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新章 青色の智姫
第70話 合宿本番
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サファイア湖の周辺で行われるサンフレア学園の夏合宿の二日目。
夏の暑い日だとはいっても、さすがに湖の近くかつ水の精霊に愛された土地、程よい気温でとても過ごしやすい。
「うーん、いい天気です。相変わらず好天に恵まれるのは、さすがアクアマリン領というところですね」
「シアン様?」
思わず伸びをしながら口を突いて出てしまった言葉に、プルネとブランチェスカが首を傾げて不思議そうに見ている。
シアンから聞いた話では、数年前に一度訪れたっきりだったはずである。なのに、どうしてそんな言葉が出てくるのだろうか。二人はそういう表情をしているのである。
「どうしたのかしら、二人とも」
それにまったく気が付かないシアンは、あんぐりと固まる二人に逆に不思議そうな視線を送っている。
「あ、いえ。なんでもございません」
「ええ、なんでもありません」
二人の挙動不審な反応に、やっぱり首を傾げてしまうシアンなのであった。
「よーし、そろそろ合宿を始めるから、みんな集まれ」
辺りにグール教官の声が響き渡る。さすがに剣術を得意とするとあってか、声がかなりでかい。
グール教官の呼び掛けで、学生たちがちらほらと集まってくる。
シアンたちも招集に応じてグール教官の元へと走っていく。集合場所に到着すると、グール教官とガレンが隣り合って並んでおり、補佐する教官たち数名がその後ろにずらっと並んでいた。シアンたちが思った以上に、学園には教師がいるようだ。
「よし、集まったな。これから夏合宿を行う」
グール教官はまず開始宣言を行う。その後はひたすら注意事項をだらだらと説明し始める。
グール教官の声は大きいし熱が入っているとはいえ、さすがに長くなってくると学生たちには耐えられないものだ。ちらほらとあくびをしたり舟をこいだりする学生の姿が見えていた。いつの時代になっても、長話が苦手な学生というのはいるものなのである。
「そこっ!」
すかーんと眠りこけている学生の額に何かが当たる。
「いってぇっ!」
あまりの痛さに、学生は痛がって目を覚ましていた。
「眠りこけるなど気がたるんでいる。こういった場所ではいつ何時外敵に襲われるか分からないのだ。その中で寝るなど、万死に値する行為ぞ」
でかい声でグール教官に叱られる学生。強面でもあるので、何かを投げつけられた学生は額の痛さもあってたじたじである。そのやり取りのせいか、他の同じような状態に陥っていた学生たちもすっかり目を覚ましていた。
やりすぎな感じもあるだろうが、実際魔物なんていうのはどこから現れるか分かったものじゃない。周りに教官がいるとはいえ、油断大敵なのである。
(うっわぁ……。あれは痛そうですね……)
シアンも青ざめた顔で見ている。
なんだかんだと騒がしい一年次の夏合宿の始まりとなってしまった。
朝礼を終えると、学生たちは武術タイプと魔法タイプに分かれてそれぞれ訓練に臨む。一年次生が期末試験で分類を行ったのはそのためだ。
武術タイプの学生はグール教官が、魔法タイプの学生はガレンが、補佐する教官たちとともにそれぞれ面倒を見る。
庶民とは違い今までは守られて生きてきた貴族の子女たちも、これからは大人になって守る側に立たなくてはいけなくなる。そのための自衛手段を身に付けるのが、この合宿の主な目的だ。
だからこそ、少し荒れた環境に放り出してこうやって鍛えているというわけなのだ。学生によっては騎士や使用人といった職に就く者もいるので、必須技能というわけなのだ。
実際にサファイア湖周辺の森を巡って魔物を倒すという内容も、この合宿には盛り込まれているのだ。
初日から数日間は、その実践訓練へ向けたトレーニングというわけである。とはいえ、基本的には学園でやってることは変わらない。環境が変わるだけなのだ。
しかし、学園以上に厳しい目を向けられたせいか、学生たちの動きはガッチガチ。いつも通りの力を発揮できない学生もちらほら見受けられた。
そんな中、シアンはプルネの様子に違和感を感じる。
「プルネ?」
突然ぼーっと立ち尽くしたように見えたのだ。
「えっ、あっ、ごめんなさい。なんでしょうか、シアン様」
「今、ちょっとぼーっとしてなかったかしら」
「うーん、そうでしょうか? 昨夜楽しみで少し眠れなかったので、そのように感じられたのなら、そのせいかも知れませんね」
シアンに声を掛けられて我に返ったプルネは、恥ずかしそうに笑っていた。
(寝ていたというような状態には見えませんでしたけれどね……。一体どうしたのでしょうか)
ブランチェスカの方を見るが、ブランチェスカはいつもの様子だし、プルネのことにも気が付いていない様子だった。
シアン自身も本当に一瞬のことだったので、気のせいだったかなと首を捻りながらも自分に言い聞かせていた。
(何もないといいのですけれどね。お父様とお母様の頃はいろいろ事件があったと聞きますし……)
