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最終章 乙女ゲーム後
第352話 結婚式、そして……
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姿を現したロゼリアは、本当に美しかった。ペシエラほどではないものの柔らかな釣り目であるロゼリアのたたずまいは、本当に凛として言葉を失うほどのものだった。長いヴェールの裾を持つ子どもたちは対照的に可愛かった。
式場内では、チェリシアがペシエラの時と同様に写真魔法でその姿を保存しまくっている。一応許可をしたとはいえ、その姿はなんとも目立っていた。
「はっはっはっ、チェリシアくん。その写真、あとでうちにも回してくれないかい?」
「ええ、いいですよ」
ケットシーとチェリシアが小声で話をしている。その悪だくみの姿、よく見えてますから。
それに構う事なく、ペイルとロゼリアの結婚式は進んでいく。結婚式の進行はモスグリネ王家の形式に則っており、その進行はアイヴォリー王国とはかなり違うようである。アイヴォリー王国では、世界を作ったとされ、信仰されている神にのみ誓いを立てるといったものだったが、モスグリネ王国では精霊信仰も行われている。なので、誓い先も神と精霊王の二柱となる。
(精霊王がまさかガレン先生とは思いませんでしたけれどね)
結婚式に先立ってされた説明の時には、ロゼリアはそう思ったそうだ。
いつぞやのペシエラ絡みの一件で精霊の森に出向いた時に発覚した事実である。とはいえ、精霊王はモスグリネでは神聖視されているので、笑うわけにはいかず必死に耐えたのだった。
結婚式は進み、式場内での結婚式の最後は、やはり愛し合う者同士での口づけだった。ロゼリアは大勢の前とあって少々引け腰だったが、ペイルがぐっと近付いてきてロゼリアをしっかりと捕まえた。
「ここまで来て怖気づくとは、少々らしくはないな」
ペイルの顔が目の前で笑っている。ロゼリアの顔は更に真っ赤になっていく。ペイルが片手でロゼリアの顔を覆うヴェールを持ち上げると、見事なまでに真っ赤になったロゼリアの顔が露わになった。
「ふっ、名前のように真っ赤だな、ロゼリア」
「な、何をうまい事言ったつもりになっているのですか、殿下」
ロゼリアはそんな事言って、ペイルから視線を逸らす。
「ふっ、学生時代はそうは思わなかったが、こうやって改めて見てみると、愛い奴だな」
ペイルがロゼリアに微笑みかける。
さすがにこれ以上ここで時間をかけてしまうわけにはいかない。笑ったペイルは少々強引に進める事にした。
「まったく、ここまで来て往生際が悪い。そんなに俺の事が嫌か?」
「そ、そんな事あ……」
ロゼリアを煽ると、狙い通りにロゼリアがペイルの方へと顔を向ける。そこへすかさず口づけを決めてみせたのだ。
その瞬間に、会場が一気に沸き立った。
してやられたロゼリアだったが、悪い気はしなかった。半ば政略的だったとはいえ、ペイルは別に嫌いな相手ではなかったのだから。
しばらくして口づけを終えた二人は、国王と王妃の方へと向き直り、一礼すると来賓たちの方を向いてしばらく手を振っていた。
そして、来賓たちの間を外へ向かって歩いていくペイルとロゼリア。結婚式の最後は王都ヴィフレア内のお披露目パレードである。このパレードも一年前にヴィフレアに来た時同様に、沿道を多くの住民たちが埋め尽くした盛大なお祭りとなっていた。
この様子は上空からライが撮影して保存している。妖精から魔物となったライだが、このいう様子を見せつけられると、羨ましいと思う限りで、いつかは自分もとか考えるようになったとか。
こうして大勢に祝福される中、つつがなくペイルとロゼリアの結婚式は無事に終了したのであった。ちなみに、ヴィフレアのお祝いムードは一晩中続いたようである。
