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新章 青色の智姫
第49話 ガレンとの秘密の話
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「シアン・モスグリネ、悪いが私のところに来てもらえるか?」
「はい?」
ようやく長ったらしい説明も終わり、城に戻れるかと思ったらガレンに呼び出されるシアン。
せっかく知り合ったので少しは話がしたかったのだが、シアンはやむなくブランチェスカとプルネと別れてガレンの部屋へと向かっていった。
二人も少し寂しそうにしていたので、ついついガレンを睨んでしまうシアンだったが、ガレンは特に気にした様子はなかった。
「悪いね、今日も呼び出してしまって」
「まったくですよ。何なんですか、今日は」
ぷんすかと怒るシアン。
まあ、城に戻ったところでやる事がまったくないので、暇つぶしにはなると少し複雑ではあったのだが……。
「ここなら他の連中の邪魔は入らないだろうからな。城に居る時はクロノア……、いやスミレと言っといた方がいいか、あいつがちょっと邪魔なんでね」
面倒くさそうな顔をしながら頭をかくガレンである。これが精霊王オリジンとはとてもではないけれども思えない。どこから見てもただのおっさん教師だった。
「そんなに邪魔なんですか?」
「ああ、あれでも私よりも立場は上だからね、幻獣というのは。精霊王である私でも対等とまではいかないんだよ」
露骨に嫌そうな顔をしてシアンが問い掛けると、困った顔をするガレンだった。本気でスミレを間に入れたくないようである。
学園の中であるなら、使用人は基本的に入ってこれない。ようやく二人きりで話ができるというわけだった。
「それにしても、ロゼリアくんたちもそうだったけど、君もちゃっかり二人分の魔力が見えるな」
「お母様もですか?」
いきなりガレンが話し始めた内容に、シアンは食いついている。
城で話をした内容はあくまでも学園についてのことだけだったので、今回の話は初耳だからだ。
「ふむ、ちゃんとそのように言うのだな。すっかり娘としての立場が染みついているということか……」
シアンの反応に、納得した様子のガレンである。
「……話を逸らさないで頂けます?」
両手を腰に当てて、前のめりになりながら迫るシアン。その姿を見て、ガレンは軽く咳払いをしていた。
「いや、すまないね。ちょっと感動したというかなんというかな……」
ごまかそうとするガレンだが、さらにジト目を向けられてもう一度咳払いをしていた。
「簡単に説明すると、二人分の魔力を持つというのはありえない話なんだ。それこそ、転生や憑依といった特殊な状態でない限りはね」
「ふむふむ……」
「ロゼリアくんとペシエラくんは、逆行してきた自分たちが入ったことで同じ魔力が重なり合いながらもぶれて見えていた。チェリシアくんは別世界の人間だったから、まったく異なる色の魔力が見えていたんだ」
「そうなのですね」
ガレンの説明を理解するシアンである。
「普通は反発し合うものなんだけど、あの三人は本人であったり相性がよかったりと、それこそ奇跡的な存在だったんだ」
「……禁法の影響でしょうかね」
「それは十分に考えられるね」
考え込みながら呟くシアンの言葉を、少し自信なさげに肯定するガレンである。
精霊王として永遠に存在する彼でも、確信が持てないというわけだ。それほどまでに禁法というのは使われる事がないものなのである。だからこそ、禁法というものなのだろうけれど。
「それで、君にも同じようなものが見えるというわけだ。シアン・アクアマリンだった時の青い魔力と、シアン・モスグリネの緑の魔力の二つがね」
「やっぱりそうなのですね」
ガレンの説明に、しれっと納得してしまうシアンである。
「……驚かないんだな」
「ええ、魔法に関してはアクアマリンの領分ですから。シアン・アクアマリンとしての記憶を取り戻してから、なんとなく感じていました」
「そうか。じゃあ、今回の呼び出しは不要だったかな」
ガレンは小さく首を横に振っている。
「いいえ」
それに対して、シアンは否定を入れる。
「精霊王であるあなたにそう言って頂けると、不確かだったものが確信となりますので、無駄ではございません」
「……そうか」
シアンにはっきり告げられて、安心したかのようにため息を吐くガレンである。
「精霊王とはいえ、不安になることもあるのですね」
「この方が人間っぽくていいだろう?」
「ふふっ、そうですね」
笑みを浮かべるガレンの姿に、ついおかしくて笑ってしまうシアン。
「それにしても、理解が早くて用件が終わってしまったな」
再び頭をかき出すガレン。本当に動きがただのおじさんという感じだ。
本当はいろいろと魔力に関して話すつもりだったのが、シアンが全部理解しているようだったので、手短に終わってしまったのだ。つまり、少しショックを受けているというわである。
「これでも魔法関連は専門だから、何か困ったことがあったらいつでも相談に乗ってくれ」
「ええ、そういうことがありましたら、頼りにさせて頂きます」
気を取り直して話をするガレンに、シアンはにこやかに答えていた。
