけ出される事も恐怖だからである。いやはや、オートマタの能力恐るべしである。
さて、鉄道の事はオートマタたちに全部任せたギルソンは何をしているのか。
「さて、ギルソン殿下。来年からは殿下も学園に通われるのです。今まで遅れていた勉強を頑張って頂きませんとね」
「はい、よろしくお願いします」
なんともまあ、農業に鉄道にと尽力してきたために、いろいろと勉強が遅れてしまっていたので、今さらながらに勉学励み始めたのである。何と言っても来年からはギルソンも王国の学園に通う事になる。王族としては国民に規範を示さねばならないので、情けない成績など取れるわけがないのである。それが王族というものなのである。
だが、ギルソンもそれは重々承知である。いくら将来的に王位継承権を放棄するとしても、王族としての責務からは逃れられない事が分かっているのだ。
アリスはそんなギルソンを見守りながら、ファルーダン鉄道の事業の管理も行っている。オートマタである以上疲れるという事はないのだが、それでなくても鉄道事業の対応は忙しすぎるのだ。やっぱり、庶民相手の値下げがかなり大きな反響を及ぼしているようである。アリスは各駅のオートマタたちからの報告で、ずっと机に向かいっぱなしである。
(ふぅ、やっぱり庶民の感覚はシビアだから、お金が戻ってくるとなるとすごい反響だわね。乗車券と食事券を4回分ずつ付けておいたのもずいぶんと反応が大きいようだわ)
庶民の生活というのは、本当にギリギリの生活な事が多い。返金という単語は、本当にものすごく響いたようである。
その一方で、それに乗っかった詐欺師もちらほら居たようだったが、さすがは自分が生み出したオートマタたち、詐欺師たちは問題なく全部返り討ちにしていた。自慢の娘たちである。
「アリス殿、失礼致します」
ひと区切りついたところで、ちょうどシャルツが部屋に入ってきた。
「これはシャルツ殿、どうされましたか?」
「いえ、そろそろ各地から払い戻しの報告が上がってくる頃かと思いまして、情報をまとめにやって来たのです」
アリスが部屋に入って来た理由を尋ねると、シャルツはそのように答えていた。さすがは文官、こういう情報には目ざといようである。正直言うと、今後の鉄道事業を考えるとそのくらい重要視すべき事だから、ずっと気になっていたようなのだ。
「それは感心な事ですね。ちょっと待っていて下さい、今各地からの情報をメモしておりますので」
それに対してアリスはそのように答えておく。実際、全部で18か所ある駅からほぼ同時に情報を渡されたので、アリス自身が混乱してしまっているのである。それを一つ一つ処理してメモに起こすだけでもかなり大変な作業なのだ。
「そういえば、ドゥレッサはどうされましたか?」
駅ごとにデータをまとめながら、アリスはシャルツへと質問していた。
「ドゥレッサならイスヴァン殿下に呼ばれております。おそらくは学園の勉強に関して質問をされているのでしょう」
その質問に、シャルツはこう答えていた。イスヴァン自身はかなりファルーダンに対して好意的なので、そこまで気に掛ける内容ではないだろう。アリスはそう考えた。
「そうですか。確かに分からない事とかはよく知った方に相談する方がよろしいですからね。異国の地ですとどうしても委縮してしまいますから」
「ははっ、実にそうですな」
アリスの言葉に、シャルツは笑いながら反応していた。その反応に、アリスは特にこれといった嫌悪感は感じなかった。前世での経験もあるし、オートマタとしての能力もあるので、こういう人間の気持ちの裏表というのには敏感になってしまいがちなのである。そのアリスの感覚が何も感じなかったので、アリスは一緒になって笑っていた。
「さて、これが各駅からの報告です。駅ごととそれと全体としての帳簿をお付けして頂けますか?」
「畏まりました。そのための文官なのですから、お任せ下さい」
アリスから大量のメモを受け取ると、シャルツは部屋を出ていった。
「ふぅ、マイマスターの様子でも見に行きましょうかね」
ひと息ついたアリスは、ギルソンの様子を見に執務室を出ていった。
それは、庶民の鉄道利用料金を引き下げるというものだった。現行の大体4分の1程度の価格になるものの、その代わりに食堂の利用は別料金になるというものだった。申し出があれば、今まで利用した金額の半分を変換する旨も書き記しておいた。全員が全員食堂を使わなかった保証はないので、返金する金額は半額としておいた。ただし、それだと不満は起こるだろうから、おまけだって忘れていなかった。
