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番外編集
番外編 雪降る夜に その1
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それは四年次の冬の事だった。
「はあ、今年は特に何もなく平々凡々と過ぎて行っちゃったわね……。なんかこう、ぱあっと騒いでみたいわ」
この日、チェリシアは自宅で窓の外を見ながらぼやいていた。
「……お姉様、そんなところで何をしてますの?」
たまたま通りかかったペシエラがチェリシアに声を掛けると、チェリシアがくるりと振り返る。
「ペシエラ。学園生活ってあまりにも退屈じゃないかしら」
「別にそうでもありませんわよ。わたくしも一度学んだ事ばかりとはいえ、前回とは違って身が入っていますから、つまらないなんて事はないですわ」
チェリシアが不満そうに漏らす言葉に、ペシエラは真顔で真面目に返していた。さすがは女王まで経験した少女である。十三歳ながらにもしっかりしていた。
「はあ、ペシエラは真面目で面白くないわね。そろそろ年末のパーティーの時期だっていうのに、なんかこう、盛り上げられるような事はないかしら」
チェリシアは再び窓の外を見ながらため息を吐いている。
「お姉様の前世にあったお祭りなどをしてみてはどうかしらね。パーティーなんですから、それくらいは許されると思いますわよ」
「それはいいわね」
ペシエラがそう言うと、チェリシアはぱあっと表情を明るくしていた。何かを思いついたようである。
「ありがとう、ペシエラ。早速、考えてみるわ」
「ちょっと、お姉様? どこへ行かれるのです?」
「商会。こういうのは商機になるわ」
バタバタと走り出すチェリシアを見て、ペシエラは呆れ返ってしまったのだった。
「まったく、お姉様ったら落ち着きがないんですから……」
そう言って、ペシエラもチェリシアの後を追いかけて商会へと移動したのだった。
「ケーキ?」
「そう、年末特製のケーキを売り出すのよ。あと、チキンもよ」
前世が絡む話なので、部屋にはロゼリア、チェリシア、ペシエラ、それとアイリスの四人だけで集まっている。侍女としてついて来たシアンやキャノルには商会の仕事を手伝ってもらっている。
「なんでまたそんな事を言い出すのですか、お姉様は」
ペシエラが頭を抱えている。
「前世の年末といえばクリスマス。それと年始にはお正月っていうちょっとしたイベントがあったのよ。クリスマスっていうのは昔の偉人の誕生日を祝う行事で、お正月っていうのは年明けを祝う行事よ」
なんか適当で端折った説明をしているチェリシアである。
「チェリシアの前世って、お祝い事が多すぎませんこと?」
ロゼリアは呆れたように言っている。
「お祭りが好きなのよ!」
自信満々に言い切るチェリシアである。それを見て、ロゼリアとペシエラがもう一度呆れていた。
「でもまぁ、年末のパーティーといったらアイヴォリーでは大きな行事ですものね。そういう時に商機を見出すというのは、商人としたらありといえばありでしょうね」
ロゼリアは帳簿を見終えて、椅子にもたれ掛かりながら喋っている。
「でっしょー?」
チェリシアは舌を出しつつ、指差しポーズを決めている。伯爵令嬢としてそれはどうなのかと思うポーズである。その姿に、ロゼリアとペシエラは頭が痛くなる思いだった。
「で、売り出すケーキとしてはこんな感じかしら。この世界ってチョコレートってあったわよね?」
チェリシアがどこからともなくイラストを描いた紙を取り出してきた。
「ちょっと、お姉様。一体いつこれを描きましたの?!」
ペシエラが驚くのも無理はなかった。家を出てから絵を描く素振りなんて、まったく見ていなかったのだから。
「実はね、暇だからっていろいろ描いてたのよ。前世にあったあれやこれやがどうしても欲しくてね」
チェリシアの顔が満面の笑みに包まれている。やっとアイディアが出せて嬉しいようだった。
「はあ、うどんやラーメンとかも作ってみたいわね」
チェリシアの野望は止まるところを知らないようである。前世の再現のために結構奔走していたのだから、これは当然と言えよう。
「なんて言うのかしらね、私たちは止めないから頑張ってちょうだいとしか言えないかしらね」
「まったくですわ」
ロゼリアとペシエラは呆れて止める気すら起きなかった。
「それはそうと、チョコレートを使ったケーキですか。それは変わったアイディアですわね」
「アイディア自体は面白いと思うわよ。こっちの鳥の香草焼きっていうのもいいわね。フォレストバードでいけるかしら」
クリスマス用にと描き出していたチェリシアのイラストを見ながら、ロゼリアとペシエラも興味を示しているようだった。
「ね、結構受けそうだと思わない?」
二人が興味津々なのをいい事に、チェリシアが悪い顔でそう言うと、
「これはやってみるだけの価値はあるんじゃないかしらね」
といった感じに意外とロゼリアとペシエラもノリノリだった。
「よーし、そうと決まったらちゃっちゃと詰めちゃいましょう。年末のパーティーまでそんなに時間がないもの!」
そんな感じで、チェリシアが先導する形でマゼンダ商会の中で会議が持たれる事になったのだった。
異世界でのクリスマス。チェリシアの欲望による暴走によって、その準備は着々と進められていくのだった。
