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Mission031
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ファルーダン鉄道の計画は、すぐにマリカも巻き込んで進んでいく。とりあえず、近くの鉱山地域まで線路を敷設し、そこに列車を走らせるという計画となった。そこでアリスは、マリカにはオートマタの作製を頼む。そして、列車の構造を書き記した紙を職人たちに渡して作ってもらう。動力としてはオートマタの魔力を使うので、それを伝える車輪と車軸や貨車などの作製を頼んでおいた。
とにかく準備が終わったところで、アリスは鉱山と王都との間の街の位置や地形を確認する。そして、複線の線路を錬成していく。さすがに高架橋なんて物は造れない。造ったところで荷下ろしが大変になるからだ。少なくとも両端の場所には転線できる箇所を設けておく。線路幅は狭軌である1067mmだ。
アリスが地面に手をついて魔法を使うと、道床が盛り上がり、そこに枕木とレールが設置されていく。相変わらずの規格外のオートマタの魔法である。馬車を使って10日も掛かる場所までのレール敷設だ。途中に川や崖もあって楽な建設ではないものの、アリスの魔法はそれをすべて可能にしてしまった。
おおよそ100mごとくらいに道床には馬車が通れるだけの穴が開けられており、鉄道が人の移動に支障を出さないように考慮されている。また、駅を設ける街付近はなるべく地表付近まで線路の位置を下げておいた。現代日本における知識を踏まえた上で、この工事をたったの1週間でやり遂げてしまったのである。とりあえずは転線に関しては鉱山と王都の2か所しか渡り線を設けていないが、今後の運用次第では増設する予定である。ちなみにちゃんとポイントもさくっと作ってみせていた。どんだけなのだろうか。
「お疲れ様、アリス」
「はい、マイマスター、ありがとうございます」
城に戻ってきたアリスは、疲れを癒すべくゆっくりと休んでいる。だが、そこまでゆっくりしている暇はない。マリカのオートマタの作製作業や走らせる列車の製造状態など、確認する事はたくさんのあるのである。一応鉄道路線については街の人たちに説明しておいたので大丈夫だろう。ともかく、ファルーダン鉄道の計画は着実に前進していた。
鉄道路線の完成からさらに1週間後、鉄道車両の見本ができ上がった。とりあえず前後に付ける動力車のみで1台だけだが、これだけでもできれば十分である。動力となるオートマタが乗り込むスペースと、動かすための車輪を2対4か所の車輪を持っていればとりあえずは問題ない。でき上った動力車は長さにして大人4人分くらいのものだが、これで問題はなさそうである。
「とりあえず、線路に乗せて動かしてみましょう」
そういって、何トンもある動力車を、アリスは魔法で持ち上げて線路に設置した。これだけでアリスがどんだけ規格外なのかが分かる。みんなして口をあんぐりさせていた。
言葉を失った面々をよそに、アリスは運転台に備えられた魔法石に魔力を注ぐ。すると、ガタンガタンと列車が動き出した。単両だけれども列車である。
「おおっ!」
動いた列車を見て、鍛冶屋の面々がもの凄く感動している。少し走ったところでアリスはブレーキを掛ける。これもまた問題なく動作して、見事に止まっていた。
すると今度は、アリスは離れた場所からポイントを操作する。すると、レールが左側から右側へ渡れるように切り替わっていた。もちろんその先のポイントも切り替えておく。そうしないと脱線してしまうからだ。ポイントを切り替えたアリスは、再び動力車を操作して、複線の反対側のレールへと移動する。これも実にスムーズだった。
「これなら問題なさそうですね。よく作って下さいました。できれば、これをもう3台作って頂きたいのです。列車は2編成で前後にこの運転台を連結します。その間に貨車や客車を連結して、人や物を運ぶのです」
「分かった。こうなったら職人魂が燃えてきたぜ。おい、さっさと取り掛かるぞ!」
「はいっ!」
アリスの声に鍛冶職人たちがやる気になって、ずかずかと鍛冶工房へと戻っていった。アリスはその姿を見て、つい微笑んでしまった。
「これが実現すれば、すごい技術革新ですよ。さすがはアリスですね」
「いえ、たまたま私の魔法石に役立つ情報があっただけの事です。私だけの力ではございません」
「でも、それを実行してしまったのは間違いなくアリスです。誇っていいと思いますよ」
「……私はオートマタです。そのような大それた事、できるわけがございません」
ギルソンが褒めてくるのだが、アリスはあくまでも謙遜に振舞っていた。それを聞いたギルソンはそれ以上は褒めてくる事はなかった。アリスの気持ちを察したからだろう。
こうしたやり取りからさらに2週間後、ついに2編成4台の動力車と間に挟み込む貨車が完成したのだった。アリスはその間に各街にホームを設置していたのだが、それは今のところ黙っておくのだった。
