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Mission046
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「そういえば、アリスは何をしていたんだい?」
ギルソンから質問が飛んでくる。
「はい。馬車が軌道に入って橋を渡らないように対策を施しておりました。列車の速度を考えると、駅が近くて速度が出ていないとはいえ、凄惨な事故になりかねませんから」
アリスはすらすらと無表情で答えていた。正直なところ、アリスはかなり動揺しているのだが、だいぶオートマタとして振る舞えるようにはなってきているようである。
「そうですね。この川は幅があって、船で渡るとなると時間は掛かりますし、しかも結構荒れやすいですからね。この鉄道の橋を使えば天候を気にせず行き来できますから、使いたがるでしょうね」
「はい。ですが、鉄道運行の支障になるのはもちろん、渡し船で生計を成り立たせている人たちにも迷惑が掛かりますから、そこは徹底的に馬車を排除しなければなりません」
「渡りたければ、船か鉄道を使えという事ですね」
「そういう事でございます」
アリスとギルソンの会話を、マリカは黙って聞き入っていた。
ちなみに言い忘れていたが、ジャスミンはお留守番である。マリカの代わりに孤児院の世話にあたっているのだ。マリカとしては孤児院の事を気に病んでいたのだが、ジャスミンのおかげで安心して出掛けられるのである。
「あと、鉄道で馬車を運べますから、確実に渡し船の方の生活は苦しくなるかと思います。何かしら対策をしておいた方がよろしいかと思います」
「それはそうですね。そこは父上や町長たちと話し合いの場を設けた方がいいでしょうかね」
「ええ。私たちの一存では決めかねますゆえ、その方がよろしいかと存じます」
リーヴェンの対岸の駅で停車中、アリスとギルソンはいろいろと話し合っていた。
それにしても、今回の試運転。誰もお偉さんが乗っていないという状況である。まあ、安全性の確認が最優先であるので、仕方がない。
だが、リーヴェンでの停車中、列車に向かって怒鳴り込んでくる人物が居た。
「おい、何だこれは! どこのどいつだ。こんな訳の分からない巨大なものを街に入れた奴は!」
顔を見ると、中年男性といった感じの姿が見えた。
「おや、もしかして、リーヴェンの町長さんですか」
ギルソンが顔を出すと、さっきまでの勢いが嘘のように縮こまる中年男性である。
「ぎ、ぎ、ギルソン殿下?! なぜこのような場所に!?」
「何って、ストライまでの鉄道の試運転です。アリスから先日説明があったと思いますが?」
男性が列車内を見回す。そこには、確かに見た事のあるオートマタが座っていた。
「これは町長様。これが先日お話しした鉄道の列車というものになります。ちなみに私たちが座っているのは機関車という先頭部分で、これが列車の動力となります」
「は、はぁ……」
アリスの説明を聞く町長だが、よく分からないといった感じだ。まあ、無理もない話だ。
「とりあえず離れて頂けますか? 今はストライまでの試運転の真っ最中なのです。何があるか分かりませんので、町長様を乗せるわけには参りませんし、お暇でもないでしょう?」
アリスが町長を牽制するが、町長は強い目をアリスたちに向けていた。
「いや、わしは乗る。許可をした以上はどんなものかを知っておく義務があるというものだ」
そう言って町長は、後ろに居た秘書と思しき男性に声を掛ける。
「わしが戻るまで街の事はお前に任せる。頼むぞ」
「畏まりました。お気を付けて行ってらっしゃいませ」
男性は深々と頭を下げ、町長を見送っている。
「仕方ありませんね。椅子は空いていますから、お掛けになって下さい」
アリスが椅子を指し示すと、町長はずかずかと乗り込んで椅子に座った。
「特にトラブルがなければ、夕方にはストライに到着します。そのまま車中泊をして、翌日の午前中に戻る予定となっています。町長様、構いませんか?」
本当は強行軍で夜中に戻るつもりだったが、町長が割り込んできた事で予定を変更して伝えるアリスである。これに関しては、すぐにギルソンも察していた。
「構わん。というか、そんなに早くに着くのか」
アリスの説明にリーヴェンの町長はどっしりと構えている。しかし、予定として聞かされた内容にはきっちり驚いていた。
「王都から鉱山の街ツェンまでも1日掛かりませんからね。馬車だと10日も掛かる道のりですよ。信じられますか?」
「いや、にわかには信じられん……。だが、その実力とやらを、これから見させてもらおうではないか」
ギルソンの言葉に冷や汗を流す町長だったが、すぐに覚悟を決めていた。さすが町長、肝が据わっていた。
扉を閉め、魔法で障壁を張り、いざストライに向けて出発である。その列車のスピードに、町長は唖然としていた。何と言っても、窓の外を景色が凄い速さで流れていくのだから。初めて見た時の衝撃は計り知れないのである。
列車はほぼ絶壁のような盛土の上を進んでいく。アリスの魔法でがちがちに固められた盛土はそう簡単にくずはしない。というかほぼ確実に崩れない。
