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Mission045
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オートマタの工房にやって来ると、今日もマリカは一生懸命オートマタを作っていた。他の職人よりも明らかに速いペースでオートマタを作り上げており、しかも精度が高いとあって、熟練の職人たちは顔面蒼白である。ちなみに、マリカはその合間を縫って剣術の稽古もしているし、なんなら孤児院にだって顔を出している。若いとはいいものである。
「ギルソン殿下、アリスさん、こんにちは」
「やあ、マリカ。今日も精が出ますね」
「はい。結構楽しくて、つい頑張っちゃいます」
マリカは本当に生き生きとしていた。ここまでオートマタに対しての適性があるとは思わなかった。自分の書いた小説ではそこまで考えていなかったのである。言ってしまえばご都合展開といったところだろうか。しかし、そのマリカのオートマタに対する技術の高さゆえに、ファルーダン鉄道計画がうまく行っているのである。
「鉄道の件なのですが、マスカード帝国との国境の街であるストライまでの敷設が終了致しました。つきましては、そちらにも4往復分、8体のオートマタを新たに配置しようかと思いますので、準備できますでしょうか」
「それだったらもうできてますよ」
アリスがマリカに確認を取ると、予想の斜め上の回答が返ってきた。既に完成しているらしい。あとは魔法石さえはめ込めばいい状態らしい。正直度肝を抜く、マリカのオートマタ技術者としての腕前である。
というわけで、早速アリスは魔法石の選定に入る。魔法石一つ一つに適性というものがあり、この世界を舞台とした小説の筆者であるアリスは、その適性を感じ取れるというわけらしい。
というわけで、また10数人規模でアリスの配下のオートマタが増えた。ぶっちゃけて言えばこれだけ配下のオートマタが増えれば反乱を起こせるレベルである。だが、ギルソンはアリスの事を信じているし、アリスだってそんな事をするつもりはない。ギルソンの幸せとファルーダン王国の繁栄を心から願っているのだから。
さて、オートマタの作製が一段落しているとの事らしく、アリスとギルソンはマリカを連れ出す。好きだからといってもさすがに閉じこもりっぱなしもよろしくないからだ。
そうやってやって来たのは、鉄道の製作を請け負っている工房だった。今回もツェンとの間で走らせているのと同じような編成を4編成頼んである。今は2編成ほど完成しているようで、工房の外にはその機関車が佇んでいた。
「相変らず素晴らしい仕事ですね」
ギルソンはその見事なまでの仕上がりに、思わず言葉を漏らした。
「殿下に褒めて頂けて嬉しい限りでさ」
工房の職人は、とても嬉しそうにしている。
「それでは、試運転のためにひと編成頂いて参ります。鉄道の収入はまだ確定しておりませんが、それ以外の収入がございますから、お支払いには問題ございませんよ」
アリスは淡々と交渉をしていた。とりあえず、ひと編成分の代金を支払い、アリスの魔法でもって王都の駅へと列車を運ぶ。そして、増設したホームにその列車を配置したのだった。
アリスは新たに加えたオートマタたちを乗せて、早速試運転に臨む。
運転台にある魔法石に魔力を注ぎ込むアリス。これでいつでも運転できるようになったのだ。では、早速と言わんばかりに、アリスは試運転を開始する。
「今回はストライの街までの試運転です。王都からフィーアスの街までの距離よりも短いですから、思ったより早く終われると思いますよ」
アリスは乗り込んでいる面々にそう伝える。とはいえ、今回もちゃっかり機関車には寝具などを持ち込んである。時間が時間ゆえに、帰りは夜中になる可能性があったからだ。まあ、今回の試運転を前に、工房に出向いて下準備をしておいたので、ここまで準備万端というわけだった。
「では、出発致します。オートマタたち、私の運転をよく見ているのですよ?」
「畏まりました、マイマスター」
アリスの呼び掛けに、オートマタたちは頼もしく返事をしていた。
アリスが魔法石に魔力を注ぐと、列車はガタンガタンと動き始める。そして、王都を出てすぐ、運転席の魔法石に反応してポイントが切り替わり、列車はストライ方向へと走っていく。
1時間もすると、最初の駅であるリーヴェンの街に到着する。本当にあっという間である。
「では、リーヴェンの街の真ん中を流れる川を渡る橋の封鎖を解いてきます。それ以外にもする作業がございますので、マイマスターたちはしばらくお待ち下さい」
アリスはそう言って列車から降りると、川に架かる橋の封鎖を解いていく。それと同時に、橋の欄干を駅のホームまで延長させていた。これは馬車を軌道に侵入させないためである。万一侵入されてしまえば、どうしても大事故は避けられないのだから、その対策を施すのは仕方のない事だった。ただ、貨物ヤードの事を考えると、完全封鎖というのは難しかった。それでも、どうにか侵入を防げるように、橋の両方でその作業を行った。ずいぶんと工夫をしたがゆえに、もの凄く時間が掛かってしまったのだった。
