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最終章 乙女ゲーム後
第342話 卒業式の日
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「いよいよこの日が来てしまいましたわね」
卒業式参加前に、マゼンダ商会に集合するロゼリアたち。まずはペシエラが口を開いた。
「そうね、意外と早かったわ」
「学園生活も終わっちゃうのね、寂しくなっちゃう」
「私は無事に卒業できてうれしいです」
ペシエラ以外もそれぞれに気持ちを打ち明けていた。
乙女ゲーム期間中まではあれやこれやで忙しかったというのに、その後は比較的平和に過ぎていったのでちょっと退屈だった。だが、その平和が一番なのだが、気を抜いて過ごせなかったロゼリアたちである。
卒業式は午後からの開催なので、こうやって集まっている。
本当に、逆行前の無念と後悔を晴らすためにいろいろ動いてきたロゼリアとペシエラ。転生前の知識でいろいろと引っ掻き回したチェリシア。その結果、世界のとんでもない謎までが露出する結果となってしまったが、大筋では自分たちのやり直しは成功だったと思えるだろう。
「……結局は、時戻りの理由は分かりませんでしたわね。誰がどうしてこういう事をしたのか分かりませんが、私としてはとても感謝していますわ」
ペシエラが胸に手を当てながら言う。だが、その表情を見る限り、本当は分かっていそうであった。外部のチェリシアとアイリスの二人にぼかすために、言葉を選んだ感じである。
「ロゼリア様、皆様、そろそろ学園へ向かいませんと」
その時、シアンがロゼリアたちを呼びに来た。
「分かりました。では、参りましょうか」
ロゼリアたちは商会を後にして、卒業式の行われるサンフレア学園へと向かった。
学園に着くと、思いがけない人物、いや猫が待ち構えていた。
「いやあ、ロゼリアくんじゃないか、お待ちしておりましたよ」
「け、ケットシー? なぜここに居りますの?」
「やだなぁ、ペイル殿下の代わりに、あなたをエスコートするためですよ。卒業式では婚約者がエスコートするものでしょう? だから、出向けない殿下の代わりとしてボクが出向いてきたわけでございます」
理由は分かるが、何が悲しくて全身毛むくじゃらのエスコートを受けなければならないのか。ロゼリアは本気で引いていた。
「それはそれとして、ペイル殿下からの言伝を伝えておくよ。『チャットフォンを用意しておいてくれ』だそうだ。賢い君なら、これで意味は分かるだろう」
妙な反応を示すロゼリアは無視して、ケットシーは伝言を伝えておく。ロゼリアはその意図をすぐに汲んだようで、黙って頷いていた。
「ケットシー、お前は相変わらず無神経だな」
「やあ、オリジン。元気そうじゃないか」
そのやり取りの最中に、ガレンが顔を見せた。さすがに顔見知りだから、反応が気さくである。
「今はそっちの名で呼ぶんじゃない」
「ああ、そうかい。そういえば人間のフリをしてるんだったな。で、無神経というのはアイリスくんについてかい?」
「それもそうだが、ロゼリアくんについてもだ。分かっているなら黙っておけ」
「相変らずつれないね、君は」
気さくでひょうひょうとしたケットシーをあしらうガレン。さすがは精霊王、とても落ち着いている。
ガレンとケットシーが言い争う中、ライがこっそりアイリスにくっ付く。どうやら卒業式でのエスコートをしたがっているようである。エスコート自体には性別の指定はないので、これはこれで問題はない。
「そうですわね。結局アイリスの婚約者が見つかっていませんものね。となれば、アイリスの眷属から誰かとなりますから、侍女としてずっと一緒のライは適任でしょう」
ペシエラにこう言われたライは、ぱあっと顔を明るくしている。これでもいたずら大好きな魔物だったのだが、どうにも変わり過ぎである。それくらいにはずっとアイリスと一緒だし、そのアイリスも信頼を置いている相棒である。
「じゃあ、時間もないですから、そろそろ移動して着替えましょう」
「そうですわね、お姉様」
というわけで、言い合うガレンとケットシーをそのままにして、ロゼリアたちは卒業式用のドレスに着替えるために移動するのだった。
卒業式の日ともなると、また新たにドレスを仕立てているロゼリアたち。年末パーティーなどでも着ていたものとは違う、新たなドレスだ。ちなみに年末のパーティーはまた違うドレスが用意してある。さすがは貴族、一体何着のドレスを持っているのだろうか。
今回は学園の卒業式なので、そこまで派手なものは選ばなかった。ただ、ロゼリアとペシエラの二人は王族の婚約者なので、少々目立つ程度の飾りつけはしてある。ドレスの色としては、髪色と瞳の色を基調として選ばれたもので、見事なまでな統一感が出ていた。ちなみにライはいつも通りのメイド服……ではなく、妖精時代の服装をアレンジしたドレスに着替えていた。
「なんだか懐かしい気がしますよ」
ちなみに色は、アイリスの着ている薄紫のドレスと対照となるような濃い青色のようである。ライの瞳の色でもある。
「ははっ、本当に皆さんお似合いですよ。あたいもこういう服着てみたかったな」
キャノルが感慨深くこんな事を言うと、どういうわけか全員から笑いが起こるのだった。キャノルはわけが分からないという感じで困惑していた。
