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第九章 大いなる秘密
第273話 引っ掻き回すは得意ですから
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オーロたちが一家そろってロゼリアたちのところへやって来た。念のために確認してみたが、本人たちのようだし特に異常も見られなかった。
というわけで、休憩していたはずが、知らない間に会談の場と化していた。
「まずは、ペシエラ様、ロゼリア様、この度、王太子殿下との正式なご婚約、誠におめでとうございます。チェリシア様も、カーマイル様との婚約おめでとうございます」
チェリシアの婚約はおまけのような物言いだが、王族と一般貴族なので仕方はない。ペシエラの名前が最初に出てきたのは、ペシエラは自国の王子の婚約者、ロゼリアは他国の王子の婚約者だからだ。自国を先に出さなければ不敬にあたる可能性があるというわけである。
「それにしても、マゼンダ商会の快進撃は留まるところを知りませんな。我が商会もオーカー商会もその恩恵にあずかってありますが、ただただ感服するのみでございます」
オーロはそう言って出された紅茶を口に含む。
「ドール商会も順調なようで何よりです。うちのルゼはお役に立てているでしょうか」
「役に立つどころか、金属部門からは大変感謝されておりますよ。ただルゼ殿に無理はさせないように言い聞かせておりますので、ちょっとした不足が起きた際に分けてもらう程度にしております」
ロゼリアがルゼについて尋ねると、オーロからはそういう答えが返ってきた。また、ルゼの持つ金属知識もとても助かっているらしい。さすがはメタルゼリーだ。
どうにも腹の探り合いが始まっているような感じだが、さすがにロゼリアとペシエラには通じない。オーロが遠回しな表現を使ってくるが、ことごとく躱し続けた。チェリシアが質問に答えようとすると、二人はそれに割って入る。チェリシアはこういう事には本当に疎いから仕方のない事である。
「オーロ商会長、私たちは取り扱い分野が異なっております。それに、私たちが王族の婚約者になったからと言えど、今までの関係を崩すつもりはございません。……私たちが愚かで浅慮な人間だとお思いですか?」
ロゼリアが微笑みながらオーロを見る。すると、オーロは目が泳ぎ始めた。やはりそういう警戒心があったようだ。
「いやぁ、まったくだねえ。君らしくもない、オーロくん」
突如として、この場の誰のものでもない声が響く。入口に目を遣れば、そこにはケットシーが立っていた。大きな猫が立って喋っているので、ブラッサとロイエールがとても驚いていた。
「いや悪いね。ボクも婚約の祝辞を伝えに来ただけなんだけど、おもし……神妙な雰囲気になっていたから邪魔してみたんだ」
面白そうとか言いかけたケットシー。顔がニヤついてるのでまったくごまかせていない。
「まぁそれはそうと、三人とも婚約おめでとう。いやぁ、ペイル殿下まで婚約者が決まるとは思わなかったね。ダルグも大喜びだろう」
腕を組んでうんうんと頷くケットシー。相変わらず国王を呼び捨てである。さすがご長寿。
「せっかくマゼンダ商会とドール商会が揃っているんだ。ボクも商談に加わっていいかな?」
そして、目を光らせてオーロを見ると、オーロは渋々、ロゼリアはため息を吐いてそれを了承した。
交渉の結果、モスグリネの特産である豆類や糸や布を、アイヴォリー側からは小型調理窯などの魔道具を取引するという話で落ち着いた。醤油や味噌も含まれるが、そこはマゼンダ商会傘下のオーカー商会を通じる事となった。国外との伝手に関しては、オーカー商会の方が多いからである。
「ボクと知り合いって時点で、マゼンダ商会と直接取引した方がいいんだけどね。さすがに古くからの付き合いをないがしろにするわけにもいかないね。ただ、本人たちが居ないのが残念だよ」
ケットシーはそう言いながら笑っていた。オーカー商会は居ないが、有意義な交渉ができたとケットシーは満足そうである。この中で一番疲れていたのはオーロである。過去に交渉した際にもこてんぱんにされた記憶があるので、ケットシーは苦手なのだ。
「はっはっはっ、オーロくん、まだまだひよっこだね」
「くっ、やはり師匠には敵いませんな」
ご満悦なケットシーと心底悔しそうなオーロ。実に対照的な二人の姿に、ロゼリアたちは呆気に取られていた。
「せっかくだ。こっちに居る間は、君の子どもたちの教育でもさせてもらおう。なにせ百年以上商人をしているからね。ノウハウならたくさん持っているよ」
