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第十章 乙女ゲーム最終年
第313話 お姉様、お留守番です
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もうひと安心だと思ってたある日、アクアマリン領の方に居るアックスから急な知らせがアイリスに入る。オークの群れが近付いてきているらしいのだ。
ところが、その報告によれば、何か奇妙なようなのである。
『アックスさん、それは一体どういう事なのです?』
蒼鱗魚を挟んでアックスと会話するアイリス。
『オークたちは人を襲う事もなく、何やら尋ねて回っているようなのです』
どうやら何かを探しているらしい。
『分かりました。こちらとしては王族に報告の上、何かしら対処します。オークならばラルクさんが何か思い当たる事があるかも知れませんから』
『でしたら、こちらはなるべく分かりやすい場所で足止めをしておきます。できる限り早めの対処をお願いします』
『分かりました』
というわけで、アイリスはチェリシアとペシエラに声を掛けて城へと急いだ。その後でもう一度アックスから連絡があり、最終的にアクアマリン領のサファイア湖の辺りで、オークたちを留めておく方針であると報告があった。サファイア湖なら何度も行った場所だ。実に分かりやすい場所である。
その報告を受けたチェリシアたちは、国王たちにアークの群れの話をした。
「ふむ、オークの群れとな」
国王が顎を触りながら、不可思議な話を聞いているような反応をしている。
「はい。意外な事に人にまったく危害を加えていないそうでして、アックスの誘導の元に、アクアマリン子爵領のサファイア湖の辺りに移動している最中でございます」
「人を襲わぬオークの群れか……。それなら、私が率いていた群れかも知れませんな」
アックスと直接話をしたアイリスの報告に、ラルクはやはり思い当たる節があるようだった。
「そうか、だったらペシエラとアイリス、二人でラルクを連れて行ってくれぬか?」
国王からの命令は予想外だった。
「あれ、私は?」
一人外れたチェリシアが困惑気味にしている。すると、
「お前さんは勉強がぎりぎりのレベルと聞いておる。よって、特別に休みにするわけにはいかんな。学生である以上勉強が本分だ」
国王に学園の成績が知れ渡っていたようである。こう言われてしまえば、チェリシアは盛大に落ち込むしかなかった。
「仕方ありませんわ、お姉様の学業の成績は本当に悪いですもの。王家に認められた伯爵家なら、上位三分の一に居ませんとね」
ペシエラにまでダメ出しをされて、チェリシアはショックのあまりしょげ返っていた。
「うう、承知、致しましたぁ……」
王族の前でへたり込むチェリシア。少しは場所を弁えようよ。
「学園には私の方から伝えておくから、すぐにでも向かってくれ」
「ええ、そうさせて頂きますわ、陛下。何かありましたら、チャットフォンを使って殿下にお伝え致しますわ」
というわけで、チェリシアの事はストロアとキャノルに任せて、ペシエラはアイリスとライ、それにラルクを連れて早速エアリアルボードで城を出る。
目指すはアクアマリン領サファイア湖。夕方の王都から、もの凄い勢いで飛び出していくペシエラたち。
「食事はまぁどうにでもなるでしょう。お姉様と違って収納魔法が使えませんし、用意している暇もありませんでしたから」
「あ、それだったら」
食事の心配をするペシエラだったが、ライが何かを言いたげだ。
「何です、ライ」
「えへへ」
ライが笑っているので、ペシエラがライの方を見る。すると驚いた事に、ライの横に妙な闇の渦が出ているではないか。
「収納魔法だったら、私が使えますよ。あれって闇属性の魔法ですから」
なんというご都合主義。ライの横に出ている闇の渦は収納魔法だったのだ。ライは闇の渦に手を突っ込んで中からいろいろと取り出していた。
「この空間の中は面白いですよ。生きたものは放り込めませんけど、中に入れた物が腐りませんからね。さすがにチェリシア様ほどの容量はないですけれど、夜営に必要そうな道具とか、チェリシア様の作られた豆腐なんかも入ってますよ」
非常に楽しそうに笑っているライであるが、それ以外の三人はドン引きしていた。
まぁなんにしても、少々心配事は無くなったので、ペシエラはスピードを上げて移動していく。複雑な地形を馬車で一週間かけて移動する道のりを、王都を夕方に出た事もあって二泊しただけで目的地に着いた。事前に蒼鱗魚を通じて連絡を入れておいたので、目的地に着いた時にはアックスが出迎えてくれていた。
「お待ちしておりました」
「出迎えご苦労だな、アックス」
「おお、ラルクも居ましたか」
「相手がオークなら、私が出て行かずしてどうするというのだ」
「はははっ、確かにそうですな」
すごく久しぶりに会ったというのに、二人は気さくに会話を交わしていた。魔物にもこういうところがあるのだろうか。それとも、主人となったアイリスの影響だろうか。どちらにしても、こういう平和な空気というのはいいものである。
「それはいいとして、そのオークたちは今どこに居ますの?」
用件を早く終わらせたいペシエラは、早速アックスに尋ねる。
「そうでしたな。こっちの森の中でキャンプを張っております。ご案内しますので、ついて来て下さい」
