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第九章 大いなる秘密
第274話 ヴィオレスと再会
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ケットシーの乱入でドール商会との交渉がうやむやに終わってしまったロゼリアたちは、パーティー会場へと再び顔を出す。オーロたちによればルゼも来ているらしく、警備にあたっているラルクやトルフたちと会おうとしているらしい。というわけで、トルフが居るパーティー会場へとやって来たというわけだ。食事もたくさんあるし、居る可能性は高い。
会場を見回すと、ペイルのすぐ近くにトルフが見つかった。上級の魔物であるライトニングウルフがこんな人の居る場所に堂々と居座っているなど、普通ならとても考えられない状況である。ペイルにトルフの事を聞いている貴族の姿も見られるので、それだけトルフは信用されているという事になるのだろう。
「おう、ロゼリアたちか。どうしたんだ、もう寂しくなったのか?」
何か言っている。
「いえ、ルゼが来ていないかと思いましてね」
ロゼリアは華麗にスルーして本題を告げる。
「ああ、ルゼならそっちだ。オフライトたちと話をしているぞ」
ペイルが親指で指し示した先には、確かにルゼが居た。
「ありがとうございます、ペイル殿下。今は商会の方の立場でここに戻ってきていますので、また後ほど」
「何だ、それは残念だな。俺もそっちに行きたいが、トルフの事をしつこく聞かれるのでな、離れられんのだ」
ペイルが視線を向けた先には、貴族たちが物珍しそうに群がっていた。これはしばらく逃げられそうにない状況である。
ロゼリアはペイルに頭を下げると、オフライトたちの居る方向へと歩き出した。
「兄様、こちらにいらしたのですね」
最初に話し掛けたのはアイリスだった。昨年の事件以降、それぞれ違う家に引き取られたためになかなか会う事のできない兄妹。こういう場でもないと顔を合わせる事がないのだ。
「アイリスか。今日は侍女服ではないんだな」
「ええ。訳がございまして、ペシエラ様たちと同じようにドレスを着ていますの」
そう、先日合わせたドレスを着ているアイリス。ただ、変装用の眼鏡は掛けたままだ。
「ほぉ、訳ってなんだ?」
ヴィオレスは話題に食いついた。
「あら、アイリスは私たちと正式な家族になりますのよ?」
「ぺ、ペシエラ様!」
後ろからひょっこりペシエラが顔を出した。
「正気なのか? あの人でなしと一緒に悪だくみをした女だぞ?」
「関係ありませんわ。この一年半の働きを見れば、十分償えましたもの。ねえ、ライ、ルゼ」
どこか疑うような態度のヴィオレスだったが、ペシエラはまったく揺るがない。
「はい、主人様は立派な方です」
ライもこのように答えると、隣で話をしていたルゼも黙って頷いている。
「神獣使いという特殊な存在だけど、ずっと見てきた私たちですもの。アイリスは優しい子ですし、大事な家族ですよ」
チェリシアも、そしてロゼリアもアイリスの事を身内のようなものだと言っている。こうともなると、ヴィオレスもさすがに分が悪かった。
「……悪かったな。妹がここまで慕われる人物になるとは、正直言うと私は嬉しい限りだよ」
腕を組みながらうなずくその様子は、わざとらしく見える。
「ふふっ、兄様は素直じゃないですね」
アイリスはくすくすと笑っていた。
「そういえば、ヴィオレス様。ルゼと何を話されていたので?」
ペシエラが話題を切り替える。
「ああ、オフライトやシェイディアと一緒に居たら、オフライトが見つけて声を掛けたんだ。どうやら剣を打ってもらいたいらしくてね。だから私も加わっていたんだよ」
「騎士団支給の剣では物足りないと?」
ヴィオレスの話に、ペシエラは更に食らいつく。
「そういうわけじゃないんだが、どうも支給された剣が自分に合わないみたいなんだよ」
その言葉に、ペシエラはとても共感する。
「分かりますわ。手に馴染まなかったり、うまく扱えなかったり、落ち着きませんものね」
