転生オートマタ

未羊

文字の大きさ
上 下
16 / 173

Mission015

しおりを挟む
『機械仕掛けの魔法と運命の王子』
 この物語の主人公となるヒロインは、騎士爵家の娘であるマリカ・オリハーンという少女である。オレンジに近い感じの茶髪を持った責任感の強い女の子であり、またオートマタに対して異様なまでに仕組みを知ろうと猛勉強をしていた、脳筋と知性派が混在したなかなかカオスなヒロインである。ちなみに、マリカというのは、アリスの前世の子どもたちの一人の名前である。ギリギリ大正生まれのありすにはたくさんの子どもが居たのである。
 前世の話はさておき、ヒロインちゃんであるマリカは、ギルソンとは同い年であり、学園で知り合う事になっている。この時のギルソンは何度も言うように性格が破綻しており、マリカからの印象は最悪だった。何よりも、自分のオートマタを完全に道具として扱っており、乱暴もよくしていたので、マリカはその点からもギルソンを嫌ったのである。
 ちなみにマリカは漢字で書くと『茉莉花』であり、つまりはジャスミンの事である。なので、髪飾りなどのアクセントにはジャスミンの花が用いられているのだ。このファルーダン王国では珍しい花なので、嫌というほど目立つはずである。
 面倒なので、ここでこのヒロインちゃん、マリカについてもっと語っておこう。
 小説中でのマリカの初登場は、何度も言っている学園でのギルソンとの最悪の出会いである。お互いによそ見をしてぶつかっておいて、ギルソンが手打ちにしようとするという、なんとも絶体絶命な出会いなのだ。学園内という事もあってその時はなんとか収まったものの、これでマリカの中にはギルソンは危険な人物として記憶される事になる。
 学園での話はギルソンがメインとなって進むので、その後のヒロイン・マリカの出番は極端に減る。この次にまともな出番がやって来るのは、ギルソンが反乱を起こしてからだ。
 ギルソンの反乱によって、ファルーダンの王族を含めギルソンへの反対勢力は国境付近まで追いやられてしまう。ここで立ち上がったのが第二王子のシュヴァリエというわけだ。その際に副官として抜擢されたのが、機械技師としての腕をめきめきと上げていたマリカなのである。正直、オートマタを戦争の道具にする事には反対だったマリカだったが、王国に混乱をもたらしたのがギルソンと分かるや否や、態度を翻して第二王子派についたのである。
 マリカがオートマタを戦争に投入する事を決意したのは、単純にギルソンのオートマタのせいである。彼女は安物の女性型のオートマタだったのだが、能力が半端なかった。そこらのオートマタが太刀打ちできないくらいの接近戦をこなし、魔法も多彩に操る。生半可な能力では太刀打ちできないし、魔法を使うので一般兵にもかなりの被害が出るのは避けられないのだ。となれば、そのオートマタに太刀打ちできるだけの量産型オートマタを用意するしかなかったのである。
 しかし、マリカの活躍はそれだけではない。ギルソンの支配下に置かれたオートマタに対抗するだけの機械仕掛けの兵器もかなり作り上げていた。辺境に居て鉱山資源だけは十分に使えたのも大きいだろう。所詮、一般の商会で作り上げられるオートマタの性能なんてたかが知れたものである。オートマタを知り尽くしたとも言っていいマリカの技術力に太刀打ちできるわけもなく、どんどんと撃破されていった。
 シュヴァリエ率いる騎士隊とマリカ率いる機械師団の活躍で、徐々に戦線を王都へと押し返す事に成功したのである。
 そして、迎えた王城戦。王城の一画が瓦礫と化すような激しい戦いが繰り広げられ、苦戦の末にギルソンとそのオートマタを撃破する事に成功。その最期のシーンが、物語冒頭の雨が降り注ぐシーンである。この後の扱いは想像に難くないだろうが、ありすはあえて明確な描写をしなかった。これは筋書きを変えさせた出版社への意趣返しである。ギルソンへの思い入れはそれくらいに強かったのだ。
 その後、シュヴァリエとマリカが結婚をしてファルーダン王国を再建するのだが、通常なら王族と騎士爵の結婚は無理筋な話である。だが、このギルソンの反乱があったからこそ成しえたシンデレラストーリーなのである。この後もいろいろと波乱万丈な出来事が待ち構えているのだが、今回はまだ割愛しておこう。

(いやまぁ、書いたのは私だが、人気が出て出版社が調子に乗ったのが悪かったね。あれは私の一番の失敗だわ)
 そんな事を思いながら、護衛のロドスとともにギルソンに付き添って市井に出向くアリス。
 目的地は平民街である。それというのも、マリカの家は騎士爵とはいえ、扱いはほぼ平民。領地を持たない騎士団所属の家柄なのだ。そういったなんちゃって貴族は、貴族街の下流地区と平民街の境目くらいに居を構えているのである。
(ほぼ平民とはいえ、一応騎士爵は貴族だから学園に通えるのよね)
 アリスは色々と考え事をしているようである。それを横目に見るロドスは、アリスに対してかなり懐疑的な目を向けているようだ。こいつ、本当にオートマタか、と。
 そういったぎすぎすとした空気を背負いながらも、ギルソンは初めて見る王都の市井に目を輝かせていた。今までは馬車で通り過ぎるだけだったからである。
 歩き続ける事、どれくらい経っただろうか。目の前の建物の様相ががらりと変わる。ついに平民街にたどり着いたのである。果たしてアリスたちは、ヒロインちゃんに出会う事はできるのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を庇おうとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています

ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら 目の前に神様がいて、 剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに! 魔法のチート能力をもらったものの、 いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、 魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ! そんなピンチを救ってくれたのは イケメン冒険者3人組。 その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに! 日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。 本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。

処理中です...