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第十章 乙女ゲーム最終年
第280話 アイリスの環境
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これからはチェリシアはロゼリア、ペシエラの二人と別行動が増える。だが、それは学園の講義が終わった後に限る話なので、学園に通う間は講義の時間帯は大体ここにアイリスも加えて四人で行動している。
魔法科の講義は、座学と実技が半々程度で、座学では魔法の歴史の他に妖精や精霊の事も教えられている。実技では危険だからと、ペシエラは見本を見せる程度の参加となっており、少々不満気味のようだった。
食事の時間では、そこにシルヴァノとペイルの二人の王子に加えて、プラティナ、ブラッサ、ロイエール、グレイアも加わって、話をしながら食事をしている。
度々引き起こされたパープリアによる事件が解決してからというもの、本当に平和な日々が続いている。だが、その残党はまだ居るようで、アイヴォリーとモスグリネの両国では、引き続き調査が行われている。そういう意味ではまだ平穏とは言いづらい状況だ。
だが、王都内からはほぼパープリアの勢力は排除できた模様である。パープリア元男爵の子であるヴィオレスとアイリスに、父親のような反逆心は見受けられず、二人は引き取られたそれぞれの家で普通に暮らしている。
アイリスは今勢いのあるコーラル伯爵家に正式に養女として迎えられており、彼女を狙う貴族も居るらしい。血のつながりはないが、コーラル家を継ぐ令嬢となったアイリスの元には、さっそく釣書がたくさん届いているようである。なにせコーラル伯爵領は土地が広大な上に農業、漁業、観光業が盛んで税収も多い。以前は不毛の土地で墓場とまで言われていたのだから、とんでもない変化である。
「うん、全員ダメですわね」
釣書を見たペシエラが、ぽいっと釣書を閲覧済みの山に置く。
「どの殿方も、アイリスお姉様には釣り合いませんわ。ただでさえ我が家の領地は広大で、産業も多岐に渡っていますもの。体力も学力も相応に求められて当然ですわ」
「そうだな。すなまいな、女王教育で忙しいのに手伝わせてしまって」
娘であるペシエラに謝る父親プラウス。
「構いませんわ。女王教育はまだ週に二度ですし、手の空いている間は家を手伝うのも立派な勉強ですわ」
さすがに逆行前に女王を務めたペシエラである。非常にまじめすぎる。まぁ、問題を起こしたアイリスを保護する上で責任を取ると言ったペシエラなので、最後まで面倒を見る気満々というわけなのだ。
「正式に我が家の養女となったのですから、後継ぎとして経営を教えませんとね。アイリスお姉様はお姉様ほどではありませんが、そういうのは苦手な気がしますけれど手加減は致しませんわ」
釣書を整理しながら言うペシエラに、プラウスは少し恐怖を覚えた。女王経験者というのは逆行の話を聞いているので知ってはいるが、年相応の雰囲気ではないので、そのギャップに引く感じである。
「お父様?」
「いや、すまない。やはりそういうところを見ると、逆行の話は本当だったんだなと怖くなってね」
「仕方ありませんわ、お父様。時を遡るなんて普通信じられませんし、今の私はまだ十一歳ですもの」
プラウスが本音を漏らすと、ペシエラは怒るどころか理解を示していた。うん、やっぱり相当な大人である。
アイリスは王妃付きの侍女にする予定だとはいえ、今回の養女の件で権力の集中を嫌う貴族たちから反対が出る可能性がある。それに、謀反を企てたパープリアの娘という立場が付いて回っている。そういう事もあってアイリスは大変かも知れないが、どう転んでもいいようにできる限りの教育を施す予定である。今のアイリスなら十分ついてこれるだろうし、女王の補佐をする女官という手だってあるのだ。どちらにしても、過去には実例もあるので、反対されようとも押し通すつもりである。アイリスなら中立でいられる自信はある。
学園卒業後も実際に女王に就くまでには猶予がある。逆行前の時間軸だと、シルヴァノたちが王位に就いたのは二十五歳の時だ。今回も同じようになるとしたなら、見極めの期間としては十分だろう。違いがあるとしたらペシエラが三歳若いくらいだ。
何にしても、これからもいろいろと障害は待ち受けているだろう。だが、ペシエラは国の未来のために最善を尽くすつもりである。