泣いても笑っても、サンフレア学園での生活は今日が最後である。ロゼリアたちは感慨深くなりながらも、凛として最後の舞台へと向かうのだった。
卒業式参加前に、マゼンダ商会に集合するロゼリアたち。まずはペシエラが口を開いた。
「そうね、意外と早かったわ」
「学園生活も終わっちゃうのね、寂しくなっちゃう」
「私は無事に卒業できてうれしいです」
ペシエラ以外もそれぞれに気持ちを打ち明けていた。
乙女ゲーム期間中まではあれやこれやで忙しかったというのに、その後は比較的平和に過ぎていったのでちょっと退屈だった。だが、その平和が一番なのだが、気を抜いて過ごせなかったロゼリアたちである。
卒業式は午後からの開催なので、こうやって集まっている。
本当に、逆行前の無念と後悔を晴らすためにいろいろ動いてきたロゼリアとペシエラ。転生前の知識でいろいろと引っ掻き回したチェリシア。その結果、世界のとんでもない謎までが露出する結果となってしまったが、大筋では自分たちのやり直しは成功だったと思えるだろう。
「……結局は、時戻りの理由は分かりませんでしたわね。誰がどうしてこういう事をしたのか分かりませんが、私としてはとても感謝していますわ」
ペシエラが胸に手を当てながら言う。だが、その表情を見る限り、本当は分かっていそうであった。外部のチェリシアとアイリスの二人にぼかすために、言葉を選んだ感じである。
「ロゼリア様、皆様、そろそろ学園へ向かいませんと」
その時、シアンがロゼリアたちを呼びに来た。
「分かりました。では、参りましょうか」
ロゼリアたちは商会を後にして、卒業式の行われるサンフレア学園へと向かった。
学園に着くと、思いがけない人物、いや猫が待ち構えていた。
「いやあ、ロゼリアくんじゃないか、お待ちしておりましたよ」
「け、ケットシー? なぜここに居りますの?」
「やだなぁ、ペイル殿下の代わりに、あなたをエスコートするためですよ。卒業式では婚約者がエスコートするものでしょう? だから、出向けない殿下の代わりとしてボクが出向いてきたわけでございます」
理由は分かるが、何が悲しくて全身毛むくじゃらのエスコートを受けなければならないのか。ロゼリアは本気で引いていた。
「それはそれとして、ペイル殿下からの言伝を伝えておくよ。『チャットフォンを用意しておいてくれ』だそうだ。賢い君なら、これで意味は分かるだろう」
妙な反応を示すロゼリアは無視して、ケットシーは伝言を伝えておく。ロゼリアはその意図をすぐに汲んだようで、黙って頷いていた。
「ケットシー、お前は相変わらず無神経だな」
「やあ、オリジン。元気そうじゃないか」
そのやり取りの最中に、ガレンが顔を見せた。さすがに顔見知りだから、反応が気さくである。
「今はそっちの名で呼ぶんじゃない」
「ああ、そうかい。そういえば人間のフリをしてるんだったな。で、無神経というのはアイリスくんについてかい?」
「それもそうだが、ロゼリアくんについてもだ。分かっているなら黙っておけ」
「相変らずつれないね、君は」
気さくでひょうひょうとしたケットシーをあしらうガレン。さすがは精霊王、とても落ち着いている。
ガレンとケットシーが言い争う中、ライがこっそりアイリスにくっ付く。どうやら卒業式でのエスコートをしたがっているようである。エスコート自体には性別の指定はないので、これはこれで問題はない。
「そうですわね。結局アイリスの婚約者が見つかっていませんものね。となれば、アイリスの眷属から誰かとなりますから、侍女としてずっと一緒のライは適任でしょう」
ペシエラにこう言われたライは、ぱあっと顔を明るくしている。これでもいたずら大好きな魔物だったのだが、どうにも変わり過ぎである。それくらいにはずっとアイリスと一緒だし、そのアイリスも信頼を置いている相棒である。
「じゃあ、時間もないですから、そろそろ移動して着替えましょう」
「そうですわね、お姉様」
というわけで、言い合うガレンとケットシーをそのままにして、ロゼリアたちは卒業式用のドレスに着替えるために移動するのだった。
卒業式の日ともなると、また新たにドレスを仕立てているロゼリアたち。年末パーティーなどでも着ていたものとは違う、新たなドレスだ。ちなみに年末のパーティーはまた違うドレスが用意してある。さすがは貴族、一体何着のドレスを持っているのだろうか。
今回は学園の卒業式なので、そこまで派手なものは選ばなかった。ただ、ロゼリアとペシエラの二人は王族の婚約者なので、少々目立つ程度の飾りつけはしてある。ドレスの色としては、髪色と瞳の色を基調として選ばれたもので、見事なまでな統一感が出ていた。ちなみにライはいつも通りのメイド服……ではなく、妖精時代の服装をアレンジしたドレスに着替えていた。
「なんだか懐かしい気がしますよ」
ちなみに色は、アイリスの着ている薄紫のドレスと対照となるような濃い青色のようである。ライの瞳の色でもある。
「ははっ、本当に皆さんお似合いですよ。あたいもこういう服着てみたかったな」
キャノルが感慨深くこんな事を言うと、どういうわけか全員から笑いが起こるのだった。キャノルはわけが分からないという感じで困惑していた。
泣いても笑っても、サンフレア学園での生活は今日が最後である。ロゼリアたちは感慨深くなりながらも、凛として最後の舞台へと向かうのだった。
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