プルネに感じた違和感から、ちょっと懐疑的になるシアン。
この合宿は最後まで無事に終えることができるのだろうか。
夏の暑い日だとはいっても、さすがに湖の近くかつ水の精霊に愛された土地、程よい気温でとても過ごしやすい。
「うーん、いい天気です。相変わらず好天に恵まれるのは、さすがアクアマリン領というところですね」
「シアン様?」
思わず伸びをしながら口を突いて出てしまった言葉に、プルネとブランチェスカが首を傾げて不思議そうに見ている。
シアンから聞いた話では、数年前に一度訪れたっきりだったはずである。なのに、どうしてそんな言葉が出てくるのだろうか。二人はそういう表情をしているのである。
「どうしたのかしら、二人とも」
それにまったく気が付かないシアンは、あんぐりと固まる二人に逆に不思議そうな視線を送っている。
「あ、いえ。なんでもございません」
「ええ、なんでもありません」
二人の挙動不審な反応に、やっぱり首を傾げてしまうシアンなのであった。
「よーし、そろそろ合宿を始めるから、みんな集まれ」
辺りにグール教官の声が響き渡る。さすがに剣術を得意とするとあってか、声がかなりでかい。
グール教官の呼び掛けで、学生たちがちらほらと集まってくる。
シアンたちも招集に応じてグール教官の元へと走っていく。集合場所に到着すると、グール教官とガレンが隣り合って並んでおり、補佐する教官たち数名がその後ろにずらっと並んでいた。シアンたちが思った以上に、学園には教師がいるようだ。
「よし、集まったな。これから夏合宿を行う」
グール教官はまず開始宣言を行う。その後はひたすら注意事項をだらだらと説明し始める。
グール教官の声は大きいし熱が入っているとはいえ、さすがに長くなってくると学生たちには耐えられないものだ。ちらほらとあくびをしたり舟をこいだりする学生の姿が見えていた。いつの時代になっても、長話が苦手な学生というのはいるものなのである。
「そこっ!」
すかーんと眠りこけている学生の額に何かが当たる。
「いってぇっ!」
あまりの痛さに、学生は痛がって目を覚ましていた。
「眠りこけるなど気がたるんでいる。こういった場所ではいつ何時外敵に襲われるか分からないのだ。その中で寝るなど、万死に値する行為ぞ」
でかい声でグール教官に叱られる学生。強面でもあるので、何かを投げつけられた学生は額の痛さもあってたじたじである。そのやり取りのせいか、他の同じような状態に陥っていた学生たちもすっかり目を覚ましていた。
やりすぎな感じもあるだろうが、実際魔物なんていうのはどこから現れるか分かったものじゃない。周りに教官がいるとはいえ、油断大敵なのである。
(うっわぁ……。あれは痛そうですね……)
シアンも青ざめた顔で見ている。
なんだかんだと騒がしい一年次の夏合宿の始まりとなってしまった。
朝礼を終えると、学生たちは武術タイプと魔法タイプに分かれてそれぞれ訓練に臨む。一年次生が期末試験で分類を行ったのはそのためだ。
武術タイプの学生はグール教官が、魔法タイプの学生はガレンが、補佐する教官たちとともにそれぞれ面倒を見る。
庶民とは違い今までは守られて生きてきた貴族の子女たちも、これからは大人になって守る側に立たなくてはいけなくなる。そのための自衛手段を身に付けるのが、この合宿の主な目的だ。
だからこそ、少し荒れた環境に放り出してこうやって鍛えているというわけなのだ。学生によっては騎士や使用人といった職に就く者もいるので、必須技能というわけなのだ。
実際にサファイア湖周辺の森を巡って魔物を倒すという内容も、この合宿には盛り込まれているのだ。
初日から数日間は、その実践訓練へ向けたトレーニングというわけである。とはいえ、基本的には学園でやってることは変わらない。環境が変わるだけなのだ。
しかし、学園以上に厳しい目を向けられたせいか、学生たちの動きはガッチガチ。いつも通りの力を発揮できない学生もちらほら見受けられた。
そんな中、シアンはプルネの様子に違和感を感じる。
「プルネ?」
突然ぼーっと立ち尽くしたように見えたのだ。
「えっ、あっ、ごめんなさい。なんでしょうか、シアン様」
「今、ちょっとぼーっとしてなかったかしら」
「うーん、そうでしょうか? 昨夜楽しみで少し眠れなかったので、そのように感じられたのなら、そのせいかも知れませんね」
シアンに声を掛けられて我に返ったプルネは、恥ずかしそうに笑っていた。
(寝ていたというような状態には見えませんでしたけれどね……。一体どうしたのでしょうか)
ブランチェスカの方を見るが、ブランチェスカはいつもの様子だし、プルネのことにも気が付いていない様子だった。
シアン自身も本当に一瞬のことだったので、気のせいだったかなと首を捻りながらも自分に言い聞かせていた。
(何もないといいのですけれどね。お父様とお母様の頃はいろいろ事件があったと聞きますし……)
プルネに感じた違和感から、ちょっと懐疑的になるシアン。
この合宿は最後まで無事に終えることができるのだろうか。
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