「大変お待たせ致しました。それでは、改めてストライに向けて出発致します」
アリスがそう言うと、列車はストライへと向けてゆっくりと走り出したのだった。
「ギルソン殿下、アリスさん、こんにちは」
「やあ、マリカ。今日も精が出ますね」
「はい。結構楽しくて、つい頑張っちゃいます」
マリカは本当に生き生きとしていた。ここまでオートマタに対しての適性があるとは思わなかった。自分の書いた小説ではそこまで考えていなかったのである。言ってしまえばご都合展開といったところだろうか。しかし、そのマリカのオートマタに対する技術の高さゆえに、ファルーダン鉄道計画がうまく行っているのである。
「鉄道の件なのですが、マスカード帝国との国境の街であるストライまでの敷設が終了致しました。つきましては、そちらにも4往復分、8体のオートマタを新たに配置しようかと思いますので、準備できますでしょうか」
「それだったらもうできてますよ」
アリスがマリカに確認を取ると、予想の斜め上の回答が返ってきた。既に完成しているらしい。あとは魔法石さえはめ込めばいい状態らしい。正直度肝を抜く、マリカのオートマタ技術者としての腕前である。
というわけで、早速アリスは魔法石の選定に入る。魔法石一つ一つに適性というものがあり、この世界を舞台とした小説の筆者であるアリスは、その適性を感じ取れるというわけらしい。
というわけで、また10数人規模でアリスの配下のオートマタが増えた。ぶっちゃけて言えばこれだけ配下のオートマタが増えれば反乱を起こせるレベルである。だが、ギルソンはアリスの事を信じているし、アリスだってそんな事をするつもりはない。ギルソンの幸せとファルーダン王国の繁栄を心から願っているのだから。
さて、オートマタの作製が一段落しているとの事らしく、アリスとギルソンはマリカを連れ出す。好きだからといってもさすがに閉じこもりっぱなしもよろしくないからだ。
そうやってやって来たのは、鉄道の製作を請け負っている工房だった。今回もツェンとの間で走らせているのと同じような編成を4編成頼んである。今は2編成ほど完成しているようで、工房の外にはその機関車が佇んでいた。
「相変らず素晴らしい仕事ですね」
ギルソンはその見事なまでの仕上がりに、思わず言葉を漏らした。
「殿下に褒めて頂けて嬉しい限りでさ」
工房の職人は、とても嬉しそうにしている。
「それでは、試運転のためにひと編成頂いて参ります。鉄道の収入はまだ確定しておりませんが、それ以外の収入がございますから、お支払いには問題ございませんよ」
アリスは淡々と交渉をしていた。とりあえず、ひと編成分の代金を支払い、アリスの魔法でもって王都の駅へと列車を運ぶ。そして、増設したホームにその列車を配置したのだった。
アリスは新たに加えたオートマタたちを乗せて、早速試運転に臨む。
運転台にある魔法石に魔力を注ぎ込むアリス。これでいつでも運転できるようになったのだ。では、早速と言わんばかりに、アリスは試運転を開始する。
「今回はストライの街までの試運転です。王都からフィーアスの街までの距離よりも短いですから、思ったより早く終われると思いますよ」
アリスは乗り込んでいる面々にそう伝える。とはいえ、今回もちゃっかり機関車には寝具などを持ち込んである。時間が時間ゆえに、帰りは夜中になる可能性があったからだ。まあ、今回の試運転を前に、工房に出向いて下準備をしておいたので、ここまで準備万端というわけだった。
「では、出発致します。オートマタたち、私の運転をよく見ているのですよ?」
「畏まりました、マイマスター」
アリスの呼び掛けに、オートマタたちは頼もしく返事をしていた。
アリスが魔法石に魔力を注ぐと、列車はガタンガタンと動き始める。そして、王都を出てすぐ、運転席の魔法石に反応してポイントが切り替わり、列車はストライ方向へと走っていく。
1時間もすると、最初の駅であるリーヴェンの街に到着する。本当にあっという間である。
「では、リーヴェンの街の真ん中を流れる川を渡る橋の封鎖を解いてきます。それ以外にもする作業がございますので、マイマスターたちはしばらくお待ち下さい」
アリスはそう言って列車から降りると、川に架かる橋の封鎖を解いていく。それと同時に、橋の欄干を駅のホームまで延長させていた。これは馬車を軌道に侵入させないためである。万一侵入されてしまえば、どうしても大事故は避けられないのだから、その対策を施すのは仕方のない事だった。ただ、貨物ヤードの事を考えると、完全封鎖というのは難しかった。それでも、どうにか侵入を防げるように、橋の両方でその作業を行った。ずいぶんと工夫をしたがゆえに、もの凄く時間が掛かってしまったのだった。
「大変お待たせ致しました。それでは、改めてストライに向けて出発致します」
アリスがそう言うと、列車はストライへと向けてゆっくりと走り出したのだった。
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