話が終わったことで、部屋を退出して帰宅の途に就くシアン。
シアンを見送ったガレンは、椅子にもたれ掛かって天井を見上げたのだった。
「はい?」
ようやく長ったらしい説明も終わり、城に戻れるかと思ったらガレンに呼び出されるシアン。
せっかく知り合ったので少しは話がしたかったのだが、シアンはやむなくブランチェスカとプルネと別れてガレンの部屋へと向かっていった。
二人も少し寂しそうにしていたので、ついついガレンを睨んでしまうシアンだったが、ガレンは特に気にした様子はなかった。
「悪いね、今日も呼び出してしまって」
「まったくですよ。何なんですか、今日は」
ぷんすかと怒るシアン。
まあ、城に戻ったところでやる事がまったくないので、暇つぶしにはなると少し複雑ではあったのだが……。
「ここなら他の連中の邪魔は入らないだろうからな。城に居る時はクロノア……、いやスミレと言っといた方がいいか、あいつがちょっと邪魔なんでね」
面倒くさそうな顔をしながら頭をかくガレンである。これが精霊王オリジンとはとてもではないけれども思えない。どこから見てもただのおっさん教師だった。
「そんなに邪魔なんですか?」
「ああ、あれでも私よりも立場は上だからね、幻獣というのは。精霊王である私でも対等とまではいかないんだよ」
露骨に嫌そうな顔をしてシアンが問い掛けると、困った顔をするガレンだった。本気でスミレを間に入れたくないようである。
学園の中であるなら、使用人は基本的に入ってこれない。ようやく二人きりで話ができるというわけだった。
「それにしても、ロゼリアくんたちもそうだったけど、君もちゃっかり二人分の魔力が見えるな」
「お母様もですか?」
いきなりガレンが話し始めた内容に、シアンは食いついている。
城で話をした内容はあくまでも学園についてのことだけだったので、今回の話は初耳だからだ。
「ふむ、ちゃんとそのように言うのだな。すっかり娘としての立場が染みついているということか……」
シアンの反応に、納得した様子のガレンである。
「……話を逸らさないで頂けます?」
両手を腰に当てて、前のめりになりながら迫るシアン。その姿を見て、ガレンは軽く咳払いをしていた。
「いや、すまないね。ちょっと感動したというかなんというかな……」
ごまかそうとするガレンだが、さらにジト目を向けられてもう一度咳払いをしていた。
「簡単に説明すると、二人分の魔力を持つというのはありえない話なんだ。それこそ、転生や憑依といった特殊な状態でない限りはね」
「ふむふむ……」
「ロゼリアくんとペシエラくんは、逆行してきた自分たちが入ったことで同じ魔力が重なり合いながらもぶれて見えていた。チェリシアくんは別世界の人間だったから、まったく異なる色の魔力が見えていたんだ」
「そうなのですね」
ガレンの説明を理解するシアンである。
「普通は反発し合うものなんだけど、あの三人は本人であったり相性がよかったりと、それこそ奇跡的な存在だったんだ」
「……禁法の影響でしょうかね」
「それは十分に考えられるね」
考え込みながら呟くシアンの言葉を、少し自信なさげに肯定するガレンである。
精霊王として永遠に存在する彼でも、確信が持てないというわけだ。それほどまでに禁法というのは使われる事がないものなのである。だからこそ、禁法というものなのだろうけれど。
「それで、君にも同じようなものが見えるというわけだ。シアン・アクアマリンだった時の青い魔力と、シアン・モスグリネの緑の魔力の二つがね」
「やっぱりそうなのですね」
ガレンの説明に、しれっと納得してしまうシアンである。
「……驚かないんだな」
「ええ、魔法に関してはアクアマリンの領分ですから。シアン・アクアマリンとしての記憶を取り戻してから、なんとなく感じていました」
「そうか。じゃあ、今回の呼び出しは不要だったかな」
ガレンは小さく首を横に振っている。
「いいえ」
それに対して、シアンは否定を入れる。
「精霊王であるあなたにそう言って頂けると、不確かだったものが確信となりますので、無駄ではございません」
「……そうか」
シアンにはっきり告げられて、安心したかのようにため息を吐くガレンである。
「精霊王とはいえ、不安になることもあるのですね」
「この方が人間っぽくていいだろう?」
「ふふっ、そうですね」
笑みを浮かべるガレンの姿に、ついおかしくて笑ってしまうシアン。
「それにしても、理解が早くて用件が終わってしまったな」
再び頭をかき出すガレン。本当に動きがただのおじさんという感じだ。
本当はいろいろと魔力に関して話すつもりだったのが、シアンが全部理解しているようだったので、手短に終わってしまったのだ。つまり、少しショックを受けているというわである。
「これでも魔法関連は専門だから、何か困ったことがあったらいつでも相談に乗ってくれ」
「ええ、そういうことがありましたら、頼りにさせて頂きます」
気を取り直して話をするガレンに、シアンはにこやかに答えていた。
話が終わったことで、部屋を退出して帰宅の途に就くシアン。
シアンを見送ったガレンは、椅子にもたれ掛かって天井を見上げたのだった。
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