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Mission047
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「おお、ここがストライの街か」
リーヴェンの町長が感動の声を上げている。
「はい、ここは間違いなくストライの街でございます。目の前に大きな壁が見えると思いますが、あそこが国境の門となります」
「そうか。間違いなくストライなんだな……。馬車で2日も掛かる場所だというのに、もうたどり着いたのか……」
あまりの早い到着に、リーヴェンの町長は心ここにあらずといった感じでストライの国境の壁を眺めている。あの壁の向こうは、将来的に鉄道を敷く予定のマスカード帝国なのである。
「はい、町長様には先程、私の部下のオートマタを先触れとして走らせております。あなたたちはここで列車の番をお願いします」
「畏まりました。マスターアリス」
アリスたちは荷物持ち役のオートマタ数名以外を列車に残していく。
駅でしばらく待っていると、2台の馬車が駅の前に現れた。その1台からはリーヴェンの町長とはまた違った感じの中年男性が降りてきた。ちなみにその馬車の御者台には、どういうわけかさっき先触れに走らせたオートマタが座っていた。
「これはギルソン第五王子殿下。遠いところをわざわざお越し頂き、このボーデン、光栄の極みでございます。王子殿下のご活躍は国境まで聞き及んでおりますとも」
オタクのように早口で言っている。そして、駅の向こうに見える列車を見て目を丸くしていた。
「おお、あれが噂に聞く列車というものですな。なんでも魔力で動くとかだそうですね」
「はい、オートマタの魔力を使って動かす列車になります。途中の駅でも休憩を挟みながらですが、5時間程度でここまでたどり着けました」
「なんと!? たったの5時間で王都からここまでですか!」
ギルソンがここまでの経緯を話すと、ボーデンは目を見開いてさらに驚いている。
それもそうだろう。途中のリーヴェンでは川の状況次第で足止めを食らうのだ。すんなり順調に来たとしても、王都からストライまでは実に4日もかかってしまう道程なのだ。
そのとんでもない道程がたったの5時間なのだ。今までは比べ物にならない早さなのである。と、ここでボーデンはとある人物に気が付いた。
「おやおや、リーヴェンの町長のシャートルではないですか。久しぶりですな」
「ボーデン、元気そうだな。また太ったのではないか?」
「はっはっはっはっ、そうかも知れませんな。ここはマスカード帝国からいろいろなものが入ってきますからな。少し食べ過ぎたかもしれませんな」
シャートルとボーデンが話をしながら笑っている。
「っとと、殿下たちを屋敷まで案内せねばなりませんな。殿下、こちらの馬車にお乗り下さい。それとオートマタたちは後ろの馬車にお願いできますかな」
ボーデンの言葉に、ギルソンがすぐに反応する。
「いや、アリスはボクと同じ馬車でなければならない。その代わり、マリカには悪いんだけど、オートマタたちと乗ってもらえるかな」
「畏まりました。私はオートマタたちと一緒に後ろの馬車に乗らせて頂きます」
というわけで、前の馬車にはギルソンとアリス、それとストライの町長ボーデンとリーヴェンの町長シャートルが乗り込む事となった。試運転だったので大臣たちはついてきていなかったので、人数はこれだけである。
「なぜ、オートマタをここに乗せられたのですか?」
「それは、アリスはボクの専属ですからね。それに、この鉄道計画はアリスの発案なんだ。となると、アリス抜きには話ができないわけですよ」
ボーデンは疑問をぶつけたものの、ギルソンにあっさりと黙らされてしまった。この鉄道計画がオートマタによる発案という事に信じられないような様子のボーデンたち。しかし、これだけの未知の技術を使われてしまっては、オートマタが思いついたという事を信じざるを得なかった。
「この鉄道計画は将来的にはマスカード帝国の帝都まで延長する予定です。向こうの皇子、イスヴァン殿下はとても興味を持たれています。皇帝陛下を説得できれば、すぐにでも敷設される事になります。本日は試運転の他にその話をしておこうと考えて赴いた次第なんです」
本当は強行軍で帰るつもりだったが、予想外な事にリーヴェンの町長が乗り込んできたのでこういう予定に変更したのである。
「でも、驚きますよ。王都からツェンまで14時間程度、王都からストライまで5時間程度なんですから。つまり、たった1日で移動できてしまうんですよ、鉱山の街ツェンから国境の街ストライまで」
ギルソンはにこりと微笑んでいるが、確かにこれは恐ろしい話である。王都からツェンまでがある陸地と、マスカード帝国との国境側との間には、大きな川が一本横たわっている。この川のせいで移動が制限されているのだ。だというのに、アリスという規格外のオートマタが、その川に橋を架けて鉄道を敷いてしまったのである。実に革命がすぎる話なのである。
「まあ、詳しいお話はまた町長殿の屋敷に着いてから致しましょう。にわかには信じられない話でしょうからね」
ギルソンはすました顔で話している。
まぁ大事なところだけを聞かせた感じなのだが、ボーデンを唸らせるには十分な内容だった。シャートルの方も実際にこの移動を体験されられたがゆえに、素直に飲み込むしかなかった。
