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Mission066
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その頃、リリアンとイスヴァンがそんないい雰囲気になっている事を知らないギルソンとアリスは、ものすごく真剣に悩んでいた。どうしたら、マスカード帝国と良好な関係を構築できるのか。これは王国の将来を左右する大事な事なのであるから、思いつめたような表情になるのは仕方なかった。
「なあ、ギルソン。私はどうしたらいいと思う?」
国王が情けない顔をして、息子に意見を求めてきた。大丈夫なのだろうか、この国王は。
「父上。そんな情けない事でどうするのですか。マスカード帝国との事は、ボクたちがどうにかしますので、父上は兄上たちファルーダンの内情を安定させる事を考えていて下さい」
さすがにちょっと外交に関して失望しているのか、ギルソンは国王にファルーダン国内の事に集中するように進言したのである。どうやらギルソンは兄たちから不穏な空気を感じ取っていたようである。
(さすがはマイマスター。私の書いた小説の本来の主人公だからか、洞察力に優れているわね)
ギルソンの発言に、アリスはオートマタらしい無表情をしながら感心していた。
王家の親子の会話を遠巻きに眺めているマリカとジャスミン。同じ部屋で待機させられているためにここに居るわけなのだが、さすがに王族親子の会話に入っていくだけの度胸はなかった。ギルソンともあまり話をできていないので仕方がないのである。
それにしてもあれだけ鉄道に関する行動で一緒に居たというのに、ギルソンとマリカの間にはまったくと言っていいほどの進展がなかったのである。ギルソンはやりたい事に真っすぐでマリカにはあまり話し掛けなかったし、マリカはマリカで身分差のせいもあってかほとんど縮こまっているような状態が続いていたのである。それでは進展しないというものだった。
さて、そうこうしているうちに、ギルソンたちが控える部屋にマスカード帝国の兵士が呼びにやってきた。これからクリムたちマスカード帝国の重鎮たちとの話し合いになるわけである。さすがに国王が情けない状態が続いているので、ギルソンはことさら気合いを入れていた。そして、ギルソンたちは慌ただしく会談の行われる部屋へと向かったのだった。
「よく来てくれたな。それでは、二日目の会談を始めようではないか」
部屋にたどり着いたギルソンたちに、クリムの鋭い眼光が飛ぶ。これだけで国王は縮こまってしまう。これで大丈夫なのかと、正直心配になるアリスたちである。
だが、いざ会談を始めようとしたその時、クリムは何かに気が付いたようだ。
「その前に、イスヴァン」
「はい、父上。何でしょうか」
「ずいぶんと嬉しそうな顔をしているが、何があった?」
クリムからの指摘にハッとするイスヴァン。そう、さっきからずっと顔がにやけていたのである。その指摘をされて、どういうわけかイスヴァンよりもリリアンの方が顔を赤くして俯いてしまった。ギルソンやマリカは分からないようだったが、アリスにはこれがどういう事なのかすぐに分かった。
(ほほぉ……。奥手かと思っていましたけど、ずいぶんとすんなり進展しましたね、この二人……)
さすがは94歳まで生きたおばあちゃんである。こういう事をすぐに見抜いてしまうあたり、年の功といった感じである。
「あのその、実は……」
普段は結構はっきり言うイスヴァンがしどろもどろになっている。実に珍しい光景である。ちなみに、どういうわけかリリアンももじもじとして顔を上げられずにいた。みんなが不思議そうに見ているのだが、多分この理由が分かっているのはアリスだけだろう。
「どうしたんだ。はっきり言ったらどうなのだ?」
クリムからの圧が掛かる。その迫力に、さすがのイスヴァンも完全に押し負けてしまった。
「実は、リリアン王女と将来的な婚約の約束をしました」
「なんと。して返事は?」
「はい、了承を頂けましたので、まずはお付き合いから始めたいと思います」
ちょっとがっかりしたようにも見えたが、クリムは大口を開けて笑い出した。
「がっはっはっはっ、そういうのには奥手と思っておったが、意外とやってくれるな。だが、婚約ができなかったのは頂けぬ話だな」
「し、仕方ありません、父上。お互いよく知らないのですから、まずは知るところから始めたいと思っただけです」
ぎろりと睨み付けたクリムに、イスヴァンはちらちらと視線を送りながら必死に口答えをしている。イスヴァンは意外と初心な少年だったようだ。
「まあ、それもそうだな。お前は来年からファルーダンの学園に通う事になっていたな。ならばその間にしっかりと親睦を深めておけ」
「は、はい!」
クリムの言葉に、元気よく返事をするイスヴァンだった。
「くっくっくっ、そういう事だ。ファルーダンの王よ、お前のところのリリアンは俺の息子イスヴァンの妻となる、いいな?」
クリムはファルーダンの面々の方を向いて、ものすごく上機嫌に言い放つ。だが、国王は答えずにリリアンに確認を取る。すると、
「……はい、お願い致します」