はてさて、この年の年末パーティーは一体どんな感じになってしまうのやら。今の段階では、誰にも分からないのだった。
「はあ、今年は特に何もなく平々凡々と過ぎて行っちゃったわね……。なんかこう、ぱあっと騒いでみたいわ」
この日、チェリシアは自宅で窓の外を見ながらぼやいていた。
「……お姉様、そんなところで何をしてますの?」
たまたま通りかかったペシエラがチェリシアに声を掛けると、チェリシアがくるりと振り返る。
「ペシエラ。学園生活ってあまりにも退屈じゃないかしら」
「別にそうでもありませんわよ。わたくしも一度学んだ事ばかりとはいえ、前回とは違って身が入っていますから、つまらないなんて事はないですわ」
チェリシアが不満そうに漏らす言葉に、ペシエラは真顔で真面目に返していた。さすがは女王まで経験した少女である。十三歳ながらにもしっかりしていた。
「はあ、ペシエラは真面目で面白くないわね。そろそろ年末のパーティーの時期だっていうのに、なんかこう、盛り上げられるような事はないかしら」
チェリシアは再び窓の外を見ながらため息を吐いている。
「お姉様の前世にあったお祭りなどをしてみてはどうかしらね。パーティーなんですから、それくらいは許されると思いますわよ」
「それはいいわね」
ペシエラがそう言うと、チェリシアはぱあっと表情を明るくしていた。何かを思いついたようである。
「ありがとう、ペシエラ。早速、考えてみるわ」
「ちょっと、お姉様? どこへ行かれるのです?」
「商会。こういうのは商機になるわ」
バタバタと走り出すチェリシアを見て、ペシエラは呆れ返ってしまったのだった。
「まったく、お姉様ったら落ち着きがないんですから……」
そう言って、ペシエラもチェリシアの後を追いかけて商会へと移動したのだった。
「ケーキ?」
「そう、年末特製のケーキを売り出すのよ。あと、チキンもよ」
前世が絡む話なので、部屋にはロゼリア、チェリシア、ペシエラ、それとアイリスの四人だけで集まっている。侍女としてついて来たシアンやキャノルには商会の仕事を手伝ってもらっている。
「なんでまたそんな事を言い出すのですか、お姉様は」
ペシエラが頭を抱えている。
「前世の年末といえばクリスマス。それと年始にはお正月っていうちょっとしたイベントがあったのよ。クリスマスっていうのは昔の偉人の誕生日を祝う行事で、お正月っていうのは年明けを祝う行事よ」
なんか適当で端折った説明をしているチェリシアである。
「チェリシアの前世って、お祝い事が多すぎませんこと?」
ロゼリアは呆れたように言っている。
「お祭りが好きなのよ!」
自信満々に言い切るチェリシアである。それを見て、ロゼリアとペシエラがもう一度呆れていた。
「でもまぁ、年末のパーティーといったらアイヴォリーでは大きな行事ですものね。そういう時に商機を見出すというのは、商人としたらありといえばありでしょうね」
ロゼリアは帳簿を見終えて、椅子にもたれ掛かりながら喋っている。
「でっしょー?」
チェリシアは舌を出しつつ、指差しポーズを決めている。伯爵令嬢としてそれはどうなのかと思うポーズである。その姿に、ロゼリアとペシエラは頭が痛くなる思いだった。
「で、売り出すケーキとしてはこんな感じかしら。この世界ってチョコレートってあったわよね?」
チェリシアがどこからともなくイラストを描いた紙を取り出してきた。
「ちょっと、お姉様。一体いつこれを描きましたの?!」
ペシエラが驚くのも無理はなかった。家を出てから絵を描く素振りなんて、まったく見ていなかったのだから。
「実はね、暇だからっていろいろ描いてたのよ。前世にあったあれやこれやがどうしても欲しくてね」
チェリシアの顔が満面の笑みに包まれている。やっとアイディアが出せて嬉しいようだった。
「はあ、うどんやラーメンとかも作ってみたいわね」
チェリシアの野望は止まるところを知らないようである。前世の再現のために結構奔走していたのだから、これは当然と言えよう。
「なんて言うのかしらね、私たちは止めないから頑張ってちょうだいとしか言えないかしらね」
「まったくですわ」
ロゼリアとペシエラは呆れて止める気すら起きなかった。
「それはそうと、チョコレートを使ったケーキですか。それは変わったアイディアですわね」
「アイディア自体は面白いと思うわよ。こっちの鳥の香草焼きっていうのもいいわね。フォレストバードでいけるかしら」
クリスマス用にと描き出していたチェリシアのイラストを見ながら、ロゼリアとペシエラも興味を示しているようだった。
「ね、結構受けそうだと思わない?」
二人が興味津々なのをいい事に、チェリシアが悪い顔でそう言うと、
「これはやってみるだけの価値はあるんじゃないかしらね」
といった感じに意外とロゼリアとペシエラもノリノリだった。
「よーし、そうと決まったらちゃっちゃと詰めちゃいましょう。年末のパーティーまでそんなに時間がないもの!」
そんな感じで、チェリシアが先導する形でマゼンダ商会の中で会議が持たれる事になったのだった。
異世界でのクリスマス。チェリシアの欲望による暴走によって、その準備は着々と進められていくのだった。
はてさて、この年の年末パーティーは一体どんな感じになってしまうのやら。今の段階では、誰にも分からないのだった。
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