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Mission011
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予想外な事はあったものの、村での野菜の栽培指導は順調に進んだ。途中経過についても、城から派遣した技術者とそのオートマタで対応する事になっており、定期的に城からのチェックが入る。なので、村としては本気で取り組むしかないわけである。畑に対して行った事は事細かに記録を取り、環境の変化などもしっかりと記録していく。その事によって、野菜の生育とどのような関係があるのかをまとめて、王国内の他の土地への応用を検討するのである。
「これで少しは、国が豊かになりますね」
「そうでございますね、マイマスター。ですが、まだ始めたばかりですので、早くても結果が分かるのは半年後でございます。虫の害や天候の変化など様々な要因が絡みますので、とにかく彼らに任せるしかありません」
「アリスは物知りだね」
「お褒め頂き恐縮でございます、マイマスター」
ギルソンは、アリスがよく分からない知識をたくさん持っているという事はしっかり認識しているが、あえてそこには切り込まないようにしている。7歳ながらに頭の回る少年である。
そもそもオートマタ自体が謎めいた存在であるので、どこからともなく知識を持ち込んでいたりしていても不思議はないのだ。そこはそういうものだと納得せざるを得ないのである。
数日間の村での滞在を済ませたギルソンとアリスたちは、籾の一部を袋に詰めて城へと戻っていった。
そういえば、無事な籾があったのに今から野菜を植えてどうなるのだろうかとも思ったアリスだが、よくよく思い返せば、ファルーダン王国には日本のような四季が存在していなかったのだ。年中温暖で雨は降るが雪は降らない。地球上では近しいものはあるにしても、まず存在しないだろう気候帯である。本当に不思議な世界である。
(小説を書いていた時も、そこまで深くは考えてなかったから、仕方ないのかなぁ……)
アリスはいろいろ振り返って首を傾げていた。うんうんと唸るオートマタの姿にギルソンはくすくすと笑っていたのだが、考え込み過ぎたアリスはそれを見逃してしまったのだった。
さて、籾を持って帰ったアリスは、早速その一部を植えて自作の家庭菜園で稲の育成に取り掛かる。オートマタの持つ防護魔法で気候管理もばっちりである。魔法万歳。
それ以外の籾は早速お米に加工。玄米とそこからさらに精米した白米を適当な量で作る。なにせ主食はパンなので、ご飯はそれほど出番がないからである。スープの具材にしてしまった方が消費ははかどるだろう。生米状態からのレシピも覚えてはいるが、それはまたおいおい追加していく事にしよう。
白米を作る時に取った糠は基本的に肥料。糠漬けもこの世界じゃ作れない可能性が高い。アリスは前世の知識とこの世界の知識をすり合わせていろいろと試行錯誤をしていった。
もちろん、ギルソンのオートマタとして基本的には彼に同行している。ギルソンはまだ昼寝をする事があるので、雑用はほとんどその時に行っている。料理のメモなどの書き出しは夜中にして、料理人に渡していたりする。とにかく、王国の現状改善のために必死に動いていた。なにせ、小説の本編開始まであと6年だ。できる限りの不安要素は取り除いておきたいものである。
(やっぱり鍵はヒロインちゃんかしらね。ギルソン殿下と家族の間には現状不穏な空気は存在していないし、一気に空気が変わるとするなら、やっぱりそこかしら)
アリスはギルソンの稽古を付けながら、いろいろと思案を巡らせていた。
それにしても、考え事をしながらギルソンと剣の稽古とは、オートマタの能力の高さには驚かされるばかりである。
(となると、小説では殿下が学園に入る事になる13歳。そこが一番気を付けるポイントに間違いないわね)
実は、ファルーダン王国にも王国で設立した学園はある。ヒロインちゃんとの出会いはその学園であり、そこで大きく物語が動き出す事になる。
ちなみに王族は専属の講師が付くので、学園に通う事はない。ただ、ギルソンの時にはその講師を雇う余裕がなくなっており、学園に放り込まれる事になるのだ。そこで、ヒロインと出会う。
普通なら、ギルソンとヒロインが恋に落ちそうな展開だが、この時のギルソンはすでに性格が荒んできていたので、そうはならなかった。
そんな状況の中、ヒロインの心を射止めたのは兄弟で一番まともだった次男の第二王子シュヴァリエである。ギルソンの7つ年上ではあるが、恋愛にそんなものなど関係なかった。
ヒロイン自体は騎士爵の家の出ではあったが、ギルソンたちの反乱をシュヴァリエと一緒に治めた事により、結果彼と結ばれるというハッピーエンドの話である。
ちなみにこのヒロインの設定には、当時のありすの機械技師という職業を反映している。オートマタの技術と魔石、そして、彼女自身の柔軟な発想で、機械を駆使してギルソンの反乱や魔物たちとの戦いを有利に進めていくのである。なんともなヒロインたるチート設定である。
(なんであんな設定をしちゃったのかねぇ。若気の至りって奴かしら)
若いとはいっても、当時のありすは50歳を超えていた。
(とはいえ、自分の事を反映した子だから、仲良くはなれるかしらね。同族嫌悪だったらどうしようかしら)
ぐるぐると思考を巡らせるアリスだったが、まぁその時はその時と一度考える事を放棄したのであった。それよりも今は目の前の事と、今日も元気にギルソンに剣の稽古を付けるのだった。
「これで少しは、国が豊かになりますね」
「そうでございますね、マイマスター。ですが、まだ始めたばかりですので、早くても結果が分かるのは半年後でございます。虫の害や天候の変化など様々な要因が絡みますので、とにかく彼らに任せるしかありません」
「アリスは物知りだね」
「お褒め頂き恐縮でございます、マイマスター」
ギルソンは、アリスがよく分からない知識をたくさん持っているという事はしっかり認識しているが、あえてそこには切り込まないようにしている。7歳ながらに頭の回る少年である。
そもそもオートマタ自体が謎めいた存在であるので、どこからともなく知識を持ち込んでいたりしていても不思議はないのだ。そこはそういうものだと納得せざるを得ないのである。
数日間の村での滞在を済ませたギルソンとアリスたちは、籾の一部を袋に詰めて城へと戻っていった。
そういえば、無事な籾があったのに今から野菜を植えてどうなるのだろうかとも思ったアリスだが、よくよく思い返せば、ファルーダン王国には日本のような四季が存在していなかったのだ。年中温暖で雨は降るが雪は降らない。地球上では近しいものはあるにしても、まず存在しないだろう気候帯である。本当に不思議な世界である。
(小説を書いていた時も、そこまで深くは考えてなかったから、仕方ないのかなぁ……)
アリスはいろいろ振り返って首を傾げていた。うんうんと唸るオートマタの姿にギルソンはくすくすと笑っていたのだが、考え込み過ぎたアリスはそれを見逃してしまったのだった。
さて、籾を持って帰ったアリスは、早速その一部を植えて自作の家庭菜園で稲の育成に取り掛かる。オートマタの持つ防護魔法で気候管理もばっちりである。魔法万歳。
それ以外の籾は早速お米に加工。玄米とそこからさらに精米した白米を適当な量で作る。なにせ主食はパンなので、ご飯はそれほど出番がないからである。スープの具材にしてしまった方が消費ははかどるだろう。生米状態からのレシピも覚えてはいるが、それはまたおいおい追加していく事にしよう。
白米を作る時に取った糠は基本的に肥料。糠漬けもこの世界じゃ作れない可能性が高い。アリスは前世の知識とこの世界の知識をすり合わせていろいろと試行錯誤をしていった。
もちろん、ギルソンのオートマタとして基本的には彼に同行している。ギルソンはまだ昼寝をする事があるので、雑用はほとんどその時に行っている。料理のメモなどの書き出しは夜中にして、料理人に渡していたりする。とにかく、王国の現状改善のために必死に動いていた。なにせ、小説の本編開始まであと6年だ。できる限りの不安要素は取り除いておきたいものである。
(やっぱり鍵はヒロインちゃんかしらね。ギルソン殿下と家族の間には現状不穏な空気は存在していないし、一気に空気が変わるとするなら、やっぱりそこかしら)
アリスはギルソンの稽古を付けながら、いろいろと思案を巡らせていた。
それにしても、考え事をしながらギルソンと剣の稽古とは、オートマタの能力の高さには驚かされるばかりである。
(となると、小説では殿下が学園に入る事になる13歳。そこが一番気を付けるポイントに間違いないわね)
実は、ファルーダン王国にも王国で設立した学園はある。ヒロインちゃんとの出会いはその学園であり、そこで大きく物語が動き出す事になる。
ちなみに王族は専属の講師が付くので、学園に通う事はない。ただ、ギルソンの時にはその講師を雇う余裕がなくなっており、学園に放り込まれる事になるのだ。そこで、ヒロインと出会う。
普通なら、ギルソンとヒロインが恋に落ちそうな展開だが、この時のギルソンはすでに性格が荒んできていたので、そうはならなかった。
そんな状況の中、ヒロインの心を射止めたのは兄弟で一番まともだった次男の第二王子シュヴァリエである。ギルソンの7つ年上ではあるが、恋愛にそんなものなど関係なかった。
ヒロイン自体は騎士爵の家の出ではあったが、ギルソンたちの反乱をシュヴァリエと一緒に治めた事により、結果彼と結ばれるというハッピーエンドの話である。
ちなみにこのヒロインの設定には、当時のありすの機械技師という職業を反映している。オートマタの技術と魔石、そして、彼女自身の柔軟な発想で、機械を駆使してギルソンの反乱や魔物たちとの戦いを有利に進めていくのである。なんともなヒロインたるチート設定である。
(なんであんな設定をしちゃったのかねぇ。若気の至りって奴かしら)
若いとはいっても、当時のありすは50歳を超えていた。
(とはいえ、自分の事を反映した子だから、仲良くはなれるかしらね。同族嫌悪だったらどうしようかしら)
ぐるぐると思考を巡らせるアリスだったが、まぁその時はその時と一度考える事を放棄したのであった。それよりも今は目の前の事と、今日も元気にギルソンに剣の稽古を付けるのだった。
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