高らかに笑うケットシー。その横でオーロは頭を抱えていた。
結局、ケットシーの乱入で、マゼンダ商会とドール商会の交渉はうやむやになってしまったのだった。
というわけで、休憩していたはずが、知らない間に会談の場と化していた。
「まずは、ペシエラ様、ロゼリア様、この度、王太子殿下との正式なご婚約、誠におめでとうございます。チェリシア様も、カーマイル様との婚約おめでとうございます」
チェリシアの婚約はおまけのような物言いだが、王族と一般貴族なので仕方はない。ペシエラの名前が最初に出てきたのは、ペシエラは自国の王子の婚約者、ロゼリアは他国の王子の婚約者だからだ。自国を先に出さなければ不敬にあたる可能性があるというわけである。
「それにしても、マゼンダ商会の快進撃は留まるところを知りませんな。我が商会もオーカー商会もその恩恵にあずかってありますが、ただただ感服するのみでございます」
オーロはそう言って出された紅茶を口に含む。
「ドール商会も順調なようで何よりです。うちのルゼはお役に立てているでしょうか」
「役に立つどころか、金属部門からは大変感謝されておりますよ。ただルゼ殿に無理はさせないように言い聞かせておりますので、ちょっとした不足が起きた際に分けてもらう程度にしております」
ロゼリアがルゼについて尋ねると、オーロからはそういう答えが返ってきた。また、ルゼの持つ金属知識もとても助かっているらしい。さすがはメタルゼリーだ。
どうにも腹の探り合いが始まっているような感じだが、さすがにロゼリアとペシエラには通じない。オーロが遠回しな表現を使ってくるが、ことごとく躱し続けた。チェリシアが質問に答えようとすると、二人はそれに割って入る。チェリシアはこういう事には本当に疎いから仕方のない事である。
「オーロ商会長、私たちは取り扱い分野が異なっております。それに、私たちが王族の婚約者になったからと言えど、今までの関係を崩すつもりはございません。……私たちが愚かで浅慮な人間だとお思いですか?」
ロゼリアが微笑みながらオーロを見る。すると、オーロは目が泳ぎ始めた。やはりそういう警戒心があったようだ。
「いやぁ、まったくだねえ。君らしくもない、オーロくん」
突如として、この場の誰のものでもない声が響く。入口に目を遣れば、そこにはケットシーが立っていた。大きな猫が立って喋っているので、ブラッサとロイエールがとても驚いていた。
「いや悪いね。ボクも婚約の祝辞を伝えに来ただけなんだけど、おもし……神妙な雰囲気になっていたから邪魔してみたんだ」
面白そうとか言いかけたケットシー。顔がニヤついてるのでまったくごまかせていない。
「まぁそれはそうと、三人とも婚約おめでとう。いやぁ、ペイル殿下まで婚約者が決まるとは思わなかったね。ダルグも大喜びだろう」
腕を組んでうんうんと頷くケットシー。相変わらず国王を呼び捨てである。さすがご長寿。
「せっかくマゼンダ商会とドール商会が揃っているんだ。ボクも商談に加わっていいかな?」
そして、目を光らせてオーロを見ると、オーロは渋々、ロゼリアはため息を吐いてそれを了承した。
交渉の結果、モスグリネの特産である豆類や糸や布を、アイヴォリー側からは小型調理窯などの魔道具を取引するという話で落ち着いた。醤油や味噌も含まれるが、そこはマゼンダ商会傘下のオーカー商会を通じる事となった。国外との伝手に関しては、オーカー商会の方が多いからである。
「ボクと知り合いって時点で、マゼンダ商会と直接取引した方がいいんだけどね。さすがに古くからの付き合いをないがしろにするわけにもいかないね。ただ、本人たちが居ないのが残念だよ」
ケットシーはそう言いながら笑っていた。オーカー商会は居ないが、有意義な交渉ができたとケットシーは満足そうである。この中で一番疲れていたのはオーロである。過去に交渉した際にもこてんぱんにされた記憶があるので、ケットシーは苦手なのだ。
「はっはっはっ、オーロくん、まだまだひよっこだね」
「くっ、やはり師匠には敵いませんな」
ご満悦なケットシーと心底悔しそうなオーロ。実に対照的な二人の姿に、ロゼリアたちは呆気に取られていた。
「せっかくだ。こっちに居る間は、君の子どもたちの教育でもさせてもらおう。なにせ百年以上商人をしているからね。ノウハウならたくさん持っているよ」
高らかに笑うケットシー。その横でオーロは頭を抱えていた。
結局、ケットシーの乱入で、マゼンダ商会とドール商会の交渉はうやむやになってしまったのだった。
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