「まったく、手のかかる二人でしたわ」
そう話すのは客間に通されているマゼンダとコーラル両家の面々である。なぜかシルヴァノとペシエラも一般客間である。
「ペイル殿下は強い女性に惹かれる傾向がございましたからね。今回は私がこの通り突出してしまったので、ロゼリアの方へ向かせるのに苦労しましたわよ」
「確かに、ペシエラの強さは異常ですからね」
ペシエラの愚痴にシルヴァノは苦笑いを浮かべている。
「でも、なんとか思った方向で収まってよかったわね」
「ええ、だからこそ私は早々にシルヴァノ殿下との婚約を決めましたのよ。そうでもしないと、逆行前の贖罪ができませんでしたから」
紅茶を飲み干したペシエラは、眉間にしわを寄せていた。
「大体お姉様、あなたの存在が余計ややこしくしましたのよ。丸く収まりましたけれど、私、そのせいで一度消えかけましたのよ?!」
「ペシエラ、その件は不可抗力でしょう?」
チェリシアにキレるペシエラを、アイリスが一生懸命宥めている。
「まあ、何にしても、思い描いたように物事が進んだのならよかったじゃないか。第一何も知らずに巻き込まれたのは、私や殿下たちの方だ」
カーマイルがとても冷静にツッコミを入れている。本当に頼りになるお兄様である。
「それでだが、ライ」
「何でしょうか、カーマイル様」
「あとで、今日の様子を撮った映像を寄こしてくれ。父上たちが泣いて喜ぶと思うのでな」
「直に見ておられたではないですか。どうして必要だと仰るのです?」
「親とはそういうものだと思うぞ」
カーマイルの言い分に、首を傾げるライ。だが、カーマイルの言い分にチェリシアがとても深く頷いていた。
この空気の中、ペシエラがおかわりの紅茶を飲んで、一番の本題を切り出した。
「大方思い描いていたように進みましたが、最後、この悲劇だけはどうなるか分かりませんわ」
「悲劇? どういう事ですか、ペシエラ」
ペシエラが切り出した言葉に、シルヴァノが問い掛ける。
「このやり直しの時戻りを切り出した、原因となる人物。これだけが、どう転ぶか分かりませんのよ」
ペイルとロゼリアの結婚によるお祝いムードの中、最後に残った悲劇のピース。それがペシエラの言う懸念材料だった。
式場内では、チェリシアがペシエラの時と同様に写真魔法でその姿を保存しまくっている。一応許可をしたとはいえ、その姿はなんとも目立っていた。
「はっはっはっ、チェリシアくん。その写真、あとでうちにも回してくれないかい?」
「ええ、いいですよ」
ケットシーとチェリシアが小声で話をしている。その悪だくみの姿、よく見えてますから。
それに構う事なく、ペイルとロゼリアの結婚式は進んでいく。結婚式の進行はモスグリネ王家の形式に則っており、その進行はアイヴォリー王国とはかなり違うようである。アイヴォリー王国では、世界を作ったとされ、信仰されている神にのみ誓いを立てるといったものだったが、モスグリネ王国では精霊信仰も行われている。なので、誓い先も神と精霊王の二柱となる。
(精霊王がまさかガレン先生とは思いませんでしたけれどね)
結婚式に先立ってされた説明の時には、ロゼリアはそう思ったそうだ。
いつぞやのペシエラ絡みの一件で精霊の森に出向いた時に発覚した事実である。とはいえ、精霊王はモスグリネでは神聖視されているので、笑うわけにはいかず必死に耐えたのだった。
結婚式は進み、式場内での結婚式の最後は、やはり愛し合う者同士での口づけだった。ロゼリアは大勢の前とあって少々引け腰だったが、ペイルがぐっと近付いてきてロゼリアをしっかりと捕まえた。
「ここまで来て怖気づくとは、少々らしくはないな」
ペイルの顔が目の前で笑っている。ロゼリアの顔は更に真っ赤になっていく。ペイルが片手でロゼリアの顔を覆うヴェールを持ち上げると、見事なまでに真っ赤になったロゼリアの顔が露わになった。
