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Mission037
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ツヴァイスの街の駅はすでに立派な駅舎が建っていた。線路をまたぐ跨線橋に宿泊施設や食堂なども兼ねた駅舎は本当に立派としか言いようがない。ちなみに駅舎の間には馬車だけが通れる馬車道も線路上に整備されており、列車の通過に合わせて閉鎖されるようになっている。本当は跨線橋かアンダーパスかにしようかと思ったのだが、馬への負担云々を考えて地面に作られる事になったのだ。まあ、編成の長さによっては通れない事もあるけれど。
「ここがツヴァイス駅ですね。馬車では2日掛かる距離でございますが、鉄道ですとアインゼでの停車時間を含めても2時間半で到着致しました。いかがでしょうか?」
アリスがそう言うと、貴族たちはその速さに称賛の声を上げていた。しかし、同時に懸念点も挙げている。
そう、ツヴァイスの街などから自分の領地までの移動である。貴族である以上、乗合馬車というのは避けたいものだし、護衛の問題だってある。この鉄道には馬車を乗り込ませる事が現状はできないのだから、こればかりは避けられない問題なのだ。その点についても、アリスはちゃんと考えていた。
「馬車の載せられる貨車は現在製作中でございます。とはいえ、編成の長さ次第では乗り降りに制限が掛かりますゆえに、現実的ではないでしょう。そこで私が考えたのは、借受馬車でございます」
借受……、つまりはレンタルという事である。馬車を連れては来れないものの、その代わりの足を用意するという事だ。
「こちらもそのうちに用意できるとは思います。現在は急ごしらえではございますが、3台ほどこのツヴァイス駅にご用意させて頂いております。よろしければ、そちらにもご試乗頂けると助かります」
アリスの説明に、試乗会に参加した貴族は険悪な顔をし始めた。さすがにギルソンの居る前では文句は言えないようで、どの貴族も我慢していた。
それも仕方のない事で、アリスも準備不足を否めない。アリスたちオートマタの魔法があるからといっても、そこには限界があるというものだ。その一つが馬車の準備だ。馬車本体の製造に時間がかかる。馬の馴致に時間がかかる。御者の育成にも時間がかかる。時間のかかる事だらけで、その中で用意できたのが3台なのだ。これでも十分用意できた方である。
「馬車は六人乗りでございます。本日ばかりは貴族方もご相席のほどをよろしくお願い致します」
アリスの言い分に、貴族たちは渋々従っていた。なにせこのオートマタはギルソンのオートマタなので、その身に何かあれば大問題になるからである。
ところが、いざ馬車に乗ってみると貴族たちも平民たちもその快適性にとても驚いていた。地面はガタガタしているというのに、その振動がほとんど伝わってこないのだ。この馬車、アリスの前世のサスペンションを参考に作った馬車なのである。ここには機械技師としての知識と技術が活きているのである。
「この馬車の技術は特許として王家が保持しております。いずれに皆様の持たれる馬車にもご使用頂きたく思います」
「いやぁ、相乗りは気に入らなかったが、馬車はなかなかに快適だったぞ。なあ、皆もそうだろ?」
貴族の一人がそう言うと、大体どの貴族も同じような感想らしく、嫌な顔をしながらも頷いていた。ちなみにこの表情は「お前に言われるのは何か癪だ」という顔である。
馬車の試乗会まで終わると、食堂車に移ってそこで出される食事の試食会となった。一応全員に断りを入れて、庶民用と貴族用の両方を味わってもらう。庶民用と貴族用の料金の差は実に100倍にも及ぶ。これは食材の差と品数の差によるものだ。しかし、これでは貴族用の料理を庶民が食べるのはかなりの贅沢になるというものだ。試乗会に参加した平民たちは、もう二度と食べられないと思い、その料理をしっかりと味わっていた。
「ふむ、庶民用のも値段設定の割に味は悪くないものだな。質の悪い食材の割に食べられるものになっている」
「こ、これが貴族の食事なのか。なんという贅沢なんだ!!」
お互い料理には満足していたようだ。
そうやって料理を味わっている間に、列車は王都まで戻ってきていた。帰りの方はアインゼには停車せず、そのまま通り過ぎていたらしい。
「いやぁ、実に素晴らしい旅だったよ。いずれ開業する日を楽しみにしているよ」
試乗会に参加した貴族や平民からはそのような声が聞こえてきた。アリスやマリカたちは、ここまで苦労しながら頑張ったかいがあったと、実に満足げな笑顔を浮かべていた。少し後ろに立つギルソンとジャスミンも実に明るい表情だった。
「な、何だと! それは本当かっ?!」
「はい。ファルーダンめは何やらとんでもないものを作り出したようでございます」
「そうか。この帝国を差し置いて、そのようなものを作り出すとは……。ファルーダンめ、やはり早めに滅ぼすに限るか……」
隣国の皇帝は、ぎりぎりと歯ぎしりをしている。
