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Mission059
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イスヴァンと大臣、それと国境警備の任務を終えた兵士たちを連れて、アリスたちは帝都まで戻ってきた。
「も、もう戻ってきたのか?」
「し、信じられないぜ……。俺たちさっきまでシドールに居たんだよな?」
国境警備にあたっていた兵士たちが、呆然と帝都の明かりを眺めながら呆けながら呟いている。
「さあ、さっさと城に戻ろう。遅くなってしまったがゆえに父上には叱られるだろうが、そればかりは甘んじて受ける事にするさ」
イスヴァンは城に戻るように促してくる。これにはアリスたちも賛成だ。ギルソンやマリカの安全を考えれば、1秒でも早く城に戻るべきである。
しかし、この早さで戻ってくるとは思ってなかったのか、馬車の手配がなされていなかったのだ。しかも、駅と城の位置は結構離れてしまっている。ここから歩いて戻るにも結構時間が掛かってしまうのは確実だった。
ところが、ここは門からそう遠くない場所だった。というわけで、門番に言って馬車を用意してもらうように手配した。待つ事10数分、馬車を連れて兵士たちが戻ってきたのだった。
「お帰りなさいませ、イスヴァン皇子殿下。僭越ながら、我らが国境警備兵が殿下方をお城まで送らせて頂きます」
「うむ、頼んだぞ」
「はっ、お任せ下さいませ」
というわけで、アリスたちは国境警備兵が操る馬車で城まで戻る事ができたのだ。なかなかに慌ただしい一日だったのだが、さすがに時間が時間ゆえに、今日の事をクリムに報告するのは結局翌日となってしまったのだった。
なんとか夕食を取る事はできたものの、その日は簡単にアリスやジャスミンから洗浄の魔法を掛けてもらって、ギルソンとマリカは眠りに就いたのだった。
翌日、皇帝一家の朝食の席に居合わせる事となったギルソンとマリカ。ギルソンは王族として堂々としているものの、マリカの方はガッチガチに固くなっていた。
「イスヴァンよ」
「はい、父上」
食事の席で、クリムから声を掛けられるイスヴァン。
「鉄道とやらはどうだったか?」
どうやらクリムも結果は気になっているようだった。
「はい、国境のシドールまでものの4時間で駆け抜けておりました。途中では通常通る街道とは違う湖の付近を通りましたが、そこも問題なく駆け抜けておりました」
イスヴァンが報告を始める。
「ついでにとは言っては何ですが、路線のチェックと共に国境の警備にあたる兵士の交代も行ってきております。交代人員は昨夜一緒に戻ってきておりますゆえ、実際にシドールまで向かった事は彼らに確認を取って頂ければ事実と分かります」
「ふむ」
報告を聞き終わったクリムは、ただただ静かに何かを考えるように黙り込んでいた。
「改めて問う」
ぽつりとクリムが呟く。
「鉄道によってお前たちは何をこの帝国に何をもたらしてくれる?」
ぎろりと鋭い視線を向けるクリム。マリカはさすがにその視線に震え上がったものの、ギルソンたちはまったく動じなかった。
「そうですね。まずは先日もお話しした通り、我が国の鉱山からの鉱石が他の国より圧倒的に早く手に入ります」
ギルソンは11歳ながらにも、クリムの威圧にまったく怯まずに話をしている。
「二つ目は、貴国の今まで取引できなかった腐りやすい物を、鉄道とオートマタの魔法で素早く我が国へ輸出する事ができるようになります」
「それは確かに聞いたな」
クリムは確認するように言う。
「そして、人員の行き来も楽になります。イスヴァン殿下も仰られていた通り、私どもの国の学園に通われていても、その日のうちに皇帝陛下の元に帰る事ができます。それを考えれば、お互いの国で誇る技術を学んで、すぐさま国に持ちかえる事もできるというわけです」
「……」
ギルソンの説明に、クリムは黙り込んでしまった。確かに、技術を得られるというのは大きいのだ。
「ボクは面白いと思っているんですよ。敵同士だった両国が手を取り合う事で、新しい何が生まれるんじゃないかと思うんです」
ギルソンがこう言い切ると、しばらく場が沈黙する。そして、堰を切ったようにクリムが笑い始めた。
「くははははははっ! 面白い事を言ってくれるな、ファルーダンの末の小童よ」
クリムが顎を触りながら、ギルソンの方をじっといている。
「武力と農作物だけでのし上がってきた国だからなぁ、こっちは」
歯茎が見えるくらいにいい笑顔をしているクリムだが、相変わらずの威圧感がある。
「おう、来年からうちの息子が世話になるついでだ、一度そっちに出向いてやろうじゃねえか。俺だって話のできる男だってのを見せやらあ」
「ち、父上!?」
予想外の展開にイスヴァンが動揺している。それはアリスやギルソンたちも同じだった。
「そっちは王女が二人居んだろう? こちとら、イスヴァンの一人しか子に恵まれなかったからな。そろそろ嫁選びもしてえってもんよ! がっはっはっはっはっ!」
まさかクリムにここまで興味を持たれるとは思ってもみなかった。そして、どんどん思ってもない方向へと話が進んできた。
「一週間だ。一週間後にまたお前たちが出向いて来い。そしたら、そっちに出向いて話をしてやる。イスヴァン、お前もだ」
