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Mission003
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ギルソンの相手をしている間に夜を迎える。
まあさすが5歳というべきか、元気いっぱいだった。アリスは手を引っ張られて城のあちこちを案内されて回ったのだ。
自分の小説の世界なので、城の内部に関してはだいぶイメージを固めていたのだが、やはり実際に歩き回ってみるとだいぶ違うように感じた。これが想像と実際の違いというものだろう。
ギルソンが寝静まった後、アリスはいろいろと状況を整理してみる事にした。
まず、今居る場所は間違いなくファルーダン王国の王城内である。城として設定した間取りがほぼ同じだったのが決め手である。
他に分かった事は、ギルソンには兄が四人、姉が二人居るという七人兄弟の末っ子だという事だ。小説では家族構成まではあまり詳細に設定していなかったので、この子だくさんっぷりには正直驚いたものである。
ギルソンの様子を見てみても特に問題のある状態ではないので、この時点では家族内の関係は良好のようだ。
だが、油断はまったくできない。劇中ではギルソンは執拗な兄弟からのいびりなどで精神がどんどんと歪んでいったのだ。しかも、その原因の一つは他でもないアリス自身である。父親が言っていた通り、アリスは家族の持つオートマタの中でも格落ち品だったのだ。それによって辛辣な言葉を掛けられ続けていった結果が、あの悲劇なのである。アリスは正直心を痛めた。
だが、今回のアリスはオートマタの知識に加えて、作者自らの魂が入っている。そう考えると小説の中とは明らかに展開を違える事が可能なのである。こうなると、まずアリスがする事は状況の整理という結論に至ったわけなのだ。
家族関係はさっきも言った通り、上に4男2女という子だくさんな兄弟である。それに国王夫婦に国王の親夫婦が城の中で同居している。ギルソンの居る場所から積極の頻度が高いのは両親とすぐ上の兄、四男のアワードだろう。先代国王夫婦はいくつかある離宮のうちの一つに住んでおり、完全に隠居状態で接触はほぼあり得ない状況だ。
だが、それ以外の接触が少なからず起こりえる。というのも、ギルソンが活発に動くからだ。5歳といえばやんちゃ盛りだし、今日も実際アリスをあちこちに案内していた。この分なら遅かれ早かれ接触が起きてしまう可能性があるのだ。こうなれば、服装の件はどうともならないので、アリスがどれだけ優秀かを見せつけるのが一番だろう。
アリスは自分の記憶とオートマタの知識のすり合わせを行っていく。食い違いやずれがあってはどのような影響が出るか分からない。できる限り現実に合わせておきたいものである。
アリスは念じながら魔法石の中の記憶を読み取っていく。神は何も教えてはくれなかったが、オートマタの扱い方は作者であるアリスには手に取るように分かるのだ。
オートマタの魔法石には、どういう原理か分からないが、様々な情報が詰め込まれている。それこそ世界情勢だったり、出向く家の家系情報だったり、その情報は多岐に渡っている。もちろん扱える魔法に関してもその知識が詰まっている。過去の遺産とも言われているが、その詳細を知る者は誰も居なかった。
アリスは魔法の項目も検索に掛けていく。
(これは正直驚いたわね)
すっかり口調が20代に戻ったアリスは、魔法の項目の検索結果に目を見開いて驚いた。
(さすがにこれは盛り過ぎじゃないの?)
魔法の項目が全部に適性を示している。しかも、かなりの高レベル適性のようだ。小説の中のアリスも確かに全適性は持ってはいたが最高で半分くらいが中程度を示した程度である。これが晩年にはやっていた小説でよくある転生者特典というものなのだろうか。アリスは首を捻っていた。
だが、これだけの能力があれば、ギルソンをきっと幸せに導けるはず。自分の能力を確認したアリスは、次はこの後に起こる事を順番に思い出していく。
こういう時にオートマタの持つ記憶機能というのがとても便利だった。紙のメモ帳と同じように、破棄しない限りはずっと残り続ける特殊な記憶なのである。これがあるからこそ、オートマタは成長していく事ができるのだ。
ひとまず、ギルソンが物語の主人公と対峙して絶命するまでの流れを魔法石の知識に加えるアリス。それから後の展開も必要なのだが、ここまで記録するだけでかなりの時間を取ってしまったのだ。さすがに主であるギルソンより遅く目が覚める事があってはならない。アリスは作業を一旦中断して、休息を取る事にした。
オートマタも人間と同じように休息を取る事で、空中に存在していると言われる魔素と呼ばれる気体を吸収して魔力を回復させているのである。起きている間はその吸収する機能が停止してしまうのだ。つまり、不眠不休はその機能を著しく低下させてしまうという事である。これではオートマタとしての使命を全うできなくなってしまう恐れがあるという事だ。
(ギルソン様は、私が必ずお救い致します)
アリスは強く決意すると、部屋の隅にある椅子に腰掛けて眠る。人間と同じように横になる必要がないのはいいが、椅子に座るのはいざという時に動けるようにするためでもある。
もろもろ思うところはあるのだが、アリスは自分のベストセラー小説の世界に転生した。これは紛れもない事実である。
