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第十章 乙女ゲーム最終年
第319話 雪の村に春は来るのか
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というわけで、マゼンダ侯爵邸にて行われた説明会。当然ながらヴァミリオやカーマイルたちは驚いた。あの雪に閉ざされた村に利用価値があるとは思っていなかったからだ。夏場に視察したとはいえ、本当に何もない場所だったわけだし、その時はまだ温泉設備ができていなかった。正直信じられない話である。
チェリシアから出された提案書を一つ一つ確認していくヴァミリオたち。そこに記されていたのは何とも大規模な工事ばかりだった。
「あの村の地下にそんなものが眠っているとは……」
「この温かいお湯を利用すれば、そのような事もできるのか」
信じられないという感じで提案書を読み進めていく。その様子に、チェリシアは確かな手応えを感じていた。
そして、予想通り、翌日には王族と会う事になったのだった。シルヴァノと連絡を取っておいて正解である。
ちなみにシルヴァノから話を聞いた国王と女王は、「またコーラルの長女が面白い事をしてくれたか」と困惑した表情をしたらしい。伝えたシルヴァノ自体もあまり理解できていなかった模様。それくらいにチェリシアの発想は奇抜なのである。
チェリシアの知識と発想は異世界からもたらされたものだ。それゆえにシルヴァノのたちの世界の知識では、まったく理解ができない。
今回作った温泉にしろ、その湯を使った暖房システムにしろ、翌日のチェリシアの説明を待つしかなかった。
翌日は、午後の講義をお休みして、ロゼリア、チェリシア、ペシエラ、アイリス、カーマイルの五人は校門でマゼンダ、コーラル両家の両親と合流する。シルヴァノとペイルの王子二人とも一緒である。
もはや恒例となった王族への説明。親たちの胃はキリキリと痛むだけである。家に莫大な利益をもたらしてくれるが、同時に舞い込むこの胃痛を早くどうにかしたいものである。
というわけで、今回も人数が多いので集まりには謁見の間が使われた。集まるや否や、
「まったく、また君なのか、チェリシアよ」
国王クリアテスの愚痴から始まった。一応シルヴァノを通して、チェリシアの提案書はコピーしたもの(撮影魔法を使った複製品)が国王に渡されていた。それを見た上での愚痴である。
この愚痴が出るのも仕方がない。なにせ、地面の下に温水を張り巡らせるなど、想像がまったくできないのである。しかもそうやって冷めた水を生活用水にしてしまおうというのだ。誰がこんな事を思いつくというのだろうか。
一応、チェリシアのまとめた提案書にはその図面も描かれていた。地面に水を通す管を張り巡らせて、最終的にはそれを井戸へとまとめるというものである。管の上には土をかぶせて程よい温度の地面を作り、農業用地の場合はその上に畝を作るというものである。これにより冬のような寒い時期でも温暖な気候で育つ作物を育てられるという話らしい。何とも理解しがたいものである。だが、これまでもいくつもの意味不明な物を完成させてきたチェリシアだからこそ、もしかしたらという気持ちを抱かせるのである。
今回の村の周辺はマゼンダ領の中では氷山エリアというが、実際は雪山と火山と鉱山の山岳地帯の事である。川などあちこちが凍り付いているので氷山エリアと呼ばれるようになったのだ。
ここの改革案はこの通り。
すでに中核となる温泉宿ができている。この温泉には疲労回復やらいろいろと効果が期待できるようで、正規に鉱山で働く人員のための保養施設とする事が盛り込まれている。それ以外でも貴族や平民のための休養施設として開放予定である。また農業地域以外は夏でも比較的涼しいので、避暑地としての利用も見込まれている。
食材に関しては、幸いマゼンダ領は農業が盛んである。村でも農業をするなら食事の面は問題は無さそうである。カイスでの経験も活かせそうなので、多分なんとかなるはずだ。
治安面にしても、ちょうどいい事にオークナイトの群れが近くに越してきたので、頼めば護衛をしてくれそうである。王宮騎士を務めるラルクの配下なので、信用できると思う。
とまぁ、年末のごたごたしている時にチェリシアによって持ち込まれた事業計画のせいで、さらにてんやわんやになってきた。ああもう本当にめちゃくちゃだよ。
国王たちは頭を抱えているが、ヴァミリオたちは胃痛を抱えながらもまだ前向きな感じである。なにせ自分の領地の話だからだ。コーラル伯爵家とは商会を通じて提携状態にあるし、無理だと無下に断るのも気が引けるのである。なにせチェリシアは、娘のロゼリアの親友であり、息子のカーマイルの婚約者である。ひと晩考えた結果、チェリシアの案に乗っかる事にしたのだ。
「マゼンダ侯爵がそう言うのなら好きにするといい。利益が出たらその分税金は増やすがな」
「はっ、ありがたく存じます。必ずや国益となるように努力致します」
というわけで、氷山エリアにある村の開発がスタートする事となった。その第一歩として、村に名前が与えられる事になった。