こうして、クリムによって強引にトップ会談の約束をさせられてしまったアリスたちなのであった。一体、どうなってしまうというのだろうか。予想だにできない展開に、アリスは思わず頭が痛くなってしまうのだった。
「も、もう戻ってきたのか?」
「し、信じられないぜ……。俺たちさっきまでシドールに居たんだよな?」
国境警備にあたっていた兵士たちが、呆然と帝都の明かりを眺めながら呆けながら呟いている。
「さあ、さっさと城に戻ろう。遅くなってしまったがゆえに父上には叱られるだろうが、そればかりは甘んじて受ける事にするさ」
イスヴァンは城に戻るように促してくる。これにはアリスたちも賛成だ。ギルソンやマリカの安全を考えれば、1秒でも早く城に戻るべきである。
しかし、この早さで戻ってくるとは思ってなかったのか、馬車の手配がなされていなかったのだ。しかも、駅と城の位置は結構離れてしまっている。ここから歩いて戻るにも結構時間が掛かってしまうのは確実だった。
ところが、ここは門からそう遠くない場所だった。というわけで、門番に言って馬車を用意してもらうように手配した。待つ事10数分、馬車を連れて兵士たちが戻ってきたのだった。
「お帰りなさいませ、イスヴァン皇子殿下。僭越ながら、我らが国境警備兵が殿下方をお城まで送らせて頂きます」
「うむ、頼んだぞ」
「はっ、お任せ下さいませ」
というわけで、アリスたちは国境警備兵が操る馬車で城まで戻る事ができたのだ。なかなかに慌ただしい一日だったのだが、さすがに時間が時間ゆえに、今日の事をクリムに報告するのは結局翌日となってしまったのだった。
なんとか夕食を取る事はできたものの、その日は簡単にアリスやジャスミンから洗浄の魔法を掛けてもらって、ギルソンとマリカは眠りに就いたのだった。
翌日、皇帝一家の朝食の席に居合わせる事となったギルソンとマリカ。ギルソンは王族として堂々としているものの、マリカの方はガッチガチに固くなっていた。
「イスヴァンよ」
「はい、父上」
食事の席で、クリムから声を掛けられるイスヴァン。
「鉄道とやらはどうだったか?」
どうやらクリムも結果は気になっているようだった。
「はい、国境のシドールまでものの4時間で駆け抜けておりました。途中では通常通る街道とは違う湖の付近を通りましたが、そこも問題なく駆け抜けておりました」
イスヴァンが報告を始める。
「ついでにとは言っては何ですが、路線のチェックと共に国境の警備にあたる兵士の交代も行ってきております。交代人員は昨夜一緒に戻ってきておりますゆえ、実際にシドールまで向かった事は彼らに確認を取って頂ければ事実と分かります」
「ふむ」
報告を聞き終わったクリムは、ただただ静かに何かを考えるように黙り込んでいた。
「改めて問う」
ぽつりとクリムが呟く。
「鉄道によってお前たちは何をこの帝国に何をもたらしてくれる?」
ぎろりと鋭い視線を向けるクリム。マリカはさすがにその視線に震え上がったものの、ギルソンたちはまったく動じなかった。
「そうですね。まずは先日もお話しした通り、我が国の鉱山からの鉱石が他の国より圧倒的に早く手に入ります」
ギルソンは11歳ながらにも、クリムの威圧にまったく怯まずに話をしている。
「二つ目は、貴国の今まで取引できなかった腐りやすい物を、鉄道とオートマタの魔法で素早く我が国へ輸出する事ができるようになります」
「それは確かに聞いたな」
クリムは確認するように言う。
「そして、人員の行き来も楽になります。イスヴァン殿下も仰られていた通り、私どもの国の学園に通われていても、その日のうちに皇帝陛下の元に帰る事ができます。それを考えれば、お互いの国で誇る技術を学んで、すぐさま国に持ちかえる事もできるというわけです」
「……」
ギルソンの説明に、クリムは黙り込んでしまった。確かに、技術を得られるというのは大きいのだ。
「ボクは面白いと思っているんですよ。敵同士だった両国が手を取り合う事で、新しい何が生まれるんじゃないかと思うんです」
ギルソンがこう言い切ると、しばらく場が沈黙する。そして、堰を切ったようにクリムが笑い始めた。
「くははははははっ! 面白い事を言ってくれるな、ファルーダンの末の小童よ」
クリムが顎を触りながら、ギルソンの方をじっといている。
「武力と農作物だけでのし上がってきた国だからなぁ、こっちは」
歯茎が見えるくらいにいい笑顔をしているクリムだが、相変わらずの威圧感がある。
「おう、来年からうちの息子が世話になるついでだ、一度そっちに出向いてやろうじゃねえか。俺だって話のできる男だってのを見せやらあ」
「ち、父上!?」
予想外の展開にイスヴァンが動揺している。それはアリスやギルソンたちも同じだった。
「そっちは王女が二人居んだろう? こちとら、イスヴァンの一人しか子に恵まれなかったからな。そろそろ嫁選びもしてえってもんよ! がっはっはっはっはっ!」
まさかクリムにここまで興味を持たれるとは思ってもみなかった。そして、どんどん思ってもない方向へと話が進んできた。
「一週間だ。一週間後にまたお前たちが出向いて来い。そしたら、そっちに出向いて話をしてやる。イスヴァン、お前もだ」
こうして、クリムによって強引にトップ会談の約束をさせられてしまったアリスたちなのであった。一体、どうなってしまうというのだろうか。予想だにできない展開に、アリスは思わず頭が痛くなってしまうのだった。
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