リーヴェンの町長が驚き通しの中、列車は予定通り夕方にストライの街に到着したのであった。リーヴェンの川を挟んでストライ側にある駅を出発してから、実に2時間半後の事だった。
ギルソンから質問が飛んでくる。
「はい。馬車が軌道に入って橋を渡らないように対策を施しておりました。列車の速度を考えると、駅が近くて速度が出ていないとはいえ、凄惨な事故になりかねませんから」
アリスはすらすらと無表情で答えていた。正直なところ、アリスはかなり動揺しているのだが、だいぶオートマタとして振る舞えるようにはなってきているようである。
「そうですね。この川は幅があって、船で渡るとなると時間は掛かりますし、しかも結構荒れやすいですからね。この鉄道の橋を使えば天候を気にせず行き来できますから、使いたがるでしょうね」
「はい。ですが、鉄道運行の支障になるのはもちろん、渡し船で生計を成り立たせている人たちにも迷惑が掛かりますから、そこは徹底的に馬車を排除しなければなりません」
「渡りたければ、船か鉄道を使えという事ですね」
「そういう事でございます」
アリスとギルソンの会話を、マリカは黙って聞き入っていた。
ちなみに言い忘れていたが、ジャスミンはお留守番である。マリカの代わりに孤児院の世話にあたっているのだ。マリカとしては孤児院の事を気に病んでいたのだが、ジャスミンのおかげで安心して出掛けられるのである。
「あと、鉄道で馬車を運べますから、確実に渡し船の方の生活は苦しくなるかと思います。何かしら対策をしておいた方がよろしいかと思います」
「それはそうですね。そこは父上や町長たちと話し合いの場を設けた方がいいでしょうかね」
「ええ。私たちの一存では決めかねますゆえ、その方がよろしいかと存じます」
リーヴェンの対岸の駅で停車中、アリスとギルソンはいろいろと話し合っていた。
それにしても、今回の試運転。誰もお偉さんが乗っていないという状況である。まあ、安全性の確認が最優先であるので、仕方がない。
だが、リーヴェンでの停車中、列車に向かって怒鳴り込んでくる人物が居た。
「おい、何だこれは! どこのどいつだ。こんな訳の分からない巨大なものを街に入れた奴は!」
顔を見ると、中年男性といった感じの姿が見えた。
「おや、もしかして、リーヴェンの町長さんですか」
ギルソンが顔を出すと、さっきまでの勢いが嘘のように縮こまる中年男性である。
「ぎ、ぎ、ギルソン殿下?! なぜこのような場所に!?」
「何って、ストライまでの鉄道の試運転です。アリスから先日説明があったと思いますが?」
男性が列車内を見回す。そこには、確かに見た事のあるオートマタが座っていた。
「これは町長様。これが先日お話しした鉄道の列車というものになります。ちなみに私たちが座っているのは機関車という先頭部分で、これが列車の動力となります」
「は、はぁ……」
アリスの説明を聞く町長だが、よく分からないといった感じだ。まあ、無理もない話だ。
「とりあえず離れて頂けますか? 今はストライまでの試運転の真っ最中なのです。何があるか分かりませんので、町長様を乗せるわけには参りませんし、お暇でもないでしょう?」
アリスが町長を牽制するが、町長は強い目をアリスたちに向けていた。
「いや、わしは乗る。許可をした以上はどんなものかを知っておく義務があるというものだ」
そう言って町長は、後ろに居た秘書と思しき男性に声を掛ける。
「わしが戻るまで街の事はお前に任せる。頼むぞ」
「畏まりました。お気を付けて行ってらっしゃいませ」
男性は深々と頭を下げ、町長を見送っている。
「仕方ありませんね。椅子は空いていますから、お掛けになって下さい」
アリスが椅子を指し示すと、町長はずかずかと乗り込んで椅子に座った。
「特にトラブルがなければ、夕方にはストライに到着します。そのまま車中泊をして、翌日の午前中に戻る予定となっています。町長様、構いませんか?」
本当は強行軍で夜中に戻るつもりだったが、町長が割り込んできた事で予定を変更して伝えるアリスである。これに関しては、すぐにギルソンも察していた。
「構わん。というか、そんなに早くに着くのか」
アリスの説明にリーヴェンの町長はどっしりと構えている。しかし、予定として聞かされた内容にはきっちり驚いていた。
「王都から鉱山の街ツェンまでも1日掛かりませんからね。馬車だと10日も掛かる道のりですよ。信じられますか?」
「いや、にわかには信じられん……。だが、その実力とやらを、これから見させてもらおうではないか」
ギルソンの言葉に冷や汗を流す町長だったが、すぐに覚悟を決めていた。さすが町長、肝が据わっていた。
扉を閉め、魔法で障壁を張り、いざストライに向けて出発である。その列車のスピードに、町長は唖然としていた。何と言っても、窓の外を景色が凄い速さで流れていくのだから。初めて見た時の衝撃は計り知れないのである。
列車はほぼ絶壁のような盛土の上を進んでいく。アリスの魔法でがちがちに固められた盛土はそう簡単にくずはしない。というかほぼ確実に崩れない。
リーヴェンの町長が驚き通しの中、列車は予定通り夕方にストライの街に到着したのであった。リーヴェンの川を挟んでストライ側にある駅を出発してから、実に2時間半後の事だった。
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