「お父様。今回は私、間違えませんから」
「あ、うん? そうだな」
ペシエラが語り掛けた言葉に、訳が分からずに返事をするプラウス。
ペシエラは固い決意を秘めて、父親の手伝いの作業に戻った。
魔法科の講義は、座学と実技が半々程度で、座学では魔法の歴史の他に妖精や精霊の事も教えられている。実技では危険だからと、ペシエラは見本を見せる程度の参加となっており、少々不満気味のようだった。
食事の時間では、そこにシルヴァノとペイルの二人の王子に加えて、プラティナ、ブラッサ、ロイエール、グレイアも加わって、話をしながら食事をしている。
度々引き起こされたパープリアによる事件が解決してからというもの、本当に平和な日々が続いている。だが、その残党はまだ居るようで、アイヴォリーとモスグリネの両国では、引き続き調査が行われている。そういう意味ではまだ平穏とは言いづらい状況だ。
だが、王都内からはほぼパープリアの勢力は排除できた模様である。パープリア元男爵の子であるヴィオレスとアイリスに、父親のような反逆心は見受けられず、二人は引き取られたそれぞれの家で普通に暮らしている。
アイリスは今勢いのあるコーラル伯爵家に正式に養女として迎えられており、彼女を狙う貴族も居るらしい。血のつながりはないが、コーラル家を継ぐ令嬢となったアイリスの元には、さっそく釣書がたくさん届いているようである。なにせコーラル伯爵領は土地が広大な上に農業、漁業、観光業が盛んで税収も多い。以前は不毛の土地で墓場とまで言われていたのだから、とんでもない変化である。
「うん、全員ダメですわね」
釣書を見たペシエラが、ぽいっと釣書を閲覧済みの山に置く。
「どの殿方も、アイリスお姉様には釣り合いませんわ。ただでさえ我が家の領地は広大で、産業も多岐に渡っていますもの。体力も学力も相応に求められて当然ですわ」
「そうだな。すなまいな、女王教育で忙しいのに手伝わせてしまって」
娘であるペシエラに謝る父親プラウス。
「構いませんわ。女王教育はまだ週に二度ですし、手の空いている間は家を手伝うのも立派な勉強ですわ」
さすがに逆行前に女王を務めたペシエラである。非常にまじめすぎる。まぁ、問題を起こしたアイリスを保護する上で責任を取ると言ったペシエラなので、最後まで面倒を見る気満々というわけなのだ。
「正式に我が家の養女となったのですから、後継ぎとして経営を教えませんとね。アイリスお姉様はお姉様ほどではありませんが、そういうのは苦手な気がしますけれど手加減は致しませんわ」
釣書を整理しながら言うペシエラに、プラウスは少し恐怖を覚えた。女王経験者というのは逆行の話を聞いているので知ってはいるが、年相応の雰囲気ではないので、そのギャップに引く感じである。
「お父様?」
「いや、すまない。やはりそういうところを見ると、逆行の話は本当だったんだなと怖くなってね」
「仕方ありませんわ、お父様。時を遡るなんて普通信じられませんし、今の私はまだ十一歳ですもの」
プラウスが本音を漏らすと、ペシエラは怒るどころか理解を示していた。うん、やっぱり相当な大人である。
アイリスは王妃付きの侍女にする予定だとはいえ、今回の養女の件で権力の集中を嫌う貴族たちから反対が出る可能性がある。それに、謀反を企てたパープリアの娘という立場が付いて回っている。そういう事もあってアイリスは大変かも知れないが、どう転んでもいいようにできる限りの教育を施す予定である。今のアイリスなら十分ついてこれるだろうし、女王の補佐をする女官という手だってあるのだ。どちらにしても、過去には実例もあるので、反対されようとも押し通すつもりである。アイリスなら中立でいられる自信はある。
学園卒業後も実際に女王に就くまでには猶予がある。逆行前の時間軸だと、シルヴァノたちが王位に就いたのは二十五歳の時だ。今回も同じようになるとしたなら、見極めの期間としては十分だろう。違いがあるとしたらペシエラが三歳若いくらいだ。
何にしても、これからもいろいろと障害は待ち受けているだろう。だが、ペシエラは国の未来のために最善を尽くすつもりである。
「お父様。今回は私、間違えませんから」
「あ、うん? そうだな」
ペシエラが語り掛けた言葉に、訳が分からずに返事をするプラウス。
ペシエラは固い決意を秘めて、父親の手伝いの作業に戻った。
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