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新章 青色の智姫
第74話 夜が明けて
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サファイア湖に朝日が昇る。
ライたちの真夜中の戦いから、無事に朝を迎えたのだ。
「ふわぁぁぁ~。よく眠りましたよ」
目が覚めたシアンは、驚くほどの大あくびをしながら体を起こしている。どれだけしっかり眠っていたのだろうか。
「うん?」
あくびをし終えたシアンは、ふと何かを感じ取って窓の外へと視線を向ける。
(空気が澄んだ感じがする?)
昨日まで感じていたサファイア湖周辺の空気に、何かを感じ取ったようだった。
思わず首を傾げてしまうシアンではあったが、空気がすっきりしたのならそれはそれでいいかと納得していたのだった。
「さあ、今日も合宿を頑張りましょうかね」
ベッドから抜け出したシアンは、思い切り背伸びをして体を適当に動かす。そして、合宿二日目に向けて気合いを入れていたのだった。
ブランチェスカとプルネと一緒に朝食へと向かうシアン。
(うん、昨日感じた違和感が消えていますね)
プルネの方を見ながら、これまた何かを感じ取っていた。
「シアン様、一体どうなさったのですか? 私の顔に何かついていますか?」
あまりに凝視していたものだから、ついプルネから指摘されてしまうシアン。
「いえ、なんでもありません」
慌てて否定するシアンだったが、その妙な行動にブランチェスカとプルネは不思議そうな表情をシアンへと向けていた。一体何だったのだろうか、そういった顔である。
「も、もう。なんでもないといったらなんでもありません。朝食をちゃんと食べて、今日の合宿に備えますよ」
いつまでも怪訝な表情を向けられて、シアンはちょっと怒るような口調で二人に話し掛けていた。あまりにも怪しいシアンの行動ではあったものの、ここまで言うのならということでシアンの言い分を受け入れていたのだった。
食堂に顔を出すと、学生たちはまだまばらだった。
中を見回すとガレンとグール教官の二人は既に席に着いていた。
「おはようございます、ガレン先生」
「ああ、シアンくんか。おはよう」
「ほう、久しぶりに見るな、シアン・モスグリネ」
シアンはガレンに挨拶をしたかっただけだが、当然といわんばかりに隣のグール教官が反応していた。
「はい、お久しぶりでございます、グール教官」
久しぶりとは言っているが、実はそれほど過去ではない。シアンとグール教官が顔を合わせたのは、先日の期末の実技試験以来である。なにせ、物理タイプの実技試験を担当していたのだから。
「今日もいい天気だ。こういう時は特訓のしがいがあるからな、たっぷり食べておくんだぞ。がっはっはっはっはっ」
「は、はい……」
あまりにも大声でいうものだから、ついつい引いてしまうシアンである。
シアンはガレンに視線を向けるが、ガレンは小さく首を横に振る。どうやら話しかけるのは諦めろといったところだろう。
ガレンの反応を見てもう一度グール教官へと視線を移す。すると、グール教官はにこにこと笑顔を見せていた。あまりにもすがすがしい笑顔に、シアンは諦めるしかなかった。
「おとなしく席で朝食を待ちます……」
「うむ、いっぱい食べて特訓に励むのだぞ、がっはっはっはっ」
シアンが諦めて席に戻ろうとすると、グール教官は明るく笑いながら声を掛けていた。
(仕方ありませんね。魔法タイプで集まっている間に、適当なタイミングを見計らって話をしましょうか)
というわけで、特訓の時間中に話をするタイミングを探すことにしたのだった。
サファイア湖のほとりに場所を移し、今日も特訓を行う学生たち。
そんな最中、プルネとブランチェスカに断りを入れて一人だけ別行動を始めるシアン。学生たちの魔法が飛び交う中を、無事にガレンのところまで歩いてきていた。
「ガレン先生、ちょっとよろしいでしょうか」
「うむ、何かな、シアンくん」
学生たちの様子から目を離さないようにしながら、シアンに対応するガレン。
一度咳払いをしながら、思い切ってガレンに質問する。
「なんだか今日は、昨日と違って空気がすっきりしている感じがするのですが、ガレン先生ってば何かされましたか?」
シアンの質問に、思わず少し動揺を見せるガレン。その態度を見逃すはずもなく、シアンはガレンに追撃をかける。
「その様子、やはり何かご存じなのですね。教えて頂いてもよろしいでしょうか」
目つきが鋭くなるシアンだが、ガレンは実に落ち着いていた。
「さすがは魔法に造詣の深い元アクアマリンの令嬢だな。わずかな魔力の変化すらも感じ取れるとは、素晴らしいものだ」
両手を肩の位置まで上げて上下させるガレン。とりあえず落ち着けと言っているようである。
「ご説明下さるのでしたら、いくらでも落ち着いて差し上げますわ」
そのガレンに対して強く出るシアン。その様子に、ガレンはやれやれといった表情を見せている。
「とりあえず今は学生の監視で忙しい。後で時間を確保してやるから、その時にでも話すことにしてあげようじゃないか」
これを聞いてくるりと状況を確認するシアン。
確かに、魔法の訓練は慣れないうちは危険だ。常に見ておかないと何が起こるか分からない。なので、このガレンの言葉を仕方なく受け入れるシアンだった。
「分かりました。必ずお話してもらいますからね」
「約束しよう」
ガレンから約束を取り付けたシアンは、納得のいかない表情をしながらもブランチェスカとプルネのところへと戻っていったのだった。
ライたちの真夜中の戦いから、無事に朝を迎えたのだ。
「ふわぁぁぁ~。よく眠りましたよ」
目が覚めたシアンは、驚くほどの大あくびをしながら体を起こしている。どれだけしっかり眠っていたのだろうか。
「うん?」
あくびをし終えたシアンは、ふと何かを感じ取って窓の外へと視線を向ける。
(空気が澄んだ感じがする?)
