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第十章 乙女ゲーム最終年
第302話 怒涛の二日目
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翌日は対応人員を増やしての展開となった。
「ごめんね、試合応援に行けなくて」
「仕方ありませんわ。こっちも重要な仕事ですもの」
チェリシアは写真撮影のために、今日もマゼンダ商会のブースに縛り付けられている。ロゼリアとペシエラは、残りの予選の試合が残っているので、挨拶もほどほどに訓練場へと向かった。
マゼンダ商会の写真の事はかなり噂になっており、この日も釣書を求めて多くの貴族が詰めかけた。午前中だけで四百枚と、昨日の午後並みにハイペースである。一枚あたり三十秒の撮影という、ほぼ流れ作業である。それは疲れるはずだ。
「ぜえぜえ、これはきついわ……」
「チェリシア様、午後は少し抑えられますか?」
息が上がっているチェリシアを気遣うキャノル。
「ええ、そうね。悪いとは思うけれど、これは私の体力が持たないわ」
昨日は午前中が四時間で二百枚、午後が五時間半で六百枚だったので、休みなしという結果だっだ。なので、午後は一枚あたり一分掛けて、二百枚になったところで終了という事になった。
「それにしても、チェリシア様。カメラは使われないので?」
「あれは陛下たちとの相談で、一般には広めない事になっちゃったからね。今回も使えないわ。学園でも武術大会とかのイベントでしか使わない事になってるもの」
そう、カメラやビデオカメラは魔法が複雑すぎて、チェリシアとペシエラにしか作れなかったのだ。だからこそ改ざんも量産化も不可能なので、公的記録の保存用だけにと用途が限定されてしまった。実に無念である。
「まあ、それなら仕方ありませんね。あたいらには似たようなものを使わせているのに」
「あははは……」
そう、アイリスとキャノル、それとライの三人には、撮影魔法を施した髪飾りを使わせている。これは対パープリアの魔法だったのだが、今も完全に習慣化してしまっていて使われ続けているのだ。
「まあ、備えあれば憂いなしってね?」
チェリシアは笑ってごまかした。
「じゃ、午後も頑張りますか」
チェリシアはひと伸びすると、肩を回しながら午後の撮影に挑んだ。
武術大会の会場では、ペシエラが余裕の決勝トーナメント進出を決めていた。ワンピースにハイヒールブーツで余裕の勝利である。経験値が違いすぎる。
ロゼリアも残り三戦のうち二戦はどちらも男子学生だった。一人は四年次生、もう一人は一年次生である。
対四年次生は、惜しいところまで善戦したのだが、経験の差が物を言い、惜しくも敗れてしまった。一年次生の方は三戦目だったので、こちらも経験の差で勝利を収めたのだった。
その結果、ロゼリアの組は二勝一敗で三人が並んでいる状態だ。今年の参加者は全部で八十人。五人一組が十六組で、各一位が決勝トーナメントへと進める。
ロゼリアは最終戦へと臨む。そこで待っていたのはグレイアだった。
「あら、あなたも参加してましたのね。シェイディア様と同じ組とはついてませんでしたね」
「あはは、まったくです。さすがにシェイディア様にはまったく歯が立ちませんでした」
「鍛冶屋の娘さんなのにこういう事に参加して、お父様から何か言われませんでした?」
「うーん、むしろ頑張ってこいと言われましたね。少しは剣の気持ちを理解できるようになれとか」
「ふふっ、職人さんらしい言い振りね」
チャキリとロゼリアが剣を構える。
「ええ、まったくです。でも、侯爵令嬢様お相手だからって手加減はできませんからね」
「望むところよ」
ロゼリアとグレイアが向かい合う。
「始めっ!」
シェイディアの時とは違って、ロゼリアはすぐさま攻撃を仕掛ける。グレイアはそれを見極め、後方への回避行動から反撃を繰り出す。
しかし、ロゼリアだって成長している。攻撃直後の硬直を無くすどころか、初撃の勢いをそのまま活かして回し蹴りを繰り出した。さすがにこれは回避できずに、グレイアの腹部に蹴りが炸裂した。
「かはっ、あの体勢から蹴りだなんて、思い切ったものですね」
「武術大会ですからね。剣だけに警戒しているようでは甘すぎです」
「確かにそうですね」
蹴りの入ったお腹をさすりながら、グレイアは痛みで顔を歪めている。
「鍛冶で鍛えてなければ、今の蹴りでアウトでしたね」
グレイアは再び剣を構える。
「無理はしないでちょうだい。リードさんの跡を継ぐのでしょう?」
「まぁお父さんの跡は継ぐのは確かだけど、……今は関係ない話かな」
今の蹴りでだいぶダメージは入ったはずなので、諦めさせようとしたらグレイアはそうはならなかった。ロゼリアは仕方ないわねと応戦の構えを見せる。
グレイアが先に動く。だが、やはり蹴りのダメージが大きいのか動きが悪い。
グレイアの攻撃を軽くいなすロゼリア。そして、すかさず剣を振り抜いた。
「かはっ!」
さすがに腹を蹴られたダメージが残っていては、刃を潰した模擬剣による斬りとはいえダメージが大きい。グレイアは耐え切れずにその場に倒れ込んだ。
「勝者、ロゼリア選手!」
ロゼリアが勝ったと宣言された時点で、会場は一気に沸き立った。
これらの結果を受け、ロゼリアの組は三勝一敗で三人が並ぶ状態となった。お互いがお互いに負けたとあって、三人が横一線という状況である。この組の決勝トーナメント進出は、くじ引きに託される事になった。
