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Mission012
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アリスによってもたらされた農地改革によって、ファルーダン王国内の食糧自給率は徐々に増加傾向になっていく。しかしながら、他国との関係があるために貿易がすぐ切れるわけはなかった。急にやめるともなれば他国にいろいろ疑念を持たせるわけだし、国内の生産は始まったばかりで安定にはとても遠いのである。
しかし、このアリスの活躍によって、王城内におけるギルソンの立場はそう悪くはなかった。
農地改革が始まってから1年が経ち、初年度の生産の収穫地が報告される。輸入総量の2割ほどの生産が上がっており、まずまずの出だしといった感じだ。
この農業の指揮には、実は2年目からギルソンも本格的に関わり始めた。8歳とは思えないてきぱきはきはきとした指揮で、農民たちからの信頼はとても厚いようだ。
農地に魔物が出現すれば、8歳ながらに討伐にも打って出ていく。アリスの補助があるとはいえども、日頃の訓練の成果が十分に出ているようである。
ギルソンと親兄弟との仲は確かに悪くないのだが、ギルソンは農業に関わり過ぎていると、一部の貴族からは批判的な声が聞こえてくる。これもまた事実である。
しかし、王族の直轄地での事なので、農業に関わっていてもそれはただの領地運営である。一部の貴族の批判はそれを理由に一蹴されているようだった。
「ギルソンや。農業は楽しいか?」
ある日の食事の席で、国王アルバートはギルソンにそんな質問をした。
「はい、とても楽しいです。王族が土いじりなどと言われる事もありますが、自分で一生懸命行ってその成果が出た時はとても嬉しく思うのです」
ギルソンは想像以上に楽しそうな顔をして、国王の質問に答えていた。さすがにこの様子には国王は驚いたようだ。
「そうか。それならば続けなさい。アリスも、ギルソンの事をよろしく頼むぞ」
「はい、父上」
「畏まりました、国王陛下。このアリス、この身に変えてもマスターをお守り致します」
国王の言葉に、ギルソンもアリスもしっかりと返事をしたのであった。
この後も、ギルソンは10歳にあるまでは一生懸命に農業に携わり続けた。
この間もアリスは、前世知識を利用して農作業のための道具をあれこれと作っていた。意外と上の王子王女たちも農業に関心があるのか、アリスのお願いも結構聞いてくれたのである。
特に第二王女であるリリアンはおにぎりが気に入っているようで、収穫の度に村まで味わいに来たくらいである。小説の中では出番どころか存在すら触れられなかったリリアンだが、これはこれで頼もしい味方である。
(確かリリアン様は学園に通われてましたよね。学園の様子を一度お伺いしておきたいものですね)
ちょうどギルソンが農業に関わっていた時、リリアンは13歳~15歳という、まさかに学園生活の真っただ中だったのだ。
本来であれば王女は学業は免除されるのだが、ギルソンの姿に刺激されたのか本人は通ってみたいと駄々をこねたそうである。まさかの13歳児である。
この時に国王はとても悩んだそうで、なにせ王女とあらば外国に嫁ぐというのが一般的であるために、自国の学園に通う意味はあるのか相当議論になったそうである。結局は本人の意思を尊重して学園に通わせたそうだ。
朝の弱かったリリアンも、さすがに立派な王女となっており、学園で学んだ知識は大いに役に立っているようである。城でも専属の家庭教師から学んでいたそうだが、それだけ忙しいくせに収穫したてのお米を食べに村まで来ていたの。大した行動力である。
「リリアン様は学園に通われていましたよね」
「ええ、そうよ。それがどうしたのかしら」
ギルソン9歳の収穫の時期、アリスは思い切ってリリアンに学園生活について尋ねてみた。
「マイマスターもいずれ通われる事になるかと思われますので、参考までにお話をお伺いしたいのです」
アリスにこう言われたリリアンは、自分の従者であるオートマタと一度顔を見合わせた。
「リリアン様、別に構わないかと思います。数年でそう簡単には制度は変わらないでしょうから」
リリアンのオートマタがこう答えるので、リリアンはアリスに学園の話をする事に決めた。すると話始めようとした時に、ちょうどギルソンが入って来た。
「姉上、今年も来られてらしたんですね。いかがですか、今年のお味は」
「悪くないわね。それよりもギルソン、ちょっといいかしら」
おにぎりをおいしそうに平らげていたリリアンは見栄を張って応えると、ギルソンに話題を振ってみる。
「何でしょうか、姉上」
「あなたは学園に通うつもりなの?」
「学園ですか?」
「そうよ。あなたは第五王子でしょう? 一般貴族になる可能性は高いわけだし、私は通っておいた方がいいと思うけど、ギルソン自体はどう思ってるのかしら」
リリアンからこう言われたギルソンは、9歳ながらにもうーんと考え込んでしまった。これは答えまで時間が掛かると判断したリリアンは、
「ちょうどいいわ。あんたのオートマタのアリスから質問されたから、私の学園での生活の話をしてあげる。ギルソンはまだまだまるっと3年は悩めるんだから、参考にしてちょうだい」
と、強制的に学園の話を始めたのだった。だが、このリリアンの話にギルソンは目を輝かせて聞き入っていた。
あれ? これって小説同様に学園に通うルート決定なのかしら?
