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新章 青色の智姫
第36話 サファイア湖に出向いて
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翌日、予定通りサファイア湖にやってきたシアンたち。
ただ予想外だったことは、アイヴォリー側のシルヴァノ、ペシエラ、チェリシアまでがついてきた事だった。なんで全員勢ぞろいなのだろうか。
シアンの計画は最初の段階で破綻してしまっていた。
(なんで、アイヴォリーの方々まで来ていらっしゃるのかしら……。これじゃ一人になるのが難しいじゃないですか)
心の中で気まずそうな表情をするシアン。もちろん、悟られないように顔には出していない。
シアンたちは予想外の大所帯でサファイアを粉眺めている。
「久しぶりだな、ここに来るのも」
「そうですね。私は何かと来る事がございましたが、陛下……今はペイル様とお呼びしましょうか。ペイル様は学園の二年生の時以来でしょうかね」
「そうでしたわね。二年連続で問題発生で大変でしたけれど」
当時の事を思い出して、ロゼリアたちは懐かしそうに湖を眺めている。
シアンは現場にいなかったが、時の幻獣であるクロノアのおかげで事は把握している。
このサファイア湖というのは、パープリアの一味が二年連続でシルヴァノたちの命を狙った現場である。
この場ではパープリア一味について詳しくは割愛するが、アイリスの父親に与する一味のことである。
サファイア湖での思い出に花を咲かせていることに気が付いたシアンは、ペイルとロゼリアに声を掛ける。
「お父様、お母様。スミレについてもらってお花畑の方に行っていてもよろしいでしょうか」
「ふむ、スミレから離れないと約束するのなら、構わないぞ」
ダメ元で話し掛けたシアンだったが、意外とあっさりペイルから許可が下りた。思わず面食らってしまうシアンである。
「姉上、僕も一緒に行ってもいいでしょうか」
ところが、余計なところから邪魔が入った。モーフである。
「モーフはダメだな。勝手に動いて湖飛び込みかねん。ロゼリアたちはこの湖に潜った事があるらしいが、かなり深い。よって、モーフは俺たちと一緒にいなさい」
「ええ~……」
露骨に残念がるモーフである。
「その代わり、俺たちの思い出をたっぷり聞かせてやるからな。アイヴォリーの学園に通うと、合宿をここで行うことになる。モーフは最低でも五年は先になるが、聞いておいて損はないぞ」
「うわぁ、それは楽しみですね」
やんちゃ盛りのモーフは、あえなくペイルに捕まってしまっていた。その様子に安心したシアンは、ぺこりと淑女の挨拶をしてスミレと一緒に湖のほとりの花畑の方へと移動していった。
「驚いたわ」
「まったくですね。堂々としてみるものですね」
まったく疑われる事なく、二人だけで湖のほとりまでやって来れたシアンとスミレである。止められるかと思ったが、使用人であるスミレを無理やりでも連れてきた事が功を奏したようである。
今の季節は秋であり、学園の合宿も終わってひっそりとした雰囲気に包まれている。
シアンを少し後ろに置いて、スミレがサファイア湖に向けて静かに語りかける。
「蒼鱗魚、いますか?」
スミレが呼び掛けると、湖の一部の水がざざざと渦巻き始める。小さな水柱ができたかと思うと、そこから二匹の魚が姿を見せた。
キラキラと輝く宝石のような青い鱗を持ったつがいの魚、それこそがシアンが会おうとしていた蒼鱗魚である。
『おやおや、懐かしい魔力だね』
『まったくですな。運命に抗いし少女よ、何用かね』
どことなく年寄りくさい口調の念話を使っている。その喋り方が蒼鱗魚のスタイルなのだ。
シアンに顔を向けていたかと思うと、蒼鱗魚は何かに気が付いたらしく、スミレの方へと顔を向けた。
『おやおや、誰かと思ったらクロノスの娘さんかい。すっかり魔力が人間っぽくなっちまってどうしたんだい?』
基本的にサファイア湖から動く事のない蒼鱗魚たちは、どうやらスミレ、時の幻獣クロノアの身に起きた事をまったく知らないようである。念話の使える彼らにしては、珍しい話だった。
ひとまずは蒼鱗魚たちにスミレの身の上の説明を簡単に行う。
『そうだったのかい。それは大変だねぇ』
話の内容に驚いてはいるようだが、なにせののんびり口調のせいで本当にそう思っているのか疑わしくなる。
「とりあえず私のことはいいですので、シアン様の相談に乗ってもらいたいのです」
『ほうほう、こちらの嬢ちゃんかい』
スミレの言葉に、蒼鱗魚がシアンへと視線を向ける。その視線に思わず表情が強張るシアンである。
『こいつは珍しい。時戻りに転生かい。ずいぶんと珍しい経験を重ねているねぇ……』
「み、見ただけで分かるのですか」
自分の体験してきた珍しい経験を全部言い当てられて、シアンはつい一歩引くほどに驚いてしまう。
『わしら幻獣は悠久の時を生きておる。ここにいて、またどこにでもいる。それが神獣や幻獣というものじゃ。分からぬ事などあんまりないのじゃよ』
シアンの反応に蒼鱗魚はそのように語っている。
『おぬしがここに来た理由は、なにやら人に言えぬ相談のようじゃのう。遠慮せずにわしらに包み隠さずいうがよいぞ』