何にしても、まずは王都と鉱山を結ぶ鉄道が運行できるような状態になった。あとはそのためのオートマタの登場を待つばかりである。というわけで、アリスはギルソンと共にオートマタの工房へと足を運んだのだった。
とにかく準備が終わったところで、アリスは鉱山と王都との間の街の位置や地形を確認する。そして、複線の線路を錬成していく。さすがに高架橋なんて物は造れない。造ったところで荷下ろしが大変になるからだ。少なくとも両端の場所には転線できる箇所を設けておく。線路幅は狭軌である1067mmだ。
アリスが地面に手をついて魔法を使うと、道床が盛り上がり、そこに枕木とレールが設置されていく。相変わらずの規格外のオートマタの魔法である。馬車を使って10日も掛かる場所までのレール敷設だ。途中に川や崖もあって楽な建設ではないものの、アリスの魔法はそれをすべて可能にしてしまった。
おおよそ100mごとくらいに道床には馬車が通れるだけの穴が開けられており、鉄道が人の移動に支障を出さないように考慮されている。また、駅を設ける街付近はなるべく地表付近まで線路の位置を下げておいた。現代日本における知識を踏まえた上で、この工事をたったの1週間でやり遂げてしまったのである。とりあえずは転線に関しては鉱山と王都の2か所しか渡り線を設けていないが、今後の運用次第では増設する予定である。ちなみにちゃんとポイントもさくっと作ってみせていた。どんだけなのだろうか。
「お疲れ様、アリス」
「はい、マイマスター、ありがとうございます」
城に戻ってきたアリスは、疲れを癒すべくゆっくりと休んでいる。だが、そこまでゆっくりしている暇はない。マリカのオートマタの作製作業や走らせる列車の製造状態など、確認する事はたくさんのあるのである。一応鉄道路線については街の人たちに説明しておいたので大丈夫だろう。ともかく、ファルーダン鉄道の計画は着実に前進していた。
鉄道路線の完成からさらに1週間後、鉄道車両の見本ができ上がった。とりあえず前後に付ける動力車のみで1台だけだが、これだけでもできれば十分である。動力となるオートマタが乗り込むスペースと、動かすための車輪を2対4か所の車輪を持っていればとりあえずは問題ない。でき上った動力車は長さにして大人4人分くらいのものだが、これで問題はなさそうである。
「とりあえず、線路に乗せて動かしてみましょう」
そういって、何トンもある動力車を、アリスは魔法で持ち上げて線路に設置した。これだけでアリスがどんだけ規格外なのかが分かる。みんなして口をあんぐりさせていた。
言葉を失った面々をよそに、アリスは運転台に備えられた魔法石に魔力を注ぐ。すると、ガタンガタンと列車が動き出した。単両だけれども列車である。
「おおっ!」
動いた列車を見て、鍛冶屋の面々がもの凄く感動している。少し走ったところでアリスはブレーキを掛ける。これもまた問題なく動作して、見事に止まっていた。
すると今度は、アリスは離れた場所からポイントを操作する。すると、レールが左側から右側へ渡れるように切り替わっていた。もちろんその先のポイントも切り替えておく。そうしないと脱線してしまうからだ。ポイントを切り替えたアリスは、再び動力車を操作して、複線の反対側のレールへと移動する。これも実にスムーズだった。
「これなら問題なさそうですね。よく作って下さいました。できれば、これをもう3台作って頂きたいのです。列車は2編成で前後にこの運転台を連結します。その間に貨車や客車を連結して、人や物を運ぶのです」
「分かった。こうなったら職人魂が燃えてきたぜ。おい、さっさと取り掛かるぞ!」
「はいっ!」
アリスの声に鍛冶職人たちがやる気になって、ずかずかと鍛冶工房へと戻っていった。アリスはその姿を見て、つい微笑んでしまった。
「これが実現すれば、すごい技術革新ですよ。さすがはアリスですね」
「いえ、たまたま私の魔法石に役立つ情報があっただけの事です。私だけの力ではございません」
「でも、それを実行してしまったのは間違いなくアリスです。誇っていいと思いますよ」
「……私はオートマタです。そのような大それた事、できるわけがございません」
ギルソンが褒めてくるのだが、アリスはあくまでも謙遜に振舞っていた。それを聞いたギルソンはそれ以上は褒めてくる事はなかった。アリスの気持ちを察したからだろう。
こうしたやり取りからさらに2週間後、ついに2編成4台の動力車と間に挟み込む貨車が完成したのだった。アリスはその間に各街にホームを設置していたのだが、それは今のところ黙っておくのだった。
何にしても、まずは王都と鉱山を結ぶ鉄道が運行できるような状態になった。あとはそのためのオートマタの登場を待つばかりである。というわけで、アリスはギルソンと共にオートマタの工房へと足を運んだのだった。
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