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最終章 乙女ゲーム後
第330話 四年次
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ペイル王子がモスグリネに戻ってからというもの、特に何か変わったという事はなかった。
上級生になるにつれて座学も実技も面倒なものが増えていく。チェリシアはついて行くのが精一杯だったが、それでも楽しく過ごせていた。
ロゼリアたちはチャットフォンを使ってたまにペイルと話をしている。モスグリネのヴィフレアとアイヴォリーのハウライトの間でも、問題なく使えているようだ。まぁ、距離的にはマゼンダ領のスノールビーと大して変わらないので使えて当然だろう。
で、そのスノールビーなのだが、温泉施設の他に温水を使った農業も始まり、早速その効果が出始めていた。一年目から野菜の収穫にこぎつけたのである。鑑定魔法の結果、毒性なども見られず、食べてみたらまたおいしかったそうだ。あとはチェリシアがこだわった温泉豆腐も売りに出されたらしい。味わった事のない食感にそれは人気だったそうな。
面倒事をいろいろ思いついてくれるチェリシアだったが、そのもたらす効果は計り知れない。前例がなさ過ぎる事が最大の問題なのだ。学業に悲鳴を上げながらも、今日もあれこれと商品開発をしている。まったく懲りない人である。
学園生活は普段通り行ってはいるが、パープリアの残党などの危険因子への警戒は続けている。
特にパープリアの残党は確実に潰さなければならない。デーモンハートの影響は恐ろしいもので、あれだけ時代を経ても薄まる事はなかった。そう考えればヴィオレスとアイリスは奇跡のような存在である。一代上のパープリア元男爵は残忍な男だった。身辺調査で調べていくうちに、それはもう驚くべきたくさんの余罪が出てきたのだから。
ちなみにそのうちいくつかに、キャノルも関わっていたようだ。そのキャノルも調査には進んで協力をしていたので、チェリシアの侍女という立場に変わらずに居座っている。あのチェリシアの振り回されているのだから、それだけで十分罰と言えるのだろう。
夏合宿は四年次も未開の森だったが、当然のごとくチェリシアが大暴れ。収納魔法も手伝って、とにかく野営訓練という常識をぶっ壊してくれた。なので、五年次以降はチェリシアの参加が禁止されてしまった。やり過ぎたのである。
四年次の学園祭はピザと写真の両方というマゼンダ商会。クラスのみんなもやって来て大盛況だったようだ。ピザもみんなが作って焼けるようになっていたので、チェリシアは写真に集中ができたのである。
武術大会はペシエラがディフェンディングチャンピオンとして登場。予選枠を免除されて決勝トーナメントからの出場である。ロゼリアも参加したが、二年連続の予選敗退。双子の兄オフライトにも劣らないシェイディアと同じ組に当たったのでは無理もない話だった。
決勝トーナメントは、シェイディアとペシエラがいきなり激突。シェイディアは腕を上げていたが、ペシエラには通じなかった。魔法でも剣でも圧倒されしまっては、それは到底敵いっこないのである。だが、未来の女王と戦えた事に満足している様子だった。
シルヴァノは準決勝でオフライトと当たり、ここで無念の敗退。決勝戦はやはりオフライトとペシエラの戦いとなった。
「やっぱり、こういう時は君と当たってしまうね」
「まったくですわ。因縁の相手と思えてしまうくらいには」
決勝の武台に立った二人は、どういうわけかこの上ない笑顔である。それを見た観客がまたとても盛り上がる。
昨年と同様に、ペシエラは魔法を織り交ぜてオフライトをけん制する。ペシエラの体格はまたよくなったとはいえ、さすがに騎士訓練に明け暮れるオフライト相手では、純粋な力勝負では負ける可能性が高いからだ。
だが、オフライトも何の対策もしてないわけではない。去年の反省から、ペシエラの魔法を早めに潰しに来たのである。ペシエラの魔法は威力が高い上に連発が可能だが、そもそもの体力を消費させてやれば魔法も使いにくくなる。なので、接近戦へと持ち込んだのである。距離を取ろうとしてもすぐに詰める。これを繰り返されては、ペシエラはどんどんとじり貧になっていってしまった。
「はあ、今年は負けてしまいましたわね」
「そうは言っても、私も限界が近かった。まったく、これが年下だというのだから恐ろしい」
ペシエラは持っていたサーベルを弾かれ、オフライトのブロードソードを突き付けられていた。両者ともに肩で大きく息をしているので、実にギリギリの戦いだった事が分かる。
四年次の武術大会は、こうしてオフライトの優勝で幕を閉じた。屋敷に戻った後は、チェリシアとアイリスによる手料理が振る舞われ、ペシエラは満足そうにしていた。
ちなみにチェリシアは今年も落第点との格闘をしていたが、キャノルに見張られながら勉強を頑張ったらしい。そのかいあって今年も無事に突破でき、来年は全員揃っての五年次である。ちなみにチェリシアの受けた試験をキャノルも解いてみたらしいが、キャノルの方が点数がよかった。なんで元暗殺者の方が勉強できるんですかね……?
