転生オートマタ

未羊

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Mission077

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 翌朝、文官たちを起こしに行くと、ものすごく頭の寝癖が酷い上に顔も寝ぼけ眼になっていた。
「なんだお前たち、その情けない顔は」
 学園に登校する前のイスヴァンが、呆れた顔で文官たちを見ている。
「いえ、オートマタの魔法の事は聞いていたのですが、あそこまですごいものかとは思いませんでして……」
「あまりの魔法のすごさに興奮してなかなか寝られなかったのです……」
 文官二人は揃った言い訳をしていた。だが、イスヴァンはその言い分が分かるだけに強く責める事はしなかった。
「そうか。とにかく早く身支度を整えて食事を食べろ。ギルソンたちが待っているぞ」
「はっ、承知致しました、殿下」
 イスヴァンがそう言ってフラムを伴って学園へと向かうと、文官二人は慌てたように顔を洗って服を着替え、そして、髪を整えて食堂へと向かった。

「おはようございます、ギルソン殿下、アリス殿」
「おはよう、よく眠れましたか?」
 食堂ではギルソンとアリスが待っていた。他に王族の姿が見えないところを見ると、ギルソンはわざわざ文官たちのために待っていてくれたようである。
「それが、お恥ずかしながら……」
 シャルツとドゥレッサは恥ずかしそうに顔を見合わせていた。その姿を見て、ギルソンもいろいろ察したようである。アリスは少し反省しているようだった。
「初めてファルーダンに来られた上で、オートマタの魔法を目の当たりにされたのです。それは仕方のない事でしょう。ボクたちファルーダンの人間も、オートマタの魔法を始めてみた時は興奮してしまいますから」
 ギルソンは二人が寝坊してきた事を特に咎める事もなく、従者に伝えて食事を用意させた。
「では、食事を終わらせたら、昨日の続きと参りましょう。具体的な数字が見えてくれば、これからの展望もしやすいかと思いますので」
 ギルソンのこの言葉に、文官の二人はとても驚いていた。話に聞けばまだ11か12だというし、その年齢でこれだけの頭が回るとなるのであれば、マスカードとしては敵に回したくない相手になりかねないのである。それゆえに、文官二人はギルソンの事を注意深く見守る事を決めたのだった。
 さて、食事を終えたギルソンたちは、早速昨日の続きを始める。ファルーダン鉄道の収支をまとめ、関連した事業の状況を把握するためである。
 ファルーダン鉄道に関連した事業は次の通りだ。
 まずは鉱山の街ツェンから鉄鉱石などを運ぶ運搬事業。次にマスカード帝国との貿易を行う交易事業。駅を拠点として馬車を運行したり貸し出したりする馬車事業。個人の荷物などを拠点の駅まで運ぶ運送業。そして、リーヴェンの街の橋のレンタルといったところだった。
 鉱石運搬とマスカード帝国との交易は実に順調のようであり。マスカード帝国から今まで諦めていた腐りやすい食材の輸入が可能になった。特に果物の評判がいいようである。
 貸出馬車はいまいちなようでやっぱり使い慣れた自分の家の馬車がいいという貴族が多いようだった。とはいえ、列車に乗せて動かせる馬車などたかが知れているので、そういう点では貴族からやや不評のようである。
 意外と使われているのはやはりリーヴェンの橋のようである。今までは川を船で渡るしかなく、川が増水するなどした時は向こう岸に渡る事が不可能だったからだ。その川に橋が架かったおかげで、今までよりも圧倒的に早く、安全に川を渡れるようになった。それゆえに貴族も一般人もよく使っているようである。ただ、ここでの収入は鉄道の方には入ってこず、そのままリーヴェンの街の税収となっている。
 個人の荷物の取り扱いもそこそこあるようで、遠くの街で暮らす身内に手紙や荷物を出すといった事があるそうだ。
「やっぱり貸出馬車は厳しいですか……」
「駅のオートマタから聞くところによると、貴族も御者たちも使い慣れたものがいいようです。ですが、列車で運べる馬車など精々頑張っても4台ほどですから、貴族にはちょっと広がりにくい傾向にありますね。あと、一般人にとっては値段が躊躇の原因のようですね」
「それは仕方ありませんね。片道で半月ほどの稼ぎが飛んでしまいますからね」
 まとめている間に、いろいろと問題点や改善点が見えてきているようだった。
「庶民用には値段を下げる措置を取りましょうか。それに食事代を別途加算する形に切り替えましょう」
「そうですね。今までは食事付きであの値段でしたからね。乗って移動するだけの方もいらっしゃるでしょうから、その方がよろしいかと存じます」
 ギルソンとアリスが話をしているが、シャルツとドゥレッサは話についていけそうになかった。ファルーダン鉄道に関してあまり知らないのだから仕方はないだろう。
「おっと、これは失礼致しました。数値だけでもまとめて頂けましたし、より理解して頂けるように、ファルーダン鉄道についてあれこれ説明させて頂きましょう」
 文官二人に対して、ギルソンはにっこりと微笑んでいた。
 こうして、お昼の時間までひたすらファルーダン鉄道に語り尽くすギルソンとアリスなのだった。シャルツとドゥレッサは必死に理解しようとしたものの、最終的には目を回していたのだった。
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