「もっと内情を深く探らせろ。なんとしても弱点を見つけ出すのだ」
「はっ!」
皇帝の声に、部下は早速動き出した。
「ぐぬぬ……、オートマタなるものの威を狩る弱小国が……。この帝国をないがしろにしておいて、ただで済むなと思うなよ?」
少し暗がりの広がる部屋に、皇帝の高笑いが響き渡っていた。
「ここがツヴァイス駅ですね。馬車では2日掛かる距離でございますが、鉄道ですとアインゼでの停車時間を含めても2時間半で到着致しました。いかがでしょうか?」
アリスがそう言うと、貴族たちはその速さに称賛の声を上げていた。しかし、同時に懸念点も挙げている。
そう、ツヴァイスの街などから自分の領地までの移動である。貴族である以上、乗合馬車というのは避けたいものだし、護衛の問題だってある。この鉄道には馬車を乗り込ませる事が現状はできないのだから、こればかりは避けられない問題なのだ。その点についても、アリスはちゃんと考えていた。
「馬車の載せられる貨車は現在製作中でございます。とはいえ、編成の長さ次第では乗り降りに制限が掛かりますゆえに、現実的ではないでしょう。そこで私が考えたのは、借受馬車でございます」
借受……、つまりはレンタルという事である。馬車を連れては来れないものの、その代わりの足を用意するという事だ。
「こちらもそのうちに用意できるとは思います。現在は急ごしらえではございますが、3台ほどこのツヴァイス駅にご用意させて頂いております。よろしければ、そちらにもご試乗頂けると助かります」
アリスの説明に、試乗会に参加した貴族は険悪な顔をし始めた。さすがにギルソンの居る前では文句は言えないようで、どの貴族も我慢していた。
それも仕方のない事で、アリスも準備不足を否めない。アリスたちオートマタの魔法があるからといっても、そこには限界があるというものだ。その一つが馬車の準備だ。馬車本体の製造に時間がかかる。馬の馴致に時間がかかる。御者の育成にも時間がかかる。時間のかかる事だらけで、その中で用意できたのが3台なのだ。これでも十分用意できた方である。
「馬車は六人乗りでございます。本日ばかりは貴族方もご相席のほどをよろしくお願い致します」
アリスの言い分に、貴族たちは渋々従っていた。なにせこのオートマタはギルソンのオートマタなので、その身に何かあれば大問題になるからである。
ところが、いざ馬車に乗ってみると貴族たちも平民たちもその快適性にとても驚いていた。地面はガタガタしているというのに、その振動がほとんど伝わってこないのだ。この馬車、アリスの前世のサスペンションを参考に作った馬車なのである。ここには機械技師としての知識と技術が活きているのである。
「この馬車の技術は特許として王家が保持しております。いずれに皆様の持たれる馬車にもご使用頂きたく思います」
「いやぁ、相乗りは気に入らなかったが、馬車はなかなかに快適だったぞ。なあ、皆もそうだろ?」
貴族の一人がそう言うと、大体どの貴族も同じような感想らしく、嫌な顔をしながらも頷いていた。ちなみにこの表情は「お前に言われるのは何か癪だ」という顔である。
馬車の試乗会まで終わると、食堂車に移ってそこで出される食事の試食会となった。一応全員に断りを入れて、庶民用と貴族用の両方を味わってもらう。庶民用と貴族用の料金の差は実に100倍にも及ぶ。これは食材の差と品数の差によるものだ。しかし、これでは貴族用の料理を庶民が食べるのはかなりの贅沢になるというものだ。試乗会に参加した平民たちは、もう二度と食べられないと思い、その料理をしっかりと味わっていた。
「ふむ、庶民用のも値段設定の割に味は悪くないものだな。質の悪い食材の割に食べられるものになっている」
「こ、これが貴族の食事なのか。なんという贅沢なんだ!!」
お互い料理には満足していたようだ。
そうやって料理を味わっている間に、列車は王都まで戻ってきていた。帰りの方はアインゼには停車せず、そのまま通り過ぎていたらしい。
「いやぁ、実に素晴らしい旅だったよ。いずれ開業する日を楽しみにしているよ」
試乗会に参加した貴族や平民からはそのような声が聞こえてきた。アリスやマリカたちは、ここまで苦労しながら頑張ったかいがあったと、実に満足げな笑顔を浮かべていた。少し後ろに立つギルソンとジャスミンも実に明るい表情だった。
「な、何だと! それは本当かっ?!」
「はい。ファルーダンめは何やらとんでもないものを作り出したようでございます」
「そうか。この帝国を差し置いて、そのようなものを作り出すとは……。ファルーダンめ、やはり早めに滅ぼすに限るか……」
隣国の皇帝は、ぎりぎりと歯ぎしりをしている。
「もっと内情を深く探らせろ。なんとしても弱点を見つけ出すのだ」
「はっ!」
皇帝の声に、部下は早速動き出した。
「ぐぬぬ……、オートマタなるものの威を狩る弱小国が……。この帝国をないがしろにしておいて、ただで済むなと思うなよ?」
少し暗がりの広がる部屋に、皇帝の高笑いが響き渡っていた。
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