チェリシアは思い切り凹んでいた。
そんなこんなで、乙女ゲーム終了後の最初の一年は実に平和に過ぎていった。本当に、これまでの騒ぎが何だったのだろうかというくらいに平和なのである。
学園卒業まではあと二年。そうなると、ロゼリアたちはそれぞれに道が分かれてしまう。運命の時が、刻一刻と近付いているのであった。
上級生になるにつれて座学も実技も面倒なものが増えていく。チェリシアはついて行くのが精一杯だったが、それでも楽しく過ごせていた。
ロゼリアたちはチャットフォンを使ってたまにペイルと話をしている。モスグリネのヴィフレアとアイヴォリーのハウライトの間でも、問題なく使えているようだ。まぁ、距離的にはマゼンダ領のスノールビーと大して変わらないので使えて当然だろう。
で、そのスノールビーなのだが、温泉施設の他に温水を使った農業も始まり、早速その効果が出始めていた。一年目から野菜の収穫にこぎつけたのである。鑑定魔法の結果、毒性なども見られず、食べてみたらまたおいしかったそうだ。あとはチェリシアがこだわった温泉豆腐も売りに出されたらしい。味わった事のない食感にそれは人気だったそうな。
面倒事をいろいろ思いついてくれるチェリシアだったが、そのもたらす効果は計り知れない。前例がなさ過ぎる事が最大の問題なのだ。学業に悲鳴を上げながらも、今日もあれこれと商品開発をしている。まったく懲りない人である。
学園生活は普段通り行ってはいるが、パープリアの残党などの危険因子への警戒は続けている。
特にパープリアの残党は確実に潰さなければならない。デーモンハートの影響は恐ろしいもので、あれだけ時代を経ても薄まる事はなかった。そう考えればヴィオレスとアイリスは奇跡のような存在である。一代上のパープリア元男爵は残忍な男だった。身辺調査で調べていくうちに、それはもう驚くべきたくさんの余罪が出てきたのだから。
ちなみにそのうちいくつかに、キャノルも関わっていたようだ。そのキャノルも調査には進んで協力をしていたので、チェリシアの侍女という立場に変わらずに居座っている。あのチェリシアの振り回されているのだから、それだけで十分罰と言えるのだろう。
夏合宿は四年次も未開の森だったが、当然のごとくチェリシアが大暴れ。収納魔法も手伝って、とにかく野営訓練という常識をぶっ壊してくれた。なので、五年次以降はチェリシアの参加が禁止されてしまった。やり過ぎたのである。
四年次の学園祭はピザと写真の両方というマゼンダ商会。クラスのみんなもやって来て大盛況だったようだ。ピザもみんなが作って焼けるようになっていたので、チェリシアは写真に集中ができたのである。
武術大会はペシエラがディフェンディングチャンピオンとして登場。予選枠を免除されて決勝トーナメントからの出場である。ロゼリアも参加したが、二年連続の予選敗退。双子の兄オフライトにも劣らないシェイディアと同じ組に当たったのでは無理もない話だった。
決勝トーナメントは、シェイディアとペシエラがいきなり激突。シェイディアは腕を上げていたが、ペシエラには通じなかった。魔法でも剣でも圧倒されしまっては、それは到底敵いっこないのである。だが、未来の女王と戦えた事に満足している様子だった。
シルヴァノは準決勝でオフライトと当たり、ここで無念の敗退。決勝戦はやはりオフライトとペシエラの戦いとなった。
「やっぱり、こういう時は君と当たってしまうね」
「まったくですわ。因縁の相手と思えてしまうくらいには」
決勝の武台に立った二人は、どういうわけかこの上ない笑顔である。それを見た観客がまたとても盛り上がる。
昨年と同様に、ペシエラは魔法を織り交ぜてオフライトをけん制する。ペシエラの体格はまたよくなったとはいえ、さすがに騎士訓練に明け暮れるオフライト相手では、純粋な力勝負では負ける可能性が高いからだ。
だが、オフライトも何の対策もしてないわけではない。去年の反省から、ペシエラの魔法を早めに潰しに来たのである。ペシエラの魔法は威力が高い上に連発が可能だが、そもそもの体力を消費させてやれば魔法も使いにくくなる。なので、接近戦へと持ち込んだのである。距離を取ろうとしてもすぐに詰める。これを繰り返されては、ペシエラはどんどんとじり貧になっていってしまった。
「はあ、今年は負けてしまいましたわね」
「そうは言っても、私も限界が近かった。まったく、これが年下だというのだから恐ろしい」
ペシエラは持っていたサーベルを弾かれ、オフライトのブロードソードを突き付けられていた。両者ともに肩で大きく息をしているので、実にギリギリの戦いだった事が分かる。
四年次の武術大会は、こうしてオフライトの優勝で幕を閉じた。屋敷に戻った後は、チェリシアとアイリスによる手料理が振る舞われ、ペシエラは満足そうにしていた。
ちなみにチェリシアは今年も落第点との格闘をしていたが、キャノルに見張られながら勉強を頑張ったらしい。そのかいあって今年も無事に突破でき、来年は全員揃っての五年次である。ちなみにチェリシアの受けた試験をキャノルも解いてみたらしいが、キャノルの方が点数がよかった。なんで元暗殺者の方が勉強できるんですかね……?
チェリシアは思い切り凹んでいた。
そんなこんなで、乙女ゲーム終了後の最初の一年は実に平和に過ぎていった。本当に、これまでの騒ぎが何だったのだろうかというくらいに平和なのである。
学園卒業まではあと二年。そうなると、ロゼリアたちはそれぞれに道が分かれてしまう。運命の時が、刻一刻と近付いているのであった。
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