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新章 青色の智姫
第31話 シアンの企み
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ペイルが精霊の羽を無事に手に入れて戻ってきた事で、モスグリネの城は大騒ぎになる。
これでいよいよ王位継承が行えると、現国王であるダルグも喜んだ。
とはいえ、すぐに王位継承の儀式ができるかというとそうはならない。式典の準備など、おおよそ半年の準備を要することになるらしい。
「アイヴォリーの学園への留学、無事に王女という立場で行うことになりそうですね」
「そうですね。お父様が王太子のままだったら、どういう立場だったのかしら」
ペイルの王位継承が正式に決まった日の夜、部屋の中でシアンはスミレと話をしていた。
「それにしても、転生してからというものいろいろと順調じゃないかしら」
「その方がよろしいとはお思いますよ。騒ぎなんていうのは、シアン様の魔力が強すぎたことくらいですものね」
ちょうどいい機会なのでこれまでを思い出してみてみるものの、これといった問題のようなものは起きていない。かつての主で今の母親であるロゼリアたちの時のような事はなかったのだ。
「ロゼリア様の時は、一度経験した人生をなぞっていたからですよ。人生で初めてばかりが続く状況で、その先にある出来事が全部わかっていたら、それは神様みたいなものです。私たち幻獣ですら無理ですよ」
急に難しい顔をして考え込むシアンに対して、スミレは苦言を呈しておいた。
それを聞かされたシアンはどうやら納得したらしく、考え込むことをやめたのだった。
「まぁ、シアン様の場合は知っている場所に行きたがることくらいでしょうかね。前世のかかわりのある場所ですよ、アクアマリン領とか」
流れのままにスミレが話していると、シアンはじっとスミレを凝視し始めた。
「な、何ですか。まさか、こんな時期にアクアマリン領に行きたいとか申しませんよね?」
嫌な予感がしたスミレは、困惑した表情でシアンを見つめ返している。
そのスミレに対してシアンは、にこりと微笑みを浮かべる。
「その通りですよ。あそこは何かとあった場所ですし、久しぶりにお兄様に会ってみたくなりましたわ。スミレが話に出したせいですよ?」
「うげぇ、私のせいにしますか」
悪い笑顔をしているシアンに対して、スミレは距離を取っている。元幻獣とはいえ、今は力を封じられたちょっと魔力があるだけの人間なので、面倒を避けたいからだった。
「これから半年は王位継承の儀式の準備で忙しいですし、行けるとしてもその後の挨拶の時くらいですよ」
「ええ、分かっています。お父様もお母様も、ちょっと過保護ですからね」
スミレの話に頬に手を当てながらため息を吐くシアンである。
とにかく、アクアマリンに行きたいと口に出しても、両親を説得できるかどうかというのは分からない。シアンは口に出すタイミングを見計らうことにしたのだった。
ところが、結局半年経って王位継承の儀式が行われる時期になっても、それに関連した話がなされる事はなかった。
シアンは完全に言うタイミングを逸してしまっていたのだ。
大人の話だから、子どもということで関わらせてもらえなかったのである。
どうしたものかと困っていたシアンだったが、王位継承が一週間後に迫った日のこと、ペイルとロゼリアがシアンとモーフも呼んで話をする機会を設けたのだった。
「王位継承式の後に、アイヴォリー王国にも挨拶をする事になったが、どこか行きたいところはあるか?」
そう、隣国アイヴォリー王国への挨拶旅行でする寄り道の話を切り出したのだ。
シアンはチャンスとばかりに、勢い良く手を挙げていた。
「それでしたら、私、アクアマリン領とコーラル領に行きたいです」
なぜか付け加わるコーラル領。
その理由は簡単である。シェリアの街とカイスの村である。
とくに後者のカイスの村は、スミレに一時期潜伏してもらっていた場所であるし、光と水の精霊であるレイニが居る。アクアマリン領同様に、シアンにとっては関係の深い場所だったのだ。
だが、ペイルとロゼリアはちょっと考え込んでいる。
アクアマリン領はモスグリネとの間にあるのでいいものの、カイスの村ともなればかなり遠い。なにせアイヴォリー王国の王都ハウライトから馬車で十日の位置なのだから。
ペイルの方はずっと悩んでいるものの、ロゼリアの方は納得がいったかのように表情を和らげていた。
「分かりました。かなり予定が延びてはしまいますが、どうにかねじ込みましょう」
「本気か、ロゼリア」
ペイルが驚いた反応をするものの、ロゼリアはこくりと頷いた。
「最悪、チェリシアに頼んで二人だけでも向かわせましょう。言い出しのは恐らくスミレでしょうけれど、下手に断って拗ねられては困りますからね」
「うーん、悪いが今すぐに決断はできないな。アクアマリン領へ向かうことは了承するが、コーラル領の方はどうなるか分からん」
こんな感じで、ペイルにはコーラル領へ向かう話は保留にされてしまった。