「ふっ、名前のように真っ赤だな、ロゼリア」
「な、何をうまい事言ったつもりになっているのですか、殿下」
ロゼリアはそんな事言って、ペイルから視線を逸らす。
「ふっ、学生時代はそうは思わなかったが、こうやって改めて見てみると、愛い奴だな」
ペイルがロゼリアに微笑みかける。
さすがにこれ以上ここで時間をかけてしまうわけにはいかない。笑ったペイルは少々強引に進める事にした。
「まったく、ここまで来て往生際が悪い。そんなに俺の事が嫌か?」
「そ、そんな事あ……」
ロゼリアを煽ると、狙い通りにロゼリアがペイルの方へと顔を向ける。そこへすかさず口づけを決めてみせたのだ。
その瞬間に、会場が一気に沸き立った。
してやられたロゼリアだったが、悪い気はしなかった。半ば政略的だったとはいえ、ペイルは別に嫌いな相手ではなかったのだから。
しばらくして口づけを終えた二人は、国王と王妃の方へと向き直り、一礼すると来賓たちの方を向いてしばらく手を振っていた。
そして、来賓たちの間を外へ向かって歩いていくペイルとロゼリア。結婚式の最後は王都ヴィフレア内のお披露目パレードである。このパレードも一年前にヴィフレアに来た時同様に、沿道を多くの住民たちが埋め尽くした盛大なお祭りとなっていた。
この様子は上空からライが撮影して保存している。妖精から魔物となったライだが、このいう様子を見せつけられると、羨ましいと思う限りで、いつかは自分もとか考えるようになったとか。
こうして大勢に祝福される中、つつがなくペイルとロゼリアの結婚式は無事に終了したのであった。ちなみに、ヴィフレアのお祝いムードは一晩中続いたようである。
「まったく、手のかかる二人でしたわ」
そう話すのは客間に通されているマゼンダとコーラル両家の面々である。なぜかシルヴァノとペシエラも一般客間である。
「ペイル殿下は強い女性に惹かれる傾向がございましたからね。今回は私がこの通り突出してしまったので、ロゼリアの方へ向かせるのに苦労しましたわよ」
「確かに、ペシエラの強さは異常ですからね」
ペシエラの愚痴にシルヴァノは苦笑いを浮かべている。
「でも、なんとか思った方向で収まってよかったわね」
「ええ、だからこそ私は早々にシルヴァノ殿下との婚約を決めましたのよ。そうでもしないと、逆行前の贖罪ができませんでしたから」
紅茶を飲み干したペシエラは、眉間にしわを寄せていた。
「大体お姉様、あなたの存在が余計ややこしくしましたのよ。丸く収まりましたけれど、私、そのせいで一度消えかけましたのよ?!」
「ペシエラ、その件は不可抗力でしょう?」
チェリシアにキレるペシエラを、アイリスが一生懸命宥めている。
「まあ、何にしても、思い描いたように物事が進んだのならよかったじゃないか。第一何も知らずに巻き込まれたのは、私や殿下たちの方だ」
カーマイルがとても冷静にツッコミを入れている。本当に頼りになるお兄様である。
「それでだが、ライ」
「何でしょうか、カーマイル様」
「あとで、今日の様子を撮った映像を寄こしてくれ。父上たちが泣いて喜ぶと思うのでな」
「直に見ておられたではないですか。どうして必要だと仰るのです?」
「親とはそういうものだと思うぞ」
カーマイルの言い分に、首を傾げるライ。だが、カーマイルの言い分にチェリシアがとても深く頷いていた。
この空気の中、ペシエラがおかわりの紅茶を飲んで、一番の本題を切り出した。
「大方思い描いていたように進みましたが、最後、この悲劇だけはどうなるか分かりませんわ」
「悲劇? どういう事ですか、ペシエラ」
ペシエラが切り出した言葉に、シルヴァノが問い掛ける。
「このやり直しの時戻りを切り出した、原因となる人物。これだけが、どう転ぶか分かりませんのよ」
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