この後ストライの町長の屋敷で急遽晩餐会が催され、ギルソンとアリスから延々と鉄道に関する話を聞かされたボーデンとシャートルなのであった。
リーヴェンの町長が感動の声を上げている。
「はい、ここは間違いなくストライの街でございます。目の前に大きな壁が見えると思いますが、あそこが国境の門となります」
「そうか。間違いなくストライなんだな……。馬車で2日も掛かる場所だというのに、もうたどり着いたのか……」
あまりの早い到着に、リーヴェンの町長は心ここにあらずといった感じでストライの国境の壁を眺めている。あの壁の向こうは、将来的に鉄道を敷く予定のマスカード帝国なのである。
「はい、町長様には先程、私の部下のオートマタを先触れとして走らせております。あなたたちはここで列車の番をお願いします」
「畏まりました。マスターアリス」
アリスたちは荷物持ち役のオートマタ数名以外を列車に残していく。
駅でしばらく待っていると、2台の馬車が駅の前に現れた。その1台からはリーヴェンの町長とはまた違った感じの中年男性が降りてきた。ちなみにその馬車の御者台には、どういうわけかさっき先触れに走らせたオートマタが座っていた。
「これはギルソン第五王子殿下。遠いところをわざわざお越し頂き、このボーデン、光栄の極みでございます。王子殿下のご活躍は国境まで聞き及んでおりますとも」
オタクのように早口で言っている。そして、駅の向こうに見える列車を見て目を丸くしていた。
「おお、あれが噂に聞く列車というものですな。なんでも魔力で動くとかだそうですね」
「はい、オートマタの魔力を使って動かす列車になります。途中の駅でも休憩を挟みながらですが、5時間程度でここまでたどり着けました」
「なんと!? たったの5時間で王都からここまでですか!」
ギルソンがここまでの経緯を話すと、ボーデンは目を見開いてさらに驚いている。
それもそうだろう。途中のリーヴェンでは川の状況次第で足止めを食らうのだ。すんなり順調に来たとしても、王都からストライまでは実に4日もかかってしまう道程なのだ。
そのとんでもない道程がたったの5時間なのだ。今までは比べ物にならない早さなのである。と、ここでボーデンはとある人物に気が付いた。
「おやおや、リーヴェンの町長のシャートルではないですか。久しぶりですな」
「ボーデン、元気そうだな。また太ったのではないか?」
「はっはっはっはっ、そうかも知れませんな。ここはマスカード帝国からいろいろなものが入ってきますからな。少し食べ過ぎたかもしれませんな」
シャートルとボーデンが話をしながら笑っている。
「っとと、殿下たちを屋敷まで案内せねばなりませんな。殿下、こちらの馬車にお乗り下さい。それとオートマタたちは後ろの馬車にお願いできますかな」
ボーデンの言葉に、ギルソンがすぐに反応する。
「いや、アリスはボクと同じ馬車でなければならない。その代わり、マリカには悪いんだけど、オートマタたちと乗ってもらえるかな」
「畏まりました。私はオートマタたちと一緒に後ろの馬車に乗らせて頂きます」
というわけで、前の馬車にはギルソンとアリス、それとストライの町長ボーデンとリーヴェンの町長シャートルが乗り込む事となった。試運転だったので大臣たちはついてきていなかったので、人数はこれだけである。
「なぜ、オートマタをここに乗せられたのですか?」
「それは、アリスはボクの専属ですからね。それに、この鉄道計画はアリスの発案なんだ。となると、アリス抜きには話ができないわけですよ」
ボーデンは疑問をぶつけたものの、ギルソンにあっさりと黙らされてしまった。この鉄道計画がオートマタによる発案という事に信じられないような様子のボーデンたち。しかし、これだけの未知の技術を使われてしまっては、オートマタが思いついたという事を信じざるを得なかった。
「この鉄道計画は将来的にはマスカード帝国の帝都まで延長する予定です。向こうの皇子、イスヴァン殿下はとても興味を持たれています。皇帝陛下を説得できれば、すぐにでも敷設される事になります。本日は試運転の他にその話をしておこうと考えて赴いた次第なんです」
本当は強行軍で帰るつもりだったが、予想外な事にリーヴェンの町長が乗り込んできたのでこういう予定に変更したのである。
「でも、驚きますよ。王都からツェンまで14時間程度、王都からストライまで5時間程度なんですから。つまり、たった1日で移動できてしまうんですよ、鉱山の街ツェンから国境の街ストライまで」
ギルソンはにこりと微笑んでいるが、確かにこれは恐ろしい話である。王都からツェンまでがある陸地と、マスカード帝国との国境側との間には、大きな川が一本横たわっている。この川のせいで移動が制限されているのだ。だというのに、アリスという規格外のオートマタが、その川に橋を架けて鉄道を敷いてしまったのである。実に革命がすぎる話なのである。
「まあ、詳しいお話はまた町長殿の屋敷に着いてから致しましょう。にわかには信じられない話でしょうからね」
ギルソンはすました顔で話している。
まぁ大事なところだけを聞かせた感じなのだが、ボーデンを唸らせるには十分な内容だった。シャートルの方も実際にこの移動を体験されられたがゆえに、素直に飲み込むしかなかった。
この後ストライの町長の屋敷で急遽晩餐会が催され、ギルソンとアリスから延々と鉄道に関する話を聞かされたボーデンとシャートルなのであった。
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