しかし、アクアマリン領だけでも了承させられたのは大きかった。
弟のモーフが不思議そうに見つめる中、シアンは心の中でにっこりと微笑んだのだった。
これでいよいよ王位継承が行えると、現国王であるダルグも喜んだ。
とはいえ、すぐに王位継承の儀式ができるかというとそうはならない。式典の準備など、おおよそ半年の準備を要することになるらしい。
「アイヴォリーの学園への留学、無事に王女という立場で行うことになりそうですね」
「そうですね。お父様が王太子のままだったら、どういう立場だったのかしら」
ペイルの王位継承が正式に決まった日の夜、部屋の中でシアンはスミレと話をしていた。
「それにしても、転生してからというものいろいろと順調じゃないかしら」
「その方がよろしいとはお思いますよ。騒ぎなんていうのは、シアン様の魔力が強すぎたことくらいですものね」
ちょうどいい機会なのでこれまでを思い出してみてみるものの、これといった問題のようなものは起きていない。かつての主で今の母親であるロゼリアたちの時のような事はなかったのだ。
「ロゼリア様の時は、一度経験した人生をなぞっていたからですよ。人生で初めてばかりが続く状況で、その先にある出来事が全部わかっていたら、それは神様みたいなものです。私たち幻獣ですら無理ですよ」
急に難しい顔をして考え込むシアンに対して、スミレは苦言を呈しておいた。
それを聞かされたシアンはどうやら納得したらしく、考え込むことをやめたのだった。
「まぁ、シアン様の場合は知っている場所に行きたがることくらいでしょうかね。前世のかかわりのある場所ですよ、アクアマリン領とか」
流れのままにスミレが話していると、シアンはじっとスミレを凝視し始めた。
「な、何ですか。まさか、こんな時期にアクアマリン領に行きたいとか申しませんよね?」
嫌な予感がしたスミレは、困惑した表情でシアンを見つめ返している。
そのスミレに対してシアンは、にこりと微笑みを浮かべる。
「その通りですよ。あそこは何かとあった場所ですし、久しぶりにお兄様に会ってみたくなりましたわ。スミレが話に出したせいですよ?」
「うげぇ、私のせいにしますか」
悪い笑顔をしているシアンに対して、スミレは距離を取っている。元幻獣とはいえ、今は力を封じられたちょっと魔力があるだけの人間なので、面倒を避けたいからだった。
「これから半年は王位継承の儀式の準備で忙しいですし、行けるとしてもその後の挨拶の時くらいですよ」
「ええ、分かっています。お父様もお母様も、ちょっと過保護ですからね」
スミレの話に頬に手を当てながらため息を吐くシアンである。
とにかく、アクアマリンに行きたいと口に出しても、両親を説得できるかどうかというのは分からない。シアンは口に出すタイミングを見計らうことにしたのだった。
ところが、結局半年経って王位継承の儀式が行われる時期になっても、それに関連した話がなされる事はなかった。
シアンは完全に言うタイミングを逸してしまっていたのだ。
大人の話だから、子どもということで関わらせてもらえなかったのである。
どうしたものかと困っていたシアンだったが、王位継承が一週間後に迫った日のこと、ペイルとロゼリアがシアンとモーフも呼んで話をする機会を設けたのだった。
「王位継承式の後に、アイヴォリー王国にも挨拶をする事になったが、どこか行きたいところはあるか?」
そう、隣国アイヴォリー王国への挨拶旅行でする寄り道の話を切り出したのだ。
シアンはチャンスとばかりに、勢い良く手を挙げていた。
「それでしたら、私、アクアマリン領とコーラル領に行きたいです」
なぜか付け加わるコーラル領。
その理由は簡単である。シェリアの街とカイスの村である。
とくに後者のカイスの村は、スミレに一時期潜伏してもらっていた場所であるし、光と水の精霊であるレイニが居る。アクアマリン領同様に、シアンにとっては関係の深い場所だったのだ。
だが、ペイルとロゼリアはちょっと考え込んでいる。
アクアマリン領はモスグリネとの間にあるのでいいものの、カイスの村ともなればかなり遠い。なにせアイヴォリー王国の王都ハウライトから馬車で十日の位置なのだから。
ペイルの方はずっと悩んでいるものの、ロゼリアの方は納得がいったかのように表情を和らげていた。
「分かりました。かなり予定が延びてはしまいますが、どうにかねじ込みましょう」
「本気か、ロゼリア」
ペイルが驚いた反応をするものの、ロゼリアはこくりと頷いた。
「最悪、チェリシアに頼んで二人だけでも向かわせましょう。言い出しのは恐らくスミレでしょうけれど、下手に断って拗ねられては困りますからね」
「うーん、悪いが今すぐに決断はできないな。アクアマリン領へ向かうことは了承するが、コーラル領の方はどうなるか分からん」
こんな感じで、ペイルにはコーラル領へ向かう話は保留にされてしまった。
しかし、アクアマリン領だけでも了承させられたのは大きかった。
弟のモーフが不思議そうに見つめる中、シアンは心の中でにっこりと微笑んだのだった。
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