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新章 青色の智姫
第86話 海だ
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気が付いたら、シェリアのプライベートビーチに水着に着替えて立っているシアン。
「さぁ、今日はたっぷり海で遊びましょうか」
「はーい」
チェリシアが仕切って、みんなが遊び始める。
シェリアにあるコーラル伯爵邸の別邸からはそれほど遠くないプライベートビーチ。ちゃんと男女別の更衣室やシャワー室を備えた設備で、沖に流されないような対策も十分講じられたチェリシア自慢の設備なのである。
前世ではあまりにも地味だったチェリシアはセパレートの水着を着ているが、それ以外の女性陣は恥ずかしいのかワンピース型だ。そもそも貴族というのは必要以上に肌を露出しないから仕方がない。かなり手の込んだデザインであり、王都からシェリアまでの十日間でよく仕上げたものだと思う。
「まったく、お姉様ってば相変わらず器用ですわね。元々はわたくしだった事を思うと不思議でなりませんわ」
「前世は結構自分であれこれしてたもの。こっちでの生活が長くなっちゃったけど、腕は簡単には衰えないわね」
半ば愚痴のペシエラの言葉も、チェリシアはさらりと受け流している。
「それにしても、シアンはこっちにいますのね」
「私もあまりはしゃぐのは好きではありませんので」
ペシエラがちらりと視線を向けるシアンだが、そのシアンは備え付けのパラソルの下でビーチチェアに座ってくつろいでいた。
「王女様だから、そのくらいの方がいいですわね。……わたくしの子たちははしゃいでおりますけれど」
ペシエラは波打ち際で遊びライトとダイアを見て、ため息を漏らす。
一応キャノルたち連れてきた侍女たちとアイリスが見守っているが、子どもたちのはしゃぎようにひやひやである。
特に一桁年齢の子どもたちは気になるところだ。アイリスの下の二人とチェリシアの子どもの三人は見ておかないといけない。アイリスとキャノルがいれば心配はないだろうが、何をしでかすか分からないのが子どもなのである。
「さてと、私はフューシャとプルネに泳ぎでも教えてこようかしらね」
退屈に耐えかねたのか、チェリシアは背伸びをしながら呟く。
「ほどほどにしなさいな、お姉様。わたくしたちの年齢を考えますのよ」
「分かってるわよ。それじゃ、シアン様のことをお願いね、ペシエラ」
とことこと歩いていくチェリシア。波打ち際で遊ぶフューシャとプルネに声を掛けて、本当に泳ぎの講習を始めた。
最初こそ戸惑っていた二人ではあるものの、チェリシアに手を引かれながら泳いでいるうちに楽しくなってきたようだった。
フューシャもプルネもコーラル伯爵家の血を引いてはいないが、さすがは水の恩恵のある一族。水に馴染むのがかなり早かった。
「泳ぐって楽しい」
「これなら、来年の合宿はさらに楽しめそうだわ」
すっかりいろんな泳ぎ方をマスターしているフューシャとプルネ。さすがは闇家業経験のあるアイリスの子どもといったところだろうか。運動神経がとてもよいようだ。
「わぁ、私たちの泳ぎたい。ね、兄様」
「そうだね。いざという時には泳げるようにしておくのはいい事だと思うよ」
ライトとダイアも、耐え切れずにうずうずとし始めていた。
「殿下方も興味ありますか。でしたら、あたいが面倒を見てやりましょう。生き残るすべなら、あたいだってかなり身に付けてきましたからね」
興味を示す二人に、キャノルが話し掛けている。
「アイリス様、小さい子たちをお願いします。この二人はあたいが面倒見てますので」
「分かりました。では、お願い致しますね、キャノル」
「合点承知」
とてもメイドとは思えない返事をして、キャノルはライトとダイアを連れて少し深いところへと向かっていく。
王族相手だというのに、キャノルはまったく手加減はなし。鬼コーチのように泳ぎを教え始める。だが、ライともダイアもまったく脱落しない。むしろガンガンとついていく。
気が付けば、日が暮れる前に一桁年齢の三人を除いて、みんな泳げるようになっていた。なんて優秀な子たちなのだろうか。
「さて、そろそろ屋敷に戻りましょうか」
ペシエラがみんなに呼び掛けると、子どもたちは非常に残念そうな表情をしている。せっかく楽しくなってきたのだから、もっと遊んでいたいのだ。
「ダメですよ。暗くなると危険ですから」
チェリシアからもきつく止められる。
「数日間滞在するので、その気になればいつでもここに来れますから、今日のところは戻りましょうね」
唇に人差し指を当てて、ウィンクをしながら優しく諭すチェリシア。また来れると聞いて、子どもたちはおとなしくチェリシアの言葉を聞き入れていた。
わいわいと感想を言い合いながら服を着替える子どもたち。この様子を見ていたアイリスとチェリシアは、満足そうに笑っていた。
シアンもシアンで、このプライベートビーチに来てからちょっとした変化を感じていた。
(自分が水属性が得意なせいか、ずいぶんと体を軽く感じますね。もしかして、シェリアの海とは相性がいいのでしょうか)