こうして、アックスの案内によって、ついにオークの群れたちと顔合わせをする事になった。人を襲わないオークたちとは、一体どんなオークなのだろうか。
ところが、その報告によれば、何か奇妙なようなのである。
『アックスさん、それは一体どういう事なのです?』
蒼鱗魚を挟んでアックスと会話するアイリス。
『オークたちは人を襲う事もなく、何やら尋ねて回っているようなのです』
どうやら何かを探しているらしい。
『分かりました。こちらとしては王族に報告の上、何かしら対処します。オークならばラルクさんが何か思い当たる事があるかも知れませんから』
『でしたら、こちらはなるべく分かりやすい場所で足止めをしておきます。できる限り早めの対処をお願いします』
『分かりました』
というわけで、アイリスはチェリシアとペシエラに声を掛けて城へと急いだ。その後でもう一度アックスから連絡があり、最終的にアクアマリン領のサファイア湖の辺りで、オークたちを留めておく方針であると報告があった。サファイア湖なら何度も行った場所だ。実に分かりやすい場所である。
その報告を受けたチェリシアたちは、国王たちにアークの群れの話をした。
「ふむ、オークの群れとな」
国王が顎を触りながら、不可思議な話を聞いているような反応をしている。
「はい。意外な事に人にまったく危害を加えていないそうでして、アックスの誘導の元に、アクアマリン子爵領のサファイア湖の辺りに移動している最中でございます」
「人を襲わぬオークの群れか……。それなら、私が率いていた群れかも知れませんな」
アックスと直接話をしたアイリスの報告に、ラルクはやはり思い当たる節があるようだった。
「そうか、だったらペシエラとアイリス、二人でラルクを連れて行ってくれぬか?」
国王からの命令は予想外だった。
「あれ、私は?」
一人外れたチェリシアが困惑気味にしている。すると、
「お前さんは勉強がぎりぎりのレベルと聞いておる。よって、特別に休みにするわけにはいかんな。学生である以上勉強が本分だ」
国王に学園の成績が知れ渡っていたようである。こう言われてしまえば、チェリシアは盛大に落ち込むしかなかった。
「仕方ありませんわ、お姉様の学業の成績は本当に悪いですもの。王家に認められた伯爵家なら、上位三分の一に居ませんとね」
ペシエラにまでダメ出しをされて、チェリシアはショックのあまりしょげ返っていた。
「うう、承知、致しましたぁ……」
王族の前でへたり込むチェリシア。少しは場所を弁えようよ。
「学園には私の方から伝えておくから、すぐにでも向かってくれ」
「ええ、そうさせて頂きますわ、陛下。何かありましたら、チャットフォンを使って殿下にお伝え致しますわ」
というわけで、チェリシアの事はストロアとキャノルに任せて、ペシエラはアイリスとライ、それにラルクを連れて早速エアリアルボードで城を出る。
目指すはアクアマリン領サファイア湖。夕方の王都から、もの凄い勢いで飛び出していくペシエラたち。
「食事はまぁどうにでもなるでしょう。お姉様と違って収納魔法が使えませんし、用意している暇もありませんでしたから」
「あ、それだったら」
食事の心配をするペシエラだったが、ライが何かを言いたげだ。
「何です、ライ」
「えへへ」
ライが笑っているので、ペシエラがライの方を見る。すると驚いた事に、ライの横に妙な闇の渦が出ているではないか。
「収納魔法だったら、私が使えますよ。あれって闇属性の魔法ですから」
なんというご都合主義。ライの横に出ている闇の渦は収納魔法だったのだ。ライは闇の渦に手を突っ込んで中からいろいろと取り出していた。
「この空間の中は面白いですよ。生きたものは放り込めませんけど、中に入れた物が腐りませんからね。さすがにチェリシア様ほどの容量はないですけれど、夜営に必要そうな道具とか、チェリシア様の作られた豆腐なんかも入ってますよ」
非常に楽しそうに笑っているライであるが、それ以外の三人はドン引きしていた。
まぁなんにしても、少々心配事は無くなったので、ペシエラはスピードを上げて移動していく。複雑な地形を馬車で一週間かけて移動する道のりを、王都を夕方に出た事もあって二泊しただけで目的地に着いた。事前に蒼鱗魚を通じて連絡を入れておいたので、目的地に着いた時にはアックスが出迎えてくれていた。
「お待ちしておりました」
「出迎えご苦労だな、アックス」
「おお、ラルクも居ましたか」
「相手がオークなら、私が出て行かずしてどうするというのだ」
「はははっ、確かにそうですな」
すごく久しぶりに会ったというのに、二人は気さくに会話を交わしていた。魔物にもこういうところがあるのだろうか。それとも、主人となったアイリスの影響だろうか。どちらにしても、こういう平和な空気というのはいいものである。
「それはいいとして、そのオークたちは今どこに居ますの?」
用件を早く終わらせたいペシエラは、早速アックスに尋ねる。
「そうでしたな。こっちの森の中でキャンプを張っております。ご案内しますので、ついて来て下さい」
こうして、アックスの案内によって、ついにオークの群れたちと顔合わせをする事になった。人を襲わないオークたちとは、一体どんなオークなのだろうか。
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