すると当然のように、貼り出した翌日には各駅に利用経験のある人物たちが殺到していた。中にはお金を騙し取ろうとするような輩も紛れていたものの、相手がオートマタだという事を忘れてはいけない。あれからもマリカの頑張りでオートマタが増えたのだが、全員にこれまでの乗客の全情報が共有されていたのである。だから、オートマタたちが手をかざせば、その人物の乗車経験が全部丸分かりなのである。騙し取ろうとした人物たちは、拘束されて兵士たちに引き渡されていた。
初日からそんな光景を見せつけられては、駅に払い戻しを求めてやって来る人たちの態度は見事に落ち着いていった。乗車経験を全部さらけ出される事も恐怖だからである。いやはや、オートマタの能力恐るべしである。
さて、鉄道の事はオートマタたちに全部任せたギルソンは何をしているのか。
「さて、ギルソン殿下。来年からは殿下も学園に通われるのです。今まで遅れていた勉強を頑張って頂きませんとね」
「はい、よろしくお願いします」
なんともまあ、農業に鉄道にと尽力してきたために、いろいろと勉強が遅れてしまっていたので、今さらながらに勉学励み始めたのである。何と言っても来年からはギルソンも王国の学園に通う事になる。王族としては国民に規範を示さねばならないので、情けない成績など取れるわけがないのである。それが王族というものなのである。
だが、ギルソンもそれは重々承知である。いくら将来的に王位継承権を放棄するとしても、王族としての責務からは逃れられない事が分かっているのだ。
アリスはそんなギルソンを見守りながら、ファルーダン鉄道の事業の管理も行っている。オートマタである以上疲れるという事はないのだが、それでなくても鉄道事業の対応は忙しすぎるのだ。やっぱり、庶民相手の値下げがかなり大きな反響を及ぼしているようである。アリスは各駅のオートマタたちからの報告で、ずっと机に向かいっぱなしである。
(ふぅ、やっぱり庶民の感覚はシビアだから、お金が戻ってくるとなるとすごい反響だわね。乗車券と食事券を4回分ずつ付けておいたのもずいぶんと反応が大きいようだわ)
庶民の生活というのは、本当にギリギリの生活な事が多い。返金という単語は、本当にものすごく響いたようである。
その一方で、それに乗っかった詐欺師もちらほら居たようだったが、さすがは自分が生み出したオートマタたち、詐欺師たちは問題なく全部返り討ちにしていた。自慢の娘たちである。
「アリス殿、失礼致します」
ひと区切りついたところで、ちょうどシャルツが部屋に入ってきた。
「これはシャルツ殿、どうされましたか?」
「いえ、そろそろ各地から払い戻しの報告が上がってくる頃かと思いまして、情報をまとめにやって来たのです」
アリスが部屋に入って来た理由を尋ねると、シャルツはそのように答えていた。さすがは文官、こういう情報には目ざといようである。正直言うと、今後の鉄道事業を考えるとそのくらい重要視すべき事だから、ずっと気になっていたようなのだ。
「それは感心な事ですね。ちょっと待っていて下さい、今各地からの情報をメモしておりますので」
それに対してアリスはそのように答えておく。実際、全部で18か所ある駅からほぼ同時に情報を渡されたので、アリス自身が混乱してしまっているのである。それを一つ一つ処理してメモに起こすだけでもかなり大変な作業なのだ。
「そういえば、ドゥレッサはどうされましたか?」
駅ごとにデータをまとめながら、アリスはシャルツへと質問していた。
「ドゥレッサならイスヴァン殿下に呼ばれております。おそらくは学園の勉強に関して質問をされているのでしょう」
その質問に、シャルツはこう答えていた。イスヴァン自身はかなりファルーダンに対して好意的なので、そこまで気に掛ける内容ではないだろう。アリスはそう考えた。
「そうですか。確かに分からない事とかはよく知った方に相談する方がよろしいですからね。異国の地ですとどうしても委縮してしまいますから」
「ははっ、実にそうですな」
アリスの言葉に、シャルツは笑いながら反応していた。その反応に、アリスは特にこれといった嫌悪感は感じなかった。前世での経験もあるし、オートマタとしての能力もあるので、こういう人間の気持ちの裏表というのには敏感になってしまいがちなのである。そのアリスの感覚が何も感じなかったので、アリスは一緒になって笑っていた。
「さて、これが各駅からの報告です。駅ごととそれと全体としての帳簿をお付けして頂けますか?」
「畏まりました。そのための文官なのですから、お任せ下さい」
アリスから大量のメモを受け取ると、シャルツは部屋を出ていった。
「ふぅ、マイマスターの様子でも見に行きましょうかね」
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