【スノールビー】
これが村に与えられえた名前である。雪と火山からイメージされた名前である。
この村がどういった感じに変わっていくのか。チェリシアは今から妄想が止まらないようだった。
チェリシアから出された提案書を一つ一つ確認していくヴァミリオたち。そこに記されていたのは何とも大規模な工事ばかりだった。
「あの村の地下にそんなものが眠っているとは……」
「この温かいお湯を利用すれば、そのような事もできるのか」
信じられないという感じで提案書を読み進めていく。その様子に、チェリシアは確かな手応えを感じていた。
そして、予想通り、翌日には王族と会う事になったのだった。シルヴァノと連絡を取っておいて正解である。
ちなみにシルヴァノから話を聞いた国王と女王は、「またコーラルの長女が面白い事をしてくれたか」と困惑した表情をしたらしい。伝えたシルヴァノ自体もあまり理解できていなかった模様。それくらいにチェリシアの発想は奇抜なのである。
チェリシアの知識と発想は異世界からもたらされたものだ。それゆえにシルヴァノのたちの世界の知識では、まったく理解ができない。
今回作った温泉にしろ、その湯を使った暖房システムにしろ、翌日のチェリシアの説明を待つしかなかった。
翌日は、午後の講義をお休みして、ロゼリア、チェリシア、ペシエラ、アイリス、カーマイルの五人は校門でマゼンダ、コーラル両家の両親と合流する。シルヴァノとペイルの王子二人とも一緒である。
もはや恒例となった王族への説明。親たちの胃はキリキリと痛むだけである。家に莫大な利益をもたらしてくれるが、同時に舞い込むこの胃痛を早くどうにかしたいものである。
というわけで、今回も人数が多いので集まりには謁見の間が使われた。集まるや否や、
「まったく、また君なのか、チェリシアよ」
国王クリアテスの愚痴から始まった。一応シルヴァノを通して、チェリシアの提案書はコピーしたもの(撮影魔法を使った複製品)が国王に渡されていた。それを見た上での愚痴である。
この愚痴が出るのも仕方がない。なにせ、地面の下に温水を張り巡らせるなど、想像がまったくできないのである。しかもそうやって冷めた水を生活用水にしてしまおうというのだ。誰がこんな事を思いつくというのだろうか。
一応、チェリシアのまとめた提案書にはその図面も描かれていた。地面に水を通す管を張り巡らせて、最終的にはそれを井戸へとまとめるというものである。管の上には土をかぶせて程よい温度の地面を作り、農業用地の場合はその上に畝を作るというものである。これにより冬のような寒い時期でも温暖な気候で育つ作物を育てられるという話らしい。何とも理解しがたいものである。だが、これまでもいくつもの意味不明な物を完成させてきたチェリシアだからこそ、もしかしたらという気持ちを抱かせるのである。
今回の村の周辺はマゼンダ領の中では氷山エリアというが、実際は雪山と火山と鉱山の山岳地帯の事である。川などあちこちが凍り付いているので氷山エリアと呼ばれるようになったのだ。
ここの改革案はこの通り。
すでに中核となる温泉宿ができている。この温泉には疲労回復やらいろいろと効果が期待できるようで、正規に鉱山で働く人員のための保養施設とする事が盛り込まれている。それ以外でも貴族や平民のための休養施設として開放予定である。また農業地域以外は夏でも比較的涼しいので、避暑地としての利用も見込まれている。
食材に関しては、幸いマゼンダ領は農業が盛んである。村でも農業をするなら食事の面は問題は無さそうである。カイスでの経験も活かせそうなので、多分なんとかなるはずだ。
治安面にしても、ちょうどいい事にオークナイトの群れが近くに越してきたので、頼めば護衛をしてくれそうである。王宮騎士を務めるラルクの配下なので、信用できると思う。
とまぁ、年末のごたごたしている時にチェリシアによって持ち込まれた事業計画のせいで、さらにてんやわんやになってきた。ああもう本当にめちゃくちゃだよ。
国王たちは頭を抱えているが、ヴァミリオたちは胃痛を抱えながらもまだ前向きな感じである。なにせ自分の領地の話だからだ。コーラル伯爵家とは商会を通じて提携状態にあるし、無理だと無下に断るのも気が引けるのである。なにせチェリシアは、娘のロゼリアの親友であり、息子のカーマイルの婚約者である。ひと晩考えた結果、チェリシアの案に乗っかる事にしたのだ。
「マゼンダ侯爵がそう言うのなら好きにするといい。利益が出たらその分税金は増やすがな」
「はっ、ありがたく存じます。必ずや国益となるように努力致します」
というわけで、氷山エリアにある村の開発がスタートする事となった。その第一歩として、村に名前が与えられる事になった。
【スノールビー】
これが村に与えられえた名前である。雪と火山からイメージされた名前である。
この村がどういった感じに変わっていくのか。チェリシアは今から妄想が止まらないようだった。
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