はてさて、決勝トーナメントにコマを進めるのは誰なのだろうか。
「ごめんね、試合応援に行けなくて」
「仕方ありませんわ。こっちも重要な仕事ですもの」
チェリシアは写真撮影のために、今日もマゼンダ商会のブースに縛り付けられている。ロゼリアとペシエラは、残りの予選の試合が残っているので、挨拶もほどほどに訓練場へと向かった。
マゼンダ商会の写真の事はかなり噂になっており、この日も釣書を求めて多くの貴族が詰めかけた。午前中だけで四百枚と、昨日の午後並みにハイペースである。一枚あたり三十秒の撮影という、ほぼ流れ作業である。それは疲れるはずだ。
「ぜえぜえ、これはきついわ……」
「チェリシア様、午後は少し抑えられますか?」
息が上がっているチェリシアを気遣うキャノル。
「ええ、そうね。悪いとは思うけれど、これは私の体力が持たないわ」
昨日は午前中が四時間で二百枚、午後が五時間半で六百枚だったので、休みなしという結果だっだ。なので、午後は一枚あたり一分掛けて、二百枚になったところで終了という事になった。
「それにしても、チェリシア様。カメラは使われないので?」
「あれは陛下たちとの相談で、一般には広めない事になっちゃったからね。今回も使えないわ。学園でも武術大会とかのイベントでしか使わない事になってるもの」
そう、カメラやビデオカメラは魔法が複雑すぎて、チェリシアとペシエラにしか作れなかったのだ。だからこそ改ざんも量産化も不可能なので、公的記録の保存用だけにと用途が限定されてしまった。実に無念である。
「まあ、それなら仕方ありませんね。あたいらには似たようなものを使わせているのに」
「あははは……」
そう、アイリスとキャノル、それとライの三人には、撮影魔法を施した髪飾りを使わせている。これは対パープリアの魔法だったのだが、今も完全に習慣化してしまっていて使われ続けているのだ。
「まあ、備えあれば憂いなしってね?」
チェリシアは笑ってごまかした。
「じゃ、午後も頑張りますか」
チェリシアはひと伸びすると、肩を回しながら午後の撮影に挑んだ。
武術大会の会場では、ペシエラが余裕の決勝トーナメント進出を決めていた。ワンピースにハイヒールブーツで余裕の勝利である。経験値が違いすぎる。
ロゼリアも残り三戦のうち二戦はどちらも男子学生だった。一人は四年次生、もう一人は一年次生である。
対四年次生は、惜しいところまで善戦したのだが、経験の差が物を言い、惜しくも敗れてしまった。一年次生の方は三戦目だったので、こちらも経験の差で勝利を収めたのだった。
その結果、ロゼリアの組は二勝一敗で三人が並んでいる状態だ。今年の参加者は全部で八十人。五人一組が十六組で、各一位が決勝トーナメントへと進める。
ロゼリアは最終戦へと臨む。そこで待っていたのはグレイアだった。
「あら、あなたも参加してましたのね。シェイディア様と同じ組とはついてませんでしたね」
「あはは、まったくです。さすがにシェイディア様にはまったく歯が立ちませんでした」
「鍛冶屋の娘さんなのにこういう事に参加して、お父様から何か言われませんでした?」
「うーん、むしろ頑張ってこいと言われましたね。少しは剣の気持ちを理解できるようになれとか」
「ふふっ、職人さんらしい言い振りね」
チャキリとロゼリアが剣を構える。
「ええ、まったくです。でも、侯爵令嬢様お相手だからって手加減はできませんからね」
「望むところよ」
ロゼリアとグレイアが向かい合う。
「始めっ!」
シェイディアの時とは違って、ロゼリアはすぐさま攻撃を仕掛ける。グレイアはそれを見極め、後方への回避行動から反撃を繰り出す。
しかし、ロゼリアだって成長している。攻撃直後の硬直を無くすどころか、初撃の勢いをそのまま活かして回し蹴りを繰り出した。さすがにこれは回避できずに、グレイアの腹部に蹴りが炸裂した。
「かはっ、あの体勢から蹴りだなんて、思い切ったものですね」
「武術大会ですからね。剣だけに警戒しているようでは甘すぎです」
「確かにそうですね」
蹴りの入ったお腹をさすりながら、グレイアは痛みで顔を歪めている。
「鍛冶で鍛えてなければ、今の蹴りでアウトでしたね」
グレイアは再び剣を構える。
「無理はしないでちょうだい。リードさんの跡を継ぐのでしょう?」
「まぁお父さんの跡は継ぐのは確かだけど、……今は関係ない話かな」
今の蹴りでだいぶダメージは入ったはずなので、諦めさせようとしたらグレイアはそうはならなかった。ロゼリアは仕方ないわねと応戦の構えを見せる。
グレイアが先に動く。だが、やはり蹴りのダメージが大きいのか動きが悪い。
グレイアの攻撃を軽くいなすロゼリア。そして、すかさず剣を振り抜いた。
「かはっ!」
さすがに腹を蹴られたダメージが残っていては、刃を潰した模擬剣による斬りとはいえダメージが大きい。グレイアは耐え切れずにその場に倒れ込んだ。
「勝者、ロゼリア選手!」
ロゼリアが勝ったと宣言された時点で、会場は一気に沸き立った。
これらの結果を受け、ロゼリアの組は三勝一敗で三人が並ぶ状態となった。お互いがお互いに負けたとあって、三人が横一線という状況である。この組の決勝トーナメント進出は、くじ引きに託される事になった。
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