蒼鱗魚は話を聞く気満々なために、シアンは逆に困ったような表情をしながら話を始めたのだった。
ただ予想外だったことは、アイヴォリー側のシルヴァノ、ペシエラ、チェリシアまでがついてきた事だった。なんで全員勢ぞろいなのだろうか。
シアンの計画は最初の段階で破綻してしまっていた。
(なんで、アイヴォリーの方々まで来ていらっしゃるのかしら……。これじゃ一人になるのが難しいじゃないですか)
心の中で気まずそうな表情をするシアン。もちろん、悟られないように顔には出していない。
シアンたちは予想外の大所帯でサファイアを粉眺めている。
「久しぶりだな、ここに来るのも」
「そうですね。私は何かと来る事がございましたが、陛下……今はペイル様とお呼びしましょうか。ペイル様は学園の二年生の時以来でしょうかね」
「そうでしたわね。二年連続で問題発生で大変でしたけれど」
当時の事を思い出して、ロゼリアたちは懐かしそうに湖を眺めている。
シアンは現場にいなかったが、時の幻獣であるクロノアのおかげで事は把握している。
このサファイア湖というのは、パープリアの一味が二年連続でシルヴァノたちの命を狙った現場である。
この場ではパープリア一味について詳しくは割愛するが、アイリスの父親に与する一味のことである。
サファイア湖での思い出に花を咲かせていることに気が付いたシアンは、ペイルとロゼリアに声を掛ける。
「お父様、お母様。スミレについてもらってお花畑の方に行っていてもよろしいでしょうか」
「ふむ、スミレから離れないと約束するのなら、構わないぞ」
ダメ元で話し掛けたシアンだったが、意外とあっさりペイルから許可が下りた。思わず面食らってしまうシアンである。
「姉上、僕も一緒に行ってもいいでしょうか」
ところが、余計なところから邪魔が入った。モーフである。
「モーフはダメだな。勝手に動いて湖飛び込みかねん。ロゼリアたちはこの湖に潜った事があるらしいが、かなり深い。よって、モーフは俺たちと一緒にいなさい」
「ええ~……」
露骨に残念がるモーフである。
「その代わり、俺たちの思い出をたっぷり聞かせてやるからな。アイヴォリーの学園に通うと、合宿をここで行うことになる。モーフは最低でも五年は先になるが、聞いておいて損はないぞ」
「うわぁ、それは楽しみですね」
やんちゃ盛りのモーフは、あえなくペイルに捕まってしまっていた。その様子に安心したシアンは、ぺこりと淑女の挨拶をしてスミレと一緒に湖のほとりの花畑の方へと移動していった。
「驚いたわ」
「まったくですね。堂々としてみるものですね」
まったく疑われる事なく、二人だけで湖のほとりまでやって来れたシアンとスミレである。止められるかと思ったが、使用人であるスミレを無理やりでも連れてきた事が功を奏したようである。
今の季節は秋であり、学園の合宿も終わってひっそりとした雰囲気に包まれている。
シアンを少し後ろに置いて、スミレがサファイア湖に向けて静かに語りかける。
「蒼鱗魚、いますか?」
スミレが呼び掛けると、湖の一部の水がざざざと渦巻き始める。小さな水柱ができたかと思うと、そこから二匹の魚が姿を見せた。
キラキラと輝く宝石のような青い鱗を持ったつがいの魚、それこそがシアンが会おうとしていた蒼鱗魚である。
『おやおや、懐かしい魔力だね』
『まったくですな。運命に抗いし少女よ、何用かね』
どことなく年寄りくさい口調の念話を使っている。その喋り方が蒼鱗魚のスタイルなのだ。
シアンに顔を向けていたかと思うと、蒼鱗魚は何かに気が付いたらしく、スミレの方へと顔を向けた。
『おやおや、誰かと思ったらクロノスの娘さんかい。すっかり魔力が人間っぽくなっちまってどうしたんだい?』
基本的にサファイア湖から動く事のない蒼鱗魚たちは、どうやらスミレ、時の幻獣クロノアの身に起きた事をまったく知らないようである。念話の使える彼らにしては、珍しい話だった。
ひとまずは蒼鱗魚たちにスミレの身の上の説明を簡単に行う。
『そうだったのかい。それは大変だねぇ』
話の内容に驚いてはいるようだが、なにせののんびり口調のせいで本当にそう思っているのか疑わしくなる。
「とりあえず私のことはいいですので、シアン様の相談に乗ってもらいたいのです」
『ほうほう、こちらの嬢ちゃんかい』
スミレの言葉に、蒼鱗魚がシアンへと視線を向ける。その視線に思わず表情が強張るシアンである。
『こいつは珍しい。時戻りに転生かい。ずいぶんと珍しい経験を重ねているねぇ……』
「み、見ただけで分かるのですか」
自分の体験してきた珍しい経験を全部言い当てられて、シアンはつい一歩引くほどに驚いてしまう。
『わしら幻獣は悠久の時を生きておる。ここにいて、またどこにでもいる。それが神獣や幻獣というものじゃ。分からぬ事などあんまりないのじゃよ』
シアンの反応に蒼鱗魚はそのように語っている。
『おぬしがここに来た理由は、なにやら人に言えぬ相談のようじゃのう。遠慮せずにわしらに包み隠さずいうがよいぞ』
蒼鱗魚は話を聞く気満々なために、シアンは逆に困ったような表情をしながら話を始めたのだった。
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