やけに調子がいいのである。そのことに首を傾げながらも、シアンたちはコーラル伯爵の別邸へと戻っていったのだった。
「さぁ、今日はたっぷり海で遊びましょうか」
「はーい」
チェリシアが仕切って、みんなが遊び始める。
シェリアにあるコーラル伯爵邸の別邸からはそれほど遠くないプライベートビーチ。ちゃんと男女別の更衣室やシャワー室を備えた設備で、沖に流されないような対策も十分講じられたチェリシア自慢の設備なのである。
前世ではあまりにも地味だったチェリシアはセパレートの水着を着ているが、それ以外の女性陣は恥ずかしいのかワンピース型だ。そもそも貴族というのは必要以上に肌を露出しないから仕方がない。かなり手の込んだデザインであり、王都からシェリアまでの十日間でよく仕上げたものだと思う。
「まったく、お姉様ってば相変わらず器用ですわね。元々はわたくしだった事を思うと不思議でなりませんわ」
「前世は結構自分であれこれしてたもの。こっちでの生活が長くなっちゃったけど、腕は簡単には衰えないわね」
半ば愚痴のペシエラの言葉も、チェリシアはさらりと受け流している。
「それにしても、シアンはこっちにいますのね」
「私もあまりはしゃぐのは好きではありませんので」
ペシエラがちらりと視線を向けるシアンだが、そのシアンは備え付けのパラソルの下でビーチチェアに座ってくつろいでいた。
「王女様だから、そのくらいの方がいいですわね。……わたくしの子たちははしゃいでおりますけれど」
ペシエラは波打ち際で遊びライトとダイアを見て、ため息を漏らす。
一応キャノルたち連れてきた侍女たちとアイリスが見守っているが、子どもたちのはしゃぎようにひやひやである。
特に一桁年齢の子どもたちは気になるところだ。アイリスの下の二人とチェリシアの子どもの三人は見ておかないといけない。アイリスとキャノルがいれば心配はないだろうが、何をしでかすか分からないのが子どもなのである。
「さてと、私はフューシャとプルネに泳ぎでも教えてこようかしらね」
退屈に耐えかねたのか、チェリシアは背伸びをしながら呟く。
「ほどほどにしなさいな、お姉様。わたくしたちの年齢を考えますのよ」
「分かってるわよ。それじゃ、シアン様のことをお願いね、ペシエラ」
とことこと歩いていくチェリシア。波打ち際で遊ぶフューシャとプルネに声を掛けて、本当に泳ぎの講習を始めた。
最初こそ戸惑っていた二人ではあるものの、チェリシアに手を引かれながら泳いでいるうちに楽しくなってきたようだった。
フューシャもプルネもコーラル伯爵家の血を引いてはいないが、さすがは水の恩恵のある一族。水に馴染むのがかなり早かった。
「泳ぐって楽しい」
「これなら、来年の合宿はさらに楽しめそうだわ」
すっかりいろんな泳ぎ方をマスターしているフューシャとプルネ。さすがは闇家業経験のあるアイリスの子どもといったところだろうか。運動神経がとてもよいようだ。
「わぁ、私たちの泳ぎたい。ね、兄様」
「そうだね。いざという時には泳げるようにしておくのはいい事だと思うよ」
ライトとダイアも、耐え切れずにうずうずとし始めていた。
「殿下方も興味ありますか。でしたら、あたいが面倒を見てやりましょう。生き残るすべなら、あたいだってかなり身に付けてきましたからね」
興味を示す二人に、キャノルが話し掛けている。
「アイリス様、小さい子たちをお願いします。この二人はあたいが面倒見てますので」
「分かりました。では、お願い致しますね、キャノル」
「合点承知」
とてもメイドとは思えない返事をして、キャノルはライトとダイアを連れて少し深いところへと向かっていく。
王族相手だというのに、キャノルはまったく手加減はなし。鬼コーチのように泳ぎを教え始める。だが、ライともダイアもまったく脱落しない。むしろガンガンとついていく。
気が付けば、日が暮れる前に一桁年齢の三人を除いて、みんな泳げるようになっていた。なんて優秀な子たちなのだろうか。
「さて、そろそろ屋敷に戻りましょうか」
ペシエラがみんなに呼び掛けると、子どもたちは非常に残念そうな表情をしている。せっかく楽しくなってきたのだから、もっと遊んでいたいのだ。
「ダメですよ。暗くなると危険ですから」
チェリシアからもきつく止められる。
「数日間滞在するので、その気になればいつでもここに来れますから、今日のところは戻りましょうね」
唇に人差し指を当てて、ウィンクをしながら優しく諭すチェリシア。また来れると聞いて、子どもたちはおとなしくチェリシアの言葉を聞き入れていた。
わいわいと感想を言い合いながら服を着替える子どもたち。この様子を見ていたアイリスとチェリシアは、満足そうに笑っていた。
シアンもシアンで、このプライベートビーチに来てからちょっとした変化を感じていた。
(自分が水属性が得意なせいか、ずいぶんと体を軽く感じますね。もしかして、シェリアの海とは相性がいいのでしょうか)
やけに調子がいいのである。そのことに首を傾げながらも、シアンたちはコーラル伯爵の別邸へと戻っていったのだった。
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