気が付いたらペシエラも交えての武器談議に発展していた。よく見たらアイリスに加えてキャノルまで。この戦闘狂たちは武器の事には目がないようだった。
「これは……長くなりそうね」
「うん、そうみたいだね」
ロゼリアとチェリシアは呆れて見守る事しかできずにいたのだった。
会場を見回すと、ペイルのすぐ近くにトルフが見つかった。上級の魔物であるライトニングウルフがこんな人の居る場所に堂々と居座っているなど、普通ならとても考えられない状況である。ペイルにトルフの事を聞いている貴族の姿も見られるので、それだけトルフは信用されているという事になるのだろう。
「おう、ロゼリアたちか。どうしたんだ、もう寂しくなったのか?」
何か言っている。
「いえ、ルゼが来ていないかと思いましてね」
ロゼリアは華麗にスルーして本題を告げる。
「ああ、ルゼならそっちだ。オフライトたちと話をしているぞ」
ペイルが親指で指し示した先には、確かにルゼが居た。
「ありがとうございます、ペイル殿下。今は商会の方の立場でここに戻ってきていますので、また後ほど」
「何だ、それは残念だな。俺もそっちに行きたいが、トルフの事をしつこく聞かれるのでな、離れられんのだ」
ペイルが視線を向けた先には、貴族たちが物珍しそうに群がっていた。これはしばらく逃げられそうにない状況である。
ロゼリアはペイルに頭を下げると、オフライトたちの居る方向へと歩き出した。
「兄様、こちらにいらしたのですね」
最初に話し掛けたのはアイリスだった。昨年の事件以降、それぞれ違う家に引き取られたためになかなか会う事のできない兄妹。こういう場でもないと顔を合わせる事がないのだ。
「アイリスか。今日は侍女服ではないんだな」
「ええ。訳がございまして、ペシエラ様たちと同じようにドレスを着ていますの」
そう、先日合わせたドレスを着ているアイリス。ただ、変装用の眼鏡は掛けたままだ。
「ほぉ、訳ってなんだ?」
ヴィオレスは話題に食いついた。
「あら、アイリスは私たちと正式な家族になりますのよ?」
「ぺ、ペシエラ様!」
後ろからひょっこりペシエラが顔を出した。
「正気なのか? あの人でなしと一緒に悪だくみをした女だぞ?」
「関係ありませんわ。この一年半の働きを見れば、十分償えましたもの。ねえ、ライ、ルゼ」
どこか疑うような態度のヴィオレスだったが、ペシエラはまったく揺るがない。
「はい、主人様は立派な方です」
ライもこのように答えると、隣で話をしていたルゼも黙って頷いている。
「神獣使いという特殊な存在だけど、ずっと見てきた私たちですもの。アイリスは優しい子ですし、大事な家族ですよ」
チェリシアも、そしてロゼリアもアイリスの事を身内のようなものだと言っている。こうともなると、ヴィオレスもさすがに分が悪かった。
「……悪かったな。妹がここまで慕われる人物になるとは、正直言うと私は嬉しい限りだよ」
腕を組みながらうなずくその様子は、わざとらしく見える。
「ふふっ、兄様は素直じゃないですね」
アイリスはくすくすと笑っていた。
「そういえば、ヴィオレス様。ルゼと何を話されていたので?」
ペシエラが話題を切り替える。
「ああ、オフライトやシェイディアと一緒に居たら、オフライトが見つけて声を掛けたんだ。どうやら剣を打ってもらいたいらしくてね。だから私も加わっていたんだよ」
「騎士団支給の剣では物足りないと?」
ヴィオレスの話に、ペシエラは更に食らいつく。
「そういうわけじゃないんだが、どうも支給された剣が自分に合わないみたいなんだよ」
その言葉に、ペシエラはとても共感する。
「分かりますわ。手に馴染まなかったり、うまく扱えなかったり、落ち着きませんものね」
気が付いたらペシエラも交えての武器談議に発展していた。よく見たらアイリスに加えてキャノルまで。この戦闘狂たちは武器の事には目がないようだった。
「これは……長くなりそうね」
「うん、そうみたいだね」
ロゼリアとチェリシアは呆れて見守る事しかできずにいたのだった。
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