昨日まで感じていたサファイア湖周辺の空気に、何かを感じ取ったようだった。
思わず首を傾げてしまうシアンではあったが、空気がすっきりしたのならそれはそれでいいかと納得していたのだった。
「さあ、今日も合宿を頑張りましょうかね」
ベッドから抜け出したシアンは、思い切り背伸びをして体を適当に動かす。そして、合宿二日目に向けて気合いを入れていたのだった。
ブランチェスカとプルネと一緒に朝食へと向かうシアン。
(うん、昨日感じた違和感が消えていますね)
プルネの方を見ながら、これまた何かを感じ取っていた。
「シアン様、一体どうなさったのですか? 私の顔に何かついていますか?」
あまりに凝視していたものだから、ついプルネから指摘されてしまうシアン。
「いえ、なんでもありません」
慌てて否定するシアンだったが、その妙な行動にブランチェスカとプルネは不思議そうな表情をシアンへと向けていた。一体何だったのだろうか、そういった顔である。
「も、もう。なんでもないといったらなんでもありません。朝食をちゃんと食べて、今日の合宿に備えますよ」
いつまでも怪訝な表情を向けられて、シアンはちょっと怒るような口調で二人に話し掛けていた。あまりにも怪しいシアンの行動ではあったものの、ここまで言うのならということでシアンの言い分を受け入れていたのだった。
食堂に顔を出すと、学生たちはまだまばらだった。
中を見回すとガレンとグール教官の二人は既に席に着いていた。
「おはようございます、ガレン先生」
「ああ、シアンくんか。おはよう」
「ほう、久しぶりに見るな、シアン・モスグリネ」
シアンはガレンに挨拶をしたかっただけだが、当然といわんばかりに隣のグール教官が反応していた。
「はい、お久しぶりでございます、グール教官」
久しぶりとは言っているが、実はそれほど過去ではない。シアンとグール教官が顔を合わせたのは、先日の期末の実技試験以来である。なにせ、物理タイプの実技試験を担当していたのだから。
「今日もいい天気だ。こういう時は特訓のしがいがあるからな、たっぷり食べておくんだぞ。がっはっはっはっはっ」
「は、はい……」
あまりにも大声でいうものだから、ついつい引いてしまうシアンである。
シアンはガレンに視線を向けるが、ガレンは小さく首を横に振る。どうやら話しかけるのは諦めろといったところだろう。
ガレンの反応を見てもう一度グール教官へと視線を移す。すると、グール教官はにこにこと笑顔を見せていた。あまりにもすがすがしい笑顔に、シアンは諦めるしかなかった。
「おとなしく席で朝食を待ちます……」
「うむ、いっぱい食べて特訓に励むのだぞ、がっはっはっはっ」
シアンが諦めて席に戻ろうとすると、グール教官は明るく笑いながら声を掛けていた。
(仕方ありませんね。魔法タイプで集まっている間に、適当なタイミングを見計らって話をしましょうか)
というわけで、特訓の時間中に話をするタイミングを探すことにしたのだった。
サファイア湖のほとりに場所を移し、今日も特訓を行う学生たち。
そんな最中、プルネとブランチェスカに断りを入れて一人だけ別行動を始めるシアン。学生たちの魔法が飛び交う中を、無事にガレンのところまで歩いてきていた。
「ガレン先生、ちょっとよろしいでしょうか」
「うむ、何かな、シアンくん」
学生たちの様子から目を離さないようにしながら、シアンに対応するガレン。
一度咳払いをしながら、思い切ってガレンに質問する。
「なんだか今日は、昨日と違って空気がすっきりしている感じがするのですが、ガレン先生ってば何かされましたか?」
シアンの質問に、思わず少し動揺を見せるガレン。その態度を見逃すはずもなく、シアンはガレンに追撃をかける。
「その様子、やはり何かご存じなのですね。教えて頂いてもよろしいでしょうか」
目つきが鋭くなるシアンだが、ガレンは実に落ち着いていた。
「さすがは魔法に造詣の深い元アクアマリンの令嬢だな。わずかな魔力の変化すらも感じ取れるとは、素晴らしいものだ」
両手を肩の位置まで上げて上下させるガレン。とりあえず落ち着けと言っているようである。
「ご説明下さるのでしたら、いくらでも落ち着いて差し上げますわ」
そのガレンに対して強く出るシアン。その様子に、ガレンはやれやれといった表情を見せている。
「とりあえず今は学生の監視で忙しい。後で時間を確保してやるから、その時にでも話すことにしてあげようじゃないか」
これを聞いてくるりと状況を確認するシアン。
確かに、魔法の訓練は慣れないうちは危険だ。常に見ておかないと何が起こるか分からない。なので、このガレンの言葉を仕方なく受け入れるシアンだった。
「分かりました。必ずお話してもらいますからね」
「約束しよう」
ガレンから約束を取り付けたシアンは、納得のいかない表情をしながらもブランチェスカとプルネのところへと戻っていったのだった。
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