少し間があったものの、ものすごく恥ずかしそうにリリアンが答えたのだった。それを聞いたクリムは再び大声で笑っていた。
「いやあ、めでたい事よな。がっはっはっはっ!」
そして、笑い声が止むと、会談の場はしばらくの沈黙に包まれたのであった。
「なあ、ギルソン。私はどうしたらいいと思う?」
国王が情けない顔をして、息子に意見を求めてきた。大丈夫なのだろうか、この国王は。
「父上。そんな情けない事でどうするのですか。マスカード帝国との事は、ボクたちがどうにかしますので、父上は兄上たちファルーダンの内情を安定させる事を考えていて下さい」
さすがにちょっと外交に関して失望しているのか、ギルソンは国王にファルーダン国内の事に集中するように進言したのである。どうやらギルソンは兄たちから不穏な空気を感じ取っていたようである。
(さすがはマイマスター。私の書いた小説の本来の主人公だからか、洞察力に優れているわね)
ギルソンの発言に、アリスはオートマタらしい無表情をしながら感心していた。
王家の親子の会話を遠巻きに眺めているマリカとジャスミン。同じ部屋で待機させられているためにここに居るわけなのだが、さすがに王族親子の会話に入っていくだけの度胸はなかった。ギルソンともあまり話をできていないので仕方がないのである。
それにしてもあれだけ鉄道に関する行動で一緒に居たというのに、ギルソンとマリカの間にはまったくと言っていいほどの進展がなかったのである。ギルソンはやりたい事に真っすぐでマリカにはあまり話し掛けなかったし、マリカはマリカで身分差のせいもあってかほとんど縮こまっているような状態が続いていたのである。それでは進展しないというものだった。
さて、そうこうしているうちに、ギルソンたちが控える部屋にマスカード帝国の兵士が呼びにやってきた。これからクリムたちマスカード帝国の重鎮たちとの話し合いになるわけである。さすがに国王が情けない状態が続いているので、ギルソンはことさら気合いを入れていた。そして、ギルソンたちは慌ただしく会談の行われる部屋へと向かったのだった。
「よく来てくれたな。それでは、二日目の会談を始めようではないか」
部屋にたどり着いたギルソンたちに、クリムの鋭い眼光が飛ぶ。これだけで国王は縮こまってしまう。これで大丈夫なのかと、正直心配になるアリスたちである。
だが、いざ会談を始めようとしたその時、クリムは何かに気が付いたようだ。
「その前に、イスヴァン」
「はい、父上。何でしょうか」
「ずいぶんと嬉しそうな顔をしているが、何があった?」
クリムからの指摘にハッとするイスヴァン。そう、さっきからずっと顔がにやけていたのである。その指摘をされて、どういうわけかイスヴァンよりもリリアンの方が顔を赤くして俯いてしまった。ギルソンやマリカは分からないようだったが、アリスにはこれがどういう事なのかすぐに分かった。
(ほほぉ……。奥手かと思っていましたけど、ずいぶんとすんなり進展しましたね、この二人……)
さすがは94歳まで生きたおばあちゃんである。こういう事をすぐに見抜いてしまうあたり、年の功といった感じである。
「あのその、実は……」
普段は結構はっきり言うイスヴァンがしどろもどろになっている。実に珍しい光景である。ちなみに、どういうわけかリリアンももじもじとして顔を上げられずにいた。みんなが不思議そうに見ているのだが、多分この理由が分かっているのはアリスだけだろう。
「どうしたんだ。はっきり言ったらどうなのだ?」
クリムからの圧が掛かる。その迫力に、さすがのイスヴァンも完全に押し負けてしまった。
「実は、リリアン王女と将来的な婚約の約束をしました」
「なんと。して返事は?」
「はい、了承を頂けましたので、まずはお付き合いから始めたいと思います」
ちょっとがっかりしたようにも見えたが、クリムは大口を開けて笑い出した。
「がっはっはっはっ、そういうのには奥手と思っておったが、意外とやってくれるな。だが、婚約ができなかったのは頂けぬ話だな」
「し、仕方ありません、父上。お互いよく知らないのですから、まずは知るところから始めたいと思っただけです」
ぎろりと睨み付けたクリムに、イスヴァンはちらちらと視線を送りながら必死に口答えをしている。イスヴァンは意外と初心な少年だったようだ。
「まあ、それもそうだな。お前は来年からファルーダンの学園に通う事になっていたな。ならばその間にしっかりと親睦を深めておけ」
「は、はい!」
クリムの言葉に、元気よく返事をするイスヴァンだった。
「くっくっくっ、そういう事だ。ファルーダンの王よ、お前のところのリリアンは俺の息子イスヴァンの妻となる、いいな?」
クリムはファルーダンの面々の方を向いて、ものすごく上機嫌に言い放つ。だが、国王は答えずにリリアンに確認を取る。すると、
「……はい、お願い致します」
少し間があったものの、ものすごく恥ずかしそうにリリアンが答えたのだった。それを聞いたクリムは再び大声で笑っていた。
「いやあ、めでたい事よな。がっはっはっはっ!」
そして、笑い声が止むと、会談の場はしばらくの沈黙に包まれたのであった。
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