しかし、このアリスの活躍によって、王城内におけるギルソンの立場はそう悪くはなかった。
農地改革が始まってから1年が経ち、初年度の生産の収穫地が報告される。輸入総量の2割ほどの生産が上がっており、まずまずの出だしといった感じだ。
この農業の指揮には、実は2年目からギルソンも本格的に関わり始めた。8歳とは思えないてきぱきはきはきとした指揮で、農民たちからの信頼はとても厚いようだ。
農地に魔物が出現すれば、8歳ながらに討伐にも打って出ていく。アリスの補助があるとはいえども、日頃の訓練の成果が十分に出ているようである。
ギルソンと親兄弟との仲は確かに悪くないのだが、ギルソンは農業に関わり過ぎていると、一部の貴族からは批判的な声が聞こえてくる。これもまた事実である。
しかし、王族の直轄地での事なので、農業に関わっていてもそれはただの領地運営である。一部の貴族の批判はそれを理由に一蹴されているようだった。
「ギルソンや。農業は楽しいか?」
ある日の食事の席で、国王アルバートはギルソンにそんな質問をした。
「はい、とても楽しいです。王族が土いじりなどと言われる事もありますが、自分で一生懸命行ってその成果が出た時はとても嬉しく思うのです」
ギルソンは想像以上に楽しそうな顔をして、国王の質問に答えていた。さすがにこの様子には国王は驚いたようだ。
「そうか。それならば続けなさい。アリスも、ギルソンの事をよろしく頼むぞ」
「はい、父上」
「畏まりました、国王陛下。このアリス、この身に変えてもマスターをお守り致します」
国王の言葉に、ギルソンもアリスもしっかりと返事をしたのであった。
この後も、ギルソンは10歳にあるまでは一生懸命に農業に携わり続けた。
この間もアリスは、前世知識を利用して農作業のための道具をあれこれと作っていた。意外と上の王子王女たちも農業に関心があるのか、アリスのお願いも結構聞いてくれたのである。
特に第二王女であるリリアンはおにぎりが気に入っているようで、収穫の度に村まで味わいに来たくらいである。小説の中では出番どころか存在すら触れられなかったリリアンだが、これはこれで頼もしい味方である。
(確かリリアン様は学園に通われてましたよね。学園の様子を一度お伺いしておきたいものですね)
ちょうどギルソンが農業に関わっていた時、リリアンは13歳~15歳という、まさかに学園生活の真っただ中だったのだ。
本来であれば王女は学業は免除されるのだが、ギルソンの姿に刺激されたのか本人は通ってみたいと駄々をこねたそうである。まさかの13歳児である。
この時に国王はとても悩んだそうで、なにせ王女とあらば外国に嫁ぐというのが一般的であるために、自国の学園に通う意味はあるのか相当議論になったそうである。結局は本人の意思を尊重して学園に通わせたそうだ。
朝の弱かったリリアンも、さすがに立派な王女となっており、学園で学んだ知識は大いに役に立っているようである。城でも専属の家庭教師から学んでいたそうだが、それだけ忙しいくせに収穫したてのお米を食べに村まで来ていたの。大した行動力である。
「リリアン様は学園に通われていましたよね」
「ええ、そうよ。それがどうしたのかしら」
ギルソン9歳の収穫の時期、アリスは思い切ってリリアンに学園生活について尋ねてみた。
「マイマスターもいずれ通われる事になるかと思われますので、参考までにお話をお伺いしたいのです」
アリスにこう言われたリリアンは、自分の従者であるオートマタと一度顔を見合わせた。
「リリアン様、別に構わないかと思います。数年でそう簡単には制度は変わらないでしょうから」
リリアンのオートマタがこう答えるので、リリアンはアリスに学園の話をする事に決めた。すると話始めようとした時に、ちょうどギルソンが入って来た。
「姉上、今年も来られてらしたんですね。いかがですか、今年のお味は」
「悪くないわね。それよりもギルソン、ちょっといいかしら」
おにぎりをおいしそうに平らげていたリリアンは見栄を張って応えると、ギルソンに話題を振ってみる。
「何でしょうか、姉上」
「あなたは学園に通うつもりなの?」
「学園ですか?」
「そうよ。あなたは第五王子でしょう? 一般貴族になる可能性は高いわけだし、私は通っておいた方がいいと思うけど、ギルソン自体はどう思ってるのかしら」
リリアンからこう言われたギルソンは、9歳ながらにもうーんと考え込んでしまった。これは答えまで時間が掛かると判断したリリアンは、
「ちょうどいいわ。あんたのオートマタのアリスから質問されたから、私の学園での生活の話をしてあげる。ギルソンはまだまだまるっと3年は悩めるんだから、参考にしてちょうだい」
と、強制的に学園の話を始めたのだった。だが、このリリアンの話にギルソンは目を輝かせて聞き入っていた。
あれ? これって小説同様に学園に通うルート決定なのかしら?
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