これからはギルソンのオートマタとして、彼を救うために行動する事になる。そのための行動を模索しながら、アリスは静かに眠りについた。
まあさすが5歳というべきか、元気いっぱいだった。アリスは手を引っ張られて城のあちこちを案内されて回ったのだ。
自分の小説の世界なので、城の内部に関してはだいぶイメージを固めていたのだが、やはり実際に歩き回ってみるとだいぶ違うように感じた。これが想像と実際の違いというものだろう。
ギルソンが寝静まった後、アリスはいろいろと状況を整理してみる事にした。
まず、今居る場所は間違いなくファルーダン王国の王城内である。城として設定した間取りがほぼ同じだったのが決め手である。
他に分かった事は、ギルソンには兄が四人、姉が二人居るという七人兄弟の末っ子だという事だ。小説では家族構成まではあまり詳細に設定していなかったので、この子だくさんっぷりには正直驚いたものである。
ギルソンの様子を見てみても特に問題のある状態ではないので、この時点では家族内の関係は良好のようだ。
だが、油断はまったくできない。劇中ではギルソンは執拗な兄弟からのいびりなどで精神がどんどんと歪んでいったのだ。しかも、その原因の一つは他でもないアリス自身である。父親が言っていた通り、アリスは家族の持つオートマタの中でも格落ち品だったのだ。それによって辛辣な言葉を掛けられ続けていった結果が、あの悲劇なのである。アリスは正直心を痛めた。
だが、今回のアリスはオートマタの知識に加えて、作者自らの魂が入っている。そう考えると小説の中とは明らかに展開を違える事が可能なのである。こうなると、まずアリスがする事は状況の整理という結論に至ったわけなのだ。
家族関係はさっきも言った通り、上に4男2女という子だくさんな兄弟である。それに国王夫婦に国王の親夫婦が城の中で同居している。ギルソンの居る場所から積極の頻度が高いのは両親とすぐ上の兄、四男のアワードだろう。先代国王夫婦はいくつかある離宮のうちの一つに住んでおり、完全に隠居状態で接触はほぼあり得ない状況だ。
だが、それ以外の接触が少なからず起こりえる。というのも、ギルソンが活発に動くからだ。5歳といえばやんちゃ盛りだし、今日も実際アリスをあちこちに案内していた。この分なら遅かれ早かれ接触が起きてしまう可能性があるのだ。こうなれば、服装の件はどうともならないので、アリスがどれだけ優秀かを見せつけるのが一番だろう。
アリスは自分の記憶とオートマタの知識のすり合わせを行っていく。食い違いやずれがあってはどのような影響が出るか分からない。できる限り現実に合わせておきたいものである。
アリスは念じながら魔法石の中の記憶を読み取っていく。神は何も教えてはくれなかったが、オートマタの扱い方は作者であるアリスには手に取るように分かるのだ。
オートマタの魔法石には、どういう原理か分からないが、様々な情報が詰め込まれている。それこそ世界情勢だったり、出向く家の家系情報だったり、その情報は多岐に渡っている。もちろん扱える魔法に関してもその知識が詰まっている。過去の遺産とも言われているが、その詳細を知る者は誰も居なかった。
アリスは魔法の項目も検索に掛けていく。
(これは正直驚いたわね)
すっかり口調が20代に戻ったアリスは、魔法の項目の検索結果に目を見開いて驚いた。
(さすがにこれは盛り過ぎじゃないの?)
魔法の項目が全部に適性を示している。しかも、かなりの高レベル適性のようだ。小説の中のアリスも確かに全適性は持ってはいたが最高で半分くらいが中程度を示した程度である。これが晩年にはやっていた小説でよくある転生者特典というものなのだろうか。アリスは首を捻っていた。
だが、これだけの能力があれば、ギルソンをきっと幸せに導けるはず。自分の能力を確認したアリスは、次はこの後に起こる事を順番に思い出していく。
こういう時にオートマタの持つ記憶機能というのがとても便利だった。紙のメモ帳と同じように、破棄しない限りはずっと残り続ける特殊な記憶なのである。これがあるからこそ、オートマタは成長していく事ができるのだ。
ひとまず、ギルソンが物語の主人公と対峙して絶命するまでの流れを魔法石の知識に加えるアリス。それから後の展開も必要なのだが、ここまで記録するだけでかなりの時間を取ってしまったのだ。さすがに主であるギルソンより遅く目が覚める事があってはならない。アリスは作業を一旦中断して、休息を取る事にした。
オートマタも人間と同じように休息を取る事で、空中に存在していると言われる魔素と呼ばれる気体を吸収して魔力を回復させているのである。起きている間はその吸収する機能が停止してしまうのだ。つまり、不眠不休はその機能を著しく低下させてしまうという事である。これではオートマタとしての使命を全うできなくなってしまう恐れがあるという事だ。
(ギルソン様は、私が必ずお救い致します)
アリスは強く決意すると、部屋の隅にある椅子に腰掛けて眠る。人間と同じように横になる必要がないのはいいが、椅子に座るのはいざという時に動けるようにするためでもある。
もろもろ思うところはあるのだが、アリスは自分のベストセラー小説の世界に転生した。これは紛れもない事実である。
これからはギルソンのオートマタとして、彼を救うために行動する事になる。そのための行動を